年下の彼に雨の中拾われちゃった。
どんよりとした厚い雲に覆われている空からはもう何日も雨が降り続けていた。僅かに止むこともあるが、それも直ぐに降り出す雨粒のせいで日本国内の湿度は高いままであり不快指数は過去最悪と言った有り様だった。
それが、注意力を散漫にしていたのだろうか……。
今現在私は、足を痛めていた────。
「……っ」
少しの用事を済ますくらいの間なら……そう思い傘を持たず、仮に降り出してもハイヤーを呼べばいい。そんな何時もの私らしくない程の不用心深さからアスファルトの上に蹲りながら今日着ている服に花を咲かせていた。
痛めた足から思うように動けず、既にずぶ濡れになってしまって……肌に張り付く濡れた服が気持ち悪い。
土砂降りの中、視界の先には私のスマホがある。あれを操作して迎えを──と言う意味ではない。ただ単に個人情報があるから回収したいだけで、スマホはここから見るだけでも分かるくらい画面が割れてしまっていた。
──そんな時に私は声を掛けられたのだ。
「あの……大丈夫ですか、雪ノ下さん」
突然私に当たっていた雨粒が当たらなくなる。そして声を掛けられ振り返れば、そこに居たのは──比企谷くんだった。
心配げな目を向けられる。あれだけ私に苦手意識を持ち、会えば必ず嫌な顔をしていたのに……。
「あはは、ちょっとお姉さんドジっちゃったみたい」
「そうですか……」
比企谷くんはそう言うと傘を持っていてくれませんかと言い、私は傘を受け取ると……彼は少し離れた所にあるスマホを拾って来てくれた。受け取ろうとした私に比企谷くんは、「画面が割れてしまっていて、危ないので後で渡しますね」といい手荷物の中へ入れてしまった。
続いて私の前でしゃがみ込みながら「どうぞ」と言って来たのだ。
「えっと……悪いよ、濡れちゃうし」
「気にしなくていいですよ、雪ノ下さんがそんな状態でもそれ以上何も出来ていないということでどうなのかはわかりますから」
私を少し見ただけで、状況が分かる比企谷くんをまじまじと見てしまう。
「あ、俺におぶられるの嫌でしょうけれどここに居るよりはいいと思うので我慢してください」
そんな風に言ってくる彼、比企谷くんに何か言いたくなったがそれよりも嫌でないことを示さなければと……私は彼の提案に乗ることにしたのだ。
***
「冷たいでしょ、ごめんね」
「男子の制服は見た目より厚めなので、冷たくなんてないですよ。それよりも雪ノ下さんの方が雨に濡れて冷たいでしょうし、気持ち悪いでしょう。もう少しだけ我慢してくださいね」
確かに雨に打たれてあれだったけれど……比企谷くんに背負われて、触れ合っている部分がとても暖かい。
普段──面倒くさがりやで、捻くれた態度や言葉ばかり言ったりしているのに。でも、こんな風に困っている人に手を差し伸べることが出来る優しさを持っている……。
「こんなコトをされると──ちょっと抑えられなくなる、かなあ……」
「雪ノ下さん、何か言いましたか?」
「うんん、何にも。それよりごめんね」
「いいですよ、気にしないでください」
私の口から漏れてしまった本当に小さな小さな呟きは、傘を叩く雨音の為に比企谷くんの耳に言葉としては届かなかったようだ。
それに安堵してしまう。
私の小学生時代、中学時生代、高校生時代、そして……大学生になった今でも学校を本心で面白いと思ったことは一度だってない。私と比企谷くんが、もし同い年だったら──そんなことをふと考えていてしまっていた。
「此処です、今開けますから」
ここに来るまでどれくらいの間、比企谷くんに背負われていたのか分からないけれど……彼の家に着いて、玄関の鍵を開けている。その間も比企谷くんは私を背負い続けたままだ。
たったそれだけのことでも、こんなにも嬉しくなる。
玄関の中に入ると、私を背負ったまま「失礼しますねと」と言って私の履いている靴を脱がして置くと自身も靴を脱ぎ廊下を歩いて行くと、軈て脱衣所のある場に着き声を掛けて来た。
「すみません、ゆっくりと下ろしますから片足で立てますか雪ノ下さん」
「え、あ、うん」
離れて行く温もりに、つい寂しさを感じてちょっと呆けてしまい……返事が遅れてしまった。
「すみませんね、先ずはこれで髪の毛を拭いていてください。替えの着替え、何とか用意しますから」
「ありがとう、比企谷くん」
「はい、寒いとは思いますがもう少しだけ待っていてくださいね」
棚から大判のバスタオルを渡されて、濡れた髪を拭く。とても柔らかくて顔に当てていると落ち着いて来る……と。
「雪ノ下さん一応の着替えを持って来たのですが……」
「ありがとう。ん? どうしたの比企谷くん」
その手には彼の物だろう洋服と、もう片方の手には椅子が。比企谷くんの格好は先程迄の学校の制服を脱いでいて着替えを済ませ、頭はタオルで縛って覆われていて滴が垂れないようにしている。
「そのままだとキツいでしょうから先に此方に座ってください」
「わざわざ椅子を持って来てくれたんだ、ありがとうね」
彼が持って来てくれた椅子を置いてくれてそこに腰を下ろすと、先程迄の片足で立っていた部分が解放される。やっぱり片足で長い間立ってると疲れるものだ……後で確りとマッサージしとかないと、と思いながら比企谷くんの顔を見ると……何やら言いにくそうにしている様子。
「どうしたの比企谷くん」
「えっと、ですね……洋服の方は直ぐに用意出来たのですが、アレがですね……」
ああ、なる程。用意出来なかったってことかな、それはこの際仕方ないでしょう。そう私は思っていた、だって"下着"まで用意なんて普通は出来ないのだから。だからそれは気にしないでいいよ、ありがとう比企谷くんと口にする筈だった言葉は次に聞かされた言葉により口にすることはなくなったのだった。
「その……ですね、流石にスボンに肌を直接では気持ち悪いかと思いまして……一応の、えと……予備として買って置いたやつがあるので持って来ました。どちらも買った時の新品のまま袋に入った状態のやつですが、よかったら……あの、使ってください」
「え、あ、うん」
手渡された着替えの洋服の中から二つのビニール袋が見えた。それを手渡す彼こと比企谷くんの顔は真っ赤だ。
***
椅子に腰掛けながらゆっくりと濡れた洋服を脱いで行く。上も下も脱いで、今は下着姿となり……妙な気持ちになる。
「──まさか、年下の……ううん、男の子の家で私が服を脱ぐことになるなんて」
この年になっても私に浮いた話の一つもありはしない……理由はごくごく簡単で、そう思える相手が今迄いなかったからだ。チラリと横を向けば、洗面台の大きな鏡に下着姿の私が写っていた。
「下着まで雨が滲みちゃって、気持ち悪い──」
扉の方に目を向けるとしっかりと閉まっている、加えて直ぐそこに居るわけではないみたい。気配が全くしないのだから……それが分かって、彼──比企谷くんの律儀さと言うものに、胸の奥が暖かくなって行く。
そこから意識せずに残りの下着も外して、脱いで、タオルで拭いた後に渡された着替えを見て……彼が顔を真っ赤にして言ったソレを取り出すと──。
「……成る程、ね。それで真っ赤にしていたんだ、顔を」
私の手元にあるのは、ビニール袋に包まれた新品の"男性用下着"が二つ。一つはボクサータイプの物、二つ目はトランクスタイプであった。何方も柄なんて無い無地で黒一色、ただ、何方も柔らかい素材のようだ。
「へえ、男性用下着ってこんな作りなんだ。引っ張ると結構広がる」
いけないいけない、観察する為に渡された訳じゃないし……何よりも今の絵面は女の子だとしてもどうからどう見てもヤバ過ぎるから。兎に角さっさと着替えないとね。私は脱いだ時に感じた痛みから、脚通しが楽で履ける方をと──トランクスタイプを履くことにした。ゆっくりとゆっくりとした動作で足を通して引き上げて履き終わると結構ブカブカで……うんちょっとだけだけれども、スースーするかな? 続いて渡された中からシャツを取り出して着て、最後に上下のフリースを着て完了。
「何だか凄く新鮮、全然着たことの無いタイプの服。学校で着たジャージが一番近いかな?」
そんな感想を口にしながら、さてどうしようかと思った瞬間に扉をノックされた。
「雪ノ下さん、大丈夫ですか?」
「うん、開けても大丈夫だよ」
少しだけ開けてこちらをチラリ見てちゃんと着替えを終えて服を着ていることに対してホッとしたように息を吐くと、扉を開けて何も言わずに──此方に背を向けてしゃがみ込む比企谷くん。それに逡巡などせずに即座にお世話になることにした。
……暖かい。おんぶなんて、私が両親にされたのは最後何歳の頃のことだったかな? 何て考えが浮かぶけれど、それよりも暖かい彼の背中。思わず比企谷君の首に回している腕をギュッとすると、彼が立ち止まり聞いて来た。
「雪ノ下さん、脚痛いですか?」
「ううん、ちょっと」
顔を比企谷君の首元に埋めると──雪ノ下さん?! ちょ、ちょっと顔を上げてください。何て慌てた声を上げるものだから、余計にからかいたくなってしまう……だって彼、可愛いんだもの。
それに──とても良い匂いがするの。
***
「ではゆっくりと下ろしますから、雪ノ下さんはそのままソファーに座ってくださいね」
「はーい」
比企谷君に言われた通り素直にソファーへと座る、ちょっと脚がじんじんする……かな。そう思っていると救急箱を持った彼が床に座り込みながら、私に顔を向けて来る。ソファーと床……必然的に私は見下ろし彼は見上げる様になり、ドーナツ屋さんで出会ったりした時のことを思い出す。
「じゃあ、失礼して脚に触りますから、痛かったら言ってくださいね」
「うん……」
そう言ってから私の脚に触れる比企谷君は、まるで壊れ物を扱うかのように接して来る。そんな彼の手の動きに──。
「痛かったですか」
「う、うん、少し……」
「分かりました、痛めている場所は判明したので……そこに湿布を貼ります。って、──え」
「どうかしたの? 比企谷君」
「雪ノ下さん、脚首──細過ぎませんか……湿布一枚で一周貼れてしまったのですが。こんなに細いのに体を支えていたんだからこうもなりますよ」
「そうかしら、雪乃ちゃんも同じ様に細いわよ」
「あいつも一枚で一周する細さだとしたら、怪我に注意喚起しとかないと……体力無いやつですしって、まあ……俺が言っても激しく言い返されるオチでしょうけれど」
そう言いながらも手は止めずに、救急箱から包帯を取り出すと、私の足首と足の甲に交差するようにしっかりと巻きつけて行く。そして最後に端を折ってテープで止めると、比企谷君は救急箱を手に立ち上がった。
「暖房だけじゃ体も中々温まらないですから、内側から温める為に飲み物を用意して来ますね」
「ありがとうね、比企谷君」
私の言葉に対して、気にしないでくださいと言いながら歩いて行く彼。きっと彼にとっては今回の事は、何でもないことのように思っているのだろう。でも、私からすればそうでは無いのだ。"あの雪ノ下陽乃が脚を痛めて動けずにいる。"それも雨の中、人通りも無い……出会う相手が、出会う相手だったのならば最悪が訪れていたであろう事は確実。
なのに……本当に、抑えられなくなっちゃうよ────比企谷君。
***
「すみません、ココアを入れようと思ったのですが切らしてまして……」
手渡されたのは甘い香りのする真っ白なもの。
「これは、蜂蜜?」
「正解です。俺の好きなとある漫画作品に出て来た"あったかはちみつミルク"です」
息をふーふーと吹き掛けてから、ゆっくりと一口。うん、とても美味しい。
「ありがとう。とても美味しいし、それに雨にうたれていた身体が内側からぽかぽかと暖まって行く気がするよ」
「お口にあったようで何よりです。あ、後、脚についてですが……色々と怖いので、病院でしっかりと診察してもらってくださいね」
「私のこと、そこ迄心配してくれるなんて……なんでなの? 雪乃ちゃんの姉だから?」
「何でって言われましても……普通は知っている人が怪我をしたら心配、になりませんか?」
「"知っている人"との関係によるかな? 誰でも彼でも心配をしたりはしないよ。少なくとも私は、ね──君、比企谷君なら話は別だけれど」
私と彼の目と目を合わせてジッと見つめていると、頬を少し赤くして顔を反らした。そんな仕草をされると、ついついもっとと思ってしまう──それが、いけなかった。飲んだマグカップをテーブルに、音をたてずに置いて立ち上がろうとして……。
「──!」
声にならない声を上げて、私は倒れ込む……周りの景色がスローモーションとなって本当にゆっくりとゆっくりと流れて行く。その最中明らかに周りの景色よりも早く動く人物が私のところに、比企谷君が私を抱えた辺りで普通の速さに戻り──床にぶつかる衝撃を彼の体越しに受ける。
「っ、ってえ……大丈夫ですか、雪ノ下さん──、雪ノ下さん?」
「……ごめんなさい、比企谷君」
素直に私は謝る。
「どうしたんですか急に……怪我をしていて、何時ものように動けないのが分かっている筈なのに──らしくないですよ、雪ノ下さん」
「だって──比企谷君を見ていたら、止められなくて」
「……え、何ですかそ──」
並んで立っている時には、そこまで意識しなかったのに──比企谷君って結構大きいんだ……"体。"私をしっかりと包み込んで受け止めている……だからそんな彼の脇から手を回して抱きしめて見ると──絵も言われぬ物を感じた。
「ち、ちょ、雪ノ下さん?! 何して……」
「ありがとう……ありがとうね、私を助けてくれて」
抱き着いたまま、彼の胸に額を押し当ててそう言葉を紡いだ。
「別に今のは……」
「今だけじゃない、さっきも……比企谷君以外と出会っていたら、きっと──最悪な事になっていたよ」
そんな事はない、そう言おうとした口は、けれども──動かなかった。頭に浮かんだ最悪の展開、絶対にないとは言えなかったから。
「──だから、本当にありがとう、比企谷君」
「……どういたしまして」
そう、俺の胸元から顔を上げて言葉を紡いで来る陽乃さんは──名に含まれるとおりの笑顔だった。
***
「で、えっと……」
「ん?」
「あの、何時までそうしているんでしょうか……離してもらっていいですか」
俺がそう言うと、さっきよりも更にギュッと抱き着いて来た。
「やだ」
「やだって……」
やだと口にしながら、俺の胸元に頬摺りしている陽乃さん。ちらりと見えるその顔は、何と言うか……"大好きな縫いぐるみを抱えている女の子のようで。"ついつい頭を撫でてしまっていた俺、それに対して目を細めて気持ち良さそうに手を受け入れて撫でられている陽乃さん。
っと──そんな折にリビングに音が響いた。何かが床に落ちた音だ、視線を這わせるとそれは見覚えのある母ちゃんの仕事鞄。──と言う事は……床を這わせた視線を上げると扉が開かれていて、その人物と目と目が合う……果たしてその人は、うちの母ちゃんだった(白目)
***
「比企谷君、こっちこっち〜」
母ちゃんに、床の上で抱き合っていると言う場面(転倒した陽乃さんを助けた結果なのだが) を見られ……あれから数日が経った頃に暇潰し兼目覚まし機能付きに着信があり、画面を見て察しながらも……呼び出された俺は指定された場所に出向いていた。
「どうも雪ノ下さん。……それで?」
「それでとは?」
そう俺が言うのも可笑しくない筈だ、何故なら……この人と待ち合わせる場所なんて、大体は話す為の繋ぎとしてお茶の飲めるところばかりだったからだ。ミスドや喫茶店などなど、なのに……今回の待ち合わせ場所は駅前ロータリーであり、陽乃さんの後ろには最早見慣れた黒いハイヤーが止まっていた。つまるところ……乗れ、と言うことなのだろう。
逆らったりしても意味がないことは既に理解しているので、諦めてさっさと乗り込むと隣にはニコニコと笑顔の陽乃さんが。
「出して」
「はい」
短いやり取りを運転手と交わして、車は走り出す。どうやら既に目的地は伝えてある模様……果たして何処へ向かうのだろうか。
「そんなに心配しなくても行く場所は普通の所だよ」
「じゃあ何処なんですか」
「着いてからのお楽しみ〜」
そう言って俺の腕にしがみついて来る陽乃さんに離れてくださいと言っても「やだ」と再び言われて、結局そのまま目的地迄過ごすことになった。
「此処だよ」
ハイヤーが目的地であるデパートに着き、陽乃さんに言われるままに下りて並んで歩いて行く。果たして辿り着いた目的地とは──男性の下着売り場でした。
「何故此処に?」
尋ねる俺に対して、指を一つ立てながら理由を口にする陽乃さん。
「あの日比企谷君から新品の男性用の下着を私が借りちゃったでしょ? 予備とか言っていたけれど、その予備が無いと必要な時に困ると思ってね」
「あー……別に気にしなくてもいいですよ、あれは俺が勝手にしたことですから」
「だーめ、こう言うことはちゃんとしとかないと。それとも……比企谷君は新品を此処で買うよりも、"私が履いた物を返して欲しいとか?"」
「────」
絶句である。
前見たく、出逢えば散々からかう様に言われたのなら俺も冷静に切り返しが出来たと思う……が、明らかに耳や頬を真っ赤に染めて照れに照れた顔でそう言われてしまい、ついついその場面を想像して……急激に顔が熱くなった為に、陽乃さんから顔を背けて明後日の方を向く。
マジで何なのこの人、そんな可愛過ぎる照れ顔とか仕草、止めてもらえませんかね……心臓に悪いから。
「──じゃあこれで」
『ありがとうございました』
陽乃さんの発言があまりにも俺の心臓に悪過ぎる為に、即座に動き始めパッケージされた男性用下着の並べられた棚から、自分のサイズの物の中から真っ黒で無地なやつを取り出し──これで、と言いつつ陽乃さんに差し出す。
この行動自体かなり来るものがあるが……ここに留まるよりも遥かにマシだろうと、切り替えての行動である。
一刻も早く、この話題から離れなければと。
そうしてもう一つの問題は男性用の下着売り場でありながら会計の店員さんは女性であり、会計中も……と言うか何なら来店からずっとチラチラと俺たち二人を見られっぱなしだった人の──ありがとうございましたの声とともにお店を出て、どっと疲れた俺と……何故かご機嫌な陽乃さんと今はカフェにてお茶を飲んでいたのだった。
「お疲れみたいね、比企谷君」
「……そりゃそうですよ」
明らかに好奇心丸出し、何なら聞き耳もされていたであろう店員さんに聞かれたくもないことを聞かれたのだから。あの人の中で、確実に俺と陽乃さんの関係を誤解しただろうな……と。
「ま、別に誰にどう思われても関係ないでしょう?」
「……どうして、ですか?」
そう尋ねる俺の問に、今日一番の笑顔で──
「だって私は、ちゃんと比企谷君のお義母様からお許しを頂いたんだから」
(おわりん)