甘露なる意味「甘露」
そう呼ばれて振り向くと、彼の腕の中に閉じ込められた。優しく、けれど、決して逃がさないというそれに大人しく身を委ねれば、首元に顔を埋められた。
「甘露、甘露」
彼は私の名前を良く呼ぶ。なんですか、と応えてもくすくす笑って、また同じように名前を呟かれる。
「……名前は体を表すというが、本当にそうだな」
彼にしては珍しいような、なかなかに詩的な話をされる。
「甘露、天が与える甘い露……甘くて例えようのない霊薬。本当にその通りだと思わされる」
「そう、なんですか?」
そう聞いたときに、一度腕を緩められて、優しい両手で頬を包まれた。目を合わせられる。
「そうだ、少なくとも俺にとっては」
私の恋人、二宮匡貴さんはそういってキスをしてくれた。ちゅっ、ちゅっと軽く音を立てて、触れあうように食まれる。「口を」と促されてキスの合間に少し開ければ、舌を絡め取られた。舌を絡めているうちに少しずつ頭がぼんやりとしてきて、ああ、こういう状態を気持ちいいというんだっけ、と頭が回らなくなる。
「……甘露、甘露っ」
キスの合間に呼ばれる名前は、愛情だけを詰め込まれた優しい砂糖菓子のような音がする。