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    刀剣短歌三日月宗近小狐丸石切丸岩融今剣大典太光世ソハヤノツルキ数珠丸恒次にっかり青江鬼丸国綱鳴狐一期一振鯰尾藤四郎骨喰藤四郎平野藤四郎厚藤四郎後藤藤四郎信濃藤四郎前田藤四郎秋田藤四郎博多藤四郎乱藤四郎五虎退薬研藤四郎包丁藤四郎大包平鶯丸明石国行蛍丸愛染国俊千子村正蜻蛉切物吉貞宗太鼓鐘貞宗亀甲貞宗燭台切光忠大般若長光小竜景光江雪左文字宗三左文字小夜左文字加州清光大和守安定歌仙兼定和泉守兼定陸奥守吉行山姥切国広山伏国広堀川国広蜂須賀虎徹浦島虎徹長曾祢虎徹髭切膝丸大俱利伽羅へし切長谷部不動行光獅子王小烏丸抜丸同田貫正国鶴丸国永太郎太刀次郎太刀日本号御手杵巴形薙刀毛利藤四郎篭手切江謙信景光小豆長光日向正宗静形薙刀南泉一文字千代金丸山姥切長義豊前江祢祢切丸白山吉光南海太郎朝尊肥前忠広北谷菜切桑名江水心子正秀源清麿松井江山鳥毛古今伝授の太刀地蔵行平治金丸日光一文字太閤左文字五月雨江大千鳥十文字槍泛塵一文字則宗村雲江姫鶴一文字福島光忠七星剣稲葉江笹貫人間無骨八丁念仏石田正宗実休光忠京極正宗孫六兼元後家兼光火車切富田江詠み刀知らず審神者歴史修正主義者その他
    三日月宗近夕闇に手を振る人の子のそばで手の届かないものとして月(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    紺碧のしじまに月は目を伏せて届かないのは互いに同じ

    とうかぶ月刀剣縁桐によせて
    行く先に三日月よあれ 清らなるしるべにてわが道に寄り添へ
    我が心(うら)の影だに照らしぬるほどに月明ければ明く話さむ
    名を呼ぶにこぼるるは何 ささがにのくもらぬ刃にてきり結ばむに
    のこさるる定めを君は負ふなりと夜半の空にぞ三日月を見る
    行く先に三日月よあれ わが手には収むべからでこの日の本の

    ミュ、蓮について
    託されし契りをいかで負はせむか ところ同じう生(あ)れきとふとも
    葉陰より逸らせぬままの目に映る玉桂なほうるはしく笑む

    小狐丸残るのではなく残されたうただねと語り継がれることないあなた(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    石切丸
    岩融届かない筈はなくとも触れないこともあるのだ 赤い目を見る(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

      おかえりのかわりにハッピーバースデー頭蓋の中は君には狭い(挂燈詠歌)

    今剣「終戦です」ほんとうですかほんとうにこれがめでたしめでたしですか(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    なぜ、ときくときに吐く息があけてはいけないまどをくもらせました

      赤い目で跳んでは跳ねる子うさぎの無垢さで落とす首ひとつふたつ(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    大典太光世ミュ東京心覚によせて
    おれにさえ届いたひかり 負わされるものをそれでも愛すか兄弟

    ソハヤノツルキミュ東京心覚によせて
    ねむりからさめるみやこのこれもまた正しい歴史 守るべきもの

    連作 無題
    目を見張る本編になるプロローグだけが書かれたページの続き
    書き出しに何度も二重線を引きやり直せたらそうしたのかよ
    切っ先は前へ 守護者であるための孤独はここじゃ要らないらしい
    足跡のはじまりはどこ ああ俺の偉大な一歩目を見るといい

    数珠丸恒次連作 無題
      捻じ曲げて歪な感嘆符にせずにあなたがそっと抱く疑問符
      暗闇で閉じたまぶたの裏側に見えた光があなただといい
      守るべき歴史の教科書もいつか正しく書きかえられる日が来る

    零れ落ちほろとくずれる花びらをすくい上げんと伸びる鋒

    連作「いつかゆく道」(#きみのこえでうたって)
    思い出の揮発を庭は受け止める いついつまでもいられない場所
    花びらを散らし続ける春の夢ほんとうの終わりがわからない
    送り出す先が帰路にも思われて懐かしいとは慕わしいこと
    口遊むように空へと溶かしゆく祈りにも似た見送りの声
    できるだけゆっくりと行きたい皆の後を一足遅く辿って
    たまゆらとしても生き抜くための今日いつかのことはいつかの話

    にっかり青江連作 無題
    使ってよ今の主は君だから他に理由が必要なのかい
      「君色」に染まってくれる?まっさらな白をその身に纏った君は
    求めれば応える刀さ経験は豊富だからね ……戦のことだよ?
      君が見ているから私胸を張る 秋風が揺らすポニーテール
    命令を 花は必ず散るけれどいつかを思う暇もない程
      散ってなお地面を染める木犀の香りのお守り袋を上げる

    まだ君に似合うまでには早すぎる鮮やかな赤は幽霊の色(「彼岸花」)

    隠されるほど暴きたくなるものさ出てきておくれよ 栗のことだよ(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    連作 無題
    叶わない夢ならそれで見続ける愚者となるのもいいのだろうね
    わからないことは悲しいことじゃない届かない手も僕が伸ばした
    気を悪くしないでくれよ輪郭を暴いてしまうようにできてる
    毒でいい 熱にあるいは冷たさに触れてようやくきみを知るのさ

    ミュ歌合によせて
    綺麗だよ あこがれをもつ愚かさが炎に還るまったき刹那
    僕もまた夢を持てるひとひらとして永きわかれの晩にもわらう
    よろこび、と呼べばそれすらまじわりの証であると信じていたい
    白菊を思い浮かべてご覧 いま香る誰かの魂がある
    その時も(それゆえにそののちまでも)きみのひとみの奥に乱れよ

    いずれ立つ旅路に探す面影を集めるような日々でもいいよ(挂燈詠歌)

    鬼丸国綱暗がりを追わずにいればおれでなく追えばあなたに背を向けていた

    日が差せばふたつにわかたれる部屋のいつでも暗い方に立つから

    ミュ花影ゆれる砥水によせて
    ただひとつ確かな柱ひとつだけ信じ確かにしてゆくだけだ
    鳴狐隠しても話さなくてもぬくもりが伝わる身体 もろくてやわい

    人によく似た身体を得て百年の縛りはそれでもないがお前は

    「あのね今、笑ったでしょう 面頬の上の目尻が少し伸びたよ」

    大切なことはそれほど多くない この声を聞き逃さないでね

    陽だまりの形にまるまったお前の寝息を確かめる手にも熱
    一期一振  弟たちでは手が届かなくなるくらい大きくなるかな「きっとなれます」(「背比べ」)

    弟の毛布をかけなおして回る優しさも手も貰い物です(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    埋火を持つわたしたち人じみて明日も肩を揺らして笑う(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    連作 いち兄と弟たちと火鉢について
    消し炭で熾す火鉢の火を囲みわたしもいつか泣けるだろうか
    それぞれに抱える熱がありひとりひとり加わる手あぶりの輪へ
    燃え尽きを早めるような炎などゆめあげないでおくれよお前
    かまうのは得意だ皆を平等におなじ温かさになるように
    蓋を開け確かめすぎた火消し壺まだ消えないといえないままの

    ミュ花影ゆれる砥水について
    かはたれの影はかたわれ分かたれていずれ噛み合いわたくしを成す

    鯰尾藤四郎  今ならば聞こえませんよと唆すドライヤーに吹かれるえりあし(#夏の男士のえりあし短歌)

    平熱が俺より高い弟の熱も愛してやれてよかった(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    ともすれば色を失う焼け跡に花を降らせてくれよ兄弟

    連作 無題
    きっとね泣いているよね足跡も花も流してしまって雨は
    傘が好きビニール越しの景色は少し遠くてなつかしいから
    にぎやかに撒き散らす色 余白は埋められるのを待っているから
    これからを詰められるよう空っぽの鞄ひとつを持ってきたよ

    デイパックひとつで旅ができること自慢なんです、お揃いですね(挂燈詠歌)

    骨喰藤四郎順番が回ってきたとはしゃいでいる兄弟とともに定規を当てる(「背比べ」)

    高い空の下で夏を好きになるようにあつさを思えるだろうか(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    連作 無題
    居場所すら知れぬ心を残り火がまだ焦がしている 焦がれつづける
    鈍痛をなお引き摺っているらしい したくてそうしているわけじゃない
    鮮やかなままで残っている何かの探しがたさが少しまぶしい
    「半分もある」と答えた兄弟と揃いのコップに水を注ぎ足す
    たっぷりの余白を余白と受け止めて降り積もる花ひとひらひとひら

    あいさつが好き 足元を確かめる明かりのようですこしまぶしい

    連作「陶器の真水」(#きみのこえでうたって)
    おとうとのたぷりとまるく俯いて落とすしずくの塩分濃度
    心にも器があって溢れ出るものが涙と呼ばれるらしい
    干上がってしまうだろうかあまりにも俺の器は炎に近い
    花瓶ならよかっただろう水だけを注がれている白い陶器の
    花のように生きられなくて塩分を少し欲する人もはがねも
    塩水の代わりに流れ出るように花瓶のふちをこぼれた真水

    平野藤四郎本丸もこの身も消えていつの日か美術品になるのでしょうか(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    蹲るあなたに寄り添えることも小さく生まれた理由の一つ(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    厚藤四郎鋭さは誇り 貫くものを選べるおれだけの手も足も得た(#刀剣短歌交換デザイン展示会)

    連作 無題
    俺たちの誰かがそう、決まっても大将を戴く同胞だ
    爪を立ててみる あなたを傷つけることのできない手が欲しかった
    手も足も得たからそれじゃ、これきりで 肉も鎧もわからないおれ
      風 君が背をたたくからつめたさに目をつぶらずに歩くと決めた
      まっすぐに見えていますかさかさまに鋼のひとみに映るわたしは
      大将と呼んでください 躓いて地面についた手が痛むとき

    後藤藤四郎「去年よりでっかくなるぜ」わかってるから背伸びするのやめなさいって(「背比べ」)

    覆い隠せる背中ではないけれど泣き止むまでは貸してやるから
    信濃藤四郎守りたい理由はきっと平熱も心拍数も知っているから(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

      温もりを教えあうとき縮こまる手足が裂いてゆく夜が好き

    天球儀まわして宙を手に入れる きっとすべてに意味があるはず

    見えるものだけを見上げて星月夜足りないものはなかったきっと(挂燈詠歌)

    寒いのはにがて お腹が空いたぶんおいしいものがあってもにがて(挂燈詠歌)

    前田藤四郎連作 修行の手紙について
    足下も手元も見えずなりゆくも忘れぬものがここにあること
    大きめの兜に合わせ身の丈は育ちませんが合わせてみせます
    人間は嫌ですよねと書いて知るこの文を読むあなたもいつか

    お日様の光に翳す手の皺も主君あなたの勲ですよ

    吹き抜ける風が運んだ櫻花主君の功は僕達(かみさま)が知る

    新しい主君が来ました 本棚の並びを今も間違えています

    連作 御伴散歩
    足跡はあなたの歴史 これからはともに築いてゆく歴史です
    お出かけも帰宅もお供いたします よい思い出が芽吹きますよう
    どこだって楽しいのです僕たちに主君の世界を見せてください

    止めません自らでさえ止められはしない願いは意志となります(挂燈詠歌)

    秋田藤四郎初めての秋です主君 僕、熱をあげられる側になったんですよ
      何度目の秋にも君が覚えてて 逸話にならない本丸のこと

    昼間にも星を見つけてみたいんです 主君の夢も聞かせてください(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    青くって手を浸しても透明で宝箱には入らない空

    雨音を泣き声と呼ぶやわい手がはなしてしまうさびしさのこと

    おひさまを見ることもなくうすらいの下を泳いでゆくさかなたち(挂燈詠歌)

    博多藤四郎これからも変わってくけん見守るばい 赤か輪郭付きん世界ば(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    連作「つぶれた色の」(#わたしの歌あなたの歌)
    道端の雑草として踏みつけたそれも時代の一部だったよ
    ひしゃげてもしたたかに咲いている花うつむく間にも頭を回せ
    何が壊れてもやまない営みの帳簿にも残らない当然
    守りたいものがあまりにささやかにそこにかしこに息づいている
    俺からも鳴る生活の音はみな働き者の手を知っている
    今日という暮らしの途切れないことをうたがわないで笑ったらよか

    乱藤四郎去年までボクとお揃いだったよね 測るの大変になっちゃった(「背比べ」)

    まんまるはこれから欠ける形 でもまた満ちるから大丈夫だよ

    闇の中フリルを揺らすボクたちの輝く時間が来たね 月だよ

    瞬きを禁じ闇夜に開花するスカート今がいちばんきれい

      月の下駆け乱れ舞う君の背ではたりと揺れるひかりのベール

    ミラーミラー一番かわいいボクを信じるための色今日はどれかな

    歩きたい方へと歩く美しくフリルが揺れるこの道が好き

    繊細なレースみたいですてきでしょボクは花守うつくしい棘

    きらきらの星をあげるよあるじさんボクらを照らす真っ白な星

    髪が乱れたってリボンが解けたってあなたへと向くポインテッドトゥ(歌会風味)

    強さってそういうのでしょこの脚でここに立ったの きっとあなたも

    泣く時はそばで泣いてねお人形みたいにぎゅっと寄り添うからね

    甘えるの上手なボクは甘えさせ上手になるよ大丈夫だよ

    浴室の鏡にかわいいこを映す抱きしめたくなるボクでいてよね

    お手入れは涙によく効くおまじないボク(きみ)らしくある明日のために

    覚えてて あんなに甘いはちみつも毒になることボクがいること(私の刀と新年へ23)

    偏愛は上等でしょうときめきの止まない今日を何度もあげる(挂燈詠歌)
    五虎退柔らかい髪を押さえる手に虎がじゃれつく 君らの背も測ろうか(「背比べ」)

    僕の名を呼んでくださいあるじさま 僕たちがそばで一緒になきます(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    本分を果たせずに個を失って綺麗なだけのひかりとなった
    僕になり涙の種を眠らせて誰かであれなかったひかりよ

    目を擦るしぐさも板につく月日のこりの日々のはじまりの朝

    母と呼ぶべきものでしょう火の熱に抱かれ十二のまぶたがとじる(#刀剣短歌まどろみ企画)

    一歩また一歩歩いていきましょう 同じところで立ち止まりつつ(審神者就任一周年)

    とまらないとめなくていい震えごと僕です 蹴った地面はかたい
    言い訳にしません泣いてしまっても頬を撫でてくいくさばの風
    あたたかな手に握らせるねがいごとひとつ抱えて生きてゆきます
    やわらかにかくした牙をこわごわとあらわにすれば響く し の音

    泣き虫は弱虫じゃない泣きながら歩き続ける使命を飼えば(挂燈詠歌)

    ひとつずつ追い越すしるべ おとなではまだないことのまばゆい未完(挂燈詠歌)

    連作(挂燈詠歌)
    「ふりしきる雨音にのせ閃かすことばのいたくやさしいしらべ」
    ふと凪いだこころをゆらさないようにそうっと口に出したお願い
    りりしさはときどき孤独、にしたくない 寄り添うかたちをした僕です
    しりとりのえんえん続く庭にあるおかえりというあわいやくそく
    きら星はひとつでも綺羅 虎の背にひかる勝ち星のせかえります
    るり色にひたひた息を染めてゆき光と夜のあいのこになる
    あしおとをとろめかすよう忍ばせる爪ごと僕をうけいれる闇
    まっしろは踏み入ることを責めているようで涙でよごしてしまう
    おちるとき怖さをほんの少しだけ連れてまつ毛をはなれるしずく
    とうめいにひとみの上にはりつめた膜を破ってその外をしる
    にこぐさの(足りないことが当たりまえとは思えない)ゆめみるみどり
    のど奥にわだかまっている咆哮に満たない祈りよりいたいもの
    せーの、の合図もなしにもう一度来ることだけが確かな別れ
    ひざこぞう擦りむくよりも唇がふるえてしまうことがあります
    らくがきの端に日付を書き添えるかたちの指で撫でてください
    めざましく見ちがえるには持ってゆくことのできないおそれでしょうか
    かじかんだ手もともくるわない距離にいさせてあげるこわがりのもと
    すくと立つようにまぶたは持ちあがりこわいのは目を逸らさないから
    これは雨、紗をぬぐように目の前が晴れゆく前の祝福ですよ
    とこしえでないから赤は目にささり霜焼ける手をほどくのでしょう
    ばつ印ばかりの日々をぬりかえる初雪のふるように白星
    のこさずにいただきましょうお皿からこぼれるような嘘も未練も
    いくたびも転ぶ 上手に起きあがるすべを覚えるほど何度でも
    たねまきは道しるべですうしろより下より前を見すえるための
    くもりなく冴えた光もそのかげもひとしく月夜ひとしく戦地
    やわらかな毛布の外を駆けるときああこのための僕だと思う
    ささめいてきこえるくらいそばにいる張り裂く喉も持たない獣
    しんじつはひとりきりには寒すぎる冬のしじまのように抱える
    いてつけばこころもにぶくなるでしょうあたたかくして僕は行きます
    したためる手紙のふちに水滴は句点のようにおさまっている
    らくらくと流せるものでない涙ならばよかったなんて言わない
    べつべつに空を見ているひまはなく使いどころを定めて帰る
    べっこうに僕を透かして見るようにあなたをこの世すべてにさがす

    薬研藤四郎手を合わすならこちらだろ神頼みなら適任がここにいるぜ

    目に見えるばかりではない傷だって付けないためのこの身と思う

      さいごには突き放すのね 地獄でもあなたは連れて行けと言うのに

    彼岸花まだあちらへは行かせないでもその時は伴させてくれ

    星になるらしいな 俺もあの中にいたら大将、見つけてくれるか

    かっさいて浴びる血も土煙も風も俺を成すだろう 先頭に立つ

    どうかどうか止めてくれるな守るため為すことを間違えはしないさ

    大将を俺が守れた証ならいいもんだろう、血を流しても

    傷ひとつあんたに負わせないための俺だと信じ使ってくれや

    鐘の音の沈む腑がある明日からは何を抱えてゆくか知れない(挂燈詠歌)
    包丁藤四郎舌の上転がすうちに淋しさもぜんぶ溶かしてしまえ体温(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)
    大包平名刀を玉を百花を並べ立てなおも輝く俺の名を呼べ

    連作 無題
    しかと見よ! 見上げる者のない空で気高き星が放った光
    遠すぎる輝きとして星座からあぶれた星を君は愛した
    振り返る うたがいもなく俺を呼ぶ声に応えるための一拍
    見つめくる視線を受ける全身が何不足なく大包平だ
    鶯丸連作 無題
    幻想と呼ぶも他人だ梅の枝に好んでとまることを迷うな
    なきごえが移り変わってしまっても俺の知らない歌を聞きたい
    おれたちは春告げる声でとけていく雪の方かもしれんが、泣くな

    連作 無題
    春空のひかりまみれを寿いだそこには俺はいなかったから
    未練かな眩しさに目の慣れたままただ在ることで俺を成すこと
    木漏れ日に触れれば透ける指先の赤が今でも目に新しい
    沈丁花巡り来る季節を数え俺は確かに愛されている
    全霊の忠義さ旅の空の下きみとのことを考えていた

    まだ見えてないものがあるならきみが教えてくれと言えばどうする

    目眩く春の息吹に礼賛を 俺もまたその一部であれば

    連作 無題
    星々を目に入れるとき立ち位置がわからなくなる俺も光だ
    遠い遠い距離を来たんだ今きみの眼に届くその赤色は
    振り返る さびしいほどに長々と続いた道をこれからも行く
    春色のまぶしさの隣にあって初音のごとくふるえるこころ
    明石国行べたついた風を纏わせ待ち人はここではないと思う水際

    連作「息が足りない」(#きみのこえでうたって)
    噎せ返る夏は巨星が燃え尽きる一歩手前のような煌めき
    陽炎を消えるまで目で追う あれが消えてしまうのは幻だから
    呼び声を高く遠くに響かせる前の諦念 喉が塞がる
    こっちまで来いと言うのを躊躇って片手は手持ち無沙汰に揺れる
    甘い水ばかり揃えてしまうこと笑われたってかまわないのに
    苦い水飲み干すように声になる前の言葉を反芻してる

    蛍丸伸びないというのに柱に刻む丈 蛍の分も足しておいてよ(「背比べ」)
    愛染国俊体温が上がる瞬間 ひとつしか知らない道へ全身で向く

    降り注ぐひかり歌声ありあまる宿命浴びる小さき総身

    大ジャンプ 一番前でともしびを掲げるには背伸びじゃ足りない(挂燈詠歌)
    千子村正名実をわかてはしないなまくらをおそれよ忌めよわれは村正

    この衣脱いだところで期待したものは果たしてあるのでショウか

    姿見に映す抜き身のワタシさえありのままとも知れないでショウ

    ミュ万の華うつす鏡によせて
    輪郭をあばいてゆけば明らかになるのは二人称のやさしさ
    われてしまえこわれてしまえ身震いに傷ついたとてそれはわたくし
    境目を持つ困難に踏み出だすという不遜に成り立つ強さ
    満ちるため欠けていく月 ともにあるための別れもあるということ
    蜻蛉切ミュ万の華うつす鏡によせて
    わたくしが行くのはこちら今一度名乗りを上げる声がかさなる

    物吉貞宗お裾分けですって差し出された四つ葉分けても余る幸をあなたに

    コーヒーに砂糖とミルクを足すようにボクにはボクの正しさがある

    幸運は誰かの不運知っていますそれでもボクはあなたの神様

    あと何度望みを言ってくれますか あと何度叶えられるでしょうか

    呪いも呪いのうちと知りながらミルクのように加える甘さ(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    翻るつばめをはなしがいできるほどの小部屋をボクにください(挂燈詠歌)

    太鼓鐘貞宗はためかす羽根の色まで焼き付けろ 独壇場で白く輝く

    煌めきの在り処はここだ戦場を駆けろ世界を彩って行け(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    亀甲貞宗指切りをしよう何度も この愛が愛に見えなくなったなら、また(#この愛が愛に見えなくなったなら)

    訳もなく涙が出たら愛のない傷があること気付いてあげて(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    秘密とは甘美な響ききみだけがそっと暴いてくれたらもっと

    かたくかたく赤い糸よりも確かに結ばれている証が欲しい

    きずなって呼んでいいかい?拘束は互いが互いをしばるものだよ

    密と蜜 通じるものがあるようで秘すればこその僕でありたい

    期待してしまうよきみのゆびさきが包みを剥がす正しい手つき

    散る花も一興だろう乱暴に暴きはしないから求めてる

    燭台切光忠  眼帯を外すとき触れるえりあしにあと誰が触れられるだろうか(#夏の男士のえりあし短歌)

    目も口も手足もなかったあの頃に彼と見た月 何を願おう

    砂浜に裸足の判を押すときに欠ける鎧を見ないでほしい

    紅を引くきみから少し目を逸らす格好良さはつくるものだね

    焦がしても卵は甘く「またいつか」の約束も信じたかった(いちごつみ)

    大般若長光ミュ花影ゆれる砥水によせて
    美しいものはただ美しいだけわれらは人の手に抱かれて

    そのままでいいよ装う顔色もすべてをありのまま みせてみな

    小竜景光ありふれた旅立ちとする 帰るべききみを失うその翌朝も

    ミュ花影ゆれる砥水によせて
    ひとひらを掬う掌の行方をただ仰ぐには鋭すぎた刃
    泣いているのはあなたの絵 耳奥で瞼の裏で揺れる俺たち
    花々はあなたがいてもいなくても咲き誇るって言ってやらない
    それでも それでもうつくしいものを愛でるてのひらだろう、あなたの

    どこへでも行けるから行くただいまを言うため旅に出るアイロニー

    だから心にのこすのだ あなたへの道標を消す芒ひとむら(たまはがね歌会)

    江雪左文字
    連作(#雪と左文字)
    戦場を覆い隠してゆく雪よ確かにここで血は流された
    体温が奪われていく死ぬときはこうして雪に包まれていく
    肩の雪払い落して血に染まる袈裟を見たくはなくて寄り道
    殺すためだけに生まれたわけじゃないだろう 雪よ 誰かを救え

    意味を問う 答えは与えられている刀に何を望むのですか

    敵を斬るたびに己も傷ついてなお刃を振るうわたくしは武器
    宗三左文字今ならば知っていますよ 初めから籠の扉は開いていたこと

    いい趣味をしていますよね、あなた 次は歌でも歌いましょうか

    丁寧にていねいにささくれを剥く仕草で外を見ない振りする(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    連作「置き手紙」(#わたしの歌あなたの歌)
    ひらくのを少しためらう窓際のましろい翅の蝶なす手紙
    はばたきのように紙片は風に舞い飛んでいってもかまわないのに
    丁寧に荷物を選ぶゆびさきでおまえは置いていかれたの そう
    はためきがいやいやをする子のようで笑うはずみで翅を摘まんだ
    おとなびた右肩上がり気味の字を露わにすれば展翅の心地
    さりげなく読み上げる一人称の口に馴染んだ響きの遠さ

    小夜左文字星に願うことでもないから懐で温めている本当の願い

    月影は優しい顔をして闇と光の境界線を引いてる

    影だけの背丈が伸びてく夕間暮れ 遠くで赤子の泣き声がする

    見せてあげたい人がいる帰り道咲いてた花も一番星も

    余所見、いえ、見渡すことを許されてうねりつつある一本の道(挂燈詠歌)

    加州清光誰のため、なんて問わずに頭から爪の先まで可愛がってね
      剥げた爪乱れた髪も可愛いと言うひとがいる君を愛して

      何度でも確かめていい手入れでは埋まらぬ心を持ったっていい(挂燈詠歌)
    もう一度可愛いと褒めて 何度でも確かめていいってあんたが言った(挂燈詠歌)

    ささやかな願いもためらう口だからたまにアイスで甘やかしてね(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    今だけは甘さにやられたふりをして有り得ぬ話 もしも、なんて(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    長引いた話は所詮戯言で手の中で溶けるレディーボーデン(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

      足首の痒みを知った君のため夕暮れ蚊取り線香をたく(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

      愛されてください一番目は譲れないけど私がいなくなっても(挂燈詠歌)

      可愛い?とあなたが聞く時その胸で可愛いと笑う記憶になりたい(挂燈詠歌)

      いつか置いていく叶わぬ願いだとしても願ってくれたあなたを

    この愛が愛に見えなくなったならまた見えるまで愛してと乞う(#この愛が愛に見えなくなったなら)

    配られた手札で勝負するほかはないんだ 俺でよかったでしょう(「配られた手札」)

      千年の先も一緒に練習をしていた可愛いくしゃみをしてね(#刀剣男士にうたを贈ろう)

    騒がしくなったね たまにふた(ふ)りの頃が恋しくなったら呼んでね(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    爪色の違いを褒めてくれるときいちばん可愛く笑う色だよ(#加州の好きな赤色短歌、挂燈詠歌)

    小さな手だった初めて引いた手はこの手を守り通すと決めた(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    ひかりさえ身に付けてゆけ靴音を鳴らすすべてが俺のランウェイ(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    身の内に浸る赤色指先に透けるほど濃く恋う愛の色

    からだごと心を満たし瞳から溢れるほどの愛をください

    愛してるあいしてるって呟いて大切なものたしかめていく

    あの場所であんたが待っててくれるから帰るよ胸は踊らせておけ

    本日も可愛い俺です高らかにかかと鳴らして戦場を征く

    あるじって呼ぶとき胸の底の底ひかりが跳ねてきらきら降るの(ネットプリント企画「ラブレター」)

    花びらはこれからも舞うとびきりのとくべつでいるから大丈夫(審神者就任一周年、挂燈詠歌)

    あなたへと続く昨日を守るためかけるこの身に愛を満たした

    連作「186807」
    花を見て俺は花瓶の方だって思ってたまだ置いてくなって
    たとえばさぎゅっと瞑ってその赤を俺の色って思ってよ愛
    見ていてね、見てるよねって振り向きはしないけどはためかせるコート
    希望って楽じゃないけど手を伸ばし続けることが愛でつまりは
    まっすぐに生きろ生きたよあのときのお前に言えることなどないよ
    語るのは(黙るのも)俺 ほんとうはやわいはがねの心ごころを
    強さならもう教わった足跡を踏み荒らさせてやらないための
    目の前で花瓶は割れて少しだけ足りない欠片たちが継がれる
    俺ね、まだ考えてるよ 赤色がまぶたの裏に映る時とか

    勝っただけ赤く染まって斬っただけ星が降るなら上等だった

    する方もきっとまだ怖かったこと障子越しには気付けなかった(私の刀と新年へ23、挂燈詠歌)

    まだやわい心を隠したかったの はじめましての夏の笑顔は(挂燈詠歌)

    ひとつではないからふたつ揃ったらできることだけ何度もしよう(挂燈詠歌)

    大和守安定皺の手がグラスの水を取り落とす「ただいま」をあと何度聞けるか

    許されるべくもない数積み上げた骸 どうして僕を愛せる

    かみさまのかみさまがいるなら欠けたからだを満たす魂もある(#かみさまのかみさまがいるなら)

    心臓は口ほどに物を言うらしいけど僕のここに心はないよ(#心臓は口ほどに物を言うらしい)

    もう少し待ってみようかこの毒も水に晒せば抜けるらしいし(「彼岸花」)

    連作 無題
      君だけの答えがあってそのための旅だ 必ず帰っておいで
      朝顔の実を拾ったよ 君はまだ私のもとですることがある
      (君が君を愛するための儀式なら)今度は私が言うね おかえり
      (本当は君が解いた髪紐ごと愛するこころだってあるけど)
    向日葵は枯れてしまってでも僕はあなたのために強くなるから
    その時はあなたが笑う時だから幕引きを待つ でもそれまでは
    僕ずっと甘えていたよね 思い出は遠くに僕は帰るよ、ただいま

    歌仙兼定野の花よ 許せ 鋏も花瓶もなくいたずらに首を斬るだけの僕を

    忘れるなとは言わないさ 花あれば思い出される僕であったから

    生け花の枝葉を千切る同じ手で枝分かれした歴史(?)を斬る(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    配られた手札は強い方がいい 僕を選んで負けるんじゃない(「配られた手札」)

    ひと息でいい、ひと息が足りない 今こそうたを詠むときだろう(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ

    散るさまも正しく愛せ過ちを過ちと知る強さをもって(#特命調査報告歌会肆ノ参)
    この僕に歌を求めたのはきみだ僕には僕のやさしさがある(#特命調査報告歌会肆ノ参)

    和泉守兼定一つ、彼の人を見殺しにすること 浅葱の袖が触れる距離でも

    手が足りない訳じゃなかった手を出さなかった正しいことをしたんだ(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    陸奥守吉行愛しさは暮れるを惜しむことでなくあしたのために見送れること(#ムツノタンカ)

    配られた手札だけでのう場札もよう使うて、賭けはよう狙って(「配られた手札」)

    朝焼けを恐れんでただ待つための言い訳として使うてもえい(挂燈詠歌)

    山姥切国広地上には落ちてくるなと早口でしろがねの箒星を見送る

    剣戟もよく似た瞳も何もかもにせものじゃない にせものじゃない

      まだ君を選ばなかったと嘆くかい舞台に上がる準備はいいかい

      どの花も綺麗だなんて言うものか 私の庭の一輪を愛す

      期待しているよあなたはあなたとして視界を閉ざす前髪を梳く

    配られた手札は山に戻せない 俺を選んだあんたが悪い(「配られた手札」)

    何にでも染まれる白に包まれて胸に抱く春 蕾は眠る(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    不確かなものを両手に抱えても煌々と道標はあって

    違うって口先だけで言うたびにこぼれる水が心を濡らす(小豆さんといちごつみ)

    山伏国広揺るがないものでありたい不確かなものの手を取り笑えるほどの

    振り返る先の笑顔を数に入れよ 口を開けても笑えぬならば(挂燈詠歌)

    堀川国広連作 無題
    真っ白なシーツを干しただんだらの空くらやみに慣れた目が眩む
    「あの人のいない世界を生きている」なんて全部がおかしいんだ
    身の内の海の記憶が両目から溢れてしまうこともあります
    波音が下げる心拍 心臓はここにあることを知らせてる
    一通分ほどの確かさ でも僕はもっと確かな記憶があるよ
    四文字で僕の名を呼ぶ声にだけふるえるもう一つの肺がある
    四文字の名を呼ぶときに吸う息がある今日も僕は生きてはたらく

    まぶしさにわらってしまう瞳孔の開いた僕じゃ向き合えなくて(堀川→山伏)

    なめらかに暗闇に紛れる僕は不確かなもの 名前を呼んで

    連作「シンデレラ」
    見つけてと叫んでるかもしれないし原話を目指す旅はまだまだ(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    書き残す人がなければシンデレラ君の瞳の色さえ不詳(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    正しさをその確かさを求めてるあなたに語る諸説その一(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    したたかに生きてください いくつもの異本のなかに語られる人(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    蜂須賀虎徹配られた手札が何であれきっと答えはあるよ よく考えて(「配られた手札」)

    空が青いように正しく偽りを偽りと呼ぶ口の鋭さ(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    どうかその目を閉じないで この俺が握り返した手は美しい(#刀剣短歌交換デザイン展示会)

    連作 無題
    これまでが身のうちだから剥がれない鎧を求められずとも着る
    強さとは強くなくてはならないと信じるものに生える手足だ
    いくつもの目に囲まれていなくても踏み外してはならない誇り
    おそれてはならない夜に導とし歩み続けるための俺だよ

    欠けている証ではない 俺もまた完成された一つのピース

    ふしぎなく振る舞い方は知っていて俺があなたの虎徹をつくる(挂燈詠歌)

    悔いてなどいないよ今踏みしめる地にかつては立つ足さえなかったし(挂燈詠歌)

    髪にでも挿されたかった花を生け花器はさぞ美しかったろう(挂燈詠歌)

    浦島虎徹楽し気にお伽噺を聞いているあなたは正しく歳を重ねる(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    長曾祢虎徹誇れ 間違いなく俺が付けた足跡を、誠の道を、強さを(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    髭切いくつもの名前があってでも皆一つ選んできみを呼ぶんだね(「彼岸花」)

    だいじょうぶきみを置いてはいかないよ足を止めてはやれないけれど

    連作 無題
    切り分ける真似はしまいと選びとる言葉はいつも少し不自由
    どうかその声で呼んでねいつだって僕もおんなじ声で呼ぶから
    糸で吊るように背筋の伸びた僕だけがほんとさ おまえが見てる

    連作「かき氷」
    宝刀も夏の休みがいるからさ氷掻くのはおまえに譲る(刀剣短歌強火合宿2023)
    匙を埋めたらかんたんに雪崩れてくあの頂にかつていた人(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    結局はどろどろの赤だけ残る水を飲み干す それはぷらごみ(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    ぶるーはわいの舌を見せ合う無邪気さでおまえはずっといてよね いいこ(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    きみの名はあるじ おとうと なかまたち 僕が呼んだら頷いてよね(挂燈詠歌)

    膝丸心臓は口ほどに物を言うらしい 口さえ昨日得たばかりなのに(#心臓は口ほどに物を言うらしい)

    ファインダー越しの世界は嘘めいて切り取られないうすみどり色

    立ち止まるための足ではないことを寄り添う影の形に誓う
    大俱利伽羅いくらでも手入れで直る肉体で守られた内側に触れるな(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    独りなら訳ない傷の手入れ後に残る遺失を恐れるこころ(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    連作 無題
    雪原を荒らす作法は覚えないままで迂回路ばかりをとった
    さびしさで光る一番星みたく笑うな 俺の触れられぬ傷
    傘はないままでよかった俺ひとり肩を濡らして事足りるなら
    やわらかな柵として優しさと呼べば後には引けない温度

    けものなら寄り添い眠る長い夜を明かす気高きひとりの温度

    生きるため立つ場所である戦場に渇いた喉を引き剥がす声

    捻じ伏せて飼いならされる嵐などありはしないと腕を振り抜く

    答えではない場所を知るたび近くなるはずだった(花野を汚す)

    うろくずをすべる春風さえ知らぬ俺も持ち得る大それたもの(#挂燈詠歌)

    連作「つめたい光」(#きみのこえでうたって)
    行き着いてなどいないことまだ行けることを確かにしたい足取り
    日輪のとうに沈んだ空からも見下ろされてるよう 落とす影
    月光と名付けられてるそれはもうお前のもので熱を持たない
    空鏡 火照りが冷めてゆくまでを互いに映す揃いの眼
    納刀ののち振り返る戦場に心を置いて帰りはしない
    とぷとぷと更けゆくこれは帰り道だと思い出させるための夜

    へし切長谷部  契約の八日目これで私達離れられない身になりました(#刀剣短歌強火合宿2022夏)
    八日目を待たずともいい自らの意志であなたに仕えますから(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    戯れにあなたが弾いたノクターン寝ることにはまだ慣れない身体(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    連作 無題
    かけがえのない執着を愛と呼び育てた俺を愛してください
    細やかなそれは例えばささくれを先に見つけるまなざしのこと
    忠誠を注いで注いで注いで溢れかえるのを待っていました
    歓声を上げて心のまま動け!俺の手足に俺の心臓
    文字通り全身をもって尽くしますくろいはがねは人になります
      時々は君のきれいな瘡蓋を剥がしみにくい傷を見たいよ
      でも君は上がる人だね え?何って君が血を見るときの口角

    約束をください主 須らく折れずに帰るための願いを

    忘れないための呪いなどかけてあなたはおいていくのでしょうね(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    ミュ花影ゆれる砥水によせて
    名は証 拠る処なくまどわないため刻まれたつまりは愛の

    不動行光瓶底はレンズ すがめた目で覗き露光をそっとあの日に合わす

    獅子王(寝てる?)(うん)(実は眠るの下手なんだ)(知ってる)(きみは?)(おれもまだ下手)(#刀剣短歌まどろみ企画)

    土にもう根っこが残っていなくても土ごと次の花を愛すよ

    集めては散らす花びらだけを踏み痛みを知らぬ足裏であれ

    こんなにも愛しい庭だ 土も日も風も全てが花の名残だ(挂燈詠歌)

    色変えぬ松に思えた日もあった花の思い出話をしよう

    小烏丸  襟足を掻き上げて結う手つきさえ僕らのものとはどこか違うね(#夏の男士のえりあし短歌)

    父として見守ろうぞと新しく生まれた柱の印を撫でる(「背比べ」)

    まなざしを鏡に盾にするといい振り向くことは弱さではない

    抜丸揚羽蝶 いつかは消える灯をそれでも見守るのが役目です

    侮っていただいて構いませんよ蝶を捕えるのはお得意ですか?

    禿ゆえお許しいただきたい慈悲を請われても聞き入れられません

    我らとていずれは終わる物語 物語とはそういうものです

    安らかに生きてください 考証の光の届かない深海に(小豆さんといちごつみ)
    同田貫正国  戦後の君はまぶしいみじかめのえりあしに乗った汗ひとしずく(#夏の男士のえりあし短歌)

    これしきの傷で帰るな手入れでは消えない傷さえ俺であるのに(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    逸話にもならないとして手を取った理由だけなら抱えていける(挂燈詠歌)

    端くれの歴史だろうがつわもののすべてが血肉すべてが俺だ(挂燈詠歌)

    連作「さらわれて、春」(#わたしの歌あなたの歌)
    この空と繋がってないどこかへも北上してく桜前線
    もう何を隠したのかもわからない雪を押しやり平穏が来る
    賞賛も役目も同じ一言で事足りるのに声が止まない
    不要だがあっちゃいけない訳じゃないものを抱えたければそうしろ
    ひとときを分け合った日の気の抜ける温みを握りこんで餞
    忘れ去るように衣を脱ぐように風に言葉がさらわれて、春

    鶴丸国永手の中の黒い塊 幾何のイフが俺を生かすのだろう

      朝焼けを背負って君は旅立った赤のフィルター一枚かけて
      より高く飛べる姿で揚々と帰っておいでここは君の巣
    一つ目の驚きは俺さ、見違えただろう?鎖がぢゃらりと笑う
    きみの行く先は明るい 吉兆の俺を手放すわけはないだろ

    正しさに苦しんでもいい真っ白な道をただ行け 鶴は俺ひとり

    俺に、きみに、誉桜が舞う今日だ 後は死んでもめでたいだろう(#後は死んでもめでたいだろう)
    人の身を得てこそできることばかり 後は死んでもめでたいだろう(#後は死んでもめでたいだろう)

    幼子の手を引くような優しさで俺を見つけてくれやしないか(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    連作 無題
    舞うほどに散らばるひかり目映さに笑ってしまうくらいがいいさ
    一声ではっと眦ひらかせる きみを揺るがすものでありたい
    思い切り羽を広げて確かめる いつか飛び立ついきものである
    きみの世に幸多くあれ常しえに生を繋いでいくものとして

    連作「挑む」(刀剣短歌強火運動会2023秋)
    挑まれること幾百の日々にあり受けてばかりじゃ能なしだろう
    命でも懸けてやろうか今にでも奪えるものを無駄にはしない
    満足はできない遠い憧れのような飢えこそ生命だろう
    今一度向き合う抜けるような天 挑むからには届いてみせる

    手放したところで萎む定めならしかと握った風船の紐(私の刀と新年へ23)

    終わりまでよく味わって飴玉のように砕いてしまえない日々(私の刀と新年へ23)

    かすみ草何に飢えても至純たる表向きさえうつくしければ(私の刀と新年へ23)
    ぽとつたた 白に染め抜く戦場を食いやぶるごと一点の赤(私の刀と新年へ23)

      わたあめのわた、だよ 針が潜るたび顔を顰める必要はない (私の刀と新年へ23)

    寒い夜のことだったからまた春に目覚めるものと思っていたよ(私の刀と新年へ23)
      きみだけのものになれないまま生きる僕のためには泣いてくれるな(私の刀と新年へ23)
      老いてゆく体がひとつ この庭に心をひとつ置いてゆくため(私の刀と新年へ23)
      栗鼠の冬備えのように思い出と言葉を埋めておくから探せ(私の刀と新年へ23)
      さびしさが追い付けなくて逃げ出してしまうくらいがいいさ 笑って(私の刀と新年へ23)

      三鞭酒の泡を生む傷あなたにも弾ける笑みの源がある(私の刀と新年へ23)

    足跡も影も落とさずいつだって雪に紛れるような去り際(私の刀と新年へ23)

    遡ることの不確か 心さえただの鋼に戻れない俺(私の刀と新年へ23)

    毛布とて今きみを包めないなら意味がないから羽を広げた(私の刀と新年へ23)

    ともすればなくしてしまう一杯のココアで補充可能なこころ(私の刀と新年へ23)

      はんぶんこというおいしさ束の間の平和の君の息継ぎの熱(私の刀と新年へ23)
    つぶさないための強さで引きちぎる饅頭は人の頭の形(私の刀と新年へ23)

    月ほどに遠くにあると思ってた来年をまた迎えるつもり(私の刀と新年へ23)

    何もかもさらってしまう風下にあの地の砂も眠るだろうか(私の刀と新年へ23)

    朽ち果てた後にもきみを照らす夢としてオリオン、凍える夜の(私の刀と新年へ23)

    うつくしいものは足枷きみだけが飛び立つことのない庭の花(私の刀と新年へ23)

    立ち消えたのちの残り香さえ薄れ燭台だけを残すのだろう(私の刀と新年へ23)

    靴下のゴム痕さえも厭わしくきみを真綿に包み込みたい(私の刀と新年へ23)

      おかえりよ 雪だるま色した君のどこへもゆける足で真っ直ぐ(私の刀と新年へ23)

    今はいい きみの知らないメロディーを口遊む日が来ることなんて(私の刀と新年へ23)

    金色の時を琥珀に閉じ込めるように僕らを愛する瞳(私の刀と新年へ23)

    笑みだけを零してほしい拙さで植えた南天、柊、椿(私の刀と新年へ23)

    その口の端を歪めてしまう罪 血染めの白い衣を愛でて(私の刀と新年へ23)

    ここにまだいたいと願う 重さあるものみなすべて引力を持つ(私の刀と新年へ23)

    波立たぬ水平をまず守り抜くこともできない俺じゃあないぜ(私の刀と新年へ23)

    孵りゆく満ち潮めいた予感からきみの手を取る、取るための手だ(私の刀と新年へ23)

    連作 縁
    瞬きの合間に逃げて思い出と名がつくほどに遠ざかるもの
    先々を照らすためふりかえらずにゆくからどうかはなれずにいて
    永くは止まれない身だ辿り着くための旅路であればよかった

    太郎太刀使われぬ時こそ舞うべき桜ですその時のため今を生きます

      きっちりと結い上げられて残された襟足だけが生きているよう(#夏の男士のえりあし短歌)

    春よ来い 人の手にあるものとしてわたくしを呼ぶ声に答える
    安寧を倦むことはない吹き荒ぶ風は再び止むために吹く

    次郎太刀花嵐めでたい酒を今日も明日も昨日を守った記念日として

    春よ来い 杯に花びらひとつ受けて飲み干す夢を見ようよ
    飲み助に理屈は抜きさ踏み出せばここが花道歌舞いていこう

    日本号道にみちびかれて脚は動くかいさらば行けゆけ当て所無くとも

    御手杵連作(#5月25日は御手杵に思いを馳せる日)
    抱え込むあいだは絶えず燻っているから抱いてあやしてしまう
    あの日までお前も夢を見たろうか 花火にだってなれただろうに
    知れないでいい悲しみと寄り添って温い夜闇に羊を放す

    巴形薙刀ものがたり、と呼べば愛しい今ここに在る意味を超え生きている日々(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    約束をくれるか主いつか手を離す日が来ることを忘れて

    毛利藤四郎連作 無題
    恐れないでくださいもしもを斬り捨てて前だけを見て生きていくこと
    僕を追い越した背がまた縮んでも僕はあなたの傍におります
    お話を聞かせてください主さま、いのちの萌える僕らの家で
    今だけの同じ温度を確かめて ネバーランドは「もしも」ですから

    隠し味ほどでいいです約束をください帰路を失わぬため(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    頷いてください一度、眦を下げていられる強さがあると(挂燈詠歌)

    兄として立つとき砂のひとつぶの故郷に飛んでいけないこころ(挂燈詠歌)

    篭手切江空言にしないと誓う夢 いつか止まない雨のような拍手を(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    ミュ江おんすていじによせて
    表裏 光と影 線 わたしたち跨げる足を持っているよね
    みずからを閉じ込める線すら越えて走っていこう光の中へ
    わたしたちなりに語って紡いだら影もくっきり見えるだろうか
      喝采を迎えに行こう今幕が上がる あなたの夢が叶う日

    謙信景光すぽんじの層をかさねるみたいって いちまいぶんのつよさをたして(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    小豆長光すいーつにしたづつみうつたびきみのこころのなかにのこるあしあと(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    日向正宗梅がまた実ること疑わないで瓶のラベルに日付を記す
    振りむけばいびつに並ぶ足跡がそれでも続いていくということ
    迷っても転んでも大丈夫だよ明日の計画書にある祈り

    静形薙刀触れること拒んで爪の伸びた手を笑って取ったことを誇れよ(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    南泉一文字影法師みたいについてきやがっていつか別れるもののはずだろ

    連作「かくしごと」(#わたしの歌あなたの歌)
    転寝の隙間を撫でるてのひらに気付かないふりしてやり過ごす
    囁きのような可憐さふかふかの生地に重さを与える餡の
    うたがいのくだものを割り種明かし うしろめたさの甘美を舐める
    勇ましくありたいばかり後ろ手に隠したいものだけが目に付く
    ばらばらと崩れてしまえない身体だから心を砕くのだろう
    裏表どちらがどちらでもよくて爪を隠せるいきものである

    千代金丸打ち寄せる波として過去ひたひたと零れもせずに満たすたいない(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    ふるさとに皐月頃咲く花の名を歌えるなまだくにの言葉で
    山姥切長義正しさのための戦場行く先を切り開くのが俺でなくとも(#特命調査報告歌会壱ノ参)
    何某か生まれ得た音たらればの世界に背を向け扉を閉じる(#特命調査報告歌会壱ノ参)

    口にしてなるか憎さも憧憬も ただ美しき刀であるだけ

    俺をうつす水鏡めく双眸が海に似ていると誰に言われた

    今ここに俺が在ることの証明 俺の名を呼べ 俺の名を呼ぶな

    連作「とどまらない」
    先刻まで雨だったものが雨樋を流れていく音を聞いている
    二度とない今を正しく見納める 写真に記録されないひかり
    儚くて美しいもの 一滴も溢すまいと張り詰めた水面

    連作「遊び歌」
    知らぬ間に諳んじていた幼気なきみの無邪気な花いちもんめ
    求められあのこはなまえを呼ばれただろうかと足を蹴り上げてみる
    見下ろすと視界を塞ぐ銀の色二等賞ではない俺の色
    見上げればいろいろのほし恒星は青白いほどよく燃えている

    ミュ花影ゆれる砥水によせて
    名乗るたび斬り伏せるたび近付いてどうかその目を信じてほしい

    連作「木枯らし」(刀剣短歌強化運動会2023秋)
    吹き散らす葉の一枚に日々がありもしもじゃ語れなかった話
    葉を落とすから生命だ 仕方ないものを数えてしまわずに征け
    その後は知らない知ろうともしない風下に落ち葉は行き着いて
    試金石だろうかまるで揺るがないものを幹とし木枯らしは吹く

    連作「肖像」
    青という青を重ねる 手つかずの一望千里の海になれない
    輪郭のぼやけた像が相応しいなんて言わせてしまうのだろう
    押し潰すチューブには皆同じ名を与えたのだと掠れた印字
    新しい青をもっとと強請るごとパレットは濁りゆくばかり

    内側をあばくでもなく透けている器をじっと、じっと見られる

    もう意味をなさない今も呼んでいる狂ってしまった時計という名

    口にしてなるかと秘めるものをみな捨てられたなら身軽だろうか

    歓声は袖の役者を求めてか肩を叩いてだろうか上がる

    星月夜 花形を待つ者たちは代役をさえ愛しているよ

    明日の朝違う姿で目覚めても確かに同じ名を呼んでくれ

    ステップの作法も知らず靴底の砂を落として鳴らした踵

    どこまでもおいきと言えば振り向いてしまうおまえは遠浅の海

    砂嵐 振り返されることのない画面の外の手を少し振る

    連作「物語にしずむ」(#わたしの歌あなたの歌)
    浮き沈み川の流れにさらわれることに抗う不確かなもの
    流域は時代とともに変わりゆく歴史に喩えられた大河の
    真実とよく似た顔の説話でも信じていれば怖ろしくない
    またひとつ史実ではなくなる話 次の教科書にはない言葉
    朝には噓吐きとなる記憶から本物というラベルを剥がす
    葬送もないまま別れ埋もれてはいけないものが確かにあった

    豊前江あやふやでいいよ影さえ落とせれば確かなことはたしかにあるよ(東京心覚)

    祢祢切丸
    白山吉光諦めず夢見ることを許します願われてあるわたくしゆえに

    連作「なにがなくとも」(#きみのこえでうたって)
    なだらかな地平よ夢を見る土よいつか願った平穏な日よ
    人がまた紡ぎはじめる物語 時はただでは流れられない
    どれだけの汗が流されたのだろうアスファルトに残らない足跡
    進むため得るものがあり同じだけ何かを捨てる必要もある
    あなたから届く便りのように今削ぎ落される過去を拾った
    よすがには心を一つ いとなみの継ぎ目に忘れ去られたとして

    白線の内にお下がりくださいと愛あればこそ無機質な声

    わたくしはわたくしという役割の願い一つで生まれ得るもの

    南海太郎朝尊魂の重さは二十一ぐらむ さて今、僕らは如何程かね?(#特命調査報告歌会弐ノ参)
    知ることは生き延びること死してなお残る命に手を伸ばすこと(#特命調査報告歌会弐ノ参)
    屍となっても使われるための形だ 時が来たなら僕も(#特命調査報告歌会弐ノ参)

    笑うかい刀が本を読むなんて 読み物もまた僕の一部だ(#刀剣短歌強火合宿2022秋)
    肥前忠広いつか来るその時きっと俺のためには上がらない線香の煙(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    魂の重さは二十一ぐらむ 軽さも知らず屍を食う(#特命調査報告歌会弐ノ参)
    刃が食らう命の柔さよりずっと確かに感触噛み締める歯(#特命調査報告歌会弐ノ参)
    足跡は掻き消え誰の相槌を得られなくても俺は刀だ(#特命調査報告歌会弐ノ参)

    許せずに鳴くんじゃねえよ染み付いた血の匂いこそ産土だった(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    連作 無題
    今しがた肉を詰め込んだ喉奥に渇き食っても食っても食っても
    内側は案外もろい 突き刺さる小骨は噛み砕いたはずだった
    潰しては握りこんでた未練まだ真冬の海に浸る足首
    食うために殺すのならば食うために生きるのならば 覚悟はしちゅう
    その次にあるんだろうよ新しい皮膚も功もおれもお前も
    おれという衣の裏っ側にある漂泊不可の洗濯表示
    染み付いた鉄の匂いが掻き消えるからって訳じゃねえよ 朝飯

    北谷菜切連作 無題
    塩水で洗い流してしまうには錆びつくことがこわい思い出
    伴奏においしい音を 波音がきこえなくても口遊むうた
    ころすのも生かすのも同じ手だよって言うなら生かすほうがいいなあ
    すこしだけ菜切りになれる夕 いつも命のそばにあるものとして

    桑名江摘蕾のあとの隙間を寂しがらなくていいから忘れないでね(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    ミュ東京心覚によせて
    最果てに雨よふれふれこの地にもふたたび芽吹く命は廻る

    水心子正秀君の名を正しく呼んで八文字に込められた物語を守る(#特命調査報告歌会参ノ参)
    落日は明日のはじまり あけぼのの色した君と拓く道行き(#特命調査報告歌会参ノ参)

    ミュ東京心覚によせて
    届かない光 呼ばれることのない名前 見えない月の裏側

    源清麿同胞(はらから)よ僕らを分かつ名を負って君は君だけの道をいきなよ(#特命調査報告歌会参ノ参)
    その道が正しさと呼ばれますように 肩を並べた優しい君へ(#特命調査報告歌会参ノ参)

    ミュ東京心覚によせて
    やさしさを知っていること誰ひとりきみに代われはしないとしても

    ひとりでも凛と立ち進もうとする君の隣にある誇らしさ

    夕暮れは明るい明日を連れてくる希望の色をしてるとわらう

    だってそのために手は抜けないからさ夜を越えた僕たちは強いよ

    松井江連作 無題
    僕の内側の一等美しい色を疾く疾く心臓が急く
    拍動が五月蠅くてまだ止まれない増えゆく赤い足跡の上
    神様を信じている目きみたちの救世主ではなくてごめんね
    祈る真似事をしてみると成程、合わされた血管の蠢き

    冷めてゆく火照りを再び戻らせる爪の隙間にこびりつく赤(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    ミュ歌合によせて
    結ばれたかたちをたしかめるようにあるいはこわすように宿る火
    祈られた ひかりは器に満ち満ちて焼かれるような産声を今
      これさえもよすがであるとくるしみを抱くかいなにうたを、うたを
      うまれもつ病は重く それでもきみを迎える日を祝ううた
    ひさかたの光ちりちりなつかしく望まれて立つ地の青いこと
    我もまた自ら紡ぎ紡がれるひとひらとしてわらいこぼれる

    山鳥毛鳥たちが星を標に飛ぶように上だけを見てお行きなさい (#刀剣短歌強火合宿2023春)

    古今伝授の太刀隠してし道とぞ見つつとぶらひき君と心をともにせむとて(古今・踏みわけて)(#特命調査報告歌会肆ノ参)
    吹く先を迷いながらも狂い咲く花を揺さぶるわたくしは風(#特命調査報告歌会肆ノ参)

    地蔵行平そこでしか生きられぬ花 根が千切れても水をやり愛したかった(#特命調査報告歌会肆ノ参)
    離された手の冷めてゆくのを惜しむこともできない道を選んだ(#特命調査報告歌会肆ノ参)

    祈りとは映し鏡か 望まれた姿を求め細める眼(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    務めとはただ果たすもの見返りを求めないこと祈るということ

    治金丸輪郭がぼやけて消える夢を見て目覚める朝の海は穏やか(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    ふるさとと同じ月だな花開く場所はここだと決めているのに
    日光一文字
    太閤左文字
    五月雨江雲急ぐはつ夏の空うつくしくみなを見下ろす旅人として(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    ミュ東京心覚によせて
    うつくしいまなざしを知るためのうた来年もまた山吹は咲く

    うちなびく春の雨ふる我が恋ふる歌にあふるる心のなかに

    連作 無題
    忘れない忘れたくない忘れてはいけない 種はもう内にある
    うたをよむ たたかうための身体にもわたくしだけの瞳を持てば
    謳歌せずにはいられない口も手もこころをのこしつなぎ廻らす
    いとしさはそこここにある幾千の言の葉としてこぼしたしずく
    ひとりごつことばもうたにしませんかぬくもりはまた還るのでしょう
    うたいましょう 千年のちもうすべにのわらったことを憶えています

    連作 無題(村雲江の章を参照)
    花が散り季節が移るその午後の瞳をいかに書きとめましょう
    結び目をかたく締めれば息継ぎを忘れてしまう一瞬の黙
    楽しみな予定ひとつを抱く胸が跳ねれば雲に届きそうです
    照り続く陽を遮って雲はゆき話したいことばかりあります
    やわくあれ 心に触れるときでさえこの指は刃の延長ですか
    滴りで花野を汚すことはなく触れぬものを詠むも一興
    ふたりなら少し確かになるはずのあなたの影はひどく揺らいで
    持ち寄った季語を広げて見せるときひときわ美しき控えめな笑み

    連作「あいまいな夜」(#わたしの歌あなたの歌)
    心から遠くに口があるような夜には体すべてを溶かす
    すこしだけ特別になる踏切を跨いだうしろめたさと散歩
    闇は闇 光る刃で切り裂けばどこかへ逃げてしまううたたち
    曖昧を漂っている言葉とは切れ目を示す刃物にも似て
    隠れ鬼ならば負けなしだったはずあなたは鬼でないので帰る
    わんと鳴く 姿かたちが見えずともここにあなたの犬はおります

    大千鳥十文字槍
    泛塵
    一文字則宗決別はきみを自由にするだろう目尻を払う僕の名前は

    居心地の悪い頁じゃなかったが抱かれる手は選ぶよ僕は
    (糸を解き結び直して)愛された僕たちだから託したぞ 呵々
      美しい嘘を優しく否定してあなたがひとり舞うための冬

    よく見やれ儚い指に紡がれてかく華やかに咲く物語

    歪さがまぶしいだろう甘やかな嘘を祈りと呼んでしまえば

    春を待つばかりではない冬もあり菊の季節はうつくしかった

    でも愛を失うことはできないさ置き去るものは何時も綺麗だ

    落ちるまま落とす雫はしめやかに僕の門出を祝う春雨

    (これでいい、これでいいのさ)僕たちは愛にまみれるのに向いている

    村雲江『桃太郎』好きじゃないけどめでたしで終わってほしいと思うよ俺も(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    ミュ東京心覚によせて
    また誰かが線を引く、けどいいよ斬るし跨げる足も生えたし

    咲けよ散れよ うまれたならば愛されて今あのひとのうたにおなりよ

    人知れず眠りに就いた蝶のまた君の言葉にひらかれる翅
    来し方を振り返るときやわらかに雨に打たれる木々の鮮やか

    連作 無題(五月雨江の章を参照)
    散る花をとどめられない両手さえ愛しく見える気がする隣
    人の手に結ばれて今ほどかれる結い目はまるで心の欠片
    約束をやぶりそうなのがこわくて雨に紛れて少しだけ泣く
    雨音に忍ばせる足もばれちゃって謝る言葉ばかりでごめん
    多分もう同じ視界は持てなくてそれでも見たい聞きたい話
    美しい花野を赤く汚せずに立ち尽くしているひとの横顔
    ふたりなら無敵だなんて言えなくて一緒にいたいからいるだけで
    新しい名を教わった色の空 吠え声ふたつ高く響かす

    姫鶴一文字
    福島光忠
    七星剣
    稲葉江果てのない希求 かつては逃げ水と消えた景色をわがものにせん(#刀剣短歌いちごつみチャレンジ)

    笹貫でも君は迎えに来てはくれないのかもしれないね、と光らない身で

    人間無骨連作 無題
    反故紙かラひも解く過去に麗しき手の麗しき理由を知りぬ
    筆舌に尽くせぬ数多だとしても書き留めんと欲した心
    此レの手で記すひと文字ひと文字がいつか触レ得る心をおもう
    走るのは筆か其レともあと一歩及ばなかったあの日の足か
    八丁念仏溶け合って重なり合って紡がれる物語とは流体である
    石田正宗誉れとは誇りとはなおわたくしを律する背骨 名も疵さえも
    実休光忠燃えるって萌えると似てる 失った穴に芽吹いた種もあるかな(小豆さんといちごつみ)
    京極正宗凛として泥濘に立ち紅血の薔薇を蓮弁として降らせる

    白刃が悪魔さえ切り裂いてなおあなたのための高潔な赤

    連作「はつ夏の散る」(#きみのこえでうたって)
    瞬間に結ばれる像 靴底を初めて汚し少し乱れる
    ゆらさないように見つめる乱反射と呼べば益々まぼろしめいて
    プリズムは白い刃の色々を暴くときにも無垢な透明
    散り散りに舞う花びらの深くまで突き刺さる色としてこの赤
    庭で咲く明かり取りから差す陽では足りないほどに鮮やかに照る
    窓辺から外を見ていた花はなくまぶしいばかり夏が始まる

    孫六兼元剪定を よく切れる刃を持つ指は迷ったままで立ち寄る頁

    後家兼光
    火車切
    富田江
    詠み刀知らずノクターンなんて弾けないこの指は刀を握ることしか知らない(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    あの花のようだあなたの正しさはどんと光って余韻を残す(#刀剣短歌強火合宿2022夏)
    瞬きも余所見も禁物今だけの花だとしても見届けること(#刀剣短歌強火合宿2022夏)

    あなたとの縁はかみさまのはかりごと きるときはこの刃をもって(「神無月」)

    名前からして恐ろしいだなんてさ 本当は小心者かもよ(#恐竜と刀剣短歌)

    足下で恐竜は聴いているか 僕たちのままならない足音を(#恐竜と刀剣短歌)

    物語という地層のなか僕ら埋もれて化石にならずに生きて(#恐竜と刀剣短歌)

    人の手で塗られる前の色かもね 前肢が剥げたてぃらのさうるす(#恐竜と刀剣短歌)

    功勲は互いが知っていればいい 記録映画にならない僕ら(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    望むのは平和でしょうか戦世にこそ生まれ落ち名を知らしめて(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    教科書や本には残らない日々になるべく多く栞を挟む(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    遠い過去でもおそらくは未来でもあなたを思い出すプルースト(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    遠すぎる星よりいいと星形の花に願った 「ずっと一緒に」(#刀剣短歌強火合宿2022秋)

    縋られる時はありがたがられたく両手ばかりを何度も洗う(#暁闇刀剣短歌)

    抱き締めたつもりが首を絞めていたのかもしれないおれたちは武器(#黒闇刀剣短歌)

    時にはお前に向かう愛のみで埋まった書架を引き倒したい(#黒闇刀剣短歌)

    赤黒い道だけを来た対岸が花畑にも見えるほどには(#黒闇刀剣短歌)

    本日も何かを悟った顔をして踏み固めている足下 ぬるり(#黒闇刀剣短歌)

    冷えるからおはいりなさいと声がする方へ帰れと背なか押す風(#私の刀と新年へ22 北風)

    鼻の先 耳 手 つま先 鋼にも似た暁に身震い一つ(#私の刀と新年へ22 冬暁)

    竹の子のごと伸びてゆくきみの背を押し戻すかのように重圧(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    あかねさす日の出をのぞむ頬の朱を見ていた何百回目の元旦(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    一年の計とか本当はなくって今日も折れずにあれますように(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    雄叫びが響く年始も変わらない戦うためのかたちの命(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    いつからか期間限定になっても愛と思うよ受け継ぐことを(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    くるくると変わる世相に役割に姿 それでも美しくあれ(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    後味の悪いさるかに合戦であっても守る史実であれば(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    共にゆく旅の途上で祝杯を 愛しいひとかけらの時間に(刀剣乱舞八周年)

    連作 無題
    凸凹の舗装路をゆくその足に合う靴としてここにおります
    靴擦れもすることでしょうさればこそよく馴染むまで履いてください
    さくらさくら この身が解けて消えるときあなたの足を守るはなびら

    ミュ東京心覚によせて
    光っては消えゆくだけの灯もすべて覚えていてね覚えているよ

    (踏みつけたものを数えて立ち止まることのないよう下は向かずに)(#刀剣短歌強火合宿2023春)

    声を上げ誉を上げて僕たちはまるで底から出たがるように (#刀剣短歌強火合宿2023春)

    連作「春の草花」(#刀剣短歌強火合宿2023春)
    愛らしい名前をひとつ教わればまた春がきみ色にまみれる
    花の名をいつの間にやら知っていて春は変わらぬ顔ののどかさ
    炎でも血でもないとは知っている知っているだけのひなげしの海
    コクリコと呼べばこたえるきみといて思い出すのはもう辛くない

    まどろみの日々に栞を挟みこむようにきらめくおまえの刃(#刀剣短歌強火合宿2023春)
    ゆめうつつうつらうつらと移ろえば戻れないあの時の視界も(#刀剣短歌強火合宿2023春)

    お手軽な禁忌 昨日に生きたくて針を進めたアナログ時計(#刀剣短歌強火合宿2023春)
    0と1だけで表せないものを求めるそれが青い鳥かも(#刀剣短歌強火合宿2023春)

    なつかしくおもうらしいよ 羊水の記憶を持たぬまま潜る海(#刀剣短歌水声企画)

    連作「夏祭り」(#刀剣短歌ことのはパレット企画)
    七夕の恋人めいて待ち合わせあちらとこちらの混じり合う日に
    いたむことを知るための胸 弔いの灯りをともすための両腕
    とりどりの命と命じゃないものとすくえなかった金魚が跳ねる
    役不足だろうか僕のすぐ傍で見上げる夜花に何を願うの
    散り際を見守るいつかあなたにもあちらへ渡るその時が来る
    境目は溶けたままただ楽しみはもう少しだけ続く夜祭

    俺ひとり連れ行くこともできないで波打ち際の小さな涙(#刀剣短歌交換デザイン展示会)

    水底にかえれない身で足首を浸してだれの記憶だろうか(#刀剣短歌交換デザイン展示会)

    ひとつきりのくちじゃないから物語る夜幾千のさざ波を聞く(#刀剣短歌交換デザイン展示会)

    火を灯す あなたが帰る場所はここ以外にないと信じたいから(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    あちらへと行けるものかは知らないが迎えてくれる場所ならできた(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    波間へと打ち捨てられた短剣の悲哀を僕らだけが知ってる(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    異形でも愛してくれる人がいたからこうやって足も生えたよ(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    連作「連結」(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    口上も碌に聞かれなかったろうせめてこの場で腹を割ろうか
    俺の知るきみの顔して笑うなよ 人間じみた痛みごと食う
    俺にさえ見せないでいた悔しさをこんな形で覗いてごめん
    語れないすべてをくれよ可能ならきみを食らってしまいたかった

    僕たちに手をくれた人 やわらかいあなたの手には胼胝ができない(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    しわくちゃになってもずっと傷のないやわらかい手のままでいてよね(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    命日もきっと言うけど本当に本気だからね 必ず帰る(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    人間じゃありませんから適切な感想がわかりません先生(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    あの人の心で触れてみる書物 表紙を撫でる手はこわごわと(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    連作「集合」
    人間に近づいていく新しい声を届けるまではもうすぐ(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    あなたには言えない味がして刹那口を噤んだことは内緒ね(刀剣短歌強火合宿2023夏)

    能動であったと記憶しています うまれたこともくらったことも

    大根も信じるものを救うって言うしましてや、(もっと愛して)

    膝小僧つき合わせては響かない金属音を探してたころ

    わたくしをお傍に置いてくれますかあなたの髪に霜がおりても

    エンドⅡ 大団円の直前に袖へと消えたきみにライトを

    月日さえ文字を焼く火だ燃え残る言葉ひとつを抱き締めている(2023ライト歌会)

    血統書付きの吠え声名も持たぬおれにお前が何を語れる

    吐き気 ただ愛され方を知らなくて背中を摩る手が痛かった

    幻でかまわないから見たかった同じ花野をおれだけ汚す

    正しさを信じていいよその手から蒔かれた種が九重に咲く(刀剣乱舞九周年ネプリ)

    方法はひとつではないはずだろう数値化される愛を睨んだ(宝物について)

    感情が乗っていくのがわかるたびブルースもっと軽快に弾く(ワードパレット福豆さん)
    俺になる前に別れたものがあり木屑を散らすアトリエの床(ワードパレット福豆さん)
    戻れなくなるのは怖い繰り返す日々の螺旋に甘やかされて(ワードパレット福豆さん)

    いくすじの支流を束ねゆるされた立ち方だろう 茎を撫でる

    連作「菜の花」(#刀剣短歌強火マラソン2023冬)
    花だけを持ち帰る帰路 戦場のことは土産にできない話
    足取りを重くするのに泥はねのひとつも流せない菜種梅雨

    連作「遠征」
    変わりないきみに出迎えられるたび長生きの友だと思いたい
    積もるのは俺が積もらす話だけきみにはほんの数刻の留守

    審神者連作 審神者と名前について
    故郷の名前がなくなったの それも私がここにいる意味でしょう
    かみさまにあげてしまうね もう他に呼ぶ人もない私の名前
    表舞台だけご覧あれ、わたくしは足音もなく黒子になった
    本丸の歴史をここに記します 私がここにいた証です
    あなただけ覚えていてねいつまでもスポットライトの外の私を

    初めてのでも最後のでもないけれどこの身を尽くす 主たるため

    主、って呼ばれることを誇らしく思うよきみは私のかみさま

    杯に映して月を得ましたと言い聞かせているような毎日

    運命の出会いだったね でも君は私を最後にしなくていいよ(#運命の出会いだったね)

    この愛が愛に見えなくなったならきみが新たな名前をつけて(#この愛が愛に見えなくなったなら)

    この愛が愛に見えなくなったなら憎んでもいい 手は離さない(#この愛が愛に見えなくなったなら)

    かみさまのかみさまがいるなら彼らをお守りください 私の後も(#かみさまのかみさまがいるなら)

    咲くまではひとかたまりの闇だった灯籠花はここにいたのね(「彼岸花」)

    偶然の偶然の偶然かもね それでもわたしきみを選んだ(「配られた手札」)

    暗がりで小さく呟く ライナスの毛布としての君の名前を(#おひとりさま刀剣短歌いちごつみ)

    かみさまの宿るきっさき 恐れずに触れる指だけ斬れないらしい(#かみさまの宿るきっさき)

    やわらかく突きつけられたかみさまの宿るきっさき 私を立たせる(#かみさまの宿るきっさき)

    平和から遠いところにガラス越しじゃないかみさまの宿るきっさき(#かみさまの宿るきっさき)

    美しい手だねと言った日に君の右手以外が帰ってこない(#黒闇刀剣短歌)

    その時はこぼれる梅のように香を残していけるように生きたい(#刀剣短歌強火合宿2023冬)

    照れくさい言葉もぜんぶ伝えたいから一番に言うありがとう(審神者就任一周年、挂灯)

    生活がいくさに吞まれないためのおまじない よく戻られました(刀剣短歌強火合宿2023夏)
    歴史修正主義者正しさの押し付け合いが生んだ今ならばこれもまた正しいでしょう

    連作 無題
    許されぬことなのですかただ君に会いたいだけのはずが、どうして
    正しさを信じていました彼の人を見殺しにすることが愛だと
    斬り捨てた「もしも」の先にあったものだけを信じてしまいました
    美しい人の笑顔がどうしても正しくないと言うのでしょうか
    刃を振るうばかりしかないこの身体でもわかりました、これが愛です
    その先に我らがいなくたっていい悲しさにただ暮れることはない

    かみさまのかみさまがいるならそれを信じないのが私たちです(#かみさまのかみさまがいるなら)

    連作 無題
    屍を積み上げてなお届かないきみはますます美しくなる
    根腐れは目に見えないから本日も咲かない花に水を注いだ
    ただしさは作り物でも構わない花開いたなら(ひきかえせない)

    その他生きているわたしとそうでないきみの境界をひく美しいひと(#葬式にくるはがね)
    かるがると一歩あちらへ踏み越えて泣かないでってわらって言うな(#葬式にくるはがね)

    連作 本丸システムバージョンアップについて
    これからもどうぞよろしく 末永く一緒に歩むためのお手入れ
    名を付けてくださいたんじょうびのように決意とともに刻む歴史に
    少しだけさびしいですか以前には戻れないこと 糖衣は溶けて
    変わらないこともありますこの城はあなたが守るあなたを守る

    連作「鍛刀」(#刀剣短歌強火合宿2023春)
    では作りはじめましょうか材料はたった四つの簡単レシピ
    お好みで願掛け・祈りをひとつまみ加えてもいい仕上がりでしょう
    三時間かかりますのであらかじめ依頼していたものがこちらに
    さてここが肝心 仕上げにかみさまを目覚めさせたらできあがりです


    ミュ花影ゆれる砥水によせて
    ほんとうをえがきたかった一心に磨いた腕の手に余ること
    正解を選びたい手はいつだって頭蓋の檻の中にあること
    また筆を執るだけ明日もその明日もこれを美しさと知ったから

    トリアージ、黒。閉ざされた世界にもまだヒーローは求められてる(特命調査によせて)
    行燈屋(まこと) Link Message Mute
    2022/11/09 16:48:01

    刀剣短歌

    【随時更新】
    Twitterに投稿した刀剣短歌を刀帳番号順にまとめたものです。
    目次の刀剣男士名をタップ/クリックするとその男士のところまでとべます。(うまくいかない時は縦書き⇒横書きに変更してみるとうまくいくことがあります。)
    主にその刀剣男士の目線で詠んだもの、文頭二字下げは審神者など男士以外の視点からその男士について詠んだものです。
    カプなし。
    ネップリ折り本、同人誌収録分などTwitterに公開していないもの、企画参加作品などの一部は含みません。
    初の男士のうたも極の男士のうたも同じ刀剣男士名でまとめています。
    架空の本丸の男士のうたも、うちの本丸の男士のうたもあります。うちの本丸のうたは(挂燈詠歌)とついています。

    #刀剣乱舞  #刀剣短歌  #短歌

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