Alternative Dancer 厚みのある上質紙に描かれた四角い宣言を愛していた。手のひらに収まってしまうような、受け取った側が簡単に握りつぶしてしまえるものに、志を折り重ねてしまう愚直さが好きだった。だって、自分にないものを魅せてくれるステージに魅力を感じない人間なんていない。舞台の上にあるべきなのは、煌びやかで愚かで、どこまでも愛おしい傀儡のダンスなのだから。皋所縁が蒼さで躍る人生は、昏見には赦されていない行為だ。
道化の後に触れた額縁は冷たい。飾られた死体に意味を抱えるのは昏見だけだ。
「なんていうかさあ、なんでお前、そんなに俺ばっかなの?」
先ほどから名刺を愛でている昏見に、皋はいよいよ分からないといった様子を隠しもしない。昏見の全部が皋だと思って疑いもしていない。傲慢の極地だ。興奮する。
「所縁くんだって、探偵……おや、すみません、間違えました。名探偵じゃなくて、失格探偵ばっかりじゃないですか。お互い様です」
昏見の返事に、皋はわかりやすく眉をひそめる。毒を潜ませた皿の味は上々のようだ。皋の破天荒な願いが叶う日まで、昏見は手を抜くつもりはない。どうせなら、最後の晩餐くらいは昏見好みの味が良い。これは、ふたりで踊る最後のダンスなのだから。
自分の願いが叶うことと、愛している君の祈りが食い違っていても、どこまでも君を愛し続けたい。そこに永遠があることを証明したい。