【セーラームーン】戦いの後。【はるみち】
ー始めにー
ギャラクシアとの戦いの後、ある日の午後のお話です。
基本的に原作よりだと思いますが、二人の過去とはるかさんの一人称は、旧アニメを参照しております。
それでも大丈夫と言って下さる方は、読んで下さると嬉しいです。
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「はるか、後悔していない?」
昼下がりのティータイム、その言葉は突然おとされた。
「『後悔』って何?みちる…」
ボクは何に対して後悔してるかを問われたのか分からず、目の前に座っている彼女に問い返す。
彼女にとって答えにくい質問だったのだろうか、黙って俯いてしまった。
沈黙が二人を包み込む。
やがて彼女は、一度だけ瞳を閉じ、重い口を開いた。
「…貴方が、セーラー戦士として目覚めた事よ」
俯きながら彼女は答える。
「…っ、今更。君に会えて良かったと言っただろう?」
ボクはとっさにに答える。
条件反射…と言っても良いかもしれない。
「…分かっているわ…でも…」
けれど、ボクが『後悔していない』と明確に言わなかったのを気にしたのだろう、彼女は何か言いたげにボクを見た。
「でも?」
ボクの問いかけに、彼女は言葉を繋ぐ。
「ずっと気になっていたの…。もしあの時、私が貴方に弱さを見せなかったら、あなたはずっと、自分の夢だけを追い続けて居られたんじゃないか…って」
弱さと言うのは、彼女がボクがダイモーン襲われた時に見せたものだろう。
「敵とはいえ、手にかけてしまう事を、怖くないのか?」と言う問いに、「私だって怖いわ」と、涙を浮かべながら話してくれた時の事だ。
「ははっ。一体、何時の話をしている事やら。それこそ今更だろ?」
彼女を安心させたくて、笑いながらそう答える。
けれど、どうやら彼女は、安心できなかったらしい。
俯いたまま黙ってしまった。
再び沈黙が二人を包み込む。
ボクは一呼吸置いてから、まっすぐ彼女を見つめた。
「…ボクは…ボクは、戦士として目覚めた事を後悔なんかしてないさ」
ボクの言葉を聞いて、顔を上げた彼女の目を見て、話を続ける。
「あの時、そのまま戦士になる事を拒否していたら、ボクはボク自身を許せなかったと思う」
「…許せない?何故…?」
彼女がボクに問いかける。
「みちると出会って、コレまで色々な敵と戦ってきた。迷った事も、不安になった事も、正直言って無かったわけじゃ無い。それに、文字通り命をかけた戦いもあった」
命をかけた戦いと言うのは、ギャラクシアとの戦いの事だ。
スターシードを抜かれ、肉体が消滅した。
もしも再生する事が出来なかったら、そのままコルドロンの海に溶けていたかもしれない。
ギャラクシアと言う敵は、それほどの敵だったのだ。
彼女も気がついて、『こくん』と頷く。
「そんな戦いを、ボクだけが何も知らずに居る事なんて耐えられないよ。…戦ってきたからこそ、尚更そう思うんだ」
後悔はしていない。
その思いをもう一度、しっかりと彼女に伝えたつもりだ。
…それでも何か言いたげな彼女を遮って、今度はボクが彼女に問う。
「そう言うみちるこそ、後悔はしていないのかぃ?」
彼女はボクが問うとは思ってもみなかったのだろう、吃驚した顔でボクを見る。
「…後悔は…していないわ…。戦士になったからこそ、守れたものがあるもの…」
少し考えてから、彼女は静かに…そして強い意志を込めてそう答える。
「ボクと一緒じゃ無いか」
そう言ってボクは彼女に微笑む。
「…はるか…」
ボクが微笑んだのを見て、ようやく彼女も安心したようだ。
「そうね。ごめんなさい。変な事を言って…」
彼女が苦笑する。
「『変な事』じゃないさ…」
きっと彼女は気に掛かったのだろう…やがて来るであろう『カオス』との戦いの事を。
コルドロンからこのままの姿で立ち去る時、確かにガーディアンコスモスは言ったのだ。
『カオスは今は見つけられないくらい小さくなっているけれど、また生まれてくるかもしれない』…と。
あのギャラクシア以上の力を持つであろう敵だ。
命をかけた戦いになるに違いない。
いつ来るかは分からないが、その時はきっと必ず来る。
どうしていま、彼女が急に気になったのかは分からない。
でも…。
「君はどんな時でも、ボクと共にいてくれるんだろう?」
例えこの先どんな事が起ころうとも。
「えぇ…。はるか…私はどんな時でも、貴方と一緒にいるわ」
彼女が微笑みながら答えてくれる。
「それで十分だ」
目を閉じて、ボクはそう答える。
これ以上の答えはそうは無いだろう…そう思いながら珈琲を口に運ぶ。
「せっかく入れた珈琲が冷めてしまったわね。いま淹れなおすわ」
ふんわりと微笑みながらそう言って、席を立とうとする彼女の手に、思わず自分の手を重ねた。
彼女の微笑む顔を見ると、何だかボクもふんわりとした気分になってくる。
「それも良いけどさ、あっちに行かない?」
思わず、思った事を口に出してしまっていた。
彼女をそのまま離したく無くなったのだ。
「『あっち』って…はるか、その部屋は…」
ボクの視線の先に気がついた彼女が言葉を詰まらせる。
ボクと目線を合わせないようにしている彼女を見ていたら、くすぐったいような気持ちになって
そんな彼女にお構いなしに、ボクは彼女の手を取り、彼女に微笑みなが言う。
「みちるはどんな時でも、ボクと一緒に居てくれるんだろ?」
-後書き-
前回のはるかさんの一人称が原作寄りの「私」だったので、今回も「私」にしようかと思ったのですが
二人の過去が旧アニメを参照させて頂いてる事から、今回のはるかさんの一人称は「ボク」にさせて頂きました。
そして、はるかさん目線で描かせて頂きました。
二人の過去やはるかさんの一人称は旧アニメ、ギャラクシアとの戦いは原作よりだと思うので、読みにくかったり、混乱をさせてしまったらスミマセン。
関係性もどちらかと言えば、旧アニメよりになってるのでは?と思います。
せつなさんやほたるちゃんと、四人で一緒に暮らしているのかな?と思いつつも、二人はお出かけしている事にして下さい。
ギャラクシアとの戦いの後、少し経った後の二人のとあるティータイムのお話として書かせて頂きました。
相変わらず、拙い文章だと思いますが、ここまで読んで下さり有り難う御座いました。