さいしょのはなし
すりきれる
すりへる
まっさらになる
ながいあいだふらふらしていた
なんでここにいるんだろう
じぶんはなにものなんだろう
はなしかけてもだれもきづかない
あるいてもあるいてもつかれない
おなかもすかない
かなしくもない
たのしくもない
ばくぜんとしたむしょくのせかい
きがくるいそうなくらいにばくぜんとしてる
でもきがくるうこともできない
ただようことしかできない
きえることもできない
『おや』
『なかなかに古い魂の様ですが…いまださ迷っているとは』
『…素質があるのやもしれませんね』
むしょくのせかいにこんいろとしろとくろ
むしょくのせかいのいろがすこしだけこきゅうをした
あたまになにかがふれる
さわられたかんかくがある
かんかくなんていつぶりだろう
くろいひかりがからだをつつんで
からだのしんがぎゅっとつまって
しんがほかほかあたたかくなって
――きゅうにこきゅうがくるしくなった
『やはり、耐えられましたね』
こんいろとしろとくろからこえがふってくる
かおをあげてよくみるとこんいろはふくで、しろはほねだった
『久しぶりの感覚のある現世はいかがですか』
かんかく。
かんかく。
くうきのにおい。
つきのひかり。
かわいたこえ。
わずらわしさ。
いきぐるしさ。
ずっとなかったかんかくが、いまはある。
じぶんはここにいる。
『…きひ』
ぽろりとめからなにかがこぼれたきがした。
つらいことでもかんかくがある
こえが、きもちがここにある
だれかがこえをかけてくれる
じぶんはここにいる
『きひ』
ずっとまとわりついていたむしょくのせかいが、いっきにあざやかにいろづいた