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    オルターエゴ本文に特定シナリオのネタバレは含まれません。

    登場人物

    依水盈遂
    彼方からの君に捧ぐ(PC4)、実験体δは青に微笑む、など

    普通の医学生。平和主義と享楽主義を持ち合わせている明るめのひと。大抵敬語。
    「まあ……なんでもいいんじゃないですかね?それが秩序を乱さないなら」

    一八若狭
    リバースリバースリバース(HO1)、など

    警視庁捜査一課警部補。真面目で丁寧でいつも穏やか。いつも敬語。
    「僕は普通の刑事ですよ。お手柔らかにお願いしますね」

    韓洲諒
    ロトカ・ヴォルテラの愛堕討ち(HO1)

    ヤクザ組織の若頭。無口で無愛想で無表情。大抵雑。いつも淡々とした敬語。
    「今日はよく小鳥が囀ってますね」

     カチャリ、とカップとソーサーが当たる音が妙に響く。
     そもそも、何でこんなことになっているのだろう、と依水は思った。

    「あのぉ、私、そろそろお暇しても……」
     恐る恐る向かいの二人の顔色を窺う。どちらもこの喫茶に入ってから一言も話していなかったため、依水には何を考えて何を思っているのかがまるで分からなかった。

    「おや、そう遠慮なさらないでください。ご迷惑をおかけしたお詫びとして、我々の奢りですので」
     左に座るは一八若狭。穏やかな笑みが丸眼鏡の奥に見えるが、依水は彼が警察手帳を見せた時に見た『警視庁捜査一課』の文字を見落としてはいなかった。コーヒーカップを手に柔らな表情を浮かべているが、いつでも臨戦態勢を取れるように浅く座っていることに気付いた時、依水の背筋は一瞬凍ったかと思った。そも、微笑みのまま表情をあまり変えないのも、腹の中が見えない理由だった。腹の内がどうであれ、まず、敵に回してはいけない人だろう。

    「ええ、そうですね。ケーキでも召し上がってはどうです」
     右に座るは韓洲諒。口数も少なければ表情の変化も薄い。色濃く香る煙草の香りが手元のコーヒーの香りと混ざってよく分からなくなっていた。背も大きければ雰囲気も怖いので何となくただの人ではないのだろうと思っていれば、地元で有名な極道者、らしい。そんな人がホイホイと日の下に晒されていいのだろうか、というか何でこの人お洒落なカフェとか知ってたんだろう、と思ったが、その余計な言葉で命の危険に晒されてはたまったものではない。依水は疑問を飲み込んでおくことにした。

    「いや、別に遠慮している訳では……」
     仕方なく、依水はチョコレートケーキを頼むことにした。メニューには心底美味しそうに写っていたが、目の前の二人の圧で味わえるかが不安になってくる。
     そもそも、依水盈遂はごく一般的な大学生である。ほんの少し、他の人より銃火器の扱いが上手かったり平和主義と享楽主義を併せ持っていたりするだけの、目立ち過ぎもせず目立たな過ぎもしない女子大学生である。普通に過ごしていれば、警視庁捜査一課の警部補だとか、ヤクザの若頭なんてものと交わるなんてこと、ないはずなのである。

     ああ、自分が通りがかった人を助けていなければ……。
     そんな思考が頭を過ったが、自分は何にせよ医学生である。そんなことができるはずがない。通りがかった人が倒れて、自分は応急処置をした。その人が警察もヤクザも追ってる相手だっただけだ。正直な話、そんなことよりも、この二人が一緒になってその人を捕まえに来た時が一番怖かった。
     だって、物騒なのだ、この人たち。一八は一八でいつでも臨戦態勢に移れるが、韓洲は韓洲でいつでも蹴りを繰り出せるように座っていた。しかも、この喫茶に入った時だってこの人たちは絶対に壁側を選ばなかった。この人たちは、自分とは違う世界に生きている。依水は本当に、ただただ怖かった。

     それでいて、ただの平穏を繕っているのだから尚更だ。
     依水にはそのチグハグがどうにも気持ち悪かった。変わらない笑みを貼り付けているような刑事。何をも表出させまいとしている極道。そこに、人間らしさが見えなくて、一切を最適化したような、そんな風に見えて、それで……。捻くれた自分には、二人がそのように写っていた。――そう、だから居心地が悪かった。だってそれは、物事を深く考えまいと享楽主義に縋る自分にも重なって見えたから。
     実際のところ、そうではないのかもしれない。否、そうでないでいてくれ、と思う。これは自分の穿った見方なのだと、どうかここで悪魔の証明を為して欲しかった。それは、何よりも自分のために他ならない。あーあ、だから思考って嫌いなんだ。
     カップから流し込んだ紅茶は微妙に冷めていて、もっと気持ち悪かった。

     お待たせしました、と運ばれてきたチョコレートケーキを機械的に口に運ぶ。甘味受容器が甘味を受容しているという実感だけが残る。きっと美味しいのだろう。ただ、フォークを口に運ぶ自分に向けられる四つの瞳の圧で、美味しいのかどうかがよく分からない。店内のBGMが遠くに聞こえる。今、自分の側にあるのは、目の前の極道が香らせる煙草の香りだけだった。
     ただ甘い固形物を食道に流し込む作業に移った自分を憐れむのか、将又憤るのか。
     結局、至近距離にいるはずの彼らが何を考えているのかも、分からないままだ。
    睢水 Link Message Mute
    2024/02/02 14:12:24

    オルターエゴ

    あぁ、気持ちが悪い。

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