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  • はじまり

    ボクがここで働き始めて一週間
    何と素晴らしい仕事だろう
    1日だれともほぼ会話せずにただひたすら書類作成
    8時間勤務1時間の昼休憩に、社食、土日祝日がお休み
    ボクが求めた理想的な職、まだ貰ってはいないが
    給料も良い。断言しよう公務員は最高だ

    今日もそんな素晴らしい業務に勤しんでいると
    羽毛田課長がちょっと、とボクをよんだ
    なんだろう…さっき仕上げた書類に不備があっただろうか
    「…書類に不備がありましたか?」
    羽毛田課長は渋い顔をしている、ああやってしまったか
    「うーん書類はパーペキよ、ありがとね」
    おや、ではその渋い顔は何ですか?金曜日つくった
    参考書類が会議で不評だったかな…
    羽毛田課長は低く唸って
    「うーん、一週間でわかるけど君は優秀よね、キテツにアゲたくないなぁ」
    羽毛田課長の口から出た言葉の意味がよくわからなかった
    まぁ、死語が多い人だからこれもまたボクに通じないものなのか
    羽毛田課長は寂しい頭をぼりぼり掻いて
    「キテツにはさぁ部下を何人もダメにされてるのよね」
    ん?何故かスゴく嫌な予感がする
    「あの係はウチから出すことになってるんだよね、ということで君、異動ね」
    「ふぁい?」
    ちょっと待って下さい、3年は異動がないのがこの部署のよいところでは?
    思わず変な声が漏れてしまった
    「めんご~1週間で歓迎会もまだだったけど、君は羽毛田会心のメンバーだよ」
    うん、よくわからない会に入れられた
    まあいい、ここと同じ雇用形態ならボクはどこでもいい
    「あの詳細は?いつからでしょうか」
    羽毛田課長は冗談を口にしながらファイルをボクに手渡した
    「これ国家機密だから~流出したら死刑よ」
    「はあ…」
    ファイルをめくるマル秘のマークの下には
    「安藤マニュアル」作成者:鬼鉄 圭吾と描いてあった
    おにてつ…?
    「あと異動は今日いまからよ」
    「ふぁい?」
    思わず変な声が漏れてしまった
    「もうすぐ迎えが来るからさ、帰宅準備して、机はこっちで片付けてお」
    バン!
    事務所の扉が勢い良く開き、壁に打つかる
    「おい!ハゲタァ!生け贄は準備してあるかァ!」
    エナメルのライダースーツにティアドロップ
    白い肌に発色の良い赤い口紅が映える、長い黒髪をかき分けて
    ずかずかとこちらへ向かってくる
    「あ、君、あれお迎えだから」
    「ふぁい?!」
    思わず変な声が漏れてしまった
    「コレが今回の生け贄か」
    アゴを下から人差し指と親指で挟まれる
    全国の女子が憧れる、あごくいというやつをボクは受けた
    びっくり魅惑のボディの女性から…
    「キテツちゃんお手柔らかにね」
    「きゃしゃで軟弱そうだなァ、ま、安藤好みかァ」
    会って早々に暴言を浴びせられたボクは、眉をしかめて
    嫌悪を示した、彼女は微笑し言った
    「そんな顔を見せるなよ、オレはキテツ ケイゴ今日からお前の上司だァ」
    なるほど「安藤マニュアル」の作成者、鬼鉄圭吾と一致した
    それよりもどうしよう、こんな上司と上手くやっていく自信がない
    そうだ辞表を…いや、公務員を早々にやめるなど
    早まるなボク、職場はまともかもしれない…
    とりあえず、挨拶をしておこう
    「これからよろしくお願いしま」
    「おっといけね!時間が無いんだったァ!ついて来い」
    彼女はひらっと黒髪をひるがえした
    おい、挨拶ぐらい聞こうよ
    「君、向こうでも頑張ってね、君は優秀なんだから大丈夫」
    羽毛田課長が肩をポンポン叩いた
    「はい…」
    ボクはカバンを持ち魅惑のボディを追った


    羽毛田はため息をつき青年を見送った
    「結局あの子の名前覚えられなかったなぁ」
    魅惑のボディは足早に出口へ向かっていく
    ボクは思わず音を上げた
    「ちょっと待って下さい鬼鉄さん」
    長い黒髪が空を切りティアドロップが光る
    「遅い!…ええと…お前名前は何だったァ?」
    ほらほら、人の話はよくきかないと
    ボクは咳払い一つして
    「とくぼぼくと、徳望北斗です」
    ティアドロップから少しだけ見えていた眉が吸い込まれる
    はいはい、わかります変な名前ですよね。分かります
    この名前の説明は宴会の時に使う
    場繋ぎの会話に使いますから、今は行きましょう
    などと言えないので、もう一度ボクは名前を言った
    彼女はポンと合点をし、眉が戻った
    「ん、では「ボク」と略させてもらうかァ」
    おいおいマジですか、子供を呼ぶような感じになりますけど
    いいんでしょうか?ボクは嫌ですよ?ボクは…
    などと言えないので、あははと笑って返した
    「悪なァボク、時間がないんだァ、うちの部署のことは道すがら話すからよ」
    彼女は手をひらひらさせて黒髪を翻し、また足早に歩き出した
    時間がない?どういうことだろうか
    ボクは頭を悩ませながらも魅惑のボディを追う
    バス通勤のボクが来たことのない
    地下駐車場にでる
    「んじゃあ行くかァ」
    ボクは思わず息を呑んだ
    魅惑のボディはライダースーツをしならせ、漆黒の大型バイクとドッキングした
    「おい、ボク、どうしたァ?早く乗れ」

    え?これはハーレーダビッドソンとかいう
    バイクじゃないでしょうか?バイク詳しくないのでわからないのですが
    怖いです、無理です。
    そうだ、自腹でいいので、タクシーか何かで移動を願い出よう…
    しかし彼女は髪を束ね、フルヘルメットを装着しながら怒鳴った
    「早く!時間ねぇって言ってるだろ」
    「ふぁい!」
    ボクはひゃっと飛び上がり、彼女の後ろに座ろうとして
    盛大にコケた
    「何やってんだァ、ボク、お前はアッチだァ!」
    魅惑のボディは親指を立てて後ろの車を差した
    ナンバープレート「わ」の黒色のミニバンだ…
    その後部ドアがガラッと開いて、そこからぬっと人が降りてきた
    その姿を見て、ボクはだらりと背中に冷や汗をかいた
    野太い声が上から降ってくる
    「あんたが異動してくる新人?ほら手かせよ」
    全身真っ白のスーツでオールバック、長身の男、笑顔だが眉間には深いシワ…
    熊みたいな手をボクに差し出してきた
    「すみません」
    恐る恐る手を伸ばしながら考えた
    何で白いスーツ、え?ボクの行く部署ってどこなんだ?
    経験上白いスーツにいい思い出がない
    最初に鬼鉄さんに出会った時に、いや、羽毛田課長の異動の言葉を
    すんなり受け入れすぎた。ボクの悪い癖だ、何でも鵜呑みで適応してしまう
    男の顔と焦点が合わなくなった時、キラリと男のスーツの襟が光る、バッチ?
    ふわふわと差し出した手を引かれて起き上がった
    「くまのてこれすけだ」
    「ふぁい?」
    思わず変な声が漏れてしまった
    「オレの名前だ、「熊手右助」みぎさんでいいよ!」
    男が豪快に笑った、名前だったとは
    素敵な名前です、ボクは自分の名前をいうと
    変な名前だなボクくんでいい?と一笑された、許さん
    と、爆音が駐車場に響く、鬼鉄さんがバイクの
    エンジンを掛けたのだ
    「みぎ、とりあえず、ボクを輸送、私はケイブのところに顔をだしてくる」
    と言葉を残し、爆音が駐車場に響き渡る
    「はっ、お気をつけて!」
    右さんは、ばしっと足を揃え敬礼をした
    ふと、スーツの襟をよく見た
    やはりそれはバッチだった
    テレビのドラマで見たことのある「SP」の文字のバッチ
    「ふぁい!?」
    「え?え?新しい部署って何なんですか?」
    ただの市役所職員がセキュリティポリスと何の関係があるというのか
    「とりあえず車乗って」
    「は…はあ」
    部署替えで市役所外にいく?
    これはこのまま車に乗っていいのだろうか、と考えてもしかたないので
    とりあず…いやいやいや…
    動揺が顔に出たのか
    「心配するなよ」と右さんが笑った
    うーん笑い事じゃないんです。と思いながらも
    取って食おうってわけじゃないだろうし、ボクは後部座席に乗り込んだ
    右さんが、はいはいごめんよと隣に座りバタンとドアを閉めた
    右さんがふうと息を吐いて運転席に声をかけた
    「左助出発」
    運転席に目をやると右さんが乗っていた
    ん?
    ボクは隣りにいる右さんをみた、もう一度運転席に目をやる
    黒いスーツの右さんがこちらをバックミラーごしに睨んでいる
    刺すよう口調で冷たい声が飛んだ
    「熊手左助(くまのてさすけ)だ、見てわかるだろ」
    ワントーン低い声と服の色ぐらいしか違いがわからない
    や、若干だけど口角が…んん?…
    「左助とオレを見間違えるなんてことしたら承知しないぞ」と右さんが
    にこやかに脅してきた。とりあえず双子で仲が悪いということがわかった
    緩やかに車は進む、左助さんは運転がうまい
    「いきなり異動で驚いたろ」
    「あ、はい…」
    「ハゲタカは、また資料を渡し忘れたんだな、詳しく説明してる暇はないんだが」
    羽毛田課長…恨みます
    「流石に国家機密だってのは聞いてるか?」
    そんなこと一言も…と思っていたが何か言ってた気も…
    右さんが頭を抱えてため息を付いた
    「最初に断っておく。オレは説明が下手だし、まどろっこしいのは嫌いだ」
    「は…はい」
    「一言で言えば、だ。」
    明らかに右さんの目の色が変わった。ボクはツバをごくりと飲み込んだ
    「命をかけて安藤さんの身の回りの世話をしてほしい」
    命がけ?誰それ…ってかそれ市役所公務員の仕事じゃないですよね?
    「も、もう少し詳しくお願いできますか?」
    「ある場所で要人の安藤さんの身の回りの世話をするだけだ」
    あのほぼ同じことしか言ってませんよ!
    「…えっと、何で市役所職員のボクなんですか…?」
    「市役所から要請するのは、昔、安藤さんが決めたことだ。直接聞いてくれ」
    「…この部署異動って絶対ですか、拒否権は?」
    ずしりと肩に重いものがかかる。殺気だ
    「文字通り首をかけてもらう」
    お母さん元気ですか、ボクは今
    大変な選択ミスをおかしてしまったようです。
    どこから間違ったのでしょう。安全で安定した公務員を夢見て
    勉強をするようになった中学生3年の春からでしょうか…わかりません
    お母さんの手作り弁当…きんぴらごぼうと卵焼き
    もう一度食べたかったです、ああ走馬灯のように思い出します。
    「おい、目が死んでるぞ」
    「ふぁい!」
    あまりのことに昇天しかけてしまった…
    前向きにね!SPの仕事だって悪くないよきっと…だって平和な
    一本国にテロとか犯すやついないもん、うん。うんうん。
    …身の回りの世話ってなんだろう
    「要人はご高齢なんですか?」
    右さんがなぜか眉を寄せた
    「ん…ああかなりな、面食らうのは仕方ないか。だがな
    時間がないんだ、付いたらすぐ、それからオール任務だ」
    「仕事じゃなく任務ですか…あの…ちょっと気になることが…」
    「ん?」
    「お給料とかどうなってるんですかね?要人警護?となると給料面かわってくるのかなって」
    どんなお仕事もお給料大事。辛くてもお給料がよかったら頑張れる
    「ああ、それな、ボクくんの親の借金を全部国が払って、今の給料の三倍だそうだ」
    「ふぁい!?」
    「破格だと思うだろ?」
    思いますよ…開いた口が塞がらないですよ
    ボクが働く理由が親の借金返済だったわけで…
    20年はかかると思った返済を…国が?
    右さんが視線を外に移して独り言のように呟いた
    「妥当、いや足りないと思うよオレは、
    ボクくんは今から「自由」を奪われるわけだし、
    安藤さんと一緒で人権なんてない」
    「みぎ!」
    冷たい制止の声が運転席から飛んだようだ
    正直、二人の声は届いていなかった
    借金が返せる。そう思っただけで胸がいっぱいに
    なって涙がでてきた
    「おい、何泣いてんだボクくん」
    「ふわあ、つい嬉しくて…」
    「お、じゃあ乗り気になったか?」
    「ふわい…ずずっ」
    「あ、じゃあこの書類にサインと半押して」
    涙で文字が歪んでよく見えないが
    言われるがままボクはサインとはんこを押した
    「よしよし汚い字だけどオッケー、あとケータイ出して」
    「ケータイでふか?…どふぞ」
    「あーガラケーね、よかった」
    バッキ
    「めちゃくちゃ壊しやすい」
    「ふぁいーーー?!何してるんですか!」
    「え?コレにサインしたろ?」
    世の皆さま…
    規約は全て目を通しよく吟味して、はんこを押しましょう、絶対後悔します。
    「悪いなボクくん、国家機密なんでね
    今後外部と連絡とるときは、専用の端末つかってくれ、な」
    右さんはカラカラとわらった
    そのケータイ最新の高いやつなんですが
    ガラケーですけど…ボクは深いため息をついた
    「そうこう言ってる間に目的地だ」
    車は駅のレンタカー屋にとまった
    「じゃ、左助あとでな、ボクくんついてこい」
    「はっはい!」
    はぐれまいとボクは右さんの背中をおった、
    ごった返す駅も右さんの風貌のおかげかスムーズに移動できた…
    「ん、ここでしばらく待機」
    「はあ…」
    ついたのは大阪にいく新幹線のホームだった
    異動って東京でちゃうのですか?きいてないです…
    というか借りたアパートとかどうすればいいんですか
    ボクがこの世の終わりのような顔をしていたのか
    右さんがプッとふきだして笑った
    笑い事じゃないですよと悪態の代わりにため息をついた
    「まもなく1番乗り場に特別カクリ列車が参りますご乗車のーー」
    カクリ列車?聞きなれない名前だなあと思って、来る方を見る
    車体のはっきりした色がわかる
    これは!新幹線電気軌道総合試験車だ
    分かりやすく言うとドクターイエ…
    「ぶふっつ」
    後頭部に鈍痛が走る
    「おう、メトロちゃん買い出しご苦労」
    後頭部を襲ったのは
    大量の食材の入ったダンボール箱だった
    「ごめんねーずり落ちちゃった」
    台車を押していたのはポニーテールをしてる
    丸顔の女の子だ、か、可愛い…
    「あ、彼が新しい人?私はメトロです!
    あなたと同じ安藤さんのお世話役だよ、お世話大変だけど頑張ろうね」
    彼女は、すっと手を伸ばし握手をもとめた
    ボクは緊張しながら応じた
    「徳望北斗ですよろしくっ」
    「変わった名前ね!ボクくんでいい?私はメトロでいいわよ」
    ニコッと笑った、笑うとくっきりえくぼができる
    か、可愛い…
    「よ呼び捨てはあれ何で…メトロさんで…」
    「そう?」
    くるりと丸い目で見つめられた
    は、恥ずかしい、顔赤くなってないですかボク…
    「よおし、全員そろってるな」
    声の方向をみると鬼鉄さんが左助さんと一緒に歩いてきた
    「これより鬼鉄班、2週間の安藤さん警護任務にかかる
    メトロ、新人ボクのめんどうを頼む」
    「はい、手取り足取り教えます」
    ニコッとメトロさんが笑う、う、やっぱり顔が赤くなってませんかボク
    「以下詳しいことは中だとっとと入りやがれ!」
    ボク以外の全員が足をそろえ敬礼をした
    全ての空間が、時間が固定された
    彼方から男の声がする
    「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ」
    空間の一部が丸く抜き取られ暗い穴が開く
    一人のおっさんがひょこっと顔を覗かせた
    長い黒髪を後ろでひとまとめにした無精髭の
    さえなさそうなおっさんだ
    「あんどうさんしを読んでくれてありがとう
    おじさんも嬉しいです、ここで注意したいことがあるんだよね
    ネタバレするとさ
    この先、割りとグロい描写があるんだよ苦手な人は見ないでね
    ではでは引き続きあんどうさんしをよろしくね」
    手をゆっくり暗い穴に姿を消した

    空間にあいた穴が渦を巻いて元の通りになた
    時間が空間が解放される

    ボクが乗車しようとすると
    鬼鉄さんにとめられた
    「オイ、ボク」
    「ふぁい」
    突然だったので変な声が漏れた
    「安藤さんについてどれだけその資料読んだ」
    全く読んでいませんというと鬼鉄さんは、ああと唸って
    「注意したいことが山ほどあるが、
    とりあえず安藤さんの容姿に関しては口にだすな
    すごく疑問に思ってもな、あとでメトロに詳しいことを聞け」
    「はい…」
    安藤さん一体どんな人なんだろうか
    少しわくわくしているボクがいた
    「気をもんでもしかたない、では行くぞ」
    鬼鉄さんに続いた
    カクリ列車のなかは通常の新幹線などのシートではなく
    食堂車の様になっていた
    「右と左はここで警備プランのつめだ
    メトロはデゴ班との引き継ぎと
    ボクを安藤さんに挨拶、自己紹介程度でいい、ひっこませろ」
    「はい」
    メトロさんがニコッと笑った
    何だか緊張してきた…
    「ボクくんついてきて、ついでに車内案内する」
    「はいっ」
    ボクはメトロさんのひよこのようについていった
    「1号車が厨房、2号車がさっきの食堂兼会議室、でここ
    3.4が私たちの就寝車、そうそう私たち5人で一班ね
    で、今から会うのがデゴさんがまとめる出五班ね
    任務は大体2週間で出五班といれかわりね、今から
    簡単に引き継ぎするわ、5号車は待機室兼シャワー室」
    ドアがぐんと開くと
    待機室の対面式のシートにぐったりと横になる男性が
    低い唸り声を上げていた
    高身長の三十代後半ぐらいだろうか腕でよく顔が見えない
    そうとうお疲れのご様子だ…
    安藤さん警護…そんなに激務なのだろうか…
    「デゴさん、引き継ぎお願いします」
    デゴさんは微動だにせずに口だけパクパクさせた
    「あー長い2週間だった…報告、安藤さん最悪にナイーブ」
    「あらら…」
    「食欲なし、意欲見られず。正し回復は高速、ハゼは60回」
    「ハゼ60?わー多すぎだわ…」
    「キハも多すぎるってさ、控えないとやばいんじゃないって」
    ボクにはさっぱりわからない専門用語がいくつか飛び交う
    「停車しても降りようとしないから
    警備はしやすかったがオレは滅入っちまったよ
    やっぱケイが抜けたのは痛いぜ…?ってそちらどちらさま」
    デゴさんは頭を掻きながら起き上がった
    三白眼の眠そうな目でボクをみた
    「あー安藤さん好みの感じがするわ…ケイとはタイプ違うけど
    ま、よろしくな、オレ、デゴイチタ、出るに数字の五と一に太いな」
    「徳望北斗です」
    「ん、あー変な名前な頑張れボク」
    変な名前はお互い様ではないか、許さん、
    ボクは握手を苛ついてギュッとしたが
    気合入ってるねーと勘違いされた
    「んじゃ、2週間頑張れ~」
    手をひらひらさせデゴさんは出ていった
    「安藤さんの部屋はこの先車両6号車」
    扉の向こうに安藤さんがいる、ボクはごくりと喉を鳴らした
    扉をがぐんと開く
    「安藤さん今日から鬼鉄班に交代でーす
    今日から新しい人が入りました紹介しますね」

    通常シートが白い机を囲んでいた窓側の席に
    座っている「安藤さん」を見てボクはギョッとした
    茶髪のボブヘアに顔にそばかすをちらした三白眼の女の子…
    ボクと同じくらいの歳にしか見えない
    ボクが冷や汗をかいている理由は彼女の右手が異様なほどに
    肥大している、グローブどころではない…
    うん、どれくらいかというと、あれだ、よく練習で警察犬が噛んでるあれくらい…
    すごく気だるげで微動だにしないので人形のようだ
    「今日からお世話をさせていただきます徳望北斗です
    よろしくお願いします!」礼を深くした
    するとあることに気づいてしまった、安藤さんの白い服がよくみると
    服ではなかったのだ
    「え?何でスーパーのレジ袋?」
    思ったことが口からぽろっとでてしまった
    「ボクくん!」
    メトロさんが慌てて何か言ったがどうにもならなかった
    安藤さんの頬が真っ赤になり
    右手でレジ袋の服を隠した
    やってしまった!鬼鉄さんに言われてたのに…
    「すっ、すみません!いやボクは…」
    安藤さんの
    眼球がぶるぶる震え、右手の血管がびきべきと
    音を立てて飛び出して鮮やかな肉が姿をだした
    「ひっ…」
    メトロさんがボクの腕を引っ張ったがボクは
    あまりのことに硬直したあと尻もちをついた
    開いた口が塞がらない

    「は…恥ずかしい…!あんどうさんし…!ぬ!」
    ボソッと安藤さんが呟いた瞬間
    安藤さんの全身があっという間に膨れ上がり
    爆ぜた
    びちばちぶっ びゅしゃ
    鮮血と生ぬるい汁がボクの顔にかかり
    内臓と思しきものがあたりに飛散し
    幾つかが口に飛び込んだ。金属で舌をさしたように血なまぐさい
    ボクはひたすら嘔吐し、血まみれの床をずりずり転げ回った

    「各車内に連絡します、安藤さんが爆ぜました」

    メトロさんのその声聞いたあとボクは気絶した
    これが安藤さんとの初めての出会いである  

    第一話 突然の異動 END
    アスター Link Message Mute
    2016/08/28 11:46:25

    【あんどうさんし!】はじまり

    安藤さんとボクの出会い #あんどうさんし #創作 ##あんどうさんし

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      明後日には二代目と引き換えにドナドナされます
      追悼
      買って一年も満たないのに…あくちゃん
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    • ハッピバースディナスカさんお誕生日おめでとうございます
      去年のお祝いのリク、コメ漫画描けずにいてすみません
      明日ぼちぼち描いていくので
      出来ましたらまたここで報告させていただきます~
      ちなみにこちらコメ漫画のラストカットです #よそのこ ##色子
      アスター
    • 4お魚琉生君と飼育員蒲公英 ##色子アスター
    • 9蒲☓喜 ##色子アスター
    • 10蒲公英の距離感 ##色子アスター
    • 2安藤さん名前:安藤さん
      性別:♀
      性格「脳天気」
      能力「不老不死」
      特技「生き物なら何でも変身できる」
      弱点「無欲」

      一本国政府により警護されし「カミナリ」の一人
      「カミナリ」との接触により「不老不死」の能力を得た
      その代わりに「欲」を奪われてしまった
      安藤さんの再生を繰り返し、どんな細胞に野なる
      万能細胞を他国に渡さんと
      一本国は必死で安藤さんを守っている
      当の本人はぼやっとしてる
      ある一定期間、あるいはストレスが溜まると
      細胞が爆発し爆死するこれを「爆ぜる」という
      飛び散った細胞が数時間で集まって
      安藤さんを作るから大丈夫
      守る側は始末が大変なので爆ぜさせたくない
      ストレスは右手から溜まるタイプ
      一本国政府は長時間の拘束によるストレスを
      避けるため全国列車の旅をしている
      黄色い列車に乗っているとか…いないとか ##あんどうさんし
      アスター
    • お陰で喫茶店で迎えの車を呼んだ、ついでに夕食。グラタンとシロノワールと蜂蜜ウイナー美味でした。あくちゃんには帰ってからちゃんとご飯あげました #擬人化 ##私物擬人化アスター
    • AQUOS PHONE SERIE SHL23 この場合名前はセリエにするはずだが、あくちゃんと呼んでいる。可愛い子 #擬人化 ##私物擬人化アスター
    • オキノタユウ
      阿呆はそちらでは? #鳥 ##鳥
      アスター
    • あくちゃんのTOP画面、あくちゃんは桃が好物、気だるそうな黒い犬を飼ってるよ #擬人化 ##私物擬人化アスター
    • ハイドロカルチャーが前からしたくて100均で買ってきた
      何を植えようかと迷っていたら、ほかはテーブルヤシやらポトスきちんと名称が描いてあるのに
      こいつだけミニ観葉植物と記載されていた。てめぇは一体何ものだ #擬人化 ##私物擬人化
      アスター
    • よたか、星になることなく今日も泣きながら甲虫をくらう #鳥 ##鳥アスター
    • 13椅子イスいすチェア #創作 ##あんどうさんしアスター
    • 2蒲→喜←紀 ##色子アスター
    • 2蒲☓阿に見せかけた蒲☓茶

      ##色子
      アスター
    • 9後日談 ##色子アスター
    • 9マジで犯す5秒前 ##色子アスター
    • 2蒲公英の性格 ##色子アスター
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