謎のサボタージュ 2燃え上がるマハトガ。
暫く茫然としてしまったが、周囲からの怒号でハッと我に返る。
「どうなってやがる!管理元は何処だ!」
「畜生ッ、仕事が出来ねぇ!どう食ってきゃ良いんだ!」
「うぅ…兄貴…兄貴ィ!!」
どうやら、俺のマハトガのみが爆破された訳でも無いようだ。
混乱した状況下の中、駆けつけた消防用の人型ガードメカが4機と、小型の自走砲と思しきメカ十数機が到着。鎮火作業に当たった。一見、場違いとも思えるこの砲塔を持ったメカはマハトガと同じ製造元、M2JB重工が提供している「1500(ワンファイブオーオー)」、通称「ワンファイブ」。
ズドッ!という砲撃とともにワンファイブの砲塔が放浪者(ワンダラー)達の機体目掛けて煙を吹く。
放浪者(ワンダラー)の男が
「この野郎…何しやがる!」
とワンファイブに胸のホルスターから抜いたリボルバーを向けるが、すぐさまガードメカが射線を遮り、
「ご安心下さい。これらは「修復用メカ」として派遣されたユニット郡です。」と合成音声の淡々としたトーンで告げる。
「コレの何処が…ッ!」
と再びリボルバーの引鉄トリガーに指を掛けた、その時。
男が搭乗していたストレングス・ハートからシュウゥゥ…と蒸気音が発せられるとともに、装甲板、内部パーツが瞬く間に修復されていく。このワンファイブはガードメカが告げたように修復用メカだ。特殊なリペアシェルと呼ばれる砲弾を機体に向けて着弾させる事で装甲は全て、機体内部のパーツも修復できる。5発しか装填が出来ない仕様であったが、重工が新たに独自開発したリチャージテーブルを持ち運びながら運用する事で整備工要らずの代物として話題を呼んでおり、各都市も緊急時に備え、M2JB重工との契約を経て投入していた。
男は一瞬、呆気にとられていたが、訝しみながらリボルバーをホルスターへ納めた。
その後もワンファイブの修復作業は着々と進み、作業は1時間半程で終わりに近づき、ワンファイブの1機体が俺のマハトガに向けて砲塔を向けた。
「エラー:自爆によって破損した機体、並びに装備は修復支援対象外です。」
「は…?」
ワンファイブの思いもよらぬ言葉に思わず間抜けな声が漏れた。
俺はガードメカに
「どういうことだ!?自爆?俺のマハトガに自爆用コンポーネントなんて積んでないぞ!」と問い詰める。
ガードメカは
「分析:心拍数、眼球運動、発汗量異常なし。」と冷静に俺の様子を分析する。
どうやら俺が嘘をついているかを勘ぐったらしい。
「こいつ…ッ!」とガードメカの肩を掴むがガードメカは続けた。
「事実:爆発は間違いなく、当該機体 マハトガから起きたものです。」
そう返すと、俺の手を軽く払い、破損したコンソールに右掌部から伸びたケーブルを通じてアクセスし、コンソールの操作で中破したマハトガをハンガーから出す。重量感のある足取りで機体背面に回る。俺は訝しみながらもそれに続いた。
マハトガはコクピットを機体内部に持たず、コクピットがコクピットブロックとして独立している珍しい仕組みで、脚部に内蔵された強力な推進器もあって、漆黒の装衣を纏った、逞しい脚を持つ痩身の武人が少し大きい八角形のバッグパックを背負っているかのような独特の外見を持つ。
ガードメカはマハトガのコクピットブロック、コクピットブロックと機体の接続部の2箇所をそれぞれ指差し、
「推定:起爆したと思われる箇所です。コクピット部付近での爆発である為、自決、自爆用コンポーネントの作動である可能性が高いと考えられます。」と告げた。
確かにこの二箇所の破損が著しい。
逆に言うと、マハトガ「本体」への大きいダメージは見られない。
はっと、Z.A.K.O.の自爆コンポーネントの起動音が聞こえた事を思い出し、俺は
「なあ、爆破される直前にマハトガから自爆型Z.A.K.O.の自爆シーケンスを聞いた。昨日の朝方、Z.A.K.O.5機で構成された小隊と交戦していた際にも機体に取り付かれて自爆されかけたが、その時と全く同じ警告音だった!もっと良く調べてくれ!Z.A.K.O.が機体に取り付いていたんじゃないのか?」
と再びガードメカに問い質した。
しかし、ガードメカは
「否定:KJB-Industry社製標準量産型「Z.A.K.O.」には自爆機能、及び自爆用のコンポーネントは初期ロットから現在に至るまで付属せず、直近の仕様変更の内容にも、そのような改修は含まれておりません。」
と徹底的に俺の主張を否定した。
「そんな馬鹿な…」
俺はその場で力なく崩れ落ちた。
予備機の用意は無い。マハトガの設計思想が近接戦闘寄りで俺の戦闘スタイルに合致していたし、耐久度的にも問題が無かったからだ。
項垂れる俺を横目に
「推奨:流通元の企業への修復依頼を提言します。機体本体の損傷は中破状態であり、コクピットブロックを新規製造発注すれば最短2週間程で…」と乗り換えを勧めてきたが、
もうその内容は全く理解出来ず、深い喪失感に襲われ、その夜は死んだように近くの安宿に泊まり、飯も喉を通らず、眠気すら湧かず、現実を受け入れられぬまま、夜が明けた。