創作SNS GALLERIA[ギャレリア] 創作SNS GALLERIA[ギャレリア]
【お知らせ】メンテナンスは終了しました。ご協力ありがとうございました。

イラストを魅せる。護る。
究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する
豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • しゅ Link
    2021/01/06 9:54:52

    旭川に春が来た

    旭川での恋愛話。

    #ハケンの品格 #二次創作 #東春

    more...
    1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    旭川に春が来た旭川にもようやく春が来た。
    5月に桜が咲くなんて何度見ても不思議だ、本州で育った東海林にとっては
    未だに慣れないことだった。


    『前に約束していた動物園、いつ行きましょう?』
    仕事中、携帯にましろからメールが届いた。
    東海林はパソコン越しにましろのデスクを見る。
    目が合うとにっこりとほほ笑んでくれた。
    思わず東海林も笑顔になった。

    付き合い始めて5か月ほどになり、お互いの事を少しづつ
    知ることができていた。
    ましろは料理は好きだが掃除は苦手で、ジャニーズが好きらしい。
    誰が好きなの?と聞いたら「少年隊のヒガシです!!」と言われ
    「それ俺ら世代じゃん!!」と突っ込んでしまった。
    親の影響で昭和の歌が好きだという話になり、カラオケにもよく行く。
    2人で「銀座の恋の物語」を歌ったりもした。

    意外と気の合う彼女と過ごしながら思うのは、もしかしたら
    この恋が最後になるかもしれないという期待だった。


    ただ、一歩踏み出せないことが東海林にはあった。
    キス以上のことができないことだ。



    「動物園もいいんだけどさ、明日ちょっと桜でも見に行かないか?」
    その日の晩、2人は東海林の部屋でソファに座りテレビを見ていた。
    「じゃあ…旭山公園でジンギスカンとかどうです?」
    「いいね、それ。ジンギスカン好きなんだよ~」
    「東海林さん北海道に来てからジンギスカンにはまったって話してましたよね」
    「え?したっけな…いつだろう」
    「確か転勤してこられてから1か月くらいです」
    「よく覚えてるね~俺なんか昨日の事も忘れちゃって」
    頭をかきながらましろの記憶力を敬していると
    「北海道のこと気に入ってもらえたのと…好きな人の事は、些細なことでも覚えています」
    はにかみながら告げるましろを見ると後ろに花でも咲いているかのように幻覚した。
    かわいい、抱きしめたいな…そんな思いが芽生えて
    東海林は腕を回して細い体を包み込んだ。
    自分の事をこんなに想ってくれている。
    自分もそれにちゃんと答えないといけない。

    東海林はテレビのリモコンを取って電源を切る。
    「ましろちゃん…今日泊まっていかないか?」
    抱きしめながら、少し照れも入った誘いを告げる。
    「え…いいんですか?」
    ましろは実家住まいなのもあるが、以前泊まることなく帰らせて
    しまってからは、何となく朝までいようと言えずにいた。
    ましろも自分からは口にせずいつも夜遅くに帰っていたので
    余計に一線を越えることができなかった。
    でも、いつまでもそうするわけにもいかない。
    自分から新しい恋に一歩踏み出すんだ。

    もう昔の女の事は忘れる―。


    東海林はましろのコーラルピンクに塗られた紅に口づける。薄い唇はいとも簡単に解けていく。
    キスを終えると囁くように告げた。
    「好きだよ」
    優しい表情でましろを見つめて、自分の心を確認するように言葉にすると
    「私も…世界で1番大好きです」
    そう言われてたまらなく愛しい気持ちが生まれてもう一度、きつく抱きしめ
    手のひらで体を弄る。
    そして、ブラウスの中に手を入れて、ブラのホックを取ろうとしたー。



    そのタイミングに合わせるかのように、突然東海林の携帯が鳴り始めた。


    東海林は手を止め、思わず二人してそのメロディの聞こえるところに目をやる。
    画面を見ると、非通知設定だった。
    誰からなのか…せっかくいいところだったのに。
    でも仕事関係ならば無視するわけにもいかず、ましろに声をかけ
    電話に出る。

    「もしもし?」

    「もしもし、東海林主任ですかぁ?」
    その甘ったるい声は…そして、自分の事を主任と呼ぶその声の主は…。
    「私、森美雪です」

    「森くん???なんで俺の携帯に??」
    「えっと、里中主任からききましたぁ」
    「そっか、賢ちゃんからならまぁいいや。君数年前に結婚して
    退社したんだっけ?」
    「はい、そうなんです~」
    「で、今どこに住んでるの?」
    「え??そ、それは秘密です~」
    「あのさ、ちょっと取り込み中だから手短に頼むよ」
    「はい、わかりました!聞きたいのは春子先輩の事です」
    春子―――――その言葉を聞いて思わずその場を離れたくなった。
    この会話をましろの前でしてもいいんだろうか。
    迷っていると森美雪のほうから話をつづけた。
    「春子先輩にお手紙送りたいんですけど、春子先輩の住所知りませんかぁ?」
    「え??知らねーよとっくりの居場所なんて」
    「そうなんですかぁ?春子先輩いま北海道にいるって聞いたから
    東海林主任なら知ってるかなと思って」

    その言葉を聞いて、心臓が走り出した。


    とっくりが、春子が、北海道にいる???
    「それ、誰に聞いたんだ!?」
    逆に東海林は森美雪に尋ねた。
    「風の噂ですぅ。東海林主任、春子先輩に会いたいんですか?」

    無邪気な問いかけに、はっと息を飲む。
    そんなことを言われたら、嘘がつけない。
    横には、彼女がいるというのにー。






    「会いたいよ」



    深く、思いの詰まった5文字にましろも何かを感じ取ったように
    「東海林さん…誰にですか?」
    ましろが口を挟んだ。
    「ましろちゃん…」

    子供の頃、喧嘩した友達に謝ったときのような、申し訳なくて、でも許してほしいという顔でましろを見つめた。

    電話口からは少しの沈黙のあとに、森美雪らしくない口調で
    「東海林主任、彼女ですか?」
    そう問われて正直に答えてしまう。
    「ああ、そうだよ。だからもう切ってもいいかな?」

    「はい!知らないならあなたに用はありません、じゃ!!」
    一方的にブチっと通話を切られた。
    こんな強気な女だったか??と思いつつも
    月日が流れたら性格も変わるだろうと、電話をテーブルに置いた。

    そしてましろのほうを見た。


    ましろは何か察したような顔をしている。
    まさかこんなタイミングで春子の近況を知るなんて、悪魔に呪いをかけられているような気がした。

    ーお前は、一生大前春子を好きでいるんだ。

    身体中に刺を巻かれたように、ちょっとでも動くと痛くてたまらなくて、その場に立ち尽くす。ましろに何と伝えたらいいか自分でもわからずずっと沈黙に逃げていた。



    そして、ましろが見透かすように立ち上がり、東海林を悲しそうに見つめた。


    「東海林さん……私のこと1番好きじゃないですよね」


    その言葉に首を縦に振ることしかできなかった。






    ましろは崩れるように泣いて、涙が床にポタポタと落ちていた。
    「2番目、でも…いいんです…私……好きなんです」
    そんなことを言わせてしまって辛かった。
    こんなに優しくて癒される彼女を手放すのは自分にとってももったいないと思う。



    だけど、呪いにかけられたまま付き合うことの方がきっとお互い辛いだろう。

    2番目でも好きだなんて、そんなことを言われるほどかっこいい男でもないのに。
    気がつくと自分も泣いてしまい、ただ涙が枯れるまで床に座り込んでいた。







    ー1ヶ月後、ましろは会社を辞めた。
    その10ヶ月後に旭川の駅前で偶然会ったが、その時左指には小さなプラチナが光っていた。
    少しだけ話すと、今はとても幸せそうで
    嬉しいような、寂しいような自分勝手な気持ちになった。

    あれから北海道で春子を見たことはない、探してみたものの全く手掛かりが掴めなかった。
    そもそも森美雪の情報も確信が持てるわけでもないし、何かの間違いだったのだろう。



    それでも、どこかでハケンとして働いているんだろうと思いながら今年も5月に桜が咲くのを待ちわびていた4月のある日、親友から1通のメールが届く。




    「大前さんが、S&Fにハケンで戻ってくるよ!東海林さんにも早く本社に戻ってきてほしいよ」

    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品