sleeping BEAST
それは捕食だった。
靭い手指が獲物を掴み、引き寄せ、思うように向きを変える。太い腕が絡みついて捕らえ、逃亡を許さない。厚い体が重みをかけてもがく四肢を押さえつけ、奥深くまで思うさま喰らい尽くして。
視界に火花が散るような快楽とうねりを伴う昇華、そして。
腹もくちくなり、満足し、安全が約束されたこの温かい寝床でゆったりと眠っている。眠っていてさえ消えぬ獰猛さと、相反するはずの優雅さを合わせ持つ優れたけだもの。なめらかな肌が描く陰影は名匠の彫刻よりも生々しく、目眩がするほどの色香を無意識に放つ。恵まれ、自らも練り上げた美しい肉体は恐ろしく魅惑的だ。なだらかに、時に急峻に夜明けの薄明かりにそのラインを浮かび上がらせる。半開きで健やかな寝息を立てる唇がひどく蠱惑さを漂わせているのは、すっかり虜になって冷静さを欠いた感想だろうか。あの唇に吸いついたらどれほど甘かろう。散々吸いつかれていたのにまた、思う。
今は薄い瞼に隠され見えないが、初夏の空のような青さを煌めかせる瞳は相手によって一変する。どんな砂糖菓子より甘い青から、苛烈さで容赦なく貫く最期の光まで、実に彩り鮮やか。
いつか。
いつかこの青に本当に心臓を抉られたら、どれほど幸せだろうか。
この大きく温かく優しく、そして烈しいけものに全て喰らい尽くされたい。捧げる覚悟はとうの昔にできている。満足してくれるだろうと言う自信と自負は最近ついた。他ならぬけものの手によって。
だから、いつか。
「お前に殺されたいよ、スマイリー」
こんなにも愛しいお前に。