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    第四章:ありふれた悪事/Ordinary Person(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)終章「束の間の神の恩寵が有ろとも、人間の怒りは永遠に消えぬ」(1) 全ては終ってしまった。
     副市長の古賀が……自分が「正義の味方」の手先であり、「正義の味方」どもが裏で恐しい悪事を企んでいる、と告白した動画はネット上から抹消された。
     その結果、古賀と「正義の味方」どもが起こした数々の犯罪の濡れ衣を着せられたヤクザ達は……占拠した老人ホームに入っていた福岡県警のエラいさんの母親を殺して、その死体を老人ホームの入口に吊した。
     あの動画さえ……公開されていれば……「俺達がやった事にされてる犯罪の真犯人を二四時間以内に逮捕しろ」と云うヤクザ達の要求は……あ、いけね、古賀の野郎は自殺したんで逮捕出来ねえや……まあ、いい。
     ともかく、「正義の味方」どもが、持て囃される世の中になったせいで、誰もが「正義の味方」どもの真似をして、「正義の暴走」をやっている。
     そのせいで、事態はどんどん酷くなってるのに……その事に誰も気付かぬフリをし続けている。
     こんな世の中は正さねばならないが……俺は、もう全てを奪われた。
    「あの……どうしたんですか、先輩……?」
     隠れ家にしていた古川のおっちゃんの別荘にやって来たのは……最早、俺の最後の仲間となった自称「見習い」。
    「もう……俺は終った……。全てを失なった。『正義は報われない』なんて良く言うだろ。でも、『正義の暴走』を止めようとする奴は……もっと報われないんだな……」
    「先輩、何、気弱になってるんですか……」
    「あの人の……クリムゾン・サンシャインの遺志を継ごうとしたけど……俺には出来なかった。俺は……つくづく駄目男だ」
    「先輩らしくないですよ……。あの……知ってますよね?……お父さんが市長を辞めるって発表したのを……」
    「ああ……そうだな……。俺は『市長の息子』じゃなくて唯の駄目男になる。俺には……警察と『正義の味方』どもの包囲網が迫ってる。君もすぐに逃げろ。そして……クリムゾン・サンシャインのコスチュームは2度と着るな。これからは……『正義の味方』どもが支配する地獄のような世の中になるだろう……でも、嫌なモノから目を逸らして生き続けろ」
    「だから、次の市長選挙の候補者受け付けが始まってるんですよ‼ 先輩が立候補するんですッ‼」
    「へっ⁉」
    「駄目元で行きましょう。すぐに。これから……」
    「い……いや、ちょっと待て」
    「選挙演説で訴えるんですよ。自分こそが『正義』だと思ってる暴徒が裏でどんな酷い悪事を行なってきたか……そして、初代クリムゾン・サンシャインが、奴らの手によって、どんな目に遭わされたかを……」
     そんな真似をすれば……成功率は低い。
     でも……。
     そうか……これしか無い。
     「正義の味方」を名乗る暴徒どもの「正義の暴走」を止める……最後の手段だ。
    「わかった……。これが俺の最後の戦いだ……。何としても……『正義の味方』どもの『正義の暴走』を止めて……ヒトモドキの関東難民どもを、久留米から追い出してやる」
    「その調子ですッ‼ それでこそ先輩ですッ‼」
    「だが……これだけは約束してくれ……」
    「な……なんですか?」
    「もし……俺の身に何が有っても……君だけは生き延びてくれ……そして、万が一の時は……君が3代目クリムゾン・サンシャインになってくれ」
    (2) そして、俺はクリムゾン・サンシャインのコスチュームを着込むと……市役所に乗り込み……おい、何だ、周りの奴らの変な目はッ⁉
    「おい、選挙管理委員会はどこだ? 市長選挙の立候補に来た」
    「え……えっと……」
    「怪しい者じゃありません。警備員も警察も『御当地ヒーロー』も呼ぶ必要は有りません、いいですね?」
     俺の背後うしろからは「見習い」の声。
    「は……はい……あの……」
     何故か、市役所の案内係は……何階のどこそこです、と云う一言で済む話を終えるまでに、何回も言い間違えた。
     クリムゾン・サンシャインはサイコパスなのに頭の手際も悪い……そのせいで、下手に手際がいい連続殺人鬼より遥かに陰惨な事件をどんどん起こしている危険人物だ……そんな「正義の味方」どものプロパガンダを信じてしまった馬鹿どもが多く居るようだ。
     困った事だ。
     俺が市長になったら、市の予算で啓蒙活動を行なう事にしよう。
     そして、市役所の前に「正義の暴徒」どもとは違う「正義の暴走」とは無縁な「真のヒーロー」である初代クリムゾン・サンシャインの銅像建てるのだ。
    「はい、我々は市長選挙の立候補に来ただけです。皆さんが警備員・警察・『御当地ヒーロー』などを呼ばない限りは、皆さんに危害を加えるつもりは有りません」
     「見習い」は市役所内に居る市民や職員にそう声をかけ続けた。
     そして、選挙管理委員会が市長選挙の立候補の受け付けをやってる部屋まで辿り着き……ドアを開けると……。
    「おい……何で、お前がここに居る?」
    「そ……その声は……やっぱり、兄貴?」
     かつて、俺の親父の後援会の関係者だった裏切り者どもを引き連れて、立候補の手続きをやろうとしていたのは……。
    「だから、あたしが立候補したって誰も投票しない、って何度も言ったんですよッ‼ 悲しいけど……あたしは、このロクデナシの犯罪者の妹なんですからッ‼」
     俺のクソ妹は……俺を指差して……そう叫んだ。
    「い……いや……その……そう言われましても……その……」
     親父の後援会の元会長は……顔に脂汗を浮かべながら……俺のクソ妹に何か言い訳をしようとしている……らしかったが……極度の混乱状態で、何をどう言えばいいのか、自分でも判っていないように見えた。
    「あと、すぐに、警備員・警察・『御当地ヒーロー』全部まとめて呼んで、ウチの馬鹿兄貴を逮捕して下さいッ‼」
    (3)「おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、絶対におかしいぞ、誰も何も変だとは思わないのかッ‼」
     いかん……思わず大声を出してしまった。
     マズい。あのヒスを起こしている妹よりも、俺が感情的になってると思われたら……実際は俺がクソ妹を論破してる筈なのに、事情を良く知らない奴らは、妹が俺を論破したと思い込んでしまう。
     クソ。
     あいつは頭が悪いクセに印象操作だけは昔から上手かった。
     そうだ。あいつは印象操作だけで、俺よりいい大学に行きやがった。そして、俺が一浪二留したのに、印象操作だけで、浪人せずに大学に受かって、留年せずに大学を卒業しやがった。
     クソがッ‼
     殺……いや、落ち着け。
     俺は理性的だ。
     俺は合理的だ。
     俺は現実的だ。
     俺は大人の男だ。女みたいに感情的になったりしない。
     そして、俺の中には何の理想もない。俺はどんな正義も信じていない。だから、「正義の暴走」とは無縁だ。
     はあ、はあ、はあ……よし、深呼吸。
    「待て、女のお前が、何で、市長選挙に立候補出来る?」
    「えっ?」
    「女は政治家になれない筈だ」
    「なれるよ。昔から」
    「嘘を言うなッ‼」
    「阿呆かッ‼ ここまで阿呆だから、兄貴は、裏口から入った大学を2回も留年したんだよッ‼」
    「何が阿呆だッ⁉ いつから女が政治家になれるようになった? 何年何月何日何時何分何秒からだッ⁉」
     ……。
     …………。
     ……………………。
     沈黙……周囲からは何の反論もない……。
     やった。
     クソ妹を論破してやったぞ。
     俺の完全勝利だ。
    「おい、山下、今の撮影してたよな。あとで、動画サイトにUPしろ。俺のクソ妹の恥かしい姿を全世界に公開してやる」
    「すいません……山下さんは、ここに居ませんし……動画サイトのアカウントはBANされてます……」
    「あとさ……兄貴……日本で女性が政治家になれるようになったのは……」
    「へっ⁉」
    「一九四六年の四月一〇日から……」
     ば……馬鹿な……親父やお袋を通り越して……父方・母方両方の祖父じいちゃん・祖母ばあちゃんさえ生まれる前じゃないか……。
     ああ……何と言う事だ……。
     「正義の味方」どもに洗脳された者は……歴史修正主義者と化してしまうのか……。
     いや……待て……もし、俺のクソ妹まで「正義の味方」どもに洗脳されてるとしたら……。
    「あのさ、ちょっとそれ貸して」
     俺は「を指差して、そう言った。
    「はい、どうぞ」
     俺は「見習い」から散弾銃を受け取ると……。
     ドンッ‼
     そうだ……「正義の味方」どもに洗脳された者は殺していいんだった。
     それを犯罪だと非難する事こそ「正義の暴走」だ。
     そもそも……このクソ妹は、俺がミニコミ誌の編集者を拉致して、うっかり死なせて、死体を焼いて、その灰を鳥栖とすの山奥のダムに捨てたぐらいで……俺を警察に突き出そうとしやがった。
     そうだ……あの時から、クソ妹は「正義の味方」どもに洗脳されてたんだ……。
     実の兄を警察に突き出し、実の父親の政治生命を危うくするなど……「正義の暴走」以外の何だと言うのだ?
     ともかく……。
     俺は……「正義の味方」どもが俺のクソ妹にかけた洗脳を解いてやった。
     副作用で妹は死……あ……腹から血を流してるけど……まだ、生きてやがる。
    「おい、『見習い』くん、拳銃有る?」
    「はい、どうぞ」
     俺は見苦しく生き続けてる妹の足を払うと、床に倒れた妹を拳銃でヘッドショット。
     よし、これで悪は去った……じゃなかった。
     おっと間違えた。よし、これで正義は去った。
     残ったのは、少しも感情的じゃない男らしい理性的で合理的な現実主義だけだ。
    (4) ……。
     …………。
     ……………………。
     どうした?
     何だ、この嫌な雰囲気は?
     後援会の奴らも、選挙管理委員会の連中も……俺を……何と言うか……超危険な犯罪者でも見るような……怯えた目で見ていた。
     おい、兄が生意気な妹を折檻して何が悪いんだ? 折檻の結果、クソ妹が死んでも、事故だろ事故。
    「こ……こ……こ……こ……お……おい……い……一郎くん……き……き……君が……ほ……ほんとうに……ひ…っ」
     あ、しまった。
     「正義の味方」どもによる洗脳を解くには……何も殺す必要は無かったのか……。
     どうやら、俺を裏切った親父の後援会の会長は……ショックで洗脳が解けつつあるようだ。
     パニクってるように見えるのは、洗脳が解けるまでの一時的なモノだろう。
     よし、俺が市長になったら、必要最小限の犠牲で、「正義の味方」どもが愚民どもにかけた洗脳を解くようにしよう。
     見せしめに何人か殺して、他の奴らはショック療法で洗脳を解けば済む。
    「あああ……もしもし……警察……うぎゃあッ‼ うぎゃっ‼ うぎゃぎゃぎゃぎゃッ‼」
     あ、後援会の奴らの中に、まだ洗脳が解けてないのが居た。
    「ふざけんじゃねえぞ、このボケっ‼ 何、勝手に死んでんだ、クソ、ゴミ、クズ、アホっ‼」
     銃弾を何発も浴びたそのクソ野郎は床に倒れ落ちた……。
     まだ、みじめに生きてやがるが……助かる可能性は低いだろう。
     でも……俺に拳銃で撃たれた位で、何、勝手に死のうとしてやがるッ⁉
     俺は、そいつの死体になりかけてる体を蹴った。
     蹴った。
     蹴った。
     怒りに任せて何度も蹴った。
    「死ぬな、ボケっ‼ 勝手に死ぬんじゃね〜って、言ってんのが判んね〜のかッ‼ 俺を裏切りやがったクソが死にやがったら、俺が市長になっても『ざまぁ』ものにならね〜じゃね〜かッ‼」
    「大丈夫ですよ。義理の弟さんが、まだ生きてるじゃないですか。多分、残りの一生、ずっと入院中でしょうけど」
     えっ? あ……待てよ。そうか……。
    「先輩が、世界で一番、『ざまぁ』をしたい相手は、まだ生きてて、しかも、何1つ対処も反抗も出来ないまま、先輩のやる事を見てくやしがり続けるしか無いんですよ」
     あ……ああ、そうだ……。いい事を言ってくれた見習い君。
     全てを失なったと思っていたけど……一番、大事な絆だけは残っていた。
     俺とクソ義弟との間の憎しみの絆だ。
     この絆が有る限り、俺は俺でいられる。
     ありがとう、優斗。生きててくれて、ありがとう。そして、嫁も、嫁の腹中に居た子供も、地位も、健康も、全部失なった状態のまま、病室でくやしがり泣き続けろ。
     俺が市長になった暁には、お前の入院費は、市の予算で出してやる。
    「おりゃぁッ‼」
     ドンっ‼
    「死ねえッ‼」
     バンっ‼
    「ざまあみろッ‼」
     ズキュ〜ンっ‼
     そして……俺は、この部屋に居る俺が「ざまぁ」をやる為に、必ずしも必須とは言えない人物どもを血祭りに上げ……。
    「弾、切れちゃった。拳銃のマガジン有る?」
    「これで良かったかな?」
    「そうそう、これ……あれ、交換のやり方良く判んないんで……」
    「なら、俺が換えてやろう。ほら、終ったぞ。ついでに予備の銃も持ってけ」
    「あ……気が効く……えっ?」
     そこに見習い君は居なかった。
     そこに居た奴が着ていたのは……クリムゾン・サンシャインの白いコスチュームじゃない。
     ……黒一色……。
    「また会ったな2代目。前回やった名乗りは省略してもいいかな? 自分でやってて、自分が馬鹿に思えてくるんでな」
     そこに居たのは……永遠の夜エーリッヒ・ナハトだった。
    「あと、金属バットにサバイバル・ナイフも有るが、要るか?」
    (5)「あ……あ……え……? お……おい……どこどこどこに……何何何何をしたッ⁉」
    「おいおい、落ち着けよ2代目」
    「ききき貴様……ッ……見習い君は、どこに行ったッ⁉」
    「誰だ、そりゃ?」
    「居ただろ、ここに……」
    「意味が判らん。俺がここに来た時には……この部屋の中に居たのは、俺とお前とお前がさっき殺した奴らだけだったぞ」
    「なななな……何を言って……」
    「何をって? いや、俺が見たままを言ってるだけだが……」
    「大体、お前、どうやって、そんな変なコスプレをしたまま、市役所の中をうろつき回れた?」
    「おいおい、変なコスプレして市役所の中をうろつき回ってる奴は、もう1人居るぞ。お前だ。お前に出来る事なら、俺にだって出来ておかしくないだろ」
    「い……いや……これは……その……」
    「いや、変なコスプレして市役所の中をうろつき回ってる奴は、もう1人居るのか? お前の言う『見習い君』って奴が……もっとも、その『見習い君』とやらが、の話だがな」
     ガラガラと足下が崩れるような……いや、絶対にそんな筈はない。
     ラノベやマンガやアニメで、最終回が、こんなオチだったら、俺は、作者と出版社に対して訴訟を起す。
     たとえ、俺が今まで現実だと思ってたモノが、失業中の哀れな中年男が「これで何か賞でも取れて、俺も流行ラノベ作家になれて、サラリーマンだった頃の一〇倍ぐらいの年収になったりして〜」なんて独創性が無いにも程が有る妄想にまかせて書いた下手なラノベもどきだとしても……こんなオチは認める訳にはいかない。
    「ふざけんじゃねぇ〜ッ‼ 見習いどこ行ったぁ〜ッ‼」
    「なら、その『見習い君』とやらの実在を証明してみせろ。ほら、こっちだ」
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトはそう言って、逃走を始めた。
     阿呆が……そしてビビリ野郎が……。
     俺にわざわざ武器を渡したのに……自分でビビって逃げてやがる。
     何が「白は愚か者と臆病者の色」だっッ⁉
     阿呆はお前だ。
     そして、臆病者もお前だ。
     大体、黒一色のコスチュームで悪を気取る方が、余っ程、中二病じゃね〜かッ‼
     主人公と似てるけど黒一色のライバルキャラなんてありがち極まりない代物、俺がラノベ作家だったら、思い付いた事そのものを恥かしく思うわい、ボケ〜っ‼
     ともかく、殺す殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺……。
    (6) 追った。
     追った。
     追った。
     追い続けた。
     俺は、あの中二病野郎を追い続けた。
     ……はずだった。
     すぐに息切れがして……目が回り出した。
     そして……。
     市役所そのものが大回転して、目の前に廊下の床が……。
     いや、違う。
     運動不足のせいで、ちょっと走っただけでブッ倒れただけだ……。
     そして、大勢の足音と声。
     警備員?
     警官?
     制服が似てるんで、どちらかは判らない。
     もう、目も霞んで……。
     あれ?
     白い影が……次々と警備員だか警官だかを叩きのめしている。
     やった。
     やったぞ……。
     もし、俺が現実だと思ってたモノがラノベだったなら……ジャンルは「ざまぁ」ものだ。
     ざまあ見ろ、中二病野郎。
     おい、「見習い君は俺の妄想の産物だ」とか言いやがったな。
     それこそがお前の妄想だ。
     この通り、見習い君は実在してるじゃね〜かッ‼
     この俺が、3代目クリムゾン・サンシャインに見込んだ男の大活躍を見て、悔しがって、女みたいにヒスを起こしやがれ、ざまあ見ろッ‼
    「先輩、大丈夫ですか?」
    「あ……ああ……助かったよ……」
    「水持って来たんで、飲んで一息付いて下さい」
     手袋まで白一色の腕が……俺にペットボトルを渡す。
    「す……すまん……ヘルメットを取るの手伝ってくれるかな?」
    「はい…ちょっと待って下さい……」
     ヘルメットを取った俺はミネラル・ウォーターを飲んで呼吸を整え……。
    「ところで先輩、あれを見て下さい」
    「えっ?」
     見習い君が指差した方向には……監視カメラ……えっ?
    「じゃじゃ〜ん♪」
     おい……もしも、もしも、もしも、もしも、仮に仮に仮に仮にだ……俺が現実だと思ってたモノが……ラノベだとしたらだ……おい、阿呆作者、出来が酷いのだけは許してやるから……勝手にジャンル変更するんじゃね〜、ボケっ‼
     おい、ホラーものなら、最初から、そう説明しろッ‼
     監視カメラを指差していた見習い君の手がいつの間にか、白から黒に変っていた……そして……。
    「市役所の監視カメラが撮らえた衝撃映像ッ‼ 連続殺人鬼クリムゾンン・サンシャインの正体はッ‼ 緒方市長の馬鹿息子でした〜ッ‼」
     俺の横に居たのは……見習い君ではなく永遠の夜エーリッヒ・ナハトだった。
    (7)「うわああああッ‼」
     俺は監視カメラに向けて散弾銃をブッ放ち……。
    「す……すいません、先輩……あの、話が長くなりそうなんですけど、いいですか。あ……ごめんなさい、僕、くどい話し方しか出来なくて」
     えっ?
     ここに居たのは……永遠の夜エーリッヒ・ナハトじゃなかったのか?
     何で、ここに……見習い君が居る?
    「あの監視カメラを壊しても……先輩の顔が写ってる映像は残ってますよ」
    「いや、カメラ壊したぞ」
    「いや、その映像そのものは……サーバかNASか何かに残ってる筈です」
    「サーバって何だ? あとナスって野菜の?」
    「ええっと……ああ、PCの特殊な奴です」
    「あ……なるほど、判った。どこに有る?」
    「多分、警備員が知ってます」
    「でも……あいつらは……」
     俺は見習い君が倒した警備員を指差した。
    「すいません、うっかり全員殺しちゃいました」
    「き……君にしては……ちょっと痛恨のミスだな」
    「大丈夫ですよ。まだ、ゾロゾロとやって来る筈ですから……穏当に説得すれば教えてくれる筈です」
    「ああ、そうだな……行くか……」
    「いえ……来たようです」
    「武器を捨て……うぎゃあッ‼」
     やって来た……あれ? 警備員じゃない、警官だ。
     それも……殴り込み専門部隊の……。
    「あの……すいません」
     1人目、見習い君に両目をえぐられ戦闘不能……。って、防護ゴーグル付けてるのにか……?
    「ちょっと聞きたいんですが……」
     2人目、見習い君が足払いをしただけで……えっ? 両足の膝が変な方向に曲がってる?
    「ここのサーバ・ルームの場所知ってる方居ますか?」
     3人目、かなり重そうなボディアーマーを付けてるのに軽々と投げ飛ばされ……。
     そして最後の1人……。
    「ししししし知りませんッ‼」
    「あ……そうですか。残念です。本当に残念です」
    「ぎゃああああッ‼」
    (8)「あの〜……どなたか……サーバ・ルームの場所を知ってる方ぁ〜……居らしゃいませんかぁ〜」
     市役所内には……誰も居なくなっていた。
     困った……。
    「見習い君、ところでさ……変な奴を見なかったか?」
    「変な奴ですか?」
    「黒一色のコスプレしてる奴だ」
    「ん〜、少なくとも僕は見ませんでしたね〜」
    「ああ、気を付けろ……奴は俺達を狙っている。そして、俺達に連続殺人鬼の濡れ衣を着せようとしている」
    「どこが濡れ衣だ?」
    「濡れ衣は濡れ衣だ」
    「これだけ人を殺しといてか?」
    「必要な犠牲だ」
    「おい、あんた、自分が連続殺人鬼通り越して虐殺犯だって自覚有るのか?」
    「違う。殺しかも知れないが、虐殺じゃない」
    「あのなぁ……どう違うんだ?」
    「虐殺をするのは『正義の暴走』をやってる奴らだけだ。だが、俺達は『正義の暴走』なんてしない。俺達の中には『正義』なんて無いからな。有るのは……男らしい理性的で合理的な現実主義だけだ。はい、論破完了」
    「なるほど、女にモテる秘訣が『女にモてたい』と云う気持ちを押さえる事であるように……現実主義者でいる秘訣は、自分を現実主義者だと思わない事な訳か」
    「はいはい、男に論破された女は、いつでもヒスを起こして、わけのわかんね〜事を……ん?」
     女?
     いや、たしかに若い女の声だったが……えっと……?
    「あ……あの……先輩……逃げて……僕が食い止めま……えっ?」
    「お……おい……見習い君……あっ……」
     見習い君の体には……チビのメスガキの「正義の味方」が撃ったテイザーガンが命中し……。
    「残念でしたね……このスーツは防電……ん?」
    「ウチでその技術を買い上げてもいいが……少しばかり、改良の余地は有るな」
     ええええ?
     あれあれあれあれあれ?
     メスガキにテイザーガンで撃たれたのは……見習い君だった筈なのに……目の前に居るのは永遠の夜エーリッヒ・ナハトで……あれ?
     いや、また姿が見習い君に変り……。
     あれ、あれ、あれ?
    「俺は、どっちの姿でも構わんが、ややこしいな……クソ」
     だから、どうなってんだよ?
     見習い君だか永遠の夜エーリッヒ・ナハトだか判んない奴は、自分のベルトのバックルを叩くと……。
     そこに居たのは……見習い君でも永遠の夜エーリッヒ・ナハトでもない、灰色っぽい姿の奴だった。
    (9) 俺は全てを理解した。
     判ってみれば……簡単な事だったのだ。
    「そうかッ‼ 二重人格で、今、2つの人格が統合されたんだなッ‼」
    「阿呆かっ‼」
    「安いラノベかマンガの読み過ぎだッ‼」
     俺は、「正義の暴徒」のメスガキと……何と呼べばいいのか判らない灰色のヤツから、同時に罵声を浴びた。
     何て事だ……見習い君と永遠の夜エーリッヒ・ナハトの人格が統合されて生まれた新しい人格は……どうやら永遠の夜エーリッヒ・ナハト寄りのようだ。
     俺に罵声を浴びせてるのが、その証拠だ。
    「単に表面の色や模様を一瞬で変える機能が有る素材で出来たスーツだ。Q大工学部のある大学院生が研究をしていたモノだ」
    「じゃあ……その……」
     いや、わからない。
     わからない。
     いみが……?
     なにが……どうなって……?
     おれは……いもうとよりあたまがいいはずだ。
     なのに、なぜ、なにもわからない?
     ひょっとして、おれは、ばかなのか?
     おれがはいれたのがさんりゅうだいがくで、いちろうにりゅうしたのに……いもうとは……いいだいがくを……すとれーとではいってりゅうねんなしでそつぎょうした……。
     ひょっとして……くそいもうとのほうが……おれよりできがよかったのか?
     そんなはずはない……。
     おやじのあとをついでしちょうになるのはおれだ。
     おれのはずだ……。
     なのに……。
     あれ?
     なんとよんだらいいか、よくわかんない、はいいろのやつはにげだし……。
     そのあとを、ちびのめすがきがおいかけ……。
     ああ、おれもにげなきゃ……。
     ん?
     なにがおきた?
     からだがうごかない……。
     あ、せいぎのぼうとのいちみの……ぱわーどすーつのまほうつかいだ……。
     くそ……あいつがなにか……まほうをつかって……。
     あ……おまわりさんがきた……。
     きてくれた……。
     おまわりさん……はやく……せいぎのぼうそうをしてるくそどもをつかまえ……あれ?
     なんで、おれにてじょうをかけるんだよ?
     おまわりさんがおれのなまえをきいてる。
     おがたいちろう。
     おがたいちろう。
     くるめしちょうこうほの……おがたいちろうに……きよきいっぴょうを……。
     でも……ほんとうは……いちろうってなまえもいやなんだよな……。
    「うがあああッ‼ 誰が……一浪二留三流大学だッ‼ クソッ‼ 妹の癖に俺よりいい大学に行きやがってッ‼ 殺す殺す殺す殺す深雪、殺してやるッ‼」
    「阿呆っ‼ 深雪さんは、もうお前が殺してるだろうが……ッ‼ あと、警官が言った事を聞いてなかったのかっ? あの……もう一度言ってやって下さい」
    「は……はぁ……。では、君を、本日、久留米市役所内で起きた連続殺人事件の容疑者として現行犯逮捕した。君には黙秘権が有る。君には弁護士を雇う権利が有り、弁護士費用がなければ公費で弁護士を雇う事が出来る。以後の発言は法廷で不利な証拠となる可能性が有るので、発言には注意するように。また、君は、今述べた逮捕容疑以外の容疑でも取調べを受ける可能性が有る。なお、先程の妹さんへの殺意が有るとしか解釈出来ない発言は、既に録音されており、裁判の際の証拠として使われる可能性が有るので、あしからず」
    (10)「あの……すいません、これ、明らかに拘禁反応じゃないですか?」
    「い……いや……でも、昨日の日中に逮捕して、何も取調べは行なっていませんが……」
    「え? 逮捕して1日経ってなくて、まだ取調べもしてないのに、これって……ありえますか?」
    「でも、事実として、こうです。尿・検査・毛髪の全てから既知の違法薬物は検出されませんでした。洗脳・精神操作に関しても、ほぼ、行なわれていない模様です……ですが……」
     あれ? 何だろう?
     警察の制服の人と……背広のおっちゃんが何か話している。
    「貴方の公選弁護人になった立石といいます。よろしく」
    「は……はい……」
    「容疑の数が……あまりに多いので、う〜ん……本来なら、弁護団を組む必要が有るんですが……」
    「じゃあ、そうして……くだ……さい」
    「貴方……いわゆる『人権派』の弁護士を袋叩きにした事が何度も有ったでしょ? 比喩的な意味じゃなくて」
    「はぁ?」
    「だから……関東難民受け入れ派だった人達を……その……悪い友達とね……」
    「えっ……おれがやったのは……あくまで……おんとうな……」
    「この辺りで……貴方みたいな人でも手弁当で弁護してくれるような弁護士なら何人かは居ますよ」
    「じゃあ、そのひとたちを……」
    「だから、そんな弁護士が弁護出来るのは『貴方みたいな人』であって貴方自身じゃないんですよ」
    「いみが……わかりません」
    「この辺りの……いわゆる『人権派』の弁護士の何人かは……貴方を弁護したくても、貴方の顔を見るだけでパニック障害を起こすんですよ。貴方が散々やった『悪い遊び』のせいでね」
    「やめろ、クズ野郎ッ‼ 貴様の『正義の味方』の手先かッ‼」
    「えっ?」
    「ああ、ようやく判ったぞ。今まで、俺にマウント取る為に、訳の判んね〜事を偉そうに言ってた奴が、あんなにも沢山居た理由がッ‼」
    「だから……何を……」
    「俺が頭が悪いせいで、お前の言ってる事が理解出来ないんじゃない。お前は、わざと意味不明な事をしゃべってるだけだ。はい論破ぁ〜ッ‼」
    「あ……あの……意味不明な事を言ってるのは、貴方ですよ」
    「ううううるせえ……俺が何も気付いてねえとおもってんのかこのくすやろう……はあはあはあ……おいなにかへんなくすりもっただろいきぎれがするどうなってるだんだんいきぐるいくああしんぞうがとまる」
    「落ち着いて……ゆっくり呼吸。あの……誰か医療スタッフ呼んで下さい……」
    「うがががが……」
    「はい、おちついて、ゆっくり呼吸」
    「なななにがおつついてだ……はあはあ……ぜいぜい……おおおお俺を洗脳するつつつもりだろう……洗脳して……俺に『自分は馬鹿だ』と思わせたいんだろう……。きゃはははは……その手には乗らんぞ。俺はクソ妹より頭がいいんだ。親父の跡を継いで市長になるのは……妹じゃなくて俺だ俺だ俺だ俺だ俺俺俺俺……」
    「だから、貴方には、その妹さんを殺した容疑がかかってるんですよ。正確には、山程有る容疑の1つですけどね」
    (11) 数日後、俺は弁護士・検事・警官の付き添いて……市内の大学病院にやって来ていた。
     どうやら、俺がホニャララかどうかを検査する事になったらしい。
    「じゃあ、詳細な結果は、後日、検察と弁護士さんの事務所に送りますので」
    「あの……医師せんせい、どうでしょうか?」
    「はぁ?」
    「あの……その……つまり、心神喪失が認められますかね?」
    「いや、あのねえ、精神医学わたしらの見解は、法律家あんたらにとっては、あくまで参考意見みたいなモノでしょ。こっちが聞きたいよ」
    「いや……でも……弁護士会の当番で、たまたま、この人の弁護をやる事になっただけで……本当は、この手の事件の弁護って、あんまりやった事ないですよ。医師せんせいの個人的な見解でいいんで……」
    「じゃ、はっきり言いますよ。もっと酷い状態の人でも、裁判で責任能力有りで有罪になった事例を何件も知ってます」
    「は……はぁ……」
     クソ……なんで、こんな弁護士に当たったんだ?
     人権派弁護士ども何やって……あれ? 何か、その話、少し前に聞いた気がするが……まあ、いいや……。
    「あの……容疑者の方」
    「俺ですか……?」
    「そうです」
    「何ですか?」
    「待合室に置いてある新聞と雑誌を持って帰ろうとしてるでしょ」
    「い……いや……でも檻の中には娯楽が無くて……」
    「ウチの病院の備品です。返して下さい」
     市長選挙は始まり……どうやら、聞いた事も無い名前の関東難民受け入れ派のヤツが優勢らしい。
     もう……俺は……全てを失な……ん? 待てよ……なんか、そう思う度に、更に酷い目に遭ってきたような気がするけど……。
     でも……俺には、もう失なうモノなんて残ってない筈だ……。
     いっそ、せいせいした。
     そんな事を考えながら、病院の駐車場まで辿り着くと……ん?
    「お……おい……どこから……情報が漏れたんだ?」
    「わ……わかりません……」
     駐車場に停まっていた車。
     その周囲の物陰……。
     様々な場所から……次々と……。
     ああ、そうか……。
     まだ、「正義の味方」どもに洗脳されていない人達が……こんなにも居たんだ……。
     デブも居た。痩せてるのも居た。
     背が高いのも……。チビも……。
     男も……。
     女も……。
     車椅子の奴まで居る。
     そして……の代表らしき奴が……強い口調で、こう宣告した。
    「緒方一郎を渡してもらおう……。
     え? 俺、もしかして助かるの……あれ? 待てよ……。
     今「粛清」って言った気がするけど……どう云う意味?
    (12)「本部、武装部隊をK医大まで……暴徒が緒方容疑者を私刑リンチにかけようとしていますッ‼」
     冗談じゃない。冗談じゃない。冗談じゃない。
     何で、こうなるんだ?
    「緒方を渡せ」
    「殺せ」
    「殺せ」
    「殺せ」
    「殺せ」
     デモのシュプレヒコールかなにかみたいな……妙にリズミカルな掛け声。
    「や……やめろ……解散しないと……撃つぞッ‼」
    「弾が足りるか、馬鹿め」
    「馬鹿め」
    「馬鹿め」
    「馬鹿め」
    「馬鹿め」
    「緒方よ覚悟ッ‼」
    「お前の最期ッ‼」
    「覚悟ッ‼」
    「最期ッ‼」
    「覚悟ッ‼」
    「最期ッ‼」
     う……うそだ……暴徒達が……ジリジリと俺達に迫り……そして、その暴徒の姿は……俺の……俺にとっての……あこがれだった……。
     やめて……やめて……やめて……くそ……。
     ああ……あいつの……あの中二病野郎が言ってた事が……。
     俺が……自分で、自分の死を願い……そして……俺が自分で、自分が人として生まれてきた事そのものを呪うほどの……絶望。
     だが……それですら……絶望のズンドコでは無かった……。
    「やめろ……」
     何度も聞いた声。
     あの……メスガキの「正義の暴徒」の声だ……。
     だが……。
     おい……嘘だろ……。
     あいつらは……手加減していた……。
     俺をいつでも殺せた。
     あいつらの情けか……気紛れのせいで……俺は生きていられた……。
     そんな……嘘だ……嘘だ……嘘だ……。
    (13) そこに居たのは……「正義の味方」を名乗る暴徒どもの最終兵器だった……。
     人間サイズの強化装甲服パワードスーツであるにも関わらず、4m級の軍用パワーローダーを易々と破壊した……。
     たった1人で千人規模の犯罪組織を壊滅させた……。
     1〜2年前に起きたJR久留米駅付近の壊滅事件……それを引き起した超化物チート級の異能力者を退けた……。
     信じられない噂なら山程有る。
     ただ1つ言えるのは……話半分どころか……話一〇分の一でも……ここに居る人間全てを易々と皆殺しに出来ると云う事だ……。
     それが……2体も……。
     そ……そして……その片方の声からして……あ……あのチビのメスガキは……これの着装者だったのかよ……。
     一体は白銀。もう一体は青。
     それは……伝説の化物「護国軍鬼」だった。
     暴徒どもの声も……流石に消えている……。
    「まさか……出来の悪いドラマやアニメみたいな台詞を言う羽目になるとはな……」
     メスガキと言いたくなる齢の小娘らしい奴の……けど……背筋が一瞬で凍り付きそうな声。
    「この馬鹿を殺す為に、どんな犠牲を払うつもりだったんだ?」
     銀色の護国軍鬼は……大袈裟で芝居がかった感じで「呆れた」と云うゼスチャー。
    「こいつを殺す為に、あんたらが払おうとしてる犠牲には……こいつと同じ馬鹿になる事も含まれてるのか? そして……あんた達が尊敬していたクリムゾン・サンシャインの名前を……更に貶める事も……含まれているのか?」
    「ゲロ吐きそ……」
     ボソっとそう言ったのは……青い護国軍鬼。
    「言ってる私は、もっと吐きそうなんだよ……」
     うるせえ、「正義の暴徒」どもがッ‼
     俺が一番吐きそうだよッ‼
     何でだよ。
     何でだよ。
     何で何で何で何でだよッ⁉
     何で、「正義の暴走とは無縁なヒーロー」だった筈のクリムゾン・サンシャインのコスプレをした連中が「正義の暴走」をやらかして……「自分の正義に取り憑かれた暴徒」の筈のお前らが……何で、その「正義の暴走」を止めてんだよ。
     俺は辺りを見回し……。
     嘘だ……。
     冗談だろ……。
     この駐車場にも監視カメラが……。
     ああああ……。
     ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。
     この事件がニュースになって、あの監視カメラの映像が公開されたら……。
     違う違う違う違う……冗談じゃない。
     クリムゾン・サンシャイン達は……ある者はへたり込み……別の者は……戸惑い……。
     さっきまでの一体感はそこに無い。
     判んねえ。判んねえ。判んねえ。判んねえ。
     もう、何が「正義の暴走」で、何がそうでないか……何も判ん……おい、俺は……猿渡のおっちゃんが言ってた通りに……ネットで拾った言葉を意味も判らず使っていい気になってた阿呆なのか?
     嫌だ。違う。俺は阿呆なんかじゃねえ……。
     俺は……親父の跡を継いで……おい、俺の馬鹿。何、この局面になって……そんな事信じてやがる。なれる訳ね〜だろ、もうこの状況だと……。もう、俺には何も残ってね〜んだぞ、判ったか、俺?
     だが……次の瞬間……。
     何者かがバイクで銀色の護国軍鬼に特攻。
     バイクは一瞬でスクラップになるが……乗ってた奴は、その直前に飛び降り……。
     俺の両側に居た2人の警官が、瞬時に死体に変り……。
    「待てッ‼」
    「逃げるぞ……」
    「あ……あんたは……?」
    「話は後だ」
     俺を助けてくれたのは……1人の……クリムゾン・サンシャインだった。
    (14) 嘘嘘嘘嘘嘘……。
     どうなってんだ、おい。
     俺と……正体不明のクリムゾン・サンシャインを乗せたバイクは……筑後川の上の橋を渡り……そのうしろから、護国軍鬼達がバイクで追撃。
     走る車の間を縫い縫い縫い縫い。あああ……車酔いが気持ち悪い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死……。
    「な……なにか……武器は……?」
    「有った……」
     運転席のクリムゾン・サンシャインは……たまたま横に居た古めのガソリン車を散弾銃で撃つ。
    「うわあああッ‼」
     爆発。
     逃げ切れ……。
     うわあああッ……。
     炎の中から……護国軍鬼が乗ったバイクが出て来て……。
     逃げろ。逃げろ。逃げろ……おねがいだから逃げき……。
    「畜生。畜生。畜生……」
     クリムゾン・サンシャインはガソリン車を見付け次第、次々と銃撃。
     その内、いくつかは爆発炎上。
     だが、護国軍鬼達は更に俺達を追い掛け続け……。
    「何だと?」
     おい、待て……。
     まだ、冬には遠い筈だ……。
     なのに……。
     何で……。
     何で……。
     何で何で何で何で何で何で……何で……。
     何で、
     おい……あの「正義の暴徒」どもの異能力なのか、これ?
     とんでもないスピードで走ってた所でスリップ。
     バイクごと宙を飛び……。
    「うがあああッ」
     クリムゾン・サンシャインは俺の首根っこを掴み……空中でバイクから降り……いや、まだ地面に足が付いてないから、降りるってのも変だが……。
     そして、バイクを思いっ切り蹴った反動で反対車線に入り……。
     ドデンッ‼
     運良く軽トラの荷台に落下。
    「いたたたた……」
    「くそ……また、壊れやがったか……」
    「えっ?」
     ……あっ……。
     そんな……。
     いや……あの状況で……変な期待した俺が……馬鹿だった……。
    「まあ、いいや、おめでとうッ‼」
     そいつのスーツの色は……黒になったり……白になったり……。
    「どんな気分だ2代目……? あんたがやってた動画チャンネルは、チェックさせてもらったよ。アカBANされる前に、全部、見れて助かったよ。お蔭で、あんたが何が好きで、何が嫌いか、よ〜く知ってるよ」
     え……永遠の夜エーリッヒ・ナハト……。
    「はい、インタビューのお時間です。『正義の暴走』が大嫌いな連続殺人鬼2代目クリムゾン・サンシャインこと緒方一郎さん。率直な御意見をお願いしまぁ〜すッ♥」
    「お……おい……何だよ? 何が言いたいんだよ?」
    「いやねえ……ここ1〜2ヶ月で、色んな事が有り過ぎて、ちょっと現実感ってヤツが無くなってさ」
    「だだだだだ……だから……何が言いたい?」
    「なんか……この『現実』が素人小説家が書いた下手なラノベじゃないか、そんな妄想に取り憑かれかけてんだよ、俺」
    「はぁ?」
    「で、そのラノベのジャンルは『ざまぁ』ものだ……で、俺が主人公で、あんたが『ざまぁ』な事になる悪役」
    「だから……何が言いたいんだよッ⁉ 殺す気なら、さっさと殺せよッ‼」
    「いや、俺は生きてて欲しいんだよ。あんたにとって、最悪の地獄になったこの世界で、みじめに生き続けて欲しいんだよ」
    「へっ?」
    「まだ判んねえのか? だからさ……ぶっちゃけ、どんな感じなんだい? あんたの大好きな『クリムゾン・サンシャイン』が、あんたの大嫌いな『正義の暴走』の象徴になった気分は?」
    (15)「う……うそだ……クリムゾン・サンシャインは……正義の暴走……なんて……しない……」
     嘘だ。
     嘘だ。
     嘘だ。
    「嘘じゃないね……。クリムゾン・サンシャインの名が歴史に残るとしたら、ヒーローとしてじゃない。初代は屑人間にも人権が有ると信じて、その屑人間のせいで酷い目に遭った阿呆」
     え?……何の事だ?
     初代は……「正義の暴徒」どもか……永遠の夜エーリッヒ・ナハトに殺され……いや待て……待て……。
     何かが変だ……。
     俺の思い込みか……永遠の夜エーリッヒ・ナハトが……そう言ってるだけで……わからない……証拠がない……じゃあ……どこに行ったんだ……あの人は?
    「そして、2代目のお前は……連続殺人鬼。3代目軍団は2代目を私刑リンチにかけようとした『正義の暴徒』ども」
    「あ〜……あのさあんさ……それはいいけどよかけど……他人ひと車に、いつの間に乗っとったとね、あんたら?」
    「へっ?」
    「あれ?」
     気付いたら……渋滞で車が停まっていて……軽トラの助手席に居たおばちゃんが……俺達を見付けて声をかけたらしい。
    「変ったコスプレやね……まあ、よかけど、こっから先は、自分の足で歩いてもらえるね?」
    「は……はい」
    「は……はい」
     俺達は、とぼとぼと歩き出した……。
     ちょっと待て……これから、どこ行きゃいいんだよ、俺?
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトも……俺に何の恨みが有るのか判んないが……一時的に、俺への復讐心を失なってしまったようだ。
    「話の腰を折られ……おい……ちょっと足首を見せろ……」
    「ん? 何だ?」
    「『何だ?』は、こっちの台詞だ。これ、何だ?」
    「GPS発信機の足輪だが……」
    「あ……そう言や……あんまり実感湧かないが……お前……脱走中の連続殺人の容疑者なんだよな……」
     そう言って……永遠の夜エーリッヒ・ナハトが指差した先には……拳銃を俺達に向けて……誰かと無線通話している最中の警官が居た。
    (16)「阿呆か、てめえ……何で、警官殺しやがったッ⁉」
     もう夜だった。
     互いに憎み合っている筈の……俺と永遠の夜エーリッヒ・ナハトは……久留米市内を一緒に逃亡し続けていた。
     俺は……警官に投降したって、どっちみち、極刑間違い無しの真似を……えっと、待て、あれ、俺がやったんだっけ?
     何か冤罪を晴らす方法は……?
     まぁ、いいや。
     けど、困った事に永遠の夜エーリッヒ・ナハトはそうじゃなくて……俺達を見付けた警官を瞬殺しやがったが……。
     そして、殺した後に、警官が小型カメラを付けてた事を発見。
     どこをどう見ても……永遠の夜エーリッヒ・ナハトが俺の逃亡を手助けしているようにしか見えない映像が、警察署に送信されてしまっていたのだ。
    「その質問、何度目だ?」
    「何度聞いても、納得出来る答が返ってきてねえんでなッ‼」
    「うるせえ、お前と違って、俺には、まだ人生やりなおすチャンスが有るんだよッ‼ こんな所で警官に捕まってたまるかッ‼」
    「はぁ? 俺を連続殺人鬼に仕立て上げといて、自分は人生やりなおす気かッ⁉ このクソ野郎がッ‼」
    「なんだと?」
    「おい、知ってるか『銃で人を撃っていいのは、撃たれる覚悟が有る奴だけだ』ってのを。お前、人を罪に陥れといて、自分だけ助かる気か?」
    「はぁ? お前、『正義の暴走』もそうだけど、SNSで覚えたフレーズを意味も判らず使う癖が有るだろ、マヌケ」
    「誰がマヌケだ?」
    「『銃で人を撃っていいのは、撃たれる覚悟が有る奴だけだ』ってお前が言うと超笑えるぞ。丸腰の実の妹を銃殺しやがった鬼畜野郎は、どこのどいつだ?」
    「う……うるせえ……」
    「大体、俺がお前を罪に陥れただと? おい、お前がやった殺しの中に、何件、俺と関わりないのが有ると思ってるんだ?」
    「うるせえ……」
    「ほ〜ら、反論のレパトリーが尽き……やめた……お前と話してると俺まで馬鹿になる」
    「なんだと……」
    「恐かったんだぞ……『見習い君』を演じてた時は……お前を騙したけりゃ、お前並の馬鹿を演じなきゃいけなかったが……その馬鹿の仮面が、その内、顔から外れなくなる気がしてな……」
     俺達は……いつの間にか……ある団地に辿り着いていた。
     そう言や……。
    「あ……そう言や……ここから全てが始まったんだよな……」
    「覚えてたのか……」
    「まあな……」
    「じゃあ……すまないが……お前のせいで酷い目に遭った奴が居る……。そいつは、もう死んでるが……手の1つも合わせてやってくれ……そうすれば、お前を許せるかも知れない」
    (17) 逃げた。
     逃げた。
     逃げた。
     そして階段から転げ落ち……。
     痛い。
     痛い。
     痛い。
     ……てあれ?
     思ったほど痛くない。
     死の恐怖が痛みを消してくれている。
     多分だけど……。
    「ご……ごめん……本当に本当に本当に覚えてね〜んだよッ‼」
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトは、この団地の住人だった。
     そして、俺は奴の部屋に案内され……。
    「うるさい。お前を少しでも信じた俺が馬鹿だった。俺の親父を殺しといて……『誰だっけ、この爺ィ?』だと? やっぱり貴様は殺す」
     奴は……追って来る。
     多分……奴の方が……足が早い。
     もういい……ヤケだ。
     俺は、わざと階段を転げ落ち……。
     走って降りるよりスピードは上の筈だ。
     それに、息切れする心配も……ぎゃああああッ‼
     心に余裕が戻った途端に痛みが……。
     くそ、世の中は巧くいかない。
     どんな……どんな……どんな事をしてでも生き延びてやる。
     って……うげぇっ。
     歯が折れたっ‼
     口ん中切った‼
     痛えよ痛えよ痛えよ痛えよ痛えよ。
     ごろごろごろ……。
     ああ、くそ、あの野郎、何で、あんな上の階に住んでやがる。
     痛い。
     今までと違う痛み。
     蹴られた。
     落ちた。
     踊り場に激突。
    「そうか……どうせ、俺の顔も覚えてなかったんだろッ⁉」
     うん、ごめん、覚えてない。ガチで思い出せない。
     また蹴られた。
     また落ちた。
     また踊り場に激突。
     たしかに、奴の言った通り……人間に生まれた事を呪ったりもした……。
     そして……人間に生まれた事を呪ったのと同じ日の夜に、サッカーボールみたいに蹴られ続け……団地の階段を落ちるていき……。
     よし、俺は、生き延びたらラノベ作家になってやる。
     最初の作品のタイトルは「転生したらサッカーボールだった件」だ。
     って、痛え。
     あ……助かった……。
     ああ、もう……外に出て……。
    「ふざけんなッ‼」
     足蹴にされた。
     痛い痛い痛い……もう痛いの嫌だ。
    「ふざけんなッ‼」
     足蹴にされた。
     痛い痛い痛い……もう痛いの嫌だ。
    「ふざけんなッ‼」
     以下同文。
     何度も何度も繰り返し。
     ああ……何で……妹は……結構簡単に死んだのに、俺は……こんな痛い想いしても死ねないんだ。
     クソ……。神様だが運命だか知らないが……あのクソ妹ばかり贔屓にしやがって。
    「ふざけんなッ‼」
     ともかく痛い。
     ごめんなさい。
     気に入らない奴の事を「親にも殴られた事ないんだろ」とか言ってたけど、当の俺が親に……あれ……あ……思い出したッ‼
     俺のクソ親父、昔は俺をボコボコ殴ってたのに、世の中が「子供を殴るのは良くないです」って風潮になった途端に「子供を撲った事なんてありません」って言い出しやがったんだ。
     ああ、くそ、関東難民の件もそうだ。
     親父は関東難民排斥派だったのに、関東難民が票田として無視出来なくなると……あの人間の屑がッ‼
     クソ。
     しまった。
     何てこった……。
     山程、人、殺したのに……。
     一番、肝心の奴を殺してなかった……。
     俺、ここから生きて帰れたら……自分の父親を殺すんだ。
     って、これ、死亡フラグか?
     ともかく、痛い。
     やるなら、早く殺して。
     死ぬのは、初体験なの。
     やさしくしてね。
    終章「束の間の神の恩寵が有ろとも、人間の怒りは永遠に消えぬ」神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。
    涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう。
    旧約聖書 詩篇 第三〇篇より

    「いい加減にしろッ‼」
     聞き覚えのある声。
     昼間は……背筋が凍りそうな声だったが……今度は……まるで……。
     溶岩……。
     爆発……。
     核爆弾……。
     そんな感じの……危険だって事が本能的に判る……何か……。
    「うるせえ……。殺す……殺す……こいつだけは殺す」
     こちらも同じだ……。
     怒りだ……。
     近付くだけで恐くなるほどの怒り。
     自分に向けられていなくても、逃げ出したくなるような怒り。
     その片方が俺に向けられてるのに……俺は、もう体もロクに動かせない。
    「この前、再会した時より……更に言ってる事が馬鹿っぽくなったな」
    「あ……あぁ……そうだな……。悪い事をしちゃいけない理由は……悪い事をすればするほど……頭が悪くなってくせいかもな」
    「そう云う事だ。自分で言ってて吐きそうになるクサい台詞だが……言わせてもらっていいか?」
    「何だ?」
    「そいつと同じとこまで堕ちるな」
    「いい台詞だ。感動的だな。だが悪いな……もう……俺は……悪事のやり過ぎで、かなり馬鹿になってる」
    「やめろッ‼」
     えっ?
     何かが俺の体の上を通り過ぎた気がした。
     俺が顔を上げると……少し離れた場所で、永遠の夜エーリッヒ・ナハトと……あのチビのメスガキが戦っていた。
     もっとも……メスガキの方は……「護国軍鬼」ではなく、普通のプロテクター付のコスチュームを着けていた。
    「殺せ……俺もッ‼ そいつもッ‼ 頼むッ‼ お前の『正義』を遂行してくれッ‼」
    「悪いが今夜は……私が尊敬していた男の流儀でやりたい気分なんでね」
    「だ……誰だよ……それは?」
    「そいつなら……そこのマヌケや、今のあんたにだって……人権ぐらい有る筈だ、そう言っただろう」
    「なら、そいつは、そこのマヌケより酷いマヌケだ。自分が助けた筈の奴に牙を剥かれて殺されて当然の奴だ。自業自得だよ……」
    「それ以上、言うな……。それ以上、言えば……宣戦布告と見做す」
    「何が言いたい?『悪鬼の名を騙る苛烈なる正義の女神』さま」
    「百歩譲って……お前に、そいつを殺す権利が有ると認めたとしても……」
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトのパンチ。
     チビのメスガキが、片手でそれを払い……えっ?
     チビのメスガキは、何か武器を隠し持っていたらしい。
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトの手首から……凄まじい勢いで血が吹き出す。
    「お前に、そいつの心を弄ぶ権利が有ると認めたとしても……」
     だが……永遠の夜エーリッヒ・ナハトは構わずに蹴り。
     しかし、またしても……。
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトの足首から血が吹き出し……。
    「お前に、そいつを地獄に突き落す権利が有ると認めたとしても……」
     お……おい……変だ。
     手首の動脈を切られたのに……永遠の夜エーリッヒ・ナハトの手首からの出血は……止まっている。
     そう言えば……あいつは……あの身体能力は……。何人もの……それも銃を持った人間さえ簡単に殺せる奴。
     その上に再生能力まで持っているのか?
     化物だ……。
     そして、その化物と互角に戦っているメスガキも……。
    「今のお前に……私が尊敬していた戦士の名を口にする資格だけは認める訳にはいかんッ‼」
     これが……俺が「現実」だと思ってるモノが……もしラノベか何かだったら……主人公は、あの2人のどっちかで……もう片方がラスボスだ。
     そして……俺は……ただの……。
     モブだ……。
     たまたま……魔王と勇者の最終決戦の場に居合せた……とるに足りない……雑魚モンスターだ。
     おい……でも……何か変だろ。
     何で、主人公とラスボスが……魔王と勇者が……そんなモブや雑魚の事で最終決戦をやってんだ?
     判んねえ、判んねえ、判んねえ。
     何がどうして、こんな事になったんだよッ⁉
     2匹の化物は……その片方の血を全身に浴びながら戦い続ける。
    「その男を殺すと言っていたな。ならば、私は……今のお前が、あの名前を口にするなら、殺す」
    「ふざけんなよ……『殺す』って何だよ? おい、殺す気になってないのに、これか? これで……まだ本気じゃねえのか? おい、マジでふざけんな……お前……本当にただの人間か? 本当に……訓練を積んだだけの……ただの人間なのか?」
    「知らなかったのか? どんな神様より恐い生物は……ただの人間様だって事を」
     再生能力を持っているらしい永遠の夜エーリッヒ・ナハトだが……あれだけ血を流せば……流石に……。
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトは……力尽き……地面にへたり込んでいた。
    「もういいや……疲れた……。おい、そこの阿呆。最期にいい事を教えてやるよ。俺こそが初代のクリムゾン……」
     永遠の夜エーリッヒ・ナハトの声は銃声にかき消された。
    「警告していた筈だ。その名前を口にすれば殺すと」
    便所のドア Link Message Mute
    2022/03/02 14:25:08

    第四章:ありふれた悪事/Ordinary Person

    【主人公の主観に基く粗筋】
    現実に似ているが「正義の味方」「御当地ヒーロー」により治安が維持されている平行世界の地球の西暦2030年前後の福岡県久留米市。
    だが牙無き者達の護り手だった筈の「正義の味方」「御当地ヒーロー」達は、いつしか身勝手な独り善がりの「正義」に取り憑かれた暴徒と化していた。
    そして、そんな「正義の暴徒」から善良な市民を護ってきた「真のヒーロー」クリムゾン・サンシャインは「正義の暴徒」達により血祭りに上げられてしまう。
    だが、クリムゾン・サンシャインの遺志を受け継いだ平凡な青年・緒方一郎は「正義の暴徒」達に反撃を開始するが……「正義の暴徒」達は彼の家族や友人達さえも次々と手にかけていった。
    そして、ついに、主人公・緒方一郎が最も尊敬していた「真のヒーロー」だった筈のクリムゾン・サンシャインは、一郎が最も憎んでいた「正義の暴走」の象徴に仕立て上げられてしまい……。

    【悪役の主観に基く粗筋】

    おい、待て、何が「正義は必ず暴走する」だッ‼
    お前がネットで見付けた中二病っぽいフレーズを意味も判んねえまま鵜呑みにしたせいで何が起きたと思ってんだ、ボケっ!!

    【“正義の味方”の主観に基く粗筋】

    そう言うお前も最初の動機は復讐だったかも知れないが、どう考えても途中から面白がって人殺しまくってるだろ。

    【劇中世界での“事実”・“真実”に、比較的、近い粗筋】
    現実に似ているが「正義の味方」「御当地ヒーロー」により治安が維持されている平行世界の地球の西暦2030年前後の日本。
    そこでは、約10年前に富士山で歴史に残っている限り最大規模の噴火が起き、大量の通称「関東難民」が発生していた。
    福岡県久留米市に移住した関東難民の青年・関根優斗は久留米市長の娘と結婚し、そして義父である久留米市長とその後援会から次の市長選挙への出馬を要請されるが……。
    だが、元からイロイロアレアレだった義兄・緒方一郎は、実の父の後継者の座を優斗に奪われたせいで更にトチ狂ってゆき……そして、優斗は……地位・健康・子供を失なってしまう。
    だが、ある悪モンの暗躍もあって、更にゴニョゴニョな事になった義兄は、実の妹である優斗の妻さえも手にかけてしまい……。

    #伝奇 #サイコホラー #ヒーロー #近未来 #ディストピア #不条理ギャグ

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