神様のぼくある日、ぼくは神様になった。
具体的に言えば、その時のぼくには分からないことはなかった。
休み明けのテストの解答も、狡猾な教師の目論みも、人気のあの子の裏の顔も全部全部。
その上、ぼくに出来ないことはなにもなかった。「なんでもできる」とはこういうことなのだろう。
多分やろうと思えば、指を鳴らすだけで空を落とすことだって出来ただろう。
その時の馬鹿なぼくは、早速その力をロクでもないことへ使った。
片想いの幼馴染みの心を覗き見したのだ。
しかし、彼女のなかにはひとかけらさえも、ぼくへの好意が見付からなかった。
機嫌を損ねた神様は無理矢理、彼女に好意を植え付けた。その日から彼女の態度は驚くほどに変わった。
ぼくを意識している、最初は嬉しくて仕方がなかった。しかし、同時に虚無感が生まれた。
これは今までぼくが見てきた彼女とは違う。いや、変わらない。態度が変わっただけだ、そう言い聞かせた。
でも、どうやってもそのニセモノの彼女は、ぼくの中でホンモノになんてなれやしなかった。
結局、神様は全てをなかったことにした。それと同時に、ぼくは神様であることをやめた。
ぼくに神様なんて、向いてやしなかったんだ。
ただ、いつものぼくになる前に、神様のぼくは神様にひとつだけお願いをした。
ぼくは恥も捨てて兎にも角にも願ったんだ。
「今日の放課後に、彼女と二人きりになれますように」