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    折り鶴、ジャム折り鶴ジャム折り鶴 指先で尖りの部分を摘み、頭部を作る。羽を広げて下の穴から息を吹きこめば、折り鶴の完成だ。芝生の上には何色もの鶴が並べられている。赤、青、黄。そして今度は白色に、ウリエンジェは手をつけた。
     折り紙。と名づけられた遊びは、賢人ルイゾワの友人と言う教職員から与えられたものだ。ひとりの時間を好むウリエンジェには向いていたようで、休憩中は作業に没頭している。考え事をするには適していたし、正方形から作られる世界は無限に思えた。
    「読書の次は手遊びかい?」
     頭の上から声が降ってくる。顔を見なくとも誰かは分かるから、ウリエンジェは手元に目線を落としたまま返事をした。
    「貴方で四人目です。サンクレッド」
     今日いちばんの出来となった折り鶴を、サンクレッドへ渡す。やや光沢のある紙は日差しを受けてキラキラと輝いていた。彼は掌にある鶴をしげしげと眺めたあと「存外、器用なんだね」と隣へ腰を下ろした。
    「折り紙と言って、東の果てにある島国の文化だそうです」
    「ああ。帝国の属州の?」
     白い指が折り鶴を芝生に着地させる。赤色の横に置かれた鶴は、何故か誇らしげに見えた。
    「よくご存知ですね」
    「各国の情勢を知るのは諜報の基本だよ」
     そこでサンクレッドは欠伸をする。目元には隈が刻まれていて、満足に睡眠をとれていないようだった。
    「国を象徴する城があると書物に」
    「それは知らなかった」
     その場に寝転びサンクレッドは言う。そもそも興味が無いのだろう。ウリエンジェは他人との隔たりを、会話で強く感じる。今で例えるなら、サンクレッドが情勢に詳しいことに対し、ウリエンジェは歴史や文化に興味があるところだ。
     この折り紙を与えた教職員も「文化を学ぶのは、国を訪れた時に役立つ」と話した。ウリエンジェは文化に興味はあったが、訪れたいとは思わなかった。訪れるなら、身軽さが服を着ているサンクレッドが適任だ。
    「で、四人目とは何かな」
     唐突に尋ねられ、ウリエンジェは戸惑う。やや思案した後に思いあたり、並べられた鶴を指差した。
    「折り紙の最中に声を掛けられたのが、です」
     それ程に珍しいでしょうか。首を傾げるウリエンジェにサンクレッドは笑う。
    「それはね。みんな君のことが好きだからだよ」
    「揶揄うのはよして下さい」
     まあるい目がつり上がっても、サンクレッドには少しも怖くなかった。大人びた彼が見せる年相応の反応を、可愛いとすら感じる。
    「気になる相手には、ちょっかいを出したくなるものだ」
    「では、貴方も私が好きなのですね」
    「どう思う?」
     質問を質問で返すのは狡い。サンクレッドはウリエンジェが感情の機微に疎いと知っているのだ。折れそうに細い褐色の指が自らのローブを握り締める。
     ウリエンジェには、サンクレッドのことが少しも分からなかった。こうして揶揄ってきたかと思えば「人気の少ない穴場」として校舎から程近い、この場を教えてくれる。いくら時が経とうと、彼には敵わない気がした。
    「ほら、予鈴だよ。行っておいで」
     授業を告げる鐘が鳴り、会話は打ち切られる。ひらひらと振るサンクレッドの掌は、追い払うようにも見えた。
     腑に落ちないウリエンジェは、脇に置かれた教科書を手に取り立ち上がる。返事はしたくなかった。
    「折り紙は?」
    「……差し上げます」
     後ろから投げられた言葉に振り返って、ウリエンジェは折り鶴へエーテルを流し込む。かの教職員は羽根ペンや教科書を浮かせ、教鞭を執っていた。「遊び」として教わった術式を、こんなに早く試す日が来るとは。
     折り鶴が舞い上がりサンクレッドを取り囲むと、一斉につつき出す。単純なエーテル操作だが、色とりどりの鶴が羽ばたくのは快かった。
    「貴方を嫌いではない私からの贈り物です」
     驚いたサンクレッドは半身を起き上がらせ、必死に鶴を振りほどく。いい気味だ。エーテルが消失すれば、鶴は元通りになる。
    「何なんだよ、クソッ!」
     悪態をつくサンクレッドを尻目に校舎へと向かう。踏みしめた芝生は、とても青かった。 ジャム 空を見上げると雲が一面に広がっていた。
     雨が降る様子は無いが、暗闇で過ごしていたサンクレッドには眩いほどの明るさだ。
     体内時計を養う訓練を受けるため独房に入ったのが数日前。事前に「恐怖で叫び出す者も居る」と聞かされていたが、サンクレッドには無縁だった。闇は海都で過ごす頃からの古い友人だ。
     最初の二日は順調だった。空腹も気にならず、暗闇に慣れた目で壁を這うムカデや時々に訪れるネズミを眺めていた。提供された食事の毒味を怠り嘔吐を繰り返したのが三日目で、意識を失ってから時間の間隔が無い。
     それでも訓練後、担当者に伝えた日付は「初めてにしては上出来」だそうだ。
     治療を受け外に出たサンクレッドは、真っ直ぐに宿舎へと向かう。外気と控えめな日差しは身体の感覚を取り戻させ、泥のような疲れを運んできた。暗闇に慣れ過ぎるのも考えものだ。
     広場を行き交う人の多さに辟易しながら歩みを進める。漂ってきた匂いに昼時だとサンクレッドは思い、辺りを見回した。各々が席につき昼食を摂っている。と、その中に見慣れたフード姿を見付けた。
     ウリエンジェだ。
     席にあぶれたのか階段下に腰掛けている。両脇にはランチボックスと厚い本が広げられていた。
     通り過ぎても構わなかったが、サンクレッドは階段下へと赴く。人との接触が無かった数日間で人恋しかったのか、知人と話すことで本来の自分を呼び戻したかったのかも知れない。
    「ウリエンジェ」
     膝にハンカチを広げサンドイッチを頬張るウリエンジェに声を掛ける。読書に集中して気付かれないと思ったが、数回の咀嚼音と嚥下の後に彼は顔を上げた。飴玉のような、まあるい瞳がサンクレッドを認め名を呼ぶ。
    「久方振りですね」
     幼い容姿とは対照的に、育ちの良さが分かる言葉遣いでウリエンジェは話す。隣に腰を下ろすサンクレッドは端的に伝えた。
    「しばらく訓練をしていてね」
    「左様で」
     言及することの無いウリエンジェを好ましく思う。実際、彼のそう言う所が気に入っていた。
     ウリエンジェはランチボックスからパンを取り出すと、サンクレッドへ差し出す。華奢な手が持つサンドイッチは見た目より大きく感じた。
    「これを私に?」
    「貴方のことです。昼食は召し上がってないでしょう?」
     毒は入っていませんよ。と付け加えるウリエンジェに悪い冗談だと思う。空腹を訴えてはいない胃袋に、それでも人を気遣う余裕の出来た彼に対してサンドイッチを受け取る。
     賢人パンで作られたそれは不味く、挟まれたジャムは甘過ぎた。ロランベリーのジャムだと分かり、サンクレッドはようやくと曜日を思い出す。ウリエンジェのサンドイッチは曜日ごとに中身が決まっていた。
     私は七日間、あの場所に居たんだな。
     目を閉じると暗闇とは異なる色彩が瞼の裏に現れる。ここは独房と違い、薄明るい。
     
     肩に温もりを感じてサンクレッドが寝息を立てていることに気付いた。手渡したパンを持ち、器用に体勢を保っている。ウリエンジェは彼の無防備さに驚く。それ程までに諜報の訓練は過酷なのだろう。
     ウリエンジェは身動ぎしないよう努めながら、目を覚ましたサンクレッドの言い訳を考えていた。
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    2022/11/07 21:50:31

    折り鶴、ジャム

    【ウリサン】
    幼少期にオールド・シャーレアンでウリサンが出会っていたら?と、書いてる人の妄想が詰まっています。

    1.折り鶴→ウリエンジェがひたすらに鶴を折る話。
    2.ジャム→サンクレッドが訓練をした後の話。
    表紙作成「装丁カフェ」http://pirirara.com/

    #FF14 #ウリサン

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    • レオクレ版ワンドロワンライまとめ【レオクレ】
      Twitterにて開催のレオクレ版ワンドロワンライ(@cleon_60min)の作品まとめ。カッコ内はお題です。

      1.とおり雨(雨の日)
      2.ライト・スリーパー(寝顔)
      3.レモンのキッス(レモネード)
      4.家族写真(写真)
      5.あ・うん(背中合わせ)
      6.日月(メガネ)
      7.ロック・ペーパー・シザーズ(冷たい朝)
      8.ハッピー・ホリデイ(クリスマス)

      #バイオハザード  #レオクレ
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    • hear that I say【レオクレ】
      フルCG映画『ディジェネレーション』の妄想です。エレベーターの場面が好き過ぎて……。

      #バイオハザード  #レオクレ
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    • Sorry We Missed You【ウリサン】
      付き合ってたり、そうでなかったりの短編集。

      1.エージェント・サービス(新生)
      2.シリアス・ムーンライト(紅蓮)
      3.かわいいひと(漆黒)
      4.ネームレス(シャーレアン時代の捏造)
      5.シガレッタ(漆黒)

      #FF14 #ウリサン
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    • 孵化【ホーアン】
      たまごから産まれたと思っていたアンジェラの話。ホークアイとの事後表現あり〼

      #聖剣伝説3  #聖剣3  #ホーアン
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