第4話 【雪山の温泉 其の4】 せかへい 外伝21
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第4話
【雪山の温泉 其の4】
次に何を作ろうかと考えながら、パトとヤマブキが雪を集めていると、かまくらの外から視線を感じる。
そっちの方を見てみると、
「お、エリス、やることは終わったのか?」
せっかく雪山に来たのだから、研究のレポートを書いていたエリスがやってきた。
「ええ、とりあえず……」
そう言うとエリスは無理矢理かまくらの中に入ってくる。
「狭い……」
かまくらの中は人が二人入れる程度の大きさだ。三人入ると結構狭い。
「エリス、…………狭い」
パトがそう訴えるが、エリスは笑顔で、
「何か問題でも?」
「いや、だから、狭いんだけど」
「問題ないでしょ」
「…………」
そんな状況でもヤマブキはせっせと雪を集めていた。
仕方がないので、パトが入り口の方へ行き、身体の半分を出すことにした。
パトの下半身は冷える。
今度は三人でそれぞれ新しいものを作り出す。
ヤマブキはさっきのより少し大きくなった雪だるま。ついでに身体を一段増やして三段にしたバージョンだ。
さっき作った雪だるま達の横に置くと、ヤマブキはそれを見て楽しむ。
雪だるまに挟まれて雪エビフライがあるため、雪だるまがエビフライを食べている光景にしか見えない。
パトも新しい雪作品を完成させた。
「よし、俺もできた」
パトが今度作ったのは、ブロッコリーだ。それも菊の部分も葉っぱな部分もかなりの完成度で出来ている。
結構な出来のものができたことでパトは満足そうだ。パトはヤマブキにブロッコリーを渡す。ブロッコリーを受け取ったヤマブキはエビフライの横に置いた。
雪だるま二体がエビフライとブロッコリーを囲む不思議な状況だ。
「エリスはどうだ?」
パトはそう言い、エリスの作っているものの方を見る。しかし、エリスは雪を集めただけでまだ何も完成していない。
「まだ作ってる途中か……」
そう言ったパトに対して、エリスは人差し指を立てて、
「ふふふ、もう完成よ」
エリスは集めていた雪にその辺で拾ったであろう、鉛筆程度の大きさの小さな棒を向ける。
すると、雪は形を変えて、小さなオーボエ王国を作った。かなり小さいが細かいところまで再現されている。
雪で作られたオーボエ王国の模型だ。
「どうよ!!」
エリスは腕を組んでドヤ顔をする。
実際にクオリティは凄い。パトも何度かオーボエ王国には行ったことがあるが、その細部まで作り込まれている。
だが、一つだけ文句を言いたいことがある。
「魔法はズルい」
パトはエリスの頭にチョップを喰らわした。