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    雨が降ればいいのに 

     雨が降ればいいのに。
     そう思ってしまう私は子供っぽいなぁと自嘲気味に笑ってしまう。明日は雨かもしれないよ、とハルお兄様が自分の髪をいじりながら言っていたのを思い出す。ぼうっと窓の外を眺めている私は、どんな顔をしているんだろう。窓に映る自分の顔には焦点が合わない。雨ひとつ降っていない星空ばかりを見ていた。

    「あ、フローラ。そろそろ……帰るね」

     私がぼうっとしていたからか、メーメットがいつも以上に遠慮がちに声をかけてくれた。もうそんな時間だ、きっと夕刻の鐘が鳴る。
     別に今日はなにか特別なことをしたわけではない。二人で他愛もない話をして、私の家で――お兄様がいなかったから――食事をしただけ。それでも私にとってメーメットと過ごす時間は特別に愛おしい。けれど、そんな時間ももう終わってしまう。

    「ええ……気をつけてね」
    「うん……」

     メーメットが何を考えているのか、私にはわからない。私はメーメットを笑って送り出す。もう少しいっしょにいたいけれど仕方がない。夕刻の鐘が鳴ったら一気に治安も悪くなるし、メーメットの家の夕食に彼が間に合わなくなってしまうだろうから。

     玄関先で見送って、彼の背中が見えなくなってから小さくため息をついた。
     やっぱり少し、寂しい。
     子供っぽいなぁ私、とまた自嘲気味に笑う。

    「明日から仕事だけど、運が良ければ見回り中に会えるわ。どちらにせよ仕事が終われば会えるもの!」

     わざと声を出して、自分の両頬をぱんと叩く。
     大丈夫、明日も頑張れる。  【Fin.】
    ゆずもち Link Message Mute
    2020/10/13 12:23:47

    雨が降ればいいのに

    ##小説 ##SS ##星座の導きに ##フローラ
    こちらの診断メーカーさん「お題ひねり出してみた」から「フローラへのお題は『予報通り、雨になったら良いのに』です。」といただきましたので、それを元に書いてみました!!
    「それが出逢いで」の続きです。

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