【新ゲです?】生クリームの海で溺れたいって多分こういうことじゃない 迷宮。ゲームではある意味お約束のコンテンツであり、『異世界』でも例によって実装されている。世界観設定としては色々あるようだが、神々の実験場的な意味合いもあるらしい。
で、今日も今日とて私はガラハド達と食材ルートを開拓中なのだが――。
「……うわ」
イーグルのおもわず、そして心の底から出たような「うわ」が妙に響く。だが口に出したのがイーグルというだけで、私もガラハド達も同じ気持ちだろう。
目の前にいるのは白いスライム。うん、多分スライム。【鑑定】したら次の通り。
『食材No.926』
ランク 42
種別 魔物
HP ?/? MP ?/?
属性 闇 弱点 ?
状態 ヴェルナの祝福
備考 生クリームのスライム。プリンに最適な濃厚な味わい。ヴェルナの祝福により強おいしくなっている。
何を考えてるのかな、ヴェルナさん???
ともかく視界の見渡す限り白くてドロッとしているものが所狭しとうごめいている。生クリームだとわかっていても、こう。汚れた大人ですみません。たまに黒いのがいるなぁ。と思ったらココアのスライムだった。
「ホムラ」
「……ヴェルナのリクエストなんだろう」
「闇の女神か……」
もの言いたげなガラハドに私も首を振る。ともかく、狩って狩って狩りまくりましたとも。攻撃方法がホイップした生クリームをぶつけてくる攻撃なのが何とも。結構痛いし何より身体中がべとべとになるのが何とも。
「うぇ、べたべただ」
「ランスロット様なら喜んだんだろうか」
「考えるな」
生クリームまみれになった私にイーグルが胡乱な眼差しで呟くのをガラハドが止めた。生活魔法で綺麗にしつつ、大量の生クリームを手に入れた。しばらく困らんだろう。雑貨屋に戻ってヴェルナには生クリームの濃厚な奴と、チョコプリンを樹に入れておこう。
「おや、そんなことが」
「あぁ、なかなかに大変だった」
おやつを作りながら迷宮であったことを話していると、カルが意味深な笑みを浮かべていることに気が付いた。
「どうした?」
「いえ、新しい素材で作ったデザートが楽しみですね」
「あぁ、デコレーションケーキもいいが、今日はちょっと変わり種だ」
薄力粉を使ったふわっとしゅわっとしたカステラに、生クリームをたっぷりと挟み込んだスイーツだ。シフォンケーキにも似ているが、こちらの方が材料が簡単だな。
そのほか、チーズケーキもいいし、生クリームたっぷりのロールケーキ、パンケーキに添えるのもいい。いろいろレシピがはかどりそうだ。ハルさんのミルクはランクが高いがその分扱うのもそれなりのスキルレベルが必要だかなぁ。気軽に差し入れできん。
そんなわけでクリスティーナに連絡してルールズでお食事。差し入れは今回はスライムの生クリームとココア。ココアはちゃんと粉でドロップしました。
「いただきました生クリームはスピナーチのポタージュに仕立てました」
「まぁ」
「おぉ」
美しい翡翠色のスープに思わずクリスティーナと私が声を上げる。うん、美味い。クリスティーナも一口飲んで思わずというように唇に手を当てている。公爵令嬢は仕草も上品ですね。
評価もだがランクが高い。料理長がますます腕を上げて嬉しい限りです。ココアの方はファストの宿屋夫妻やアルにも差し入れするか。お湯で解けば普通にココアが飲める。これから寒くなるしちょうどいいだろう。クリスティーナにも「よければ」と言って差し出すと、少しためらったものの受け取ってもらえました。
一通りたわいのない話を聞く。王家の内情とか聞きませんよ。私はただの冒険者です。まぁクリスティーナもおいそれとしゃべるような人物ではないしな。代わりに最近の学校での出来事やら、領地での名物などをぽつぽつと話してくれた。
どうやら第二王子の婚約が白紙になり、少し余裕ができたようだ。よかった……のだろう。こうして私と美味い物を食べるのが気分転換になってくれるのならいいのだがな。