ビーサガ短文ログ■おせろ(アニメ)「ゼブラックス隊長、この間の再戦をお願いしたいんですけどお」
というわけで、高速機動軍隊長・ゼブラックスと東方軍隊長代理・ジャンジャンは均等な線で切られた緑の磐の上に白と黒の石を並べている。
ゼブラックスは白黒ハッキリせねば我慢ならぬ性格だがジャンジャンは負けず嫌いらしい。というより、グロリアフェスティバルの件で仲間から相当からかわれたらしくゼブラックスに勝ちたいというより仲間に勝ち誇りたいのだろう。ぐうたらな隊長代理にもそれなりの面子というものは一応あるらしい。
「うっ…ああっ…!!また真っ白け……」
「白黒ついたな」
盤面はあの時と同じくまた真っ白。どうやらジャンジャンもオセロではいかに端を取るかが重要、ということは仲間からでも教わってきたらしいが、今度はそこにばかり集中し周りが見えず結局どこの陣地も取れず仕舞いという所だった。一点しか見れぬ性格上あまりこの手のゲームには元々向いていないのだろう。
勝負はついたなとゼブラックスが石を片付けようとすると先にジャンジャンの手が動き始め、真ん中の白い石を一枚めくる。
「……潔さが無いのは好かない」
「でもさあ、だいたいさあ」
「……?」
「挟まれたら問答無用でひっくり返されるってのが納得いかないんだよなあ」
最初の一枚から円を描くように周りの石を黒へ、黒へと染めていく。
「挟まれたって囲まれたってそんなの全部倒しちゃえばいいと思わない?なんで二対一なら多い方が勝つって決めつけられてんのさ」
「屁理屈だ。実際の戦闘ならともかくこれはゲームでありルールが絶対だ」
「だからさあ、そのルールがおかしいんだってえ」
ペチン、ペチン、と気怠そうに石を並べ替えていく。最早そこには負けん気なんてものはなくただの作業だ。めんどくさそうな顔をして、それでもジャンジャンの手が止まることはない。
「数とはこの上なく分かりやすい戦力だ。そしてその場に無き数でも、それが力となり個の強さを圧倒する事は私よりもお前が良く見て知っているはずだが?」
「ゼブラックス隊長の嫌みは遠まわしでまどろっこいねえ」
「嫌みではないし回りくどいつもりもない、思ってる事をまっすぐ述べたつもりだがな」
「嫌われない?真っ直ぐ固いその性格」
「嫌われもするかもしれないが、それ以上にこの白黒ハッキリした性格を信頼してくれる者がいるからな」
「ははは、信頼ねえ」
「……個では数には勝てない」
「それでもオイラは、あのギラギラした輝きを信じてたよ」
ゼブラックスはジャンジャンの目を見る。気だるさ。やる気のなさ。野心や復讐心などと言ったものとは程遠いものしか見えてこない。それでもだ。
「何度も言うが、私は白黒ハッキリしないのは好かない。だからお前も好かないな」
「オイラは何事もモヤモヤしてる方が好きだね」
だってオイラもアンタもこんなにモヤモヤしてるみてくれじゃないか。そう言って何に満足したかは分からないがジャンジャンは部屋から出て行った。
ゼブラックスは黒一面に染まった盤を見つめる。
白黒つけたいのかつけたくないのか、まずそこからハッキリしてほしいものだ。