ジータちゃんのモフテクそれは偶然の出来事だ。カトルがふと、水でも飲むかと食堂に向かわなければ見ることはなかっただろう。カトルが食堂の入り口に立ったところで、中に仕事を終えたばかりのジータがぐったりとしているジータとユーステスがいることに気づいた。その隣に座るユーステスが彼女に何かを伝えると、ジータはがばりと起きあがり、ユーステスの頭を撫で始める。
数分間、そうしていたジータは次に両手でユーステスの耳を触れた。笑顔のジータを見ていると何やら、そわそわとしてしまう。
一歩踏み出したところで不意に、ユーステスがこちらを向いた。
「ジータ、カトルがいるぞ」
「あ、ほんとだ。カトル、まだ起きてたの?」
声をかけられて無視をするわけにも行くまい。カトルは小さく息を吐き、二人はと歩み寄る。
「眠れなかったんです。だから、水でも飲んでからどうにか眠ろうかと思いまして……ジータさんとユーステスさんはここで何を?」
答える代わりに問いかければ、ジータはユーステスと顔を見合わせてから答えた。
「これは他のみんなには内緒なんだけど、ユーステスと仕事をしに行った後はたまにここでユーステスに頭撫でさせて貰ってるの」
大真面目な顔で言われ、カトルは思わず、はぁ、と間の抜けた声で返す。
「やっぱり耳って少しデリケートなとこじゃない?だから、もふもふさせてくれるのユーステスくらいで」
「そうなんですか」
「カトルも触らせてやったらどうだ」
「はい?」
「えっ、いいの?」
まだ返事をしていないのにジータは目を輝かせ、カトルは思わず一歩下がった。
「ダメです」
「ダメなの?」
しょんぼりとした顔のジータにうぐっとカトルは言葉を詰まらせる。一度くらいなら、我慢してしかるべきか。
「……一回だけなら」
「それって一撫で?それとも、撫で終わるまで?」
「撫で終わるまででいいですよ」
「言ったね!?止めないからね!」
「はい」
ここまで来たら何をされても同じだろう。
そう思うカトルは決心して頭を下げた。そして、ジータの手がカトルの頭に触れ、髪をさらさらと触ってから両手で耳に触れる。やわやわと耳にふれられ——へんになりそうだ。
「あ……の、耳の中は」
「ここの毛って柔らかいよね。ふふ、ユーステスの耳とちょっと違う」
「そんなに違うのか」
「違うよ!カトル、気持ちいいよ。触り心地もよくて……もっと、触ってもいい?」
耳の話だ。
耳の話なのに。
「……ジータさん、あの……お願いですから、そんなじっくりゆっくり触るのは」
「カトル、顔赤くて可愛い」
「ダメです、ジータ……——あっ」