奴など魔皇軍4大元帥の中で最弱 または Ⅹ(テン) OF SWORDS「ガキの頃、あんな弱虫だったお前が、勇者サマ気取りとはな……。せいぜい、足手纏いにならないように気を付けろよ」
「おまままっえええ……こここ……」
「はぁ? 何言ってんだ、お前? もうビビってんのか? なら、無駄死にしない内に、とっとと失せろ」
子供の頃、僕をいじめてた脳筋野郎が、やれやれという
表情になった。
ビ……ビビってんじゃない。
魔皇を倒せる唯一無二の聖剣に選ばれた僕が……こんなヤツにビビる筈が無い。
『お前こそ子分が居なけりゃ何も出来ないクソ野郎だ』
って言い返すつもりだったけど、大人気ないからやめただけだ。
い……いまにみていろでございますよ。
こ……ここ……この戦いで、手柄を立てて、こんなヤツ見返して「ざまあ」してやる。
だって……僕こそが世界最強の唯一無二の聖剣に選ばれた勇者なんだから……。
目の前には……無数の魔物達。
それを率いているのは……人間の2倍ほどの身長という上級魔族の中では小柄だが、威圧感はハンパないヤツ。
で……でも……。
奴など……。
「貴様など、この聖剣の前では……」×10
僕と……僕をいじめてた脳筋野郎をふくめた約一〇人が同じ事を叫んで……剣を……剣を……剣……抜……抜抜抜抜ああえええはぁぁぁぁッ?
おい、何で、僕の聖剣とそっくりの見た目の剣が……9個も有るッ⁉
魔物の軍勢を率いている魔皇軍4大元帥の1匹(と言っても4大元帥最弱のヤツだけど)の頬がふくらみ……目尻がたれ下がり……。
そして……。
魔物の軍勢は大笑いし始めた……。
え……おい……どうなってる?
「なんという恐しい攻撃だ。
お前らが自分達の行為を攻撃だと思っていればの話だがな。
笑い死にしそうだ」
ヤツは笑い続けながら……僕と……僕の聖剣とそっくりの剣を持っている9人を1人1人指差して……。
「それが、太古の昔に陛下を倒した聖剣か……。ところで、
唯一無二の筈の聖剣が、
何故、
いくつも有る?」
「畏れながら閣下、魔法の生配信での視聴者数が二〇〇万を超えました。皇国中バカ受けです」
「それは良かった」
ヤツは部下と馬鹿話をしながら、とっても不真面目に、僕たちを攻撃し……。
多分……本物の聖剣なんて、この場に1つも無かったんだろう……。
一〇本の剣は全て砕け……。
傷は……浅い……。
でも、傷口から血や肉が……どんどん腐汁と化している。
そして……体中から力が抜ける……。
立ち上がる事さえ……。
「ふざけるな……俺達は死んでも……誰かが本物の聖剣を見付け出し……」
ドオンッ‼
自分を聖剣に選ばれた勇者だと思ってた一〇人のマヌケの内、あのいじめっ子だけが立ち上がり、折れた剣を手に、おぼつかない足取りで魔物達の方に向かっていった。
しかし……魔元帥の今度は本気らしい攻撃で、跡形もなく消し飛んだ。
「人間にしては見事な奴。褒美に希望を抱いたまま死なせてやろう。だが、勇敢だが、愚かではあるな。我々が本物の聖剣を隠す為に、
一体何本の偽の聖剣を人間の世界にバラ撒いたと思っているのだ?」
えっ?
まさか……。
そんな……。
僕達は……魔物達が聖剣をどこか……簡単に入手出来ない場所に隠したと思い込んでいた。
でも、魔物達の発想は逆だった。
どこにも隠してない。
ただ、
どれが本物か、
誰にも判らなくしただけだ。
「し……知るか……そんな事……」
残る9人の間抜けの1人が悪態をつく。
ドオンッ‼
「正解だ。こいつは、さっきのより勇敢さは劣るが……人間にしては頭がいいな」
生き残ってるマヌケは8人に減った。
「ああ、なるほど……他の奴は、理解出来ないようだな……。お前ら人間より遥かに頭がいい我々でも……考え出すのは大変だったんだぞ……。
偽物の聖剣が何百・
何千・
何万本有って、
本物がどこに有るのか、
陛下御自身を含めた魔皇国の誰1人把握出来なくなるような方法で偽の聖剣を大量生産してバラ撒くにはどうすればいいか? をな……」