「20xx/xx/xx[研究所]」
「ふざけないで!!」
その言葉、を受けた私は。
「産むわ!!」
脳に、頭に怒りが沸騰した。
――お前は人間ではない――
上官、私達のまとめ役の、その冷たい、低い声。
――その子の、経過を見なくてはならん――
――P02-Fに、まともな妊娠能力が、あったとはな――
うるさい、デリカシーがない、上官の腰巾着研究員!!
――よく考えろ、神楽――
――何をですか!?――
私が、ここまで怒声を上げるのは、本当に久しぶりだ。
――今、君は子供を育てる環境、それがどこにあると思う?――
――……それは――
その上官の言葉、それを受けて、私の煮え立った頭は、少し。
――……考えろ、神楽――
沸騰したそれが、冷えてきた。
「……」
この、今の情勢では、まともな子育てなどは、出来やしない。
――それに――
私は人間とは言えない、産まれてくる子に、何があるか、起こるかなど、全く予想がつかない。
――……そうか――
ああ、だから、この上官は。
――叔父さんは――
こんな、提案をしてくれたのだ。
――だいたい――
おろせ、その提案をしないだけで彼の、上官の思いやりが。
――そう、あるんだな――
しかし、全く、それにしても。
――この上官、叔父さんは――
不器用かつ、そして。
――優しい、いや――
甘すぎる、こんな仕事をしながら。
「……ところで、神楽」
「何、でしょうか?」
「小田切との、子か?」
「……」
はい、そうですよ、すみませんね。
「……だったら、何です?」
「……いや、別に」
なら聴くな、馬鹿叔父さん。
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彼らが立ち去り、一人で部屋にいる私は。
「……」
軽く、自分のお腹を手のひらで、優しく、さすりつつ。
「……あの、馬鹿」
ここにいない、別の場所で任務についている、彼の顔を思い浮かべる。
「馬鹿、馬鹿、馬鹿男!!」
ああ、何か、最近私は。
「……もう!!」
私は、とても怒りっぽい気がする。
――あの彼、馬鹿には、もう何ヵ月も会ってない――
のも、あるが。
――……そもそも!!――
だいたい、彼が。
――……な!?――
――ご、ごめん……――
――何、出してるのよ!!――
一番、悪くて。
――この、無責任!!――
――ご、ゴメンナサイ!!――
そして、責任がある気がする。
「……全く、なんで私は」
いくら、弟に似ていたからといって、あんな頼りない。
「……アイツを好きになんか、なったんだろう?」
もちろん、恋愛に理由などを探っても、答えなんか、出るはずもないが。
「……もう、馬鹿!!」
もし、世の中に平和が戻っても、彼と良い夫婦生活を営めるか、それは少し。
「……不安だなあ」