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    to be continued バリーも権も図鑑掲載外生物に詳しい。中でもバリーは局地的に発生する危険生物、権は未確認生物に詳しかった。
    「こんなに人型に近い個体は地元でも見ないわ」
     権の足もとに転がる操縦者は頭が縦二分割であること以外は、人間に近い形態をしている。
    「元人間デモナサソウデスガ、何トイウ生物デスカ?」
    「名前はないわ。寄生外殻の一種よ。他の生物を自分の中へとり込むところは普通の寄生外殻と同じなんだけど、こいつは複数の生物をとり込んで充実すると脳や人格を形成することがあるの。そういう個体はすごく珍しいんだけど」
     壁や床、コンソールに付着するFeタイプの血痕を見回し、バリーが続けた。
    「こいつはクルー全員をとり込んだようだから、脳や人格を持っていたかもしれないわ。生きていればもっと高値で売れたのに」
     バリーは心底残念そうにため息をついた。
    「コノ船ハ高級食材ヲ密輸シテイタヨウデスネ。クルーヲトリ込ンデシマッテハ、食材トシテノ価値モアリマセン」
     寄生外殻の頭部に光る刻印をみつけて、権がいった。刻印は頭部とともに二分割しているため左右がずれてわかりにくかったが、頭部が動いてそろうと巻き貝に似たーーー
    「!」
     操縦者は権の足を力強くつかみ、投げた。
     数メートル先の空中で権は時空安定装置の存在を確認し、違和感を覚えながら壁に激突した。
    「やった!」
     大喜びするバリーの目が操縦者に狙いを定めた。バリーの母星の住民は人間が多い。バリーと故郷を共にする操縦者もまずは人間であるバリーに狙いを定めたようだった。
    「ヨカッタデスネ!」
     壁際で立ち上がった権がスーツの埃を払いながら、自分をとり込もうとする二分割頭部を素手で制するバリーを祝った。

     バリーの読みどおり、操縦者には脳と人格が形成されているようだった。そうでなければ、話し合いによる捕獲の快諾は不可能なはずだ。
     「食べない」という条件で、操縦者は比較的おとなしく食材用ポッドに再収納された。思考はまだ幼いようだ。
    「ナゼ寄生外殻ガコノ船ヲ操縦シテイタノデショウ?サッキノタコトイイ、食材ガナゼ自由ニ出歩イテイタンデショウ?密輸船ナラ高級食材用ポッドハ購入者ノAIニヨッテ管理サレテイタハズデス。到着マデポッドガ開クハズハアリマセン」
     購入者はたとえ船が墜落しても、荷物だけは回収するつもりでポッドに金をかけたのだろう。壊れているポッドは一つもない。
    「時空安定装置の不具合で開いたんじゃない?」
    「ソレガ妙ナンデス。コノ船ノ時空安定装置ハ、今マデ事故ヲ起コシタコトノナイ優良ナメーカーノモノナンデス。確認シマシタガ、改造モ不具合ノ形跡モアリマセン。クルーカAIガイカレデモシナイカギリ、コンナ座標ーーー」
    「クルーがイカれた可能性なら大いにあったと思うわよ」
     何か思いついたように船を飛び出した権を追ってバリーが船を出ると、円盤の表面のマーブル模様を指して権がいった。
    「コレ、バクテリアデスヨ!」


    to be continued



    「生デ見ルノハハジメテデスガ、コレハAIヲ餌トスルバクテリアデス」
    「AIがバクテリアに食われて壊れたせいで、ポッドも座標も滅茶苦茶になったってことかしら?」
    「ソンナトコロデショウ。マニュアルヘノ切替ハ間ニ合イマセンデシタガ、クルーヲ取リ込ンダ寄生外殻ハソノ意思ヲ模倣シテ操縦席ニツイタノカモシレマセン」
     一通り推測したところで、この船に起こったことは二人には関係ない。宝探しを再開するため船内へ戻ると、先ほどまでシンとしていた船内に何かが起動する音が響いた。
    「イカれたAIのお目覚めかしら」
     バリーが言い終わるかないかのうち、二人の歩く廊下の防災壁が、殺意を持って二人を切断する勢いで閉まった。
    「AIヲ餌トスル、トイウ話ハ語弊ガアルミタイデスネ」
     間一髪で避けて、権がいう。防災壁は来た方も行く方も閉まり、二人はつかの間、廊下に閉じ込められる形となった。
    「コノバクテリアハ、AIヲ操ルヨウデス。...ポッドヲ開ケタノモ、座標ヲ変エタノモ、クルーヲ排除シヨウトシタバクテリアノ仕業デショウ」
     バリーの大斧が行く方の防災壁を破壊する。バリーの力と業物の大斧を敵に回せば、大抵のものは壊されるしかない。
     バリーの大斧に斬り崩された防災壁の向こうに、動力の戻った船内が見えた。
     二人は顔を見合わせたのち、それぞれの方向へ走った。バリーは寄生外殻の入ったポッド、権は時空安定装置を確保し、さらに予め寄せ集めてあったいくつかのお宝を抱え、来た方の防災壁をバリーが破壊し、二人は船外へ飛び出した。
     バクテリアAIをのせた宇宙船はどこかへ飛び立つつもりらしく、いかにも宇宙船の離陸といった様子で船外を光らせている。
    「持って帰れないのが残念ね...」
    「論文デモ書クツモリデスカ?」
    「あれを俺から買ったやつが書くのよ」
    「ソレナラココノ座標ヲ売ッタラドウデス?」
     権が持ち出したお宝の一つをバリーに見せた。時空変換装置。
    「ココハ出入口ノ少ナイ場所デス。幽霊船ラシク、シバラクハ彷徨ウコトニナルデショウネ」

     二人は来た道をぴったり辿ると、銀色の物体、ウェザーバルーンが散らばる丘に出た。月は二人が円盤を見つける直前の位置から、少しも動いていない。
    「あなたのおかげでいいお宝を手に入れることができたわ。あとは、あなたを船長のところへ持って帰れば完璧ね」
    「...連レテ帰ルトカ言ッテクダサイ」


    end
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    2024/02/08 20:58:16

    to be continued

    ##石鹸丸 ##文

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