物間寧流の出会い。1『寧流、寧流。いいかい寧流』
病気がちなお母様は、いつもそう言って私を呼んだ。
『寧流。おまえは人がいないと何も出来ないんだ。だから人が沢山いる所に行きなさい。そして雷香を守るんだよ。雷香は少し、泣き虫だからね。……そうね、あなたは今9歳でしょう?なら6年後にいい高校に行きなさい。寧流、どうかあなたは──』
*◆*◆*
「………ん、」
懐かしい夢を見た気がする。
あの夢を見た後は、決まってとても気分がいい。きっとお母様に会えたから。
もういないお母様に、会えたから。
「寧流ってさ、人間?」
「……………唯、色々大丈夫?」
つい先日できた友達にこんな事を言われるとは思わなんだ。
「いや、元から人離れしてる感じはあるし……なんかこう、『空虚』っていうか?」
……まあ、自覚はある。
世辞かはわからないが周りの大人に散々美貌だとか言われてきたし、自分でもある程度はわかっているつもりだ。
「……それにあんまり笑わないし」
…………嗚呼、違う。笑わないのではないのだ。
私はもう、『笑えない』のだ。