髪を切った、その後は野暮なので語るまでもない髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない。なんて浅はかな考えで彼は巷で話題の髪を伸ばして願掛けをしたら叶うおまじないをしていた。
…過去形にしてるのは、前の仕事でやらかしたからだ。
吸血鬼、項をさらけ出したい。奴の手にかかれば項を隠す襟足を主に切ったり結ってみたりしたくなる催眠術と逃げられない結界に閉じ込めて人々を意のままに操ってしまうしょうもないけど高等吸血鬼なのである。
そして、ロナルドと面白そうだと着いてきたドラルクはいつも通りそいつを退治しに新横の路地裏まで奴を追い詰めたのだ。
「俺は吸血鬼、項をさらけ出したい!そこの銀髪の狩人の項を見せろ!」
「なんだよそのドラ公が好きそうなやつは!」
「ロナルドくん、否定はしないが大声で叫ばないでくれたまえ、ゴリラの発情期はまだだろう!」
「誰がぁゴリラじゃあ!」
スナァー…。と殺してる間にも項さらけはどんどん新横の項という項を刈り取っていく。
「いやー!?項が刈り取られるぅ」
「波平ヘアーになっちまう!」
「ヌメっとした!」
ドラルクは理解し、奴がどんな吸血鬼なのかスラスラと解説した。
「こ、これは…アメーバー状になって項を溶かしたりワックスのように固めてるぞ!」
「だからどうした!」
「分からんのか!奴に触れたら髪を消失しかねん!私たちはもうやつの術中の中逃げられないのだってぐあーーーー」
「ドラ公!?…って全部言う前に死んでんじゃねぇ!」
「ヌヌヌヌヌヌ!」
「ジョンは俺が守るからな!」
「ハッハッハ!項は最高だ!君も項をさらけ出すんだ」
ヌメヌメヌ…ドルゥン!と水分量の多い体積が物量の法則を無視してロナルドたちに向かって移動していた。
「そんなもの効かないってなんでセロリガアンダヨ!オギャパブミャガーーーー」
「ろ、ロナルドくーん!」
「ヌー!」
足元に吸血鬼化した野生のセロリが横切り発狂した動きが止まったロナルドに向かって無慈悲にもアメーバは襲いかかることに成功し伸ばしていた髪を切られたのであった。精々2cm程度だから大して伸びてはいなのだがショックはそれなりに受けて自棄になりつつ精確な射撃で項をさらけ出したい吸血鬼を退治した。
後ろで砂ってたドラルクが復活して彼の首元を肉のない骨ばった指で触れてきた。
「…あー、綺麗だったのになぁ」
「気持ち悪いこと言うな」
褒めてるのかそれはと続けて刹那に条件反射で殺した。別にお前の物じゃねぇのに何染みっ垂れた声出してだクソ雑魚吸血鬼が。などと言うのも時間の無駄と思い一言だけにした。
「帰るぞ」
「勿体なかったなー、綺麗な髪だったのに」
「しつけぇぞ!」
握り拳を作り殴る素振りをするよりも早い口調で返された。
「私のために伸ばしてくれたのに酷いことを言うね」
ドラルクはジョンをギュッと優しく抱えなおした。髪に触れるのをやめて優雅な足取りで歩き出す後ろ姿にワンテンポ遅れて慌てて5歳児が親から迷子にならないように必死に追いかけるような滑稽な姿になってしまっているは本人は気付いてるのだろうか?いやなりふり構ってられないから分かるはずなく上擦った情けない声でこう叫んだ。
「…は?お、おいお前それなんで知ってんだ!?待てよドラ公!!」
その後どうしたかなんて野暮なことは語るまでもないだろう。