お巡りさん生き人形たちと会う
注意
このお話は多大なるネタバレが含まれてます。
本誌を読み始めた方単行本を買い始めた方は注意をお願いします
捏造、キャラ崩壊注意
愛され注意
夢主がでしゃばります。
誤字脱字注意です。
時々予告なしに修正が入ります。
夢主は男主人公です
トリップ主なので現代の道具を肌身離さず持ってます。
完全に俺得小説です
夢主が玉蹴りされてます。
夢主は生き人形とシャドーとも言えない設定です。
長めの5ページです。
*この話は主人公たちと出会う前の話です!
ちなみに呼び方ですが、
夢主のことですが、一応大人なので、アカツキ様と呼ぶものと生き人形と同じ姿をしてるので呼び捨ての者たちもいます。
呼び捨てがいい派ですが、好きに呼ばせてます
星つき(オリバー以外)星つきの生き人形たちは 「アカツキさま」
バービーはやしおを認めてないので「行き遅れ」
後の生き人形シャドーはアカツキ様と呼ぶ人とやしおと呼ぶ者たちで分かれます。
主人公
暁やしお
26歳
職業お巡りさん。
甘いものが大好き、苦いものな死ぬほど嫌い。子供も割と好き。
星つきたちとしかまだ関わってないが
なんやかんやいってみんな可愛い、いい子たちだと思ってる。
バービーに生き遅れと言われて内心傷ついてる。
顔が怖いことが悩み。
やしおは久しぶりに夢を見る。
子どもたちの塔に来て早一ヶ月半。
慣れないことが多くどっぷり疲れていた彼は床に着くと気がついたら爆睡していたなんてザラで、夢なんて見る暇なんかなかった。
それが今日久しぶりに見たのだ。
それはここの時代に来る前に助けた猫の夢だ。猫はシャドー同様に顔がなくただ猫の形をしていた。周りは真っ白で何もない。しかし不思議と恐怖を感じなかった。
「んなーー」と鳴いてやしおの足元にきて自分の身体を擦り付けて甘えてくる。
「なんだお前無事だったのか」
やしおは一際優しい声を出すと顔のない猫を優しく撫でる。無事も何も枝が折れて真っ逆さまに落ちる時にやしおは猫を渾身の力で相方の方に吹っ飛ばしたのだ。やしおはその目で相方がキャッチしたのを確認している。
「でもなんで、お前が夢の中にいるんだ?」
「やしお!!」と元気で可愛い声が不意に響き渡る。
はて、誰に呼ばれたのやら…とはキョロキョロとあたりを見回す。
そしてまた自分の名前を呼ぶ声が響いた。
やしおはやっと黒い猫の方を見た。
「今のお前が?」
やしおは猫の喉を撫でながら聞く。
すると猫は喉を鳴らしながら
「そうだよ」という。
不思議と驚かなかった。今の今までシャドーという顔のない子どもたちと関わっていたので猫が喋ることくらい別にどうってことない
「やしおお願い。みんなを助けて」
顔のない猫に告げる。
「みんなって?」とやしおは小首を傾げた。
いくら正義感の強いヒーローでもみんなというのは幅広すぎると少し苦笑をする。
「明日になればわかるよ、やしおがいるところの異常者と狂気、正義感の強い君ならきっと…」
猫の声がだんだんと聞き取れなくなる。
やしおは夢から覚めるのだ。
「明日になればわかるってどういうことだ?」
バーバラから予定のこと何か聞かされてるっけ?
なんかあったっけ?やしおは夢見心地のままそう思う。意識のある夢を確か明晰夢という。そして猫の夢はここで終わった。
チリンチリンと鳴り響くベルの音でやしおは驚き目を開ける。そしてどこで鳴ってるかを確認すればベットの脇のベルだった。いつもは鳴ることないし、なんのためにつけてたのかわからない。しかしベルは部屋で鳴り響く。
やしおはゆっくりベットから身体を起こして大きく背伸びをしカーテンをゆっくり開ける。
朝日が眩しく体を容赦なく照らす。
薄ぼんやりとした意識は覚醒する。
「すげー大きなベルの音が響いたな」
完全に職業病であるからして反射的にバーバラたちに何かあったと思い早技で警官服に着替えると銃と手錠と警官手帳持ち、警官帽子をかぶると部屋から勢いよく出る。
「あれ?やしお。おはよう!!早いな!」
オリバーとオリーとすれ違う。
やしおはキキィッとブレーキをかけて足を止めてすごい勢いでオリバーに迫る。
「オリバー、オリー?!無事か?!チリンチリンってベルの音が響いただろ?!変質者か?!任せろ!俺が守ってやる!」
「は?」
オリバーとオリーは顔を見合わせてポカンとしたあとに呆れた顔をする。
「おいおいやしお、寝ぼけてるのか?顔でも洗って目を冷めしてきなよ」
「寝ぼけてなんかねぇよ!あのベルの音は空襲か!!てか、お前たち怪我はないか!?」とオリバーとオリーを触って怪我はないか確認する。それを二人は振り払うとオリバーは口を開く。
「今日は生き人形の大掃除の日だよ、生き人形が集まって汚れたところの掃除をするんだ。だからベルが鳴ったんだよ。やしおは生き人形に近い存在だからベルは一応つけさせてもらった。でも大人だから気にしないでもう一眠り…あれ?」
もうすでにやしおの姿はどこにもない。
「オリバー先生、アカツキ様…説明の途中にものすごい速さでどこかに向かわれました…」
オリーは顔を中断して唖然とした表情でオリバーに伝える。するとオリバーの頭からは煤モワッと
で始める。話を聞かない青年への不快感だ。
「やしおー!!!バーバラに怒られても知らないからな!!!!!」
もう既にいない彼に向かってそう叫んだ
一方のやしおは大掃除と聞いて何か手伝えることはないかと星つきの居住区から他のシャドーたちの住む居住区に全力疾走をしていた。最早お巡りさんじゃなくって変質者である。
何人かの顔の見えない人形とすれ違った。
彼らは本当に何も言わない。
全力疾走をして外の廊下を駆け抜けて一般の子供たちの移住区にたどり着き扉を開けて中に入り廊下を抜けて歌声が聞こえてきた。
「拭けば明日は煤が積もる♪煤が積もればまた拭ける♪」
歌声がする場所に行ってみる。
たどり着いたやしおは圧巻する。
屋敷の広さとそしてたくさんの生き人形がいることに。みんな小高学年で中高生くらいの子供たち。女子はフリルのたくさんついたメイド服みたいな服を着用してる。男子は執事服の上着がないベストだけ。厚着してるものもいて顔にはロビンマスクをつけて隠してる。
(女子の服可愛いな!)
ここにいるだけでも十分怪しいやつなのだが怪しまれないように子供達の服をチラチラと見る。
ただ、チラチラ見られてるものは恐怖で体を震わせていた。
そのうち、ひそひそと話し声とたくさんの視線がやしおを突き刺す。
「え?大人の生き人形?」「何でここにいるの?」「詮索しちゃダメだ、みなかったことにしよう」「うわ、怖い顔」「俺たちのことを食べたりして」
ひそひそ、コソコソ、心のない言葉の数に流石に居た堪れなくなったのかその場を離れて歩き出す。
暫く歩いてると図書室のような場所に辿り着く。
そこで茶髪の女の子と麻色の髪の毛の女の子が掃除に悪戦苦闘をしていた。
「ちょ、ローズ!ちゃんと抑えててよ!揺れてる、揺れてる!」
「ミア、頑張ってぇ」
麻色の髪の毛の女の子がいかにも脆そうな梯子に乗って黒いもの…いや煤をとっていた。
梯子はガタガタ揺れており女の子の力では到底抑えることは難しい。人?が乗ってたりしたら尚更だ。
やしおはすぐさまその場に赴き、梯子をガッチリ抑える。突然現れたみたことない大人の男に少女たちは驚きめを見開いた。
「大人の方…?」
「な、何でここに?!」
反応を見て大人達は子供達を干渉しないことをやしおは改めて知った。星つきたちからなんども大人達は子供に興味がないことを聞かされていたが
自分がいて、手伝っただけでこんなに驚かれるなんて思ってもなかった。
「それよりも掃除が先だよ。まだ拭き取りきれてない煤があるだろ?」
「そ、そんな!!無礼なことを」
麻上色の少女はやしおをやめさせようと慌ていたが「いいから」とやしおは一言言えばぎこちなさそうに麻上色の少女は高い本棚の上にある煤を雑巾で取る。
「俺梯子を押さえてるから、君は他のところを掃除しなよ」
茶髪の髪の毛の少女に伝えればすこしぎこちない笑顔を作りとりあえずお言葉に甘えたのか床を箒で掃き出す。
やしおはというとじっーと掃除した図書館を見つめる。
小学校の図書室くらいの広さがある図書館。
自分の小学校にも図書室清掃が割り振りにあったことを思い出す。班員は二人とかではなくって四人だったのでそこまで時間がかからなかった。
(二人だと大変だろうに)
「なぁ、君ら班員二人だけなのか他の仲間は?」
何気なく質問すれば麻上色の少女がひそひそ話をするような口調で答えてくれた
「大人達に二人お呼ばれされたからいないんですよ。あなた達が呼んだのに知らないんですか?」
少し恐る恐ると言ったような語気だった。
「すまんな、俺はここに来たばかりだから分からないんだ。大人たちからここの指導係として派遣されたんだ」
監視員だと近寄り難いと思い指導係と名を変えて
少女たちに説明する。麻上色の少女は驚いた声を上げた。
「大人って私たちに興味ないのよ?!それなのに何故?!」
「ミア…あまり詮索してはいけないわ」
茶髪の少女が麻上色の少女ミアを嗜める。
ミアは納得できないようですこし混乱してると言うか面白そうにしていた。
「驚くのも無理はないよな。星つきたちから追々説明があると思うから、それよりも君たちの掃除を手伝わせてくれ二人でこの図書館を掃除するのは大変だろ?」
「そんな無礼なこといけませんわぁ、掃除は苦ではありません寧ろ光栄なことなので」
「そうですよ!!何とかやりますから」
ブンブンと首を横に振り拒否のような遠慮をされる。やしおはすこし肩を落とす。星つきたちには他人行儀の呼び方をされ、見知らぬ土地でなんやかんや寂しいのだ。
「無礼だとか何とか関係なしに俺は手伝いたいから手伝ってるんだ。この広さでこの本の量は二人なんて終わらないよ。遅いって怒られちゃうだろ?一人増えた方が戦力になるよ。足は引っ張らないからさ頼むよ」
両手を合わせては拝むような気持ちで二人に頼み込む。すると二人は顔を見合わせる。茶髪の少女が少し考えると
「わかりましたぁ、それなら本についてる煤を布巾で落としてください」
茶髪の少女はまだ真新しい布巾をやしおに差し出す。断るのも忍びないと思ったのだろう。
「…バケツに水が汲んであるからそこで濡らすといいですよ」
ミアは申し訳なさそうにしながらやしおが支えてる梯子に乗りながら親切に教えてくれた。流石にグラグラ揺れてる梯子をそのまま放置はできない。
「君が煤を全部拭き取ったらやるから安心してよ」
支えながら近場の本を手に取ってみる。
本は真っ黒に煤汚れがついていた。
(バーバラたちシャドーって触れたものでさえも汚してしまうんだな。そういえば手袋をつけていたような気がする。細かい作業する時とかやりづらそうだ)
ミアが上の拭き掃除基、煤を取り掃除が終わったのを見越してやしおはミアと共に本の煤とりを開始する。
初めてやったのに彼はとても手際が良かった。いやプロの領域に達していたので二人に驚かれた。
「流石ですわぁ、無駄のない動き!」
「大人ってすごいわ!憧れる!」
「ま、まぁな…此処でも色々と」
驚く二人と尊敬の眼差しに照れ臭くなる。流石に元世界で亡き親にやらされたなんて言えやしなかった。
「そうそう二人の名前を知りたいな。俺は、やしお・暁。大人たちから派遣された身だし、君たち生き人形と同じ姿だからやしおでいいよ。君たちと同じ姿だし、敬語もなしだ」
そう言ってしまえば麻上色の少女が確かにと言う。
「あたしはミアよ。よろしくねやしお」
「私はローズマリー。ローズって呼んでくださいねぇ、10班の班長です」
ローズマリーとミアがやしおに名乗る。
「ローズにミアか、可愛いなよろしくな」
やしおは怖い顔をしてる割可愛い人懐こい笑みを
二人に見せる。
久しぶりの心からの笑顔だった。
星つきたちにも微笑んでいたのだがあくまで微笑みだけだった。
久方ぶりに2人のおかげで不安やらストレスが吹っ飛んだのだ。掃除が気分転換になったのもある。
すると、10班の様子を伺っていた他の班員たち
ローズマリーとミアは顔を見合わせる。
「おー、お前たちも何か困ったことあるのか?遠慮なく言ってくれよ!2人とかで頑張ってる班のところに行くからな!」
感じよく伝えれば野次馬を作っていた子供たちの中に金髪の高校生くらいの男の子が恐る恐る手を挙げた。
「次行くから待ってろ」
その男の子に近づきやしおは優しく頭を撫でる。
すると他の生き人形たちがワッと声をあげる。
我も我もと手伝ってほしいところを一斉に言い出した。そんな姿に圧巻しつつも彼は嬉しさを覚えた。
かくしてやしおはいろんな班の掃除を手伝うことになる。代わりに重いものを押したり、高いところから物や煤を取ったり、梯子や抱えてあげたり。まぁ、活躍をしていたのである。
最初のやしおの第一印象の怖いから優しいに変わる。優しいやつだとわかれば子供たちは怖がることなく近づいてくる。
まあ、そんなこんなで掃除がなんとか終わり、やしおの周りには生き人形がわちゃわちゃしていた。
色々ともみくちゃにされながらやしおはみんなと大広間に集まっていた。どうやら懐かれたようだ
いっぺんにみんなで質問してくるので聞き取れないでいてやしお(はあー)と体を揺らす。
懐かれたと言うよりはおもちゃにされてるという表現が正しい。
「今日は喜びの会よ!やしおも参加するの?」
ミアが嬉しそうに両手を広げて言う。
「喜びの会?なんじゃそりゃ?」
やしおが他の子供達に質問すれば信じられないような顔をされる。そんな顔をされてもとやしおは眉を下げた。
「週に一度ね成人した子どもたちへのご褒美だよ!」と七三分けにしてる少年が言えばみんなは同然と言ったようにうなづく。
そして幸せそうな恍惚とした顔をする。
ご褒美のことも気になったが
成人?とやしおは首を傾げる。
どうみても小中高生の子供にしか見えない。
やしおのイメージの成人は自分のような青年を思い浮かべていた。
(成人って大人ってことか?いや、どうみてもこいつらみんな子供だろ?、いや待てよ)
やしおはハッとする。
ここは自分がいた時代とは違うってこと、ここは中世そこらの海外だとやしおは認識していた。
それならミアやローズマリーのような子供を成人とみなしてもおかしくない。
「そうか、大人になったご褒美か…」
「あら、何を言ってるの?大人はお呼ばれされないとなれないのよ?」
またさらに頭が混乱してきた、ここにいる子供たちは成人してるけど大人ではなく子供で。悪魔で成人した子供。頭の中は真っ白になりやしおはフリーズする。
「あらあら、大丈夫ぅ?」とローズマリーはやしおの背中を優しく撫でる。
「まぁ、おいおいに分かるって!作られたばかり?なのかわからないけどだんだんと慣れてくるわ!」
ミアはバシッとやしおの背中を強めに叩く。
やしおはミアやローズマリーややしおの周りにいる生き人形たちのように館で作られたわけではなく遠い未来の令和から来た警察官だなんて言えるわけでもないので、「あぁ、うん、ありがとうなミア、ローズマリー、後みんなも」
適当にお礼を言って合わせておいた。
それなら波風は立たないだろうと思った。
他にも聞きたいことがあったが「外に出よう」と星つきの生き人形達に言った時のようになったらやしおの精神が持たないので聞かないことにした。
(ご褒美ってオレももらえるのか?)
********
彼の勝手な行動は星つきたちにも伝わってるわけでチクリ魔基、星つきにおべっかを使って良い思いをする生き人形もいる。
栗色の髪の毛をふたつ結びにした、双子の姉妹人形。どっちが姉で妹なのかも分からなかった。
「ボンクラ班と他の班の手伝いをしてます
それっていいことなんですか?」
「掃除は自分たちの手でしなきゃいけないのに」
双子が星つき達に問う。
「あの行き遅れが…」
生き人形とは仲良くなってはならない、そして深く関わってはいけない。生き人形は悪魔で顔なのだ。彼らに個はない。
「ベル、ありがとう」とスージーは報告してくれた双子にお礼を言い下がらせる。
バービーは少しイライラした様子で2人の報告を聞いた。そして、やしおと朝交流した顔のオリーをにらみつける。するとオリーは焦ったような口調で
「僕止めましたよ!!でも既にもういなかったんですよ!」
「言い訳よ、ちゃんと体を張って止めなきゃ」
スージーがすこし語気を強めてオリーを問い詰める。やしおの体格程の男がすごい速さで走っていくのを止めるのは至難の技である。
オリーは想像して少しげっそりとした顔をする。
「すでにそこにはいなかったし、めっちゃくちゃ足速かったし…」
「力つくでやめさせればいいことだ」
「どうやって?ベンよりも大きいし体躯もいいよ」
星つきたちはやしおを思い浮かべる。
やしおは186センチと大きめの身長にがっしりとした体型。警察官として活躍するには十分である。
「…イラつくやつだ」苦々しくバービーは口を開く。星つきにとってはやしおはとてつもなく扱いにくい存在だ。生き人形と同じ姿をしていたとしても大人たちの塔と大人と一緒の年齢である。
どう、接したらいいのかわからない。
所謂職場新人の歳上が入ってきたような感じである。色々悶々としながらバービー達が大人たちから支給されたご褒美を持ち行けば、子供たちの中にやしおがドーンと混ざっていた。
星つきたちが姿が見えた途端他の子供達は急に静かになり、顔をこわばらせる物、ガタガタと震える物、顰めるもの。
「おはよう、バービー、ベン、スージー。オリーはさっきぶりだな」
呑気にひらひらと手なんか振ってるもんだから、バービーの怒りに火がつく。
ズカズカと大股でやしおに近付けば、他の生き人形たちは蜘蛛の子が散ったようにいなくなる。そしてバービーは勢いよくやしおの溝に蹴りを入れた。
しかしやしおはとても固い。
溝はまるで鉄でできてるんじゃないかってくらいに固かった。
バービーは何度か蹴りを入れてる。
それを戯れついてるのかと思ったのかやしおは少し嬉しそうな顔をする。けっしてマゾではない。
ただ、バービーが俺にじゃれついてくれてると思って嬉しく思ってるのだ。
「生き人形と親しくなるなって言っただろうが!この生き遅れ!!!!」
バービーの怒りの蹴りがやしおの股間に当たる。
股間は男のシンボルであり弱点でもある。いくら堅いやしおでも流石にそこを蹴られたらダメージがあるわけで流石に蹲る。
「バービー、 バービーちゃん?、さ、さすがに、そこ、ちょっと…痛い、というか、」
前言撤回仲良くなんて慣れてなかった。
蹲るやしおにしまいには手に持っていた堅いハンドベルをガンっと頭に叩きつける。
ハンドベルは激しくリンリンと音を鳴らす。
「うぎ………」
やしおは股間の痛みと頭の痛みに悶絶する。
そんなやしおを尻目に、何事もなかったかのようにバービーは子供達に喜びの会を宣言する。
すると、やしおを心配そうにみていた子供たちはそちらに集中が一転した。
バービーは何かとやしおにあたりが厳しい。
理由は認めてないからだ。
此処に派遣されたやしおの存在を疑ってる。
彼は大人たちから派遣されたものであるのも関係なしに暴言、暴力は当たり前だ。
「いつまでそんなところで蹲ってるのよ。立って。あなたにも一応ご褒美があるわ」
蹲ってるやしおの手をスージーが引っ張りゆっくりと立たせる。
「ご褒美ってなんだよ?」
まだ痛む頭をやしおは抑えながらスージーに聞く。
「珈琲よ」
スージーは色っぽく恍惚な表情を浮かべた。
珈琲ときいてやしおは顔を顰める。
「砂糖とミルク入ってるのか?」
「何馬鹿なこと言ってるの!!入ってるわけないでしょ?」
衝撃的な問いにやしおは絶望する。
砂糖もミルクも入ってない珈琲なんて珈琲じゃない。甘党好きのやしおは砂糖が入ってない珈琲が大の苦手であった。
「オレ……」
「どうしたの?早くいきましょうよ。まずは私たちからなのよ?」
やしおは少し後退りをするがスージーが手を掴んでるため逃げることはできない
ずるずると連れていかれる。
珈琲は青い瓶の中でタプタプと揺れており、そしてそばにはスポイトがあった。何に使うのだろう。そんな疑問を思い浮かべないほどやしおはすでに憔悴しきっていた。
「ほら、暁様の番ですよ」
「ここに座って」
スージーとベンがやしおを前に座らせる。
オリバーはスポイトにコーヒーを注入する。
もう逃げられないところまで来てしまった。相手が大人なら力つくで逃げられるけど。今回珈琲を提供してきたのは子供。
目の前にいるオリーを見つめてみる。
催促するようにスポイトを構えている、他の子供たちもいる手前ここで拒否したらやしおの信用と信頼はガタ落ちである。
意を決して男らしく口を開けたら口舌に苦くて黒いものが落ちてくる。
ゔぇと嗚咽と吐き気を催すがグッと堪えていな飲み込む。そして、
「お、ぃ、しぃな」
苦さで引きつった顔でバーバラたちに伝える。
「飲んだのならさっさと退け」
バーバラに冷たくあしらわれてやしおは肩を落として退散する。
生き人形の星つきの中で一番とっつき憎いのはバービーだ。常にイライラしてる、やしおも一応は大人たちの塔から派遣された大人なのに手が出たり暴言がひどい。やしおは軽くあしらってるがこれから先の生活においてどうしたものかと考えてる。しかし、今はコーヒーの苦さにやられており
まともに考えられない。
星つきたちも珈琲を飲み終わり、
「さあ、一列に並べシャドーハウスへの感謝を忘れるな」
ミアやローズマリーや他の生き人形たちは嬉々としてとても美味しそうに珈琲を飲んでいた。
(みんな舌が大人だな…)とやしおはぼんやりとその光景を見つめる。ちょうどよくミアが珈琲を貰い終わり心底美味しそうな満足な表情を浮かべていた。大人舌な者には苦い珈琲は至福なのだろう。
しかし、やしおはそんなミアに違和感を感じた。
なんだか瞳の色が黒く変色してるような。
気のせいかと思い目を擦るがその瞳の色は真っ黒なままで消えることはない。
他の生き人形たちの目も黒くなっている。
(なんだ、何が起きてるんだ?)とやしおは思う。
そして、ハッとした。星つきたちと交流した時のことを思い出す。
(あの時と一緒だ!!)
バービー、オリー、スージー、ベンの顔をみる。
4人ともあの時のように目の光を無くしていた。
やしおの背中を総毛立つ。
やがて珈琲が全員に行き渡る。
「シャドー家のルールを復唱する代表者は!!」
目が黒いバービーが両手を広げれば、子供たちは我を我をと一斉に挙手をする。
選ばれたのはウェーブかがかかった金髪の少年。少年は高らかにシャドーハウスのルールを叫び始めた。
「生き人形はシャドー家に仕えることが幸せである!」
金髪の天パの少年が言えばあとの生き人形たちはオウム返しをする。
「シャドー家は素晴らしい貴族である!」
「生き人形はシャドー家の道具である」
「シャドーハウスは絶対である」
「顔として主人そのものになれる」
「顔」は自分の考えを持つものではない!」
「余計なことは考えてはいけない!」
生き人形、道具、顔、その三つの言葉に恐怖と悲しみが掻き立てられる。しかし、情けないことにどうすることもできずにギュッと握った拳をワナワナと振るわせることしかできなかった。
シャドーハウスという狂気に屈服したのである。
しかし、これはまだ序の口であった。
やしおはここで多くの悲しみと狂気を知ることになる。
さっきまでは普通に会話して笑っていた子供たちを見つめる。ミア、ローズマリー、喋った他の生き人形たちも陶酔したような顔をしてシャドー家のルールを復唱していた。
やがて復唱の声が途絶えた。
喜びの会は終わり、子供たちはみんなそれぞれと主人の元へ帰っていく。
やしおの紹介は生き人形たちにはしないようだ。
やしおが呆然と立ちすくんでいるとバービーは鋭い眼光のまま伝える。
「お前の紹介は改めてバーバラ様がすることになってる。だからそれまで勝手な行動は慎むように」
「…わかった」
やっと絞りでたのは掠れた了承の声。
喜びの会での光景が衝撃すぎて反論することができなかった。
バービーやほかの星つきたちの後を追って
やしおはとぼとぼと星つきの居住区に帰路につく。そんなやしおは見つめる一体の生き人形がいた。
ローズマリーだった。
ローズマリーはいつもの温和でのんびりとした
表情が消え無表情で真剣な顔をでやしおを見つめていた。
この日やしおは一睡も眠ることができなかったという。
「子供たちの塔に大人がいた?」
とある子供たちの一般の居住区の一つの部屋で
生き人形とシャドーが会話をしていた。
「体躯が良くて厳つい型でしたでも優しい方でしたよぉ」
のんびりとした優しい口調で自分の主人にやしおのことを喋るのはローズマリー。
「掃除も手際がよくって助かってしまいましたぁ」
「新人が入るまでの辛抱だね」
そんなローズマリーを優しく労わるのは彼女の主人のマリーローズ。
マリーローズは三つ編みに紫色のバラの髪飾りをつけて、服装はさながらどこぞの歌劇団の男役のような格好に身を包んでいた。
マリーローズはソファに座り足を組んでいた。
「そんなことより、大人か…大人は私たちには興味がないはずなのに何故…」
「あちらの考えは読み取れませんが」
ローズマリーは彼を思い出す。
困っている生き人形に分け隔てなく率先して助けに入る優しさ。
厳つい顔の割には可愛い笑顔。
「やしおはここの大人たちとは違うような気がします、ただ断定はできません」
はっきりとした口調でローズマリーはマリーローズに伝える。するとローズマリーは考えるように眉間に手を当てる。
「多分、後日バーバラからそのやしおとやらの紹介があるだろう。そのときに可能であればお茶会に誘ってみようか?、私もどんなやつなのか気になってきたよ、もしかしたら…」
知らないどこかでこんな会話をされてるのもつゆ知らずやしおはベットの中で一睡もできずにゴロゴロと寝返りを打っていた。
続く
『各班のシャドーたちにお茶会に招待される』
やしおはルールを守る気はありません(*^◯^*)