サメ太朗のピクニック見守り記(そのさん)モネちゃんが、あんまりスガナミの寝言のふいうちに固まるもんだから、僕は心の胸ビレを必死に振ったよね。モネちゃん!気づいて!これ、ただの寝てるスガナミ!そしたら、僕の心の胸ビレの動きが伝わったのか、モネちゃんはハタと意を決した顔になって、スガナミの肩をゆすった。
「せんせ、おべんと届きましたよ。おきてくださーい」
って、モネちゃんの声がとってもやさしくって、もー、スガナミはマジでカホーモノ!
はい、おきろー!起きろー!あ、目ぇあいた。
!!!フカー!!!
スガナミが寝ぼけてモネちゃんにちゅーしてる!!
こらー!スガナミー!そと!おそとだよ!ピクニックだよ!
!!!フカー!!!
ちゅーが!ながい!こらー!もー!ばくはつして、ばくはつしたあとに、ばくはつしろ!
さっきよりもっと一生懸命、心の胸ビレを振ってたら、やっとモネちゃんがスガナミから離れた。そんで、スガナミがバランスくずしてる間に、レジャーシートの上にいた僕をモネちゃんが抱き上げて、ぎゅって僕のことを抱っこする。僕も、ひしっ!と心の胸ビレでモネちゃんに抱き着く。モネちゃん!僕がいるからね!
あ、スガナミが、がばって起きた。やっぱ寝ぼけてたんだな。
桜色のほっぺのモネちゃんは、僕の顔でお顔を半分かくして、スガナミのことをじとーって見てる。
ね!モネちゃん!僕が寝ぼけたスガナミから、モネちゃんのことをまもるからね!
僕とモネちゃんが、じとーってスガナミを見てると、スガナミは右手で顔をおおいつつ、モネちゃんのことを器用な上目遣いで見上げてる。
「あの…」
「…」
「おこってますか?」
「おこってませんよ」
「…」
モネちゃんのことばに、スガナミがしょんなりしてくのがモネちゃんもだんだん楽しくなっちゃって、くすくすって手が揺れてる。ねー、スガナミ、ハンセーしてるね!わ!モネちゃんが僕の胸ビレをぱたぱたさせてる!ねー。って思ってたら、モネちゃんが僕を胸ビレぱたぱたさせながら、スガナミに渡す。スガナミが僕を抱っこしたら、吻をもにゃって撫でてくれた。よぅ、スガナミー!ハンセイした?
その、青空の下のあなたを見上げて、あぁ、きれいだなって思って…とかなんとかかんとか、スガナミがごにゃごにゃ言う。そんで、その言葉にまたモネちゃんのほっぺが真っ赤。もー、いっしょうやってろ!
モネちゃんがピクニックセットを取りに行ったことに気が付いたスガナミが、ありがとうってお礼を言って、モネちゃんが、先生を寝かせてあげたかったから、ってお話して、ほんと二人のそーゆーおもいやりどうしなところ、ステキだよね!しかも、その間に見守りサメがいた、っていうね。ふんたかだか!
せっかくのピクニックランチ、いただきましょう、って二人がごはんを食べ始める。僕は汚れちゃいけないから、ちょっと離れたところにスガナミが置いてくれた。少し離れた分、二人の様子を見守れるのは見守りサメのとっけん、って感じ。ホットサンドをかじったスガナミが、うまい、って笑って、おなじにかじったモネちゃんも、こくこくって頷いてる。おいしいのうれしいね!
モネちゃんのくちもとに残ったマヨネーズをスガナミが指で拭ってあげてる!ばくはつしろ!
あ、スガナミが落としかけたサンドイッチの中身をモネちゃんがナイスキャッチ!うん、スガナミには無理!
レモネードを飲んで、スガナミがすっぱい!って顔するのにモネちゃんが笑い転げて、そんで、モネちゃんもレモネード飲んだら、スガナミそっくりなすっぱい!って顔になって、スガナミも笑ってる。これは楽しいピクニックごはんダナー。
こんなの見つけてくるスガナミは地味にスゴい。モネちゃんも、自分で作るお弁当とは違う味わいでいいですね、って言ってる。ねー、モネちゃんとスガナミでつくるおべんとも美味しいけど、それはそれ、これはこれだよねー。
ピクニックごはんを食べ終わったモネちゃんとスガナミは、またレジャーシートの上でのんびり。スガナミが腕を伸ばして、僕をお膝にのせて、背中をぽんぽんってしてくれる。そしたら、モネちゃんが、スガナミのお膝からはみ出した吻をナデてくれる。もにゃー。フカー。
…ん?なんか、ケハイが…。
って思ったら、スガナミの横にボールを加えたイヌさん!わー、こんちは!
お散歩ですか?楽しいですよね!
え?あ?なに、ボールを投げてほしい?スガナミに?
いやぁ、どうかなぁ、スガナミだよ?
投げられたものをキャッチできないことに、シュモクザメの頭の横幅ぐらいの定評があるスガナミだからなぁ。
多分投げるのもヘタだと思うんだよね。投げてるとこ見たことないから知らんけど。
うん、でもまぁ、イヌさんがスガナミに投げてほしいって思うんだったら、その思いはソンチョーする。
あ、スガナミが投げた。
…。
うん、ね、知ってた。
あー、イヌさんの何とも言えないザンネンなカオ。
ごめんねー。うん、まぁ、ほら、スガナミなもんで…。
あ、それはそれでよいですか、ご理解ありがとうございます。
うん、悪い奴じゃないんですよ。単にモネちゃんとサメしかキャッチできないやつでして。
ボールとり、いってらっしゃーい!
あぁ、モネちゃんがめっちゃ笑い転げてる。
そんでスガナミがめっちゃチベットスナギツネ顔。うん、チベットスナギツネもイヌ科だしええんちゃう?知らんけど。
「僕に何かを投げろと言うあの犬の人選ミスですよ」
うん、それな!
まぁ、このヒトきっといいひと!っていうあのイヌさんの嗅覚は合ってるっちゃあってるから、とにかくボールとの食い合わせが悪かったことがお互いのフコーってなもんだよね。スガナミ、どんまい!
あ!モネちゃんがスガナミの腕に飛び込んだ!
そんで、スガナミがモネちゃんをナイスキャッチ!
スガナミはモネちゃんが投げるものはなんでも取る。
そんで二人で楽しそーに笑ってる。
うん、それでいーんだよね!
モネちゃんが、コーヒー飲まない?ってスガナミにお誘いして、スガナミもいいね、って頷く。スガナミが買ってこよう、って腰を上げかけたら、モネちゃんがやんわりと止めて立ち上がった。
「さっき、ピクニックセットをごちそうしてもらいましたから」
先生はサメ太朗とお留守番しててください、って言うモネちゃんに、いっしゅん、スガナミが何か言いたそうになるけど、それを全部飲み込んで、うん、って頷いた。背伸びしすぎずに、それでもスガナミにごちそうされっぱなしはヤダって言うモネちゃんの気持ちは、お仕事してる人のキョージって感じがするし、それをスガナミも大事にしたいんだよなー。でもスガナミが、モネちゃんをいっぱい甘やかしたいってのも実は僕は知ってる。なー、せめぎ合いなー。とはいえ、スガナミもショーガクキンのヘンサイあるし、気をつけろ?、まぁ、モネちゃんはそれも知っててジリツしてるから安心。ほんと、スガナミはモネちゃんにめりこむぐらい感謝すべき。してると思うけど。
スガナミと僕で、お財布を持って立ち上がったモネちゃんをいってらっしゃーいってお見送り。スガナミが、お膝の上の僕をぽんぽん、って撫でながらくつろいでる。こんな風に、うみっぺりでのんびりするのも、モネちゃんがいなきゃ絶対にやってないだろし、ほんと、スガナミにモネちゃんがいて、モネちゃんにスガナミがいるキセキ!そんでその間に僕がいる。
はー、いいお休みだねー、って僕も心の胸ビレをのびのび伸ばしてたら、レジャーシートの横に誰かが来たケハイがした。またボールを投げてほしいイヌさんかな?って思ったら、あれ?女の子が何人か。
「こんにちはー!」
って元気なご挨拶だねー!こんにちは!どしたの?!
あ、スガナミも、はい、こんにちは、って挨拶してる。アレだな、スガナミも登米でのお仕事で、だいぶアイソってもんを覚えたんだなー。モネちゃんにしおっしおな対応してた時代からしたらスガナミも成長したってもんだなー。
「ハナイチモンメしよー!」
「しよー!」
なにかの遊びにお誘い?ハナイチモンメってなにか分かんないけど、たのしそー!
えー、でも、スガナミはどうかなー。てか、なんでスガナミ?
あ、なるほど?ひとがたりなくて?そんで、スガナミのおひざにサメさんがいるから、あくにんじゃなさそう、と。
うん、その辺はお目が高い!あのねー、サメぬいを連れてる人にあくにんはいませんよ。たぶん。知らんけど。
あ、モネちゃん帰ってきた。
あのねー、この子たちがスガナミとハナイチモンメやりたいんだってー!
「こんにちは」
「こんにちは!あのね、ハナイチモンメにお誘い!」
「そうなの」
ふんふん、って女の子たちのお話を、しゃがんで聞いてあげるモネちゃん、マジすてきなおねーさん。
「おねーさん、おにーさんのカノジョ?」
って、女の子たち、チョッキュー!
スガナミがなんかハラハラしてるー。まぁ、モネちゃん、お天気おねーさんやってるからねー。
そのへん、スガナミの方がよっぽどモネちゃん本人より気にしてるもんなー。
「え?うん、そうだよ」
あぁ、モネちゃん、おっとこまえ!すてき!
ねー、モネちゃんとスガナミがそうなのは、ゆるぎないじじつ、だもんねー。
「じゃあ、でーとだ!」
「うん、デート中」
「そっかー!じゃあ、わたしたち、おじゃまむしだ!」
「だねー!じゃあ、おにいさん、またね!」
にこにこきっぱりお返事するモネちゃんに、女の子たちはなんか納得したみたいで、手を振りながらむこうに走ってった。
ばいばーい!また今度ね!ごめんねー!
スガナミ、おにいさんって言ってもらえてよかったなー。おじさんって言われるんじゃないかって思ったよー。
まぁでも、さすがにおじさんをハナイチモンメ?には誘わないかー。
女の子たちを見送ったモネちゃんが、レジャーシートに上がってくる。スガナミの隣にすとんって腰を下ろして、はい、ってコーヒーのカップを差し出す。それを受け取ったスガナミが、よかったの?って顔をしてる。もー、スガナミは心配性だなぁ。
「あなたが傘イルカくんとコサメちゃんのおねえさんと気づいた子もいるかもしれないのに、よかったですか?」
「え?だって、先生とデート中なのはホントのことですし」
もー、ホント、モネちゃんさいきょう。そんでスガナミはそれにめちゃくちゃ救われてる。モネちゃん、ありがとね!
「それに」
ソフトクリームをひとかじりしたモネちゃんが、なんだかかわいいお顔でスガナミを見上げる。
これはあれだ!モネちゃんが無自覚にスガナミ限定に爆弾おとすやつ!
「小学生の女の子とはいえ、私の先生がナンパされてくのは黙ってみてられません」
ひゃー!
ひゃー!
フカー!
スガナミがコーチョクしてるー。
そりゃーもう、ねー。スガナミばっかりがドクセンヨクあるんじゃないんだよねー。
モネちゃんも、実はスガナミにはヤキモチ焼きなんだよなー。
あ、モネちゃん、照れてる。照れてるモネちゃんもかわいいなぁ。
スガナミも、照れてるモネちゃんがかわいい、って顔してる。
照れたモネちゃんが、はい!せんせいもひとくち食べて!ってソフトクリーム差し出しちゃって。
もー、スガナミがモネちゃんのヤキモチにでれでれ しちゃって見てらんない。
やっぱりもう一回ばくはつしたほうがいいと思う!
ばくはつしろ!