とある主従の物語。開幕
ドグラス・リンドブロムという名の、とある男子生徒がいる。
NRCの中でも指折りのヴィラン。
傲慢で己以外の人間を須らく見下し人を人とも思わず、使いにくい愚鈍で約立たずの二足歩行の置物か何かだと思い込んでいる。
その上、奴の生家はとんでもないかなりの富裕層で上流階級らしく、制服から消耗品、私物は全て最高級品。気品と作法、ちょっとした動作でも小指の先まで優雅さを体現するという、どこまでも育ちの良さと格の違いを嫌という程感じさせられるのだ。
しかし、ここで汚点や短所がひとつでもあればいいものを、そのどうしようもなく終わっている性格以外の他のすべてが完璧なのだ。
顔も佇まいもかなりいい。
生活態度もよろしい。
身なりも乱れた様を1度たりとも見たことがない。
成績も上から数えるほど上位。
魔法の扱いも教師をも感心させる腕前。
同じ土台にすら立てる要素がただの凡人にはまるで存在しないのだ。
故に、奴が認めた、あるいは奴に認められた人物以外は実力的にも奴の下に否応にも甘んじるしかないのだ。
そして奴には、ひとりのお付の従者がいる。
名をエドヴィン・ベルントソンという。
悪名高き"あの"ドグラスお付きの従者というのだ。さぞどんな凶悪な奴かと戦々恐々していた生徒たちだったが、その期待は思いがけない方向へ裏切られた。
惨い、と一言では言い表せない扱いだった。
俺たちはまだマシだ。奴の目の端にすら映りはしていない。
しかし、コイツは家から奴に用意された人間(道具)なのだ。どう扱おうが何をしようが全ては主人たるドグラスの意のままだ。
一般庶民たる大多数の生徒を除き、ある程度の家格を持つ生徒には、「主従」という関係性がどのようなものか生まれながらに理解しているし、無意識的に肌で知っている。
だから、触れようがない。止めさせようがない。
ごく一部の能無し共は奴には刃向かえないがその従者ならばと手を出したようだが、それは酷い報復を受けたという。
当たり前だ。奴の従者なのだから、それは奴自身と同義だ。たとえどれほどの扱いをされようが、それが彼の勤めであり定められた逃れる余地など無い生き方である。
この学園には"いろんな意味で"悪名高き主従が存在している。
下級生から上級生に至るまで誰もが周知するそれは、れっきとした覆しようの無い残酷な事実である。
リドル・ローズハートの話
主人たるドグラスを蔑む男子生徒がいた。
リドルには許せなかったのだ。
ドグラスという腐った性根の人間も、ドグラスとエドヴィンこの2人の主従の在り方も。
最初は、ドグラスという人間を認めていた。
寮長たる自分の立場や尽きない自寮生への悩みに理解を示してくれた。
自らを更なる高みへと目指す為に努力を決して惜しむことがないその姿勢。
リドルの知識に遜色なく対等に弾む会話。
少し過剰すぎるその人のどうしようもない欠点にも、困り難色を示したが、初めての対等たる友人だったため言葉を飲み込んだ。
彼を尊重し誇るべき友人だと思っていた。
あの日まで。
全てが変わってしまってから、その在り方に心の底から嫌悪感が湧き出してきた。信じ難かった。そんな自分にも、彼に対しても。
だから、混乱した。
ドグラスは"疑似人格付与魔法"を施されたただの人形だった。
訳が分からなかった。
常識が、前提がひっくり返る。
彼の知るドグラスとは、人間はなんだったのか?
あの関係性や扱いを望み、主人にあたる"ドグラス"という人間を作り出したのは、エドヴィンだというのか?
真の憐れむべき従者など、始めから居なかった。
複雑な気持ちながら、一時は友人と称したまでのあの男は人ではなかった。
そうあれと作り出され、何も知らぬまま自らを人間だと思い込みその役を演じ続ける"ドグラス"という人形と、
この先どう接すればいいというのだ?
ジャミル・バイパーの話
従者であるエドヴィンをどうしようもなく哀れむ男子生徒がいた。
ジャミルもカリムという使えるべき主人がいる。
不満は尽きることがない。幼少期から降り積もっていく主従という在り方への理不尽と憎しみ。自らの出自に対する諦観とそれでもという諦めきれない心。
それに、彼にはカリムというバカでドジで一人では何もできない、しかしどこまでも底抜けに明るい主人がいた。
決して、いい主人であるとは言わない。いつも我慢を強いられ突然問題を引き起こし迷惑をかけるどうしようも無い主人だった。
だけれど、不思議と嫌いにはなりきれなかった。
相反する気持ち。自分自身がわからなくなる。
それでも。
故に、エドヴィンの置かれた境遇がどうしようもなく、尋常でなく受け入れ難かった。
ドグラスが"疑似人格付与魔法"をかけられただけの人形だとわかった。
訳が分からなくなった。
エドヴィンへ対する言葉では言い表せないほどの恐怖。
理解することができない存在に、目眩と吐き気がする。堪らず、嘔吐いたモノをなんとか喉に流し込む。
その後、エドヴィンを直視することが出来なくなってしまった。
追記:
SMプレイですね!!!?とエドヴィンに同調し共感を示す興奮し喜び狂う自寮の寮生を、主人の実家の権力と財力を使い他寮へと追い出したことは完全な蛇足だろう。
の話
あ
の話
あ
の話
あ
はじまりの話 以下ネタバレなので読まないの推奨↓
ルードヴィグ・クート・エッケルバリという名の、男子生徒がいる。
「エッケルバリ」という家名を知らぬ者は、この世界(ツイステッドワンダーランド)にはいない。
その巨万の富と世界をまたぐ人脈、なによりもその家名を世に響かせたのは"エッケルバリ一族にしか使えぬ古より伝わる特殊な相伝魔法"。
"疑似人格付与"ーーーそう呼ばれる秘技。
彼は一族の中でもとりわけ抜きん出た才能の持ち主だった。正しく天才と呼ばれる部類の。
相伝魔法を使える者は、一族の本家分家全てを掛け合わせたとしてもそれ程多くはいない。
ノブレス・オブリージュを掲げて慈善活動を良しとする者達もいれば、家業としてその魔法を活かし一族の繁栄に尽くそうとする者達もいる。
そうなれば、必然的に更に魔法の精度や成長、分析、研究と実験を繰り返し高みを目指す者達が現れることも自然の摂理というわけで。
簡潔に言うと、彼はその過激派よりの人間性を持ち合わせていた。
終幕
ドグラス・リンドブロムという名が付けられた、、、がいる。
NRCの中でも指折りのヴィラン。
傲慢で己以外の人間を須らく見下し人を人とも思わず、使いにくい愚鈍で約立たずの二足歩行の置物か何かだと思い込んでいる。
その上、奴の生家はとんでもないかなりの富裕層で上流階級らしく、制服から消耗品、私物は全て最高級品。気品と作法、ちょっとした動作でも小指の先まで優雅さを体現するという、どこまでも育ちの良さと格の違いを嫌という程感じさせられるのだ。
しかし、ここで汚点や短所がひとつでもあればいいものを、そのどうしようもなく終わっている性格以外の他のすべてが完璧なのだ。
顔も佇まいもかなりいい。
生活態度もよろしい。
身なりも乱れた様を1度たりとも見たことがない。
成績も上から数えるほど上位。
魔法の扱いも教師をも感心させる腕前。
同じ土台にすら立てる要素がただの凡人にはまるで存在しないのだ。
故に、奴が認めた、あるいは奴に認められた人物以外は実力的にも奴の下に否応にも甘んじるしかないのだ。
そう、、、されている。
そして奴には、ひとりのお付の従者が、、、いた。
名をエドヴィン・ベルントソンと、、、られた。
悪名高き"あの"ドグラスお付きの従者というのだ。さぞどんな凶悪な奴かと戦々恐々していた生徒たちだったが、その期待は思いがけない方向へ裏切られた。
惨い、と一言では言い表せない扱いだった。
俺たちはまだマシだ。奴の目の端にすら映りはしていない。
しかし、コイツは家から奴に用意された人間(道具)なのだ。どう扱おうが何をしようが全ては主人たるドグラスの意のままだ。
一般庶民たる大多数の生徒を除き、ある程度の家格を持つ生徒には、「主従」という関係性がどのようなものか生まれながらに理解しているし、無意識的に肌で知っている。
だから、触れようがない。止めさせようがない。
ごく一部の能無し共は奴には刃向かえないがその従者ならばと手を出したようだが、それは酷い報復を受けたという。
当たり前だ。奴の従者なのだから、それは奴自身と同義だ。たとえどれほどの扱いをされようが、それが彼の勤めであり定められた逃れる余地など無い生き方である。
そう、、、られたので。
この学園には"いろんな意味で"悪名高き主従が存在している。
下級生から上級生に至るまで誰もが周知するそれは、れっきとした覆しようの無い、、、な事実である。