牧場物語はじまりの新天地「ニール・アニマル」街がうんと小さかった頃から、俺と女牧場主のリオは街を大きくすることを夢見ていた。
彼女は自身の牧場や畑だけでなく、荒地を開墾し、請われるまま家屋を建て、人を呼び寄せた。俺はそんな彼女にお人好しが過ぎるぜと言いながらも、彼女の家畜を世話していた。家畜に対し知識ゼロだった頃の彼女は、人間同士も種付けって出来るかなと言った冗談をしていた。
街が大きくなり、移民も増える。センゴクという世捨て人が住み着き、お人好しなリオは、世捨て人である男をなんとか力付けたいと世話を焼くようになった。彼はリオのことを子供にしか思えないと、俺に笑って言っていた。子供に世話を焼かせんじゃねえや。まあこの二人には何もないだろうと思い、センゴクが来て一年たったある日。リオは一週間ほど俺に家畜を見てくれと頼んできたのだ。

「あの人、……センゴクのご両親に結婚の挨拶をしに行くから」

なんで。
あんな男はろくでもないと引き留める俺に、リオは笑った。

「あの人は私がいないとだめなの。……触ってもくれない、襲いもしない男のことを、あたし、いつまでも待てないわ」

リオの眼差しは、まっすぐ、俺を射た。
種を育てる機会を、俺は不意にしてしまっただけの話だ。