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    シマハイエナのジュンくん!3 赤ちゃん−−−−−又の名を、乳児。幼体、幼生。それは哺乳類、ひいては爬虫類でも魚類でもなんでも、一部例外を除きどんな生物にだって訪れる姿形、精神状態等々全てをひっくるめての敬称である。そして、この世界に生を持ち、母体から生まれた直後から数年間を指す言葉でだってある。
     そんな赤ちゃんの姿というのは、守ってあげなくてはいけないという庇護欲を掻き立てられるようなもので。
     ぷにぷにのおててに、某千切って食べるパンのような腕や腿。頬なんて、ぷっくりとしすぎて落っこちてしまいそう。
     姿だけではない、なんと言っても生まれたてが故に無知だからこそ、言語を話すことはおろか自分の気持ちの訴え方だって泣いて表現する他ないね。
     そんな存在を守ってあげたい、大切にしてあげないと思わないわけがないね。生まれたての赤ちゃんを大切にしてあげたい、というのは正常な人間なら絶対に持ちうる感情で、きっとこれは遺伝子レベルで刻み込まれているというもので。
     つまりね、ぼくがなにを言いたいかっていうとね。





    「ジュンくんが可愛すぎてお仕事したくないね。」
    「ジュンを養うためにもしっかりと働いて頂かないと困りますよ、殿下。」


     無常にも、取り上げられた(厳密には引き渡した)愛し子は茨の腕の中できゃあきゃあと嬉しそうに手を振り回しているね。
     そんな楽しそうな彼を今すぐにでも抱っこしてぼくも一緒に遊びたい。あぁ、凪砂くんがいるとはいえ仕事なんて入れるものではないね!
    「ほら、ジュン。殿下にバイバイってして下さい。でないと殿下、いつまで経っても出勤なさらないので。」
    「ひよぉ〜、ばっばい〜。」
    「よくできました☆」
     えらいえらいと、ジュンくんの頭を撫でればジュンくんはさらにキャッキャと笑って茨にぎゅうぎゅうと抱きついてしまう。
    「っ、〜〜〜〜〜!茨の意地悪!ひどいね!鬼だね!」
    「あっはっは☆鬼で結構であります!殿下が現場へと行ってくれるのであれば自分、いくらでも鬼になるであります!」
    「う〜〜〜〜〜〜!茨なんかもう知らないもんね!」
    「ジュン、日和さんお仕事頑張って、と。」
    「ひぉ、しぃ〜ばぁ?」
    「はい!お仕事頑張って、と言ってください!」
    「ばぁ〜ばぇ〜!」
    「よくできました!」
    「っ〜〜〜!!可愛いねぇ!可愛い子からの応援だからね!行ってくるね!ジュンくん、茨!」
     あぁ、我ながら単純だと思う。だけどね、可愛い可愛い愛し子からの応援があったなら、もうぼくには行かないという選択肢はないね。それが例え茨の策略であったとしても。
     茨め、どこまでも狡猾な子。しかし彼の計らいもあってぼくがこうして現場に出てアイドルとして活躍ができる面もあるのだから、憎んでも憎みきれないね。
     だけどね、ジュンくんと離れ離れにしなくてもいいじゃないかね!?
     多少の怒りと、それから憎みきれない悶々とした感情。それが脳内を駆け巡りつつも、思考はだんだんアイドルとしての巴日和のものとなってくる。
     今日はこの後、渚くんとの撮影だけ。内容は雑誌の表紙と、それから特集のためのインタビュー。……うん、これなら早く終わらせられるかもね。
    副所長室を出て、そしてコズプロ事務所まで出て、思考も切り替えて。そんな瞬間だったね。別にどうということもない、変わったことだってなに一つとして起こらなかった。むしろ、ここに至るまではいつも通りと言っても過言ではないね。
    そんないつも通り、なのにぼくはふと思ったね。いや、思ってしまったね。
     ……あれ、そういえばジュンくんがごねなくなったね。


     前までは泣いてぼくから離れない状態だったのに、今となっては自分から茨の胸へと飛び込んでいったね。そして終いには、茨の腕の中できゃあきゃあと喜んでいたではないか。
    「っ、あ、あ、………………」
     彼は茨に言わされていたとはいえ、ばいばいも言ったし頑張れも言ったね。あの、泣いて泣いてごねてごねて大変だったジュンくんが。
     顔がどんどんと青くなっていくのを感じる。さぁっ、と血の気が引くというのはこういうことを言うんだろうね。
     まずい、ジュンくんがお留守番に慣れてしまっている。
     確かにぼくは育休を取ることができないし、なんなら保育園に預けることもできない。それに職業がら保育園の延長よりも下手すれば、ジュンくんには長い長いお留守番を強要することになる、というのだって理解していたつもりであった。さらにいえば、預ける先というのは特定の人じゃなくって点でバラバラだしね。
     実際問題、茨や凪砂くん、それからESの人たちと預け先は点でバラバラだし、泊まりがけのロケがあると一日、下手すれば二日や三日面倒を見てもらわなくてはならないことだってあったね。そうなってくると、やっぱりお留守番に慣れてしまうのは必然的なこと。
    だけど実際、ぼくは今の今までその段階はもう少し先であると思っていたね。
     なのに、なのにジュンくんはもう泣くことはおろかばいばいを言えるようになってしまった。
     これは由々しき事態。緊急事態と言ってもいいね。
    「まずい、このままではいけないよね……!」
     慣れてしまうくらいに預けてしまっている事実を猛省しなければいけない。お留守番が長い分、もっとジュンくんとは密に関わってあげなければ今後の成長に影響が出るかも。
     せっかくアイドルとして切り替わった頭は、一瞬にしてジュンくんの保護者としての思考に切り替わってしまう。そうなってくると、どうしたってジュンくんに会いたくって会いたくって仕方がなくなってしまうね。
     あぁ、もう!こうなったらミステイクなしに撮影を片付けるしかないね!インタビューだってダメ出しをされずにスマートに答えて行くしかないね!早く行って、早く終わらせてこよう。
     荷物を抱え直したぼくは、現場へと向かってくれているタクシーから降りた後のことを思考したね。どうすれば早く終わるのか、それからどうやったら早くジュンくんのお迎えに行けるのか。どうやって効率よく動けば、ジュンくんとの時間を増やすことができるのか。
     待っててね、ジュンくん。もうちょっと、予定が落ち着いたらおやすみもぎ取ってあげるから、そしたら一緒に旅行行こうね……!



    ☆〜・☆〜・☆〜・☆〜・☆〜・☆〜・☆
     


    「さて、殿下も行ったことですし。静かにおもちゃで遊んでいて下さいね。自分にも仕事がたんまりとあるんですから。」
    「なぁ?」
    「閣下は殿下と同じ現場にいらっしゃいますよ。きっと一緒に戻ってくるはずですので、それまで大人しくしていてください。」
    「あぃ〜、ばぁ〜!」
     ジュンのことを敷いておいたマットレスの上に置き、ついでにいつの間にかこの部屋に常に閉まってある状態になっていたおもちゃを取り出してあげる。すると、ジュンは小さな手をぷらぷらと揺らしてちょうだいとアピールをした。渡してあげればそのおもちゃを床に置き、そしてパチパチと遊び始める。
    「………………」
     こうしてみると、耳と尻尾がふわふわと揺れている以外なんら変哲もないガキ……赤ん坊なんだよな。
     殿下がこの赤ん坊を連れてきたときには頭を悩ませていたものだが、意外と面倒を見ているうちに意外と悪いものではないと思い始めて。そして気付けば殿下から頼まれれば、いくらこっちの仕事の都合があったとしてもこの赤ん坊を預かることにしてしまっていて。
     まぁ、居ても別に困りはしませんし。なにせこのジュンという赤ん坊は、赤ん坊にしてはうるさくない部類でありますし?
     現に今も静かに大人しく自分の遊びに熱中している。もし俺が目を離してはいけない、というな場面があるとしたらジュンが立ち上がった時だろう。
     メガネを一つあげて、そしてデスクに視線を落とせば阿呆か、と言ってしまうような量の書類の山と、それから今もまだ受信し続けているであろうメールがどっさりと溜まったデスクトップ。
     あぁ、頭を抱えてしまいそうだ。しかしながら、本来こうして立ち止まっている時間はない。これらを片付けてしまわないと、また次々に消化しなければならない物が舞い込んでくるのだから。
     チラリと遊びに夢中になっている赤子の背中をもう一度見れば、先ほどと変わらず、パチパチとおもちゃで遊んでいる丸っこい後ろ姿。尻尾がぴこぴこと揺れ、そして耳も嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねている。
     殿下が可愛いという理由、なんとなく分かった気がしますよ。ガキに対してそんな感情湧いたことなどなかったわけだけど。
     チェアに腰掛け、オレは一つ書類を掴んでそれに一つずつ目を通していく。
     まぁ、悪いことばかりではないですね。視界の端に可愛らしい物体がいるのって。
     休憩がてらチラリと見ると、なんとなく仕事が進んでいるような気がして。
     そうこうして俺は黙々と仕事を片付けていった。

    ・〜・〜

    「ばぁ、ばぁ〜」
     ぺちり、ぺちりと誰かが脚を叩くような感覚で、はっと意識が自室に戻る。
     あぁ、いけない。仕事に集中しすぎてしまったようだ。
    「ばぁ〜、ぃば〜、」
     ぺちり、ぺちりと尚のこと叩き続ける足元の小さい物体は殿下の愛し子。しまった、仕事をしながら見るつもりだったのにうっかり自分のことに集中しすぎてしまった。
    「申し訳ありません、ジュン。何か御用でしょうか?」
    「ぶ〜ぶ〜、れぇ〜〜」
     ジュンが指差す方向へと視線を向ければ、ブルブルと控えめに震え続けている俺の携帯が。宛先を見れば殿下からの電話のようで。
    「電話、よく気付きましたね。」
    「えっへん?」
     胸を張って見せるも疑問系で格好がつかないこの赤ん坊が、なんだか変に愛おしく思えて。
     携帯を手にすると同時に俺は、胸を張っている子を抱き上げた。
    「大変申し訳ありません!お待たせいたしました!あなたの七種茨です!敬礼〜☆」
    『君はぼくのではなくて凪砂くんの、でしょ。まったく気色悪いこと言わないでよね。』
    「これは失敬!……それで殿下、ご用件というのは。」
    『撮影が思った以上に早く終わったから、今戻っている最中だね。だからお昼の準備をしておいて欲しいね。』
    「アイアイ☆承知致しました!それにしても殿下、随分と頑張ってくださったのですね。」
    『ジュンくんのためだね!ジュンくんとの時間を少しでも多く確保しないと、これ以上お留守番に慣れてもらっては困るからね!』
     そういえば、確かにこの赤ん坊はいつの間にか殿下と別れる時に泣かなくなったな。
     俺のシャツのボタンを取ろうと一生懸命に頬を膨らませながら手をもぞもぞとさせている腕の中の赤ん坊は、今もなお泣くような仕草を見せることはない。
     なるほど、こんな甘えたでも預けられ続ければ慣れることがあるのか。
     耳をピンッ、と伸ばしている彼の頭を見つめながらますます手間が掛からなくなっていく、と感心していると電話口からとにかく!と声が聞こえる。
    『お昼はイタリアンの気分だね!』
    「アイアイ!承知致しました!では後ほど。」
     プツン、と電話が切れることを確認すれば今度はまた別のところへと俺は電話を繋げた。
     ジュンはやっぱり、俺の服に夢中のようで電話に見向きすらしない。
     あれだけ大きい声でお話になられているのだから、ジュンの大きな耳にも届いていておかしくないのに。なのに集中していたから、きっと殿下の声は届いていなかったのだろう。
     赤子の集中力というのはなんとも末恐ろしいものだ。
    「もしもし、至急イタリアンを自分の部屋に。……そうです、殿下と閣下がお召し上がりになるものです。あぁ、それから赤ん坊用の物も。……えぇ、そうです。よろしくお願い致しますね。」
     早急に食事の手配をすれば、電話だって簡潔に切ってしまう。そうすれば後は仕事を捌きながら、ジュンの様子を見ることしかやることがなくなってしまう。……が、仕事をしようにもジュンは俺から離れたがることなく今度は「ねんねぇ〜」と自分をペチペチ優しく叩いている。
     いつも殿下がしている寝かしつけのつもりなのかなんなのか。なんでこのタイミングで寝かしつけなんだ。
    この赤ん坊を正直言っておろしてしまいたい。だけど、俺の寝かしつけに夢中のジュンを下ろそうとすれば尻尾を丸め、耳を垂らして泣いてしまうに違いない。夢中になっていることを邪魔されると怒って泣いてしまうのが赤ん坊ですからね。これは前回のお留守番で経験したことだ。
     あぁ、困ったなぁ。仕事はもう諦めるしかない。というか、こんな乳児に寝かしつけをされている状態で仕事になんて戻れるはずもない。
    「…………ジュン、ねんねはしませんので自分と遊んでいただけますか?」
    「、!い〜よぉ〜〜」
     遊ぶ、その単語にぱぁぁっと雰囲気が明るくなったジュンは、パッと花咲く笑顔で笑って見せるではないか。
     ……まぁ、こういうとこが可愛いと言えば可愛いのか。あぁくそ、この赤ん坊相手に悶々とするのは果たして何回目のことだろう。


     さて、自分のチェアに座ってジュンの手を握り、せっせっせのと手遊びをしたり、それから高い高いとジュンのことをぶん投げてと少々過激な遊びをすれば、ジュンは盛大に喜んだ。ぷっくりと膨らんだ頬を赤らめて、そしてキャアキャアと喜ぶ声はいつも以上に大きな声で。
     うん、こうして全力で遊んであげるのも悪くはない。むしろこれは可愛い部類なのかもしれない。
     殿下には絶対に言えない、危険な遊び。だけどジュンが喜んでいるのだから、いいかなんて。
    「いばぁ〜〜!だぁしゅきぃ〜!」
     高い高い(手を離して上に投げるバージョン)の最後に彼のことを抱き抱えれば、ジュンは甘えたように自分の体に抱きついてなんとも可愛らしい声で好きと訴えてくるではないか。
     尻尾もブンブンと振り回し、嬉しいことを表している姿はこう、なんとも。
     うん、やっぱりこの物体は可愛い、ですね。
    「俺も。」
     一つ返してあげればもっともっと嬉しいと言わんばかりに頭を俺の胸にぐりぐりと押し付けてくるジュンは、もう自分にすっかりと慣れてくれたご様子で。
     絆されている自覚はある。出会い盾なんてこんなだらしない身体をしている赤ん坊になんて絶対絆されない、と思考していたのにも関わらずだ。
     けどまぁ、いいか。どうせ将来この赤ん坊が大きくなっても付き合って行くわけだから。殿下の愛し子である限り。





     程なくして、殿下たちが帰ってきて、それから昼食を四人で取って。
     談笑をしばらく楽しんだ後、解散の流れになった時に事件は起こった。
     ジュンが泣いて嫌がるのだ。自分と一緒にいたいと。
     それにショックを受けた殿下から、長期休暇が欲しいと訴えられたり、茨ばかりずるい!と駄々をこねられたりしたのはまた別のお話。
     閣下が久しぶりのジュンに、もう少しここにいさせても……とこっちもこっちで駄々をこね始めたのもまた別のお話です。
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    2022/09/20 18:39:26

    シマハイエナのジュンくん!3

    ・子育てする日和君とシマハイエナのおみみと尻尾がついている赤ちゃんになってるジュン君注意

    12月のひジオンリーにて本になるののサンプルの代わりです!!!!!!!!!他にも四歳ジュンくん初めてのおつかいと、小学生ジュンくんと日和君がイチャイチャしてる話の三本を入れる予定です!!!!!!!!買わなくてもいいです!!!!!!!

    それはそれとして可愛いので見て見てさせてください。少なくとも僕は幸せな気持ちになれました。表紙はできたら差し替えます。


    #ひよジュン #サンプル #幼児化

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