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    手形 こんななりで、失礼します。なにせ顔にひどくあばたが出来て二目と見られぬありさまなものですからね…………。まあ、立派におなりになって、なんとまあ。頬の感じがすこし似ておいでだ。私の顔をご覧になってもお分かりにならないでしょうけど、以前出入りしていた男のことは覚えておいでですか。そうですか。まだお小さくていらっしゃったのに。あなたのお目にも風変わりでしたか、私は。……叔父上からお聞きになったんですね。こんなところで立ち話もなんです。むさ苦しい、粗末なところですけれど、そんなところでも良かったら。
     まあ、ほんとうに、ご立派におなりですね。お噂ばかりはかすかにうかがっておりましたよ。なかなか苦しい御身におかれてしまわれたとかで、私も心苦しいように思いますけれど、しかし、このように立派にご成長あそばしたなら、あのかたもお喜びになるでしょう。……あのかたのことをお聞きになりたいのですか。私がお仕えしたあのかたのことを。私が仏門に入りました理由のことを。ええ、まあ……短い噂の通りですよ。特に面白おかしい話でもあるまいと思いますけれど。後悔、後悔ですか。後悔なぞ、ひとつもしておりませぬ。ほんのひとつも。私はあのかたをしんからお慕いしておりました。

     ……私の父は東三条殿にお仕えする侍の一人でして、ですから私もそうでした。元服していくらか経って、こいつはこまごまと気が回るし、腕はいまいち立たないしーーいえ、周りの荒くれ者たちがあんまり荒くれていたからそう評されていたのですよ、それなりに腕は立ちました……。それにぼんやりしていて叱責されても聞いているか聞いていないかわからない図太さがあるから、外向きよりも内向きのお仕えに向いているだろう、というのが大勢の意見を総合するところでした。
     それで父は私を、お屋敷の奥の方の、ご家族がお住まいのところのお庭に連れて行き、私を平伏させ、どなたかがいらっしゃるのがわかり、私のような荒くれ者には縁のない薫香が漂って私は驚き、ご命令のとおりに顔をあげまして、そのまま、凍りついたように動けませんでした。無礼を承知も承知のうえで、見上げたあのかたの、道兼さまのお姿が、あまりに美しく、私はかろうじて阿呆のように口を開けずには済んだのですけれど、どうしても目を離せませんでした。あのかたは嫌そうなお顔をなさった。
    「この無礼者」
    というのが、私があのかたに賜ったはじめの言葉でありました。父は強かに私を蹴飛ばして平身低頭無礼を謝しておりました。私も慌てて平伏いたしましたよ。
     日ごろ住んでおりましたところに戻れば、私の振る舞いの珍妙であったことは、はや噂にもなっているようでした。どうしてそんなことをしたのだ、と私は問われ、苦心惨憺の末、どうせお仕えするならば、お美しい方であるほうがうれしいから、と真剣に答えました。侍たちにどっと笑われた時、まるで酔ったように、頬がかあっと熱くなったのを、今も覚えておりますよ。
     それから、私は、熱心にあのかたにお仕えしました。年上の同輩たちは、よかったなお前は蹴り転がされなくて、と私のことを笑いました。むかしはたいへん癇性なお方で、始終供人を蹴り転がしておいでだった、弟君にまでも暴力をふるっておいでだったということは、聞くともなく耳に入ってきました。おまえはあのかたが大人しくなられてからお仕えしてるんだからそりゃ可愛いだろうな、と先達は笑いました。しかしちょっと、私には、蹴り転がされたい気もしました。あの方がくださるものなら何だって私には甘露でした。

     そうですね……。お仕えし始めた時分には、他家の従者に絡まれたりけしかけられたりして、いくらか喧嘩もしたものですが、あれもね、難しいのですよ。むやみに殴ってはあのかたに迷惑がかかる。けれどただ殴られていてもやはりあのかたに迷惑がかかる。なにごとも加減が肝要なのですね。
     まあ……そのころのことは、べつに、私の口から申し上げることでもありませんから、お聞きになりたかったらべつの者にお聞きになってください。噂好きなものはずいぶんおるだろうと思いますから。もういくらか昔のことですから、覚えている者ももう少ないかもしれませんけれど。……そうおっしゃられても、嫌ですよ。私のようなものにそんなもったいないことをおっしゃらないでくださいませ、仏門に身を寄せております私がお話しするにはずいぶん障りばかり多い日々でございました。とにかく私は、数年のうちにあのかたの一の供人に取り立てていただいたのです。私ほどあのかたに忠実なものはおりませんでした。私ほど一心にあのかたをお慕いしているものもおりませんでした。私はそれにまったく満足でした。あのかたの後ろを絶えずついてまわっていられれば、それで良かったのです。あのかたの前を歩いて、あのかたがお踏みになる地面から、石のひとつまで退けてさしあげたいとも思いましたけれど、私のようなものの力では、そうもいきませんでしたよ。できることなぞ、してさしあげることのできることなぞ、数えるほどしかありませんでした。けれどその数えるほどしかないものを、私は誠心誠意、おつとめしていたのです。

     ええ、もう、あなたにお聞かせするのはずいぶん勿体ないことばかりがあります。けれど、まあ、その、私のほとんど十年間にわたるご奉公に、お話しするに値することとてほとんどなく……あなたが聞きたがっておいでの、あの数日間のことを、お話ししましょうか。
     …………「七日関白」。人の口とはほんとうにどうしようもないものでございます。なんとひどい侮辱か。なんとひどい嘲笑か。あのかたは無理に参内なさって、それで具合をお悪くなさって、それでそのまま儚くおなりになって……。お止めしたのですよ。お止めしようとしたのですよ、私は……。後悔なぞしておりませぬ、など嘘ですね。ずっと悔やんでおります。悔やんでおります、刃物で脅してでも、あなたが参内なさるなら私はここで喉を割いて死にますと脅してでも、あのかたを止められなかったことを。……そうすればよかった…………。
     けっきょくあのかたは参内なさって、私は内裏のなかの内裏に入れるような身分のものでもございませんから、牛車の近くで、心配のあまり気も狂いそうになりながら、地面に丸など意味もなく書き続けていました。そして……そして、私は誰だかよく知らぬ宮仕えの男に呼ばれて、道兼さまがお前をお呼びだと言われるのを聞いて、もう卒倒しそうな頭の片隅で、無礼な口の利き方の男だと思いました。そうやって私はあのかたが脇息にやっと寄りかかっていらっしゃるところに駆け寄り、ひごろお美しいお顔の色が、病いでいっそう透けるほど白く、そこにさっとひと刷き病いの気配があるのを見、申し上げたではないですかだから言ったではないですか、という声がからからの喉に詰まりました。あのかたは私の名をお呼びになり、私はあのかたをお支え申し上げて、震えていたのは私の手だったのか、それともあのかただったのか、やっとの思いで牛車にお乗せして……。そのときあのかたが私の袖をお掴みになってお引きになるので、私は、なんとまあもったいないこと、なんとまあ畏れ多いこと、と思いながら、その車に飛び乗ったのでございます。苦し気な息をしておいでのあのかたを拝見するのはもう耐えがたいことでした。できることなら代わってさしあげたい、そんな、まさか、関白におなりになったばかりで、まさか、口にもできないほど不吉なこともないだろう、と私は必死に口の中で念仏を唱えておりました。
    「怖い」
    と、あのかたは、私を掴んで、目を瞑って、崩れるように零れるようにおっしゃいました。おそれ多くも関白でいらっしゃる方が、何を怖がりなさることがありましょう、と私はわざととぼけて、しかしそのあんまりもったいないこと、あんまり恐ろしいこと、私はほとんど涙を堪えきれないような気持ちで、しかしあんまり突然のことに目玉はからからに渇いており、そして強いて叱咤して、あなたさまがそのような弱気でどうなさいます、と励ましました。牛車のどんな小さな揺れからもお守りしたいようにお支え申し上げていて、その御身がその御手が、お熱で震えておいでなのか恐怖で震えておいでなのか、私にはわかりませんでした。
     それからの日々は……、それからの数日間は。…………あのかたのお美しいお顔が、病いに見る影もなく犯されてゆき、しかしそれでも、絶え絶えに息をしておられるあのかたが美しかった。愛しかった。私があのかたをお慕いしていることに、お顔立ちはもはや関係しないのだと冷水をかぶるように気がつきました。私はあのかたに額付いて、何度も、何度も、強く強く祈りました。このかたの辛抱はようやっと結実したのですから、どうぞ、お取りになるならわたくしめをお取りください、と。いちばん熱心に宿直をしていたのは私でした。深更などほかに誰もいないとき、私はそうっと、あのかたの手を握りました。熱い手でした。筆より重いものをお持ちにならないかたの。例えるもののないほど重い天下をお抱きになるかたの。せっかく、ようやく、関白におなりになったのだから、と私はいくらか涙をこぼしました。どうか、どうか身代わりに私をお取りください、と。

     私の願いはいくらかは結実しました。ある日どこかしら、もうどこだったか覚えていないのですがどこかしらで卒倒して、そのまま、あのかたと同じ病いに苦しみました。あのかたと同じ苦しみを分け持っているのだ、と思うと、うれしかった。いくらかだけでも、あのかたの苦しさを、私のものにしたかった。
     ……ですから、そうでしたから、私はあのかたのご臨終を知りません。喪のようすも知りません。あのかたが儚くおなりになったと聞いたとき、私は、もはや己に首を割くだけの力がないことを恨みました。もはや小刀の一つも持てず、ああ、私は、早くあなたと同じところに行きたかった。愚かな奉公だ、と誰かが言ったのを、覚えています。覚えています。ああ、ええ、愚かで、愚かで必死な奉公ですよ。

     いつしか気が遠くなって、私は、「おい」という声が降って来るのを感じました。肩を揺さぶられる感触。寝かされた背のごつごつと尖った石。河原に捨てられたのだ、と私は思いました。
    「おい」
    あなたの声。あのかたの。私は必死に目を開けました、がんがん痛む頭。燃えるように熱くて震えるすべての節。熱が上がり切ったからなのかあたたかでうんと安らかな四肢。霞む目に、私は、懐かしいあなたのお顔を見ました。私はできるかぎりの速さで起き上がり、首が取れそうに痛み痘痕が痒く、
    「地獄ですか⁉︎」
    と言った私の声は喜色に濡れていたでしょう。
    「おれ、あなたに殉じて、あなたと同じ地獄に来れたんですか⁉︎」
    私はね。蓮のうてなは無理だろうけれど地獄ならば私にも目があるだろうと本気で思っていたのですよ。おかしいでしょう。あたりを見回すと、やはり、そこは一面に石や岩が転がる薄暗い河原なのでした。しかし誰もいませんでした、他の亡者も獄卒もいませんでした、私とあのかたの二人きりしかいませんでした、その地獄には。
    「そうだが、早く帰れ」
    とあのかたは嫌そうなお顔でおっしゃいました。その物言いのあんまり冷たいこと。あんまり突き放すようであること。いやでございます。いやでございますよ。
    「あなたがおられない世でどうやって生きてゆかれましょう」
    私ははじめて、生まれて初めてあのかたに口答えをいたしました。この十年というもの、私はずっと、ただただ、あなたのために生きてまいりました。あなたがおられない世で、どうやって生きてゆかれましょう?
     あのかたは、ため息をつきなさった。右手で右目のあたりを軽く揉む癖がおありで、その御手にもお顔にも病いのあとはきれいさっぱり消えていました。

     十八の年、女を殺めた。

     あのかたは静かな声でそうおっしゃいました。

     その娘の前で殺めたゆえ、仏に詣でた帰りの女であったゆえ、仏罰がなお深い。…………お前は人殺しを好いていたんだぞ。お前の好いた俺はお前にそれを黙っていたんだぞ。……お前に見られるたび苦しかった…………。なあ、そんな屑のために死ぬな。早く帰れ。お前に死なれては俺も迷惑だ。

     ……他の方には言わないでくださいね。あんまりひどいことですから。とにかくそのとき私は、一人くらい大丈夫です、と口走ったのです。私は侍ですからね。そういう問題ではない、とあのかたはお嫌な顔をなさりました。
    「俺はお前の命に値するような人間ではない。俺のせいで病いで死んだのもお前が最初ではない」
    「あの女ですか」
    「それを聞いてどうする」
    とあのかたは嫌な顔をなさりました。いいのです、私は、あなたのいちばんになれなくても。選んでくださらなくってもいい。あなたの手にもっとも沿う道具であれたなら、それで良い。だってあなたをいちばん、いちばん真っ直ぐにお慕い申し上げているのは、この私ではありませんか。その真実はゆいいつ揺らがぬではないですか。
    「ならば俺の言うことを聞け。早く帰れ。迷惑だ」
    そうおっしゃられては、ご命令にひどく逆らうこともできないような気がしました。しかしこのかたと離れ離れに、永久に離れ離れになるのがいやでどうしても頷けずにいると、
    「とくべつに送ってやる。嫌か? 俺に送られるのは」
    嫌なわけがございませんでした。いえ、送っていただいて、そうしてあのかたは彼岸のかたになるのだと思うと、嫌でしたけど、あのかたはさっさと立ち上がって、河原を歩き始めました。私ももつれる手足を叱咤してなんとか立ち上がり、滑ったり転んだりよろけたりしながら、あのかたを、あのかたのなつかしい狩衣の背中を、必死に追いかけておりました。
     道はやがて竹林に入りました。あのかたはたびたび足を止めて振り返り、私の歩みを確かめました。あのかたが、私を。そんなことそれまでにありませんでした。竹林の中の爪先上りな石段は磨滅しながらどこまでも続き、私はずうっとこうやって、十六の年からずっとそうしておりましたように、あのかたの背を追いかけていたかった。ながくながく歩いているうち、あのかたの背中も少しずつ磨滅するようにちいさくなってゆきました。
    「道兼さま」
    なんだ、と振り向きなさったお顔は、まだ緋の装束をお召しであった時分の、私がお仕えにあがりはじめました頃のお顔で、あのころあのかたはまだこんなにも新芽のようだったのだ、と私は思い、しかしあのかたが、あんなにも穏やかなお顔でいらっしゃるところも、私は見たことがありませんでした。
     私はふと、兼家さまのことを思い出しました。父君にあまりご執心でいらっしゃるから、「おれではだめですか」、と申し上げたことがね、あるのです。あのかたは何を言っているかわからないというお顔をなさった。それからひとつ吹き出して、
    「お前と父上で変わらぬのは目玉の数ぐらいだ」
    とおっしゃって、私の肩を軽く叩いてまた歩き出しなさって、それが妙に嬉しい記憶として、私の脳裏に焼き付いているのです。

    「地獄に父君はおいでですか」
    「知らぬ。俺には俺の罰がある」

    ああ、よかった、と私は思いました。ようやっと、地獄に堕ちてはじめてやっと、あなたは、父君から自由になれたのですね。
     竹林はどこまでも続きました。歳月に踏み減らされた石段のおもては滑らかで、隙間から草が伸びていました。風が吹くたび、竹が鳴りました。角をひとつ曲がり、一瞬あのかたの姿を見失って、私が慌てて駆け寄ると、このとき私は病苦が己からもうすっかり去っていることに気付いたのですが、あのかたは、もう、童の姿になっておいででした。私が見たことがないはずの、お小さいころの姿。童装束が軽やかに舞い、私たちの道行は、とある山門の前で、終着点を迎えました。
    「ここまでだ」
    と、あのかたがおっしゃいました。子どもの声でした。見下ろしたお小さい頭の、かわいらしいような旋毛を拝見して、ああこのかたはもうほんとうに人でなくなってしまわれたのだ、と思うと、私は胸が詰まってしまいました。
    「お願いです。お供させてくださいませ」
    あのかたは、こどもの顔を顰めて、
    「来るな」
    とおっしゃいました。私はしばらく黙って、お小さい方に跪いて、
    「来るなと仰せになるならば行きませぬ。しかしこの私にひとつだけ褒美をくださいませ。わたくしの忠義を証だてするものをひとつだけくださいませ」
    と懇願いたしました。
    「お前には世話をかけた」
    そんなお言葉が欲しかったわけではないのです。あのかたは私の手を、手首の少し上をお掴みになり、それで私を引いて山門の方へ向けました。ぞっとするほど冷たい、死体の手の温度。あっと声をあげそうになったのを私はかろうじて堪えて、山門の中になにかの花が、一輪だけ落ちていたのを、覚えております。
    「長く生きろ。うんと長く生きろ、お前は」
    そのお声は、聞き慣れたあのかたのお声なのでした。聞き慣れたあのかたのご命令なのでした。そこな筆を取れ、とお命じになるのとまったく同じ調子で、あのかたのお声は、私にそう仰せになりました。背中の下の方を、小さなふたつの掌が強く押しました。そしてわたしは、飛び起きたのです。

     しばらく息の止まっていた人間がいきなり飛び起きたのですから、むしろに乗せて私を捨てに行っていた同輩たちは大変に驚きました。大変驚いてみな手を離したものですから、私はしたたかに尻の骨を打ちましたよ。
     とにかくそれから私は道長さまのところへお目通りを願い、道兼さまが十八のとき人を殺めたというのは本当ですか、と聞き、驚きなさった道長さまに、起こったことを正直に申し上げました。道長さまは仰天なさり、私がその寺で出家することや、私の妻子の面倒を、熱心に見てくださりました。ええ……。
     ああ、ほんとうにご立派になられて。健やかでおありになるだけでも、あのかたはお喜びになるでしょう。
     私はひとを殺めたこともありませんし、これだけ熱心に仏道に励んでいますから、まさかふかい地獄にはゆくまいと思いますけれど、どうせならばあのかたと同じ地獄に往かまほしく思うのですよ。しかし、そうなったら、あのかたはまた、お嫌な顔をなさるでしょうね。来るな、と険しいお顔で言われたことがいったい何度あったでしょうね……。あのかたが、来るな、とおっしゃるのは、いつも本音の裏返しでした。私は、それを知っていた。しかし、さいごのそのご命令は、たしかに本音であったでしょうね。

     ああ、あのかたのいない世界で、こんなにも長く生き続けるのは、ほんとうに苦しく、まったく意味のないように思われてしまうことですよ。しかし、しかしあのかたのお命じになったことだから……。私の勤行であのかたの罪が濯がれるのかは私にはわかりかねますけれど、辛抱して、長くながく永く生き続ければ、いつか宿業によって、無限に続く六道のうちで、いつかまたお目にかかることができるやもしれません、弥勒菩薩がおいでになるより前に、一度くらい……。そのときどのような姿をしているか、どのようなお姿でおいでか、それはわかりませんけれども、修羅道でお会いしたなら私の腕でお守りしたく思うし、畜生になっておいででも、道兼さまと見極めて、大切に傅き申し上げたいのです。
     ああ、ええ、見せてさしあげましょう。あのかたが私にくだすったいちばんのもの。ほら、この袖の下に、あるのですよ。あのとき私の手をお掴みになった、ほらここに、あるでしょう手形が、痘痕がひきつれて私の肌にあのかたを写しとっているでしょう、これが、あのかたの、指のかたちですよ。さきの世でも、そのさきの世でも、この痣さえあればこの手形さえあれば、きっとお分かりになるはずです、あの日々お仕えしていた私だと。
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    2024/03/30 20:11:53

    手形

    人気作品アーカイブ入り (2024/03/31)

    道兼にガチ恋していた供人の青年(八つ年下)と七日関白と臨死体験の幻覚の話です。今後の展開に耐えられないので書いた夢小説です。この小説に出てくる道兼は七割くらい語り手が臨死体験で見た幻覚です。
    ※道兼が故人
    ※陪膳の女房が死んだということになっています
    ※考証が一切ありません、すみません……
    ※夢小説です
    #光る君へ #夢小説 #道兼

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    • 夜のつぎには朝がくる「道兼がもう精神限界そうだからなんとか慰めてさしあげたい」と「つつき倒したい」という気持ちで書きました。道兼って視線と噂に苦しめられ続けているだろうな、と思ったので……「加虐」の割合が多いです。屋敷の中にもあんまり味方がいなさそうで…良くて……という邪念があります。語り手が「結構嫌な噂好き」です。モブ(女)に都合上名前がありますがほぼ出てきません。題は太宰治『花燭』からです。濃淡さまざまな嘘が出てきますが、ただ題だけは明確に嘘だと思います。(4/22追記:嘘がまことになったように私は嬉しいです。しかし長生きしてほしい、道兼に……)

      道兼とモブ召人の話を元女房が語る形式です。恋愛関係も肉体関係もありませんが語り手からモブへの折檻があります。モブが虐待を受けていた描写があります。差別的な語が少数使われています。怪談と夢小説です。
      #光る君へ #夢小説 #道兼
      せいあ
    • 閑話/404ドラマ「いいね!光源氏くん」のように、ある日現代人の語り手のところにタイムスリップしてきてしまう道兼……という謎の話です。
      ・ちょっと長い(五万字近くあります)
      ・現代人がカの罪についてあれこれ言う展開があります
      ・めちゃくちゃボーイズラブです ラブです
      ・カを天女に擬えたりかぐや姫に擬えたり好き勝手しています
      ・陪膳の女房が死んだということになっています(詳細の言及はありません)
      ・あるもの:海、猫、温泉、ケーキ、クリームソーダ、どんぐり、将棋、心身の不調、嘔吐(詳細描写はなし)、未練
      #道兼 #夢小説
      せいあ
    • 末期の恋・七話くらいで病死した女房が地獄で罪を告白する話です
      ・こんな題ですが恋愛関係も肉体関係もありません(恋愛関係になる可能性はあったと思います)
      ・同衾(性的接触なし)があります
      ・夢小説です
      ・「東風吹かず」と微妙に繋がっています
      ・伝聞のかたちで道兼に対する暴言があります
      ・語り手はたぶん二十代です(都合よく設定しています…)
      ・宮中のことをなにも知らずに適当に書いています すみません
      ・たぶんバッドエンド/救いがあんまりないと思います

      #光る君へ #道兼 #夢小説
      せいあ
    • 泥のうてな右大臣家の女房の告白シリーズその③の、取り急ぎ走り書きです。人払いできてないよなあと思ったり、手当てを…と思ったりしたので、そういう夢小説です。道兼に微妙に嗜虐心を抱いていたり、「あなたの咎になったその女のことが羨ましい」という不謹慎な話まであったりするので、申し訳ありませんがご注意願います。
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      せいあ
    • 東風吹かず「お仕事モードの貴公子然とした道兼にメロメロになりたい」という夢小説です。青年期道兼の同僚をしていて、お仕事モードの道兼にメロメロになり、のち地方に下向した男が、道兼の訃報を聞いてかれを回顧する問わず語りです。直球に夢小説です。
      ※道兼の最期についての話
      ※一切の考証がありません。すみません……。
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    • 覆乳盆に返らず宣孝さんといとさんのシーンと、五話の几帳をひらひらしている道兼が刺さったので書いた夢小説です。「そんな家やめてわたしにしてください」という話です。価値観と男女観が中世っぽいですが時代考証が存在しません。右大臣家の女房の告白シリーズその②です。
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    • 蜜柑一献幼少期の道兼を誘拐した下女の独白です。
      ※児童を誘拐して縛って転がしています。
      ※モブが一万字分思いつめた思案を喋っています。
      ※モブの姉が巻き込まれています。
      ※モブに対するやや猟奇的な表現があります。

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