(黄川人)「 オイオイ、よしてくれよ全く 冗談じゃないぜ。」
「 成り行きとはいえ、僕を神として祀りあげれば朱点童子の運命から封印だってする必要も無くなる。姉さんの根回しには上手くやられたもんだよ。ホンッと……… 」
(真名姫)「 否定はできないけど、あの昼子ちゃんですもの。そう考えても不思議じゃないものね…。私もちょっと前までは黄川人と同じ朱点側の鬼だったから今でも世のため天界側に仕える抵抗も少なくとも分からなくはないわ。 けど…… 」
“ 人魚の肉は不死の薬 ” だとか
(真名姫)
「 有りもしないデタラメな噂を、最初はまるでみんな信じちゃって、体中モリや槍で突かれた酷い仕打ちは今でもこの古傷は治らないわ…。 」
(黄川人)「 まさかあの時はそういうキミが裏切るとは僕も驚いたけどね 」
(真名姫)「 ……ホント。人間の中にも変わった運命に生きるあの子達が現れてから、私もどうしちゃったのかしら。」
「 辛い境遇にも関わらず 人であって人にあらず、世間の目から遠く離れた世界で人知れず存在してきた彼ら一族は、少なくとも 善人ぶっている人間なんかより余程 純粋に見えたわ。」
(真名姫)
「 だけど、…あの子達にかけられてる呪いはあなたの手によるものだと知ってから、彼らを試してみたのよ。
昼子ちゃんにも随分 いいように利用されてたみたいだったから人間が信じて疑わない光の先がどういうものなのか。」
(黄川人)「 …それで?どうだった? 」
(真名姫)「 ……。力になってあげたかった。戦ってみてわかったのよ、この子達 本当に明日だけに生き、必死になって傷付いて、何度も私に挑んで来るから ・・だからある日、何の為に戦ってるの?って彼らに聞いてみたのよ 」
そしたら
(黄川人)「 ……。」
(真名姫)「 自分の生まれてくる子供のため。厳しい境遇に一人でも多く強く生き残れる子孫達へ命を繋ぐために 私との戦いで得られる【神への奉納点】が必要なんですって 」
「 それを聞いて気が変わったわ…。面白半分な噂を間に受けた連中のエサなんかに黙ってなるよりも、
あの子達の力相手になってあげてる方が 朱点の鬼になってまで戦う意味も少しはあったんじゃないかと思ったの。」
(真名姫)「 昼子ちゃんはその狙いをついて、私に一族の力添えになるよう話を持ち掛けてきたわ。【朱点の首輪】から私を解放してくれるってね、もちろん 彼らと戦う事を条件に。」
「 私はその話を受け入れたわ 」
「 命儚くとも あの一族は、確かな子孫達の強い悲願の絆で結ばれている… それが他人の深い苦しみさえも真正面から貫いてくる鋼のような強さを兼ね備えて、私たちにはそれが眩しかった 」
(黄川人)「……… 」
─── あの時、
僕は最後の戦いに敗れ、
二度と元には戻れない 常闇の永久核に堕ちる途中…
眩しい光を見た。
力強い何かに、引き込まれた腕を掴まれたかと思ったら、
誰かが必死に引き上げてくれたような気がした・・
“ もう一度、やり直せ ” …って。
(黄川人)
「 そんな声が聞こえてきたんだ。」
(真名姫)「 ーー… 」
(苦笑する黄川人)
「 おかしな話だろ、あいつら一族を散々苦しめておいて、もう一度 人生やり直せだなんて、そんな面倒くさい 都合のいいような話…… 」
「 どれだけお人好しなんだか。ったく.. 」
おかげでまぶたが重くて
身体が動けずに安らかに眠らされた。
穏やかな光だけを肌で感じて…
(黄川人)「 だからその時、段々と 自分の力が弱まりだしていたことに気付いて目が覚めたら、
母さんが側で何か優しげに話しかけていたんだ 」
僕を抱いて……
─────過去─────
(赤子の黄川人) (嬉しそうに笑う)
「 …、あっ、…あぅ。」
(お輪)「 ほら、この子誰だか分かる?そう、あの子よ。ありがとう.. これで………。」
(一族達)「 ─────…、。」
(黄川人)「 …結果的にあいつらに救われ 母さんにも命を救われた。
そう思うと姉さんのやり方も少しは協力せざる気も ほんとは嫌だけど 多少はあるさ。…まぁ神なんてガラじゃないんだけどね、自分は 」
(真名姫)「 いいのよ 黄川人はそれで。嫌いじゃないわ私は。自由奔放な天界の神様も 」
(黄川人)
「 自由奔放などころか、おかげで今じゃあの人に散々こき使われてんだから。たまったもんじゃないぜ、神様ってのは 」
二人で穏やかに話をしている時だった。
ドンッ……!!(天井)
(二人)「!?」
(小石)
「 カララ……
───── ・・・ カツンッ ..。 」
(黄川人)「 何だ 地震?」
(真名姫)
「 最近 このところ洞窟が少し異常なの。あたし達神は下手に地上界まで干渉出来ないから原因は流石にこの奥の社までは手が出せない筈なんだけど 」
「 晴明ったら 危険な鬼を野放しにしたらしいのよ 」
(真名姫)
「 あの昼子ちゃんが地上界に降りた神達に非常警戒を出したもの。…ただの鬼じゃないわ 」
(黄川人)「 ? へぇ~…。」
「 ( 警戒…… ね… ) 」
(黄川人)
「 ちょいと気になるな、」
(奥の洞窟で叫び声が聞こえる)
「 ーーーーーーーーーーーーーーーッ!!! 」
ビリビリビリ..ッ
ズズウゥン…ッ ‼︎‼︎
(振動)
「!!」
(真名姫)「 …?! これじゃ洞窟を壊し回されたんじゃたまんないわ、晴明ったら。
・・心配なのは あの子達よね… 。できればまだ暫くは この辺に近寄らないほうが賢明だと思うんだけど 」
(黄川人)「 そうは言ってもあいつらはともかく、姉さんの忠告たって僕はわざわざそこまで面倒な戦いはしない主義なんだ。けど、そいつの正体、ちょいとばかし気になるんだよな.. 」
「 手を貸すわけじゃないけど 百鬼祭りの事だってあるし、少し調べてみるか 」
(真名姫)「 そうは言ったって相手も危険なんだからあなたも気をつけるのよ黄川人 」
「 分かってる、そんなヘマはしないさ 」といつもの余裕気な態度で背を向け黄川人は真名姫のいる龍穴の滝を後にした。
────────────…
洞窟の入り口付近で討伐部隊は全員 武器を抜いた
(当主)「 みんな、準備はいいな? 」
(頷く全員)
(当主)「 行くぞっ 」
【龍穴鯉のぼり】突撃。
(駆け足)
……バタバタバタ!!
(鬼)「ギッ!?」
すぐさま群れる鬼達の中、亜乱は一瞬で戦略パターンを見極めた。
(亜乱)「 ーー… ( 敵前列中心の陣形か、) 当主様っ、俺が先陣をきります!」
戦闘開始後、ねこ婆の【※武人】
「 ────。」(※味方単体攻撃力上昇)
(当主)
「 陸、まだ前に出るなっ 」
【ぬる首】「!!」
(陸)「うわっ!」
「ガギン…ッ! 」
案の定、初陣の陸を狙った敵の攻撃から
あらかじめ 庇う体制をとり、陣形を固めるように陸を後ろに後退させた。
(当主)「 ッ!」
「ビュッ!!…ガガッ!!」
(連続矢で撃破)
(万里)「※【真名姫】っ!!」
(津波)「ドドォォオ…ッ!!!」
(※真名姫… 敵全体 水属性大ダメージ)
(敵激減)
「 ーー…!」
ヒュンッ!
(薙刀)
(亜乱)
「はぁぁぁっっ!!」
(鬼)「 ─ ──!! ギィイィ..ッ!!」
敵を完全撃破した。
(陸)「 ーー. . ? 消えた.. 」
(亜乱)
「 当主様、この辺の鬼達はまだ さほど力をつけてる感じはしないです。いくつか この洞窟も枝分かれした道が入りくんでて奥にたどり着けるかどうか… 」
(当主)「 そうだな、迷宮の道も日に日に変化し続け 道行く者を阻んでる 」
(何かを取り出した)
(陸)「 ちちうえ、それは…? 」
(当主)「 地図だ。以前この場所に来た時、中の構図を途中まで記憶しておいた。どの迷宮も入り口付近までは大体前回と同じ構図になっているが、出航先で入った国によって若干 奥へは変化がある所もある 」
当主は自ら描いた龍穴洞の地図を描いた巻物を広げた。
これも討伐部隊を先導するために迷宮の構図を理解し、こまめな記録史を残さねばならなかった。
(当主)「 ……。」
しばらくして巻物を閉じると、
(当主)「 万里、亜乱、二人とも【※黒鏡】を習得しているな?」
(万里)「 えぇ、使いますか?」
(亜乱)「 俺も大丈夫です。」
(当主)「 敵の先手だけは避けたい。陸は【※速鳥】で各自前もって術をかけておいてくれ」
( ※黒鏡は戦闘以外で使うと一定時間必ずこちら側の先制攻撃になる )
( ※速鳥 … 迷宮での移動速度が上昇 )
(三人)「 はい 」
皆のかけ足がバシャバシャと洞窟に流れる水を弾く。
そして、
【清姫大将】「!!」
“ 白浪 ”
「ズザァァァァァァーーッ!」(敵全体に水属性小ダメージ)
(陸)「!? うっ!」
ガボッ..!
(亜乱)「!!陸っ!」
(流される体を捕まえる)
(陸)「 …っ、けほっ…!! 」
(亜乱)「 大丈夫か?小さい波でも流される力は結構あるから油断するなよ 」
(陸)「 う…うん、ごめん 」
(すぐに体制を整え攻撃に入る)
(万里)「【 ※寝太郎】!!」
( ※敵一列行動不能 )
(亜乱)「!!」
ザシュッ!
薙刀の通常攻撃で敵一列が全滅した時だった。
(コーちん)「 !当主様っ!!あいつ逃げるつもりだよ! 」
(当主)「 …!? 【※くらら】!」
( ※敵単体行動不能 )
(清姫大将)「 …!?」
(当主)「 逃がすものか、陸 」
(陸)「 …ッ!」
「 ( 狙え ) 」
(弓矢)
ギリィ…ッ!
(陸)「 行けっ!!」
(矢)
─── ── ..ギュンッ!!
「ズドッ!」
初めて敵の大将の首を討ち取った。
(亜乱)「 よしっ 」
(万里)
「 ちゃんと訓練の成果が出てるじゃない、陸 」
(陸)「 うん。 …? 」
「 ( けど何でだろう…、敵の動きがさっきもゆっくりに見えて最初より的が当てやすかった ) 」
(陸)「 …?」
「 ( 違う、術のせいじゃない ) 」
(万里)「 実戦はね、初陣の頃が一番 経験値が多く成長に当てられるの。一ヶ月もすれば陸も一人前になるのよ」
(陸)
「 ーー… (そっか)、そうだったんだ。」
そして更に奥の方へ進むと、前方に通行止めの柵がある。
(亜乱)「 ? あれってもしかして 」
(当主)
「 鍵だ、コーちん 」
(コーちん)「 はい、当主様っ 」
…ガチンッ。
「ギィィィィィーーーー . . 」
(四人)「 ………。」
ここからは当主達も初めてとなる未知の領域だった。
(当主)
「 みんな、少しペースを落とすぞ。ここからは慎重に進む 」
駆け足から通常の歩くペースに変え上流から流れる水に逆らい討伐を進めてゆく。
(コーちん)「 …? 当主様、気をつけて。前方に少し強い敵がいるよ。陸様の体力に十分気を付けてあげて」
(当主)
「…? あれは.. 富士見ヶ原で見かけた奴らだな 」
【奪魂大将】・【鬼子母】
(油断してるといずれも攻撃力が高く健康値がすぐに持って行かれる敵になる。)
当主様は集中攻撃に持っていく方向で
自分と万里を前列、亜乱と陸を後列に
指示を出した。
そしてその戦法は読み通り
陸を狙っての鬼子母の攻撃を、体力の一番高い万里が前列で自分へとダメージを促した。
「 ──..! 」
(鬼子母)「!?」
(万里)「 ……拳法家の攻撃ってね、強い奴ほど会心の打撃が打ちやすいメリットの効いた職業なのよ!」
タンッ!
(鬼子母)「!」
(万里)「 これでどう!? 」
(大連撃)「!!!!」
(万里)「 …ッ‼︎、だあぁぁぁっ!!」
ドゴォッ!!(会心の蹴り)
(鬼子母)
「 ..!? ギャァァァァァァァァアーーーーーーッ!!!!」
……………………。
(亜乱)「【※萌子】っ!」
(※味方単体 攻撃力上昇大)
(当主)「!」
ヒュンッ!!
(矢) ──────ィィン…ッ!!
パンッ!!
(奪魂大将の首に命中)
(首)
ゴロン…。
敵の大将を倒した。
(陸)「 !、すごい…今の父さんの矢が神速に光った…? 」
(亜乱)「 萌子の効果で一時的に攻撃力を強めたんだ。こういう敵の戦力(数にもよる)と味方陣形の場合は、個撃に強い弓使いと拳法家の戦闘力が大いに役立つんだよ。」
「 俺の薙刀は 多勢派に有効な攻撃力を持ってるけど、個撃となるとあまり期待は出来ないからこういう時、補助役に徹するのが一番良いんだ。」
(当主)
「 その内少しずつでいい、今の亜乱や万里がやっているように、戦法の提案には体力の消耗を抑え いかに時間をかけず最短の方法で敵を討ち取れるかお前も戦いの中で意識してみるんだ 」
(陸)「 はい。」
その後いくつかの実戦を重ねて
陸の体力や攻撃力もメキメキと成長した頃だった。
..ッ‼︎
(???)
ウォォォォォォオオーーーーーーーーーーッ!!!!!」
ズン… ッ‼︎
(当主)「!?」
(万里)「 ?!な、 何? 」
───..
ビリビリ ビリッ‼︎‼︎
(コーちん)「 !、ひゃうッ⁉︎ 痛い痛いッ!!み・・耳…っ!」
(亜乱)「何だっ」
ズズズズズ…。
「 ーー…ビシィ!!
ビシビシ‼︎…ッ‼︎ 」(亀裂)
(陸)
「!!、周りの岩壁がっ!? 」
(???)
「 ────────────────────────!!!!」
突如、洞窟の奥から耳を突き刺すような超音波を発した叫びが当主達を襲った。
ドドドドド…ッ!!!
(次第に岩が崩れだす)
(亜乱)
「 コーちん!何なんだっ このバケモノじみた叫び声は!? 」
(コーちん)「 分かんないよ!あっしだってこんな声初めて聞いた……うぎゃあ!!」
(当主)「 コーちん、耳を塞げ!コイツはただの音じゃない 」
(万里)
「 …!?当主様っ!周りの鬼達が…っ!!」
(殺気)
ザワッ…。
【ドクロ大将】「 ギッ…!?」
【山姥】
「ヒィィィッ…!!」
【化け猫大将・ぬぼうカニ】「!!」
(とてつもない殺気にあてられみんな一瞬で消滅する)
(当主)
「 ……、 ( この異常さは… ) 」
“ ドクンッ! ”
(陸)「!!」
(心臓)
…ドクッ…ドクッ……ドクッ…。
─ ────── ..。
冷たい冷気の様な気配が周りの空気を凍らせた。
(亜乱)
「 …!何か来る…っ!!」
ドズンッ!
(???)「 …、ブツブツブツ..。」
(四人)「!?」
(???) 「 …… 」
「 ヴグ ヴヴゥゥ…。」
ゾクッ..!
その瞬間、全員がただならぬ殺気を感じ取った。明らかに今までの戦ってきたことのないケタ違いのレベルのバケモノに遭遇し、下手に動けないでいた。
(万里)「 な…何よ、コイツ…。」
(コーちん)「 あ…あっ……。ゴメン!当主様っ!! 」