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    タイトルはラストより一話前の『鋼の錬金術師』、アルフォンス・エルリックのセリフである。
    ここのところもうほとんどマンガを読んでいないので今更で恐縮であるが、鬼滅を初めて読んだときラスボスの体力を削る総力戦ということでやっぱり鋼錬を思い浮かべずにいられなかった。手に汗握ってガンガンでクライマックスを追っていたあの頃の興奮が思い出される。月刊は長かったな。それから蘇るのは「ああ、ここで、これをやらせるためにこのメイ・チャンと言う子は物語に配置されていたのかあ」という目から鱗が落ちるような思い。自分に好意を持つ女の子に、自分を犠牲にして兄と世界を救えと言う非情な願いを、アルは最大の殺し文句をもって囁きかける。身を挺して彼女を攻撃から護った上で。君は、君だけは自分にとって特別な存在なのだと。

    ところで鬼滅でこのセリフを、いや、これに類似したセリフを口にしたのはお館様、産屋敷耀哉であった。言われたのは岩柱・悲鳴嶼行冥(うは)である。ボーイミーツガールではなくむくつけき、いや、互いに良い年の男性同士で放たれたこの言葉。しかしそれは過たず相手の心を射抜きその後の展開はご存じのとおりである。そこに居た鬼、珠世も産屋敷の言葉にきっと何かを見出して誘いに乗ったのであろう。本当に月が美しい夜だ、と産屋敷の鴉は言っていた。全くもってかっこいい鴉である。(悲鳴嶼さんと珠世。これはまたくうっとなる組み合わせであり自分の中のいろんなものが搔き立てられるようなペアであるがそれはさて置き)まあ「君にしか頼めない」とは言わなかったであろうが、お館様が各キャラにどんな言葉を掛けて彼ら彼女らのハートを鷲掴みにしたのかと考えると止まらなくなるのは確かだな。これもお館様マジック、心の1/f揺らぎでしょうかね。

    あの時アルは兄が自分を迎えに来ることを確信していた。だからあれは自殺の幇助を頼んだのではなくむしろ逆なわけだが、メイにそこまでは伝わらない。彼女が束の間味わったであろう自分の為したことへの絶望。アルもまたそこまでは考えが及ばなかったに違いない。泣きじゃくるメイに彼は言った。「そっか、ごめん」と。
    27歳の悲鳴嶼の痣の寿命を勿論産屋敷は知っていた。戦えば彼が痣を出すことに躊躇などある筈もないという事も。だから「他の子供たちは私自身を囮に使うことを承知しないだろう」という言葉は自分もともに逝くのだという、文字通りこれ以上ない「殺し文句」である。回想の悲鳴嶼行冥は言った。「あの方はいつも その時、人が欲しくてやまない言葉をかけてくださる人だった」と。

    彼らは皆やらねばならぬと信じた事をやった。そこに至る人々の諸々の想いはいつも作品を読む人々の心を震わせる世の普遍である。今を生きることに通ずる普遍を垣間見せてくれる作品が世に在る事の幸いを思う。

    るげ Link Message Mute
    2022/10/07 0:09:37

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    👹つれづれ
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