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GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    ある使用人の一日 「起床時間だ!」という声と共にドアが力強く叩かれる。それぞれの部屋のドアを叩いて起床を促すのは見張りを担当する救世主の仕事の一つだ。この起床の合図によって目を覚ますのが俺の日常になったのは半年近く前のことだ。
     ニーガンをトップに据える救世主たちの支配から脱するために起こした反乱はジェイディスの裏切りと援軍の遅れにより失敗に終わった。そして俺は仲間の命と引き換えにニーガン専属の使用人としてサンクチュアリで働くことになった。
     他に道はなかった。戦いに敗れた以上、仲間を救うためには自分を捧げるしかない。それでも毎日「もっと良い方法があったんじゃないのか?俺は考えが足りなかったんじゃないのか?」と考えてしまう。別の方法を選んでいれば戦いに勝つことができて、俺は今でもアレクサンドリアにいられたかもしれない──そんなバカみたいなことを考えるのをやめられなかった。
     俺は溜め息を落としながら定位置にある小さなランプに手を伸ばし、明かりを点けて腕時計を見る。時計の針が指すのは午前六時。いつもと同じ時刻だ。いつも同じ時刻だと理解していても確認するのが癖になっている。
     腕時計で時間を確かめた後、床に直に敷いたマットレスの上に毛布を広げた。毛布は干して乾燥させたいが、そのためのスペースが俺の部屋にはないのでマットレスの上に広げておくしかない。
     毛布を干すスペースがないのは寝室として使っているのが換気用の小さな窓が一つあるだけの小部屋だからだ。かつては物置として使われていたであろう部屋は狭く、ベッドを置く余裕がないため使い古されたマットレスを床に敷いて寝ている。当然ながら他の家具を置くスペースもないので衣類以外の私物はほとんどない。
     だが、このサンクチュアリでは個室を持つ人間は恵まれた方だ。労働者階級の者たちは個室が持てず、大勢が一つの部屋で寝起きしている。仕切りも十分ではなく、個室が与えられる救世主とは大きな差があった。そんな中、ニーガン専属とはいえ使用人という立場の俺が個室を与えられたのは破格の扱いだ。
     ……いけない。そんなことを考えている場合じゃなかった。優先すべきなのは身支度を整えて朝食を食べることだ。
     急いで服を着替えて顔を洗い、食堂へ移動すると既に大勢が集まっていた。食堂で支給される食事を食べるのは役職を持たない救世主であり、ニーガンや幹部クラスは別メニューが部屋へ運ばれることになっている。そのため食事時の食堂は絶えず声が飛び交って騒々しい。
     俺は喧騒の中を目立たないよう移動し、朝食のサンドイッチとホットミルクを受け取って自分の小部屋へ戻った。飲食できるのは食堂だけと指定されているわけではないため自分の部屋で食べる者も少なくない。俺もその内の一人で、それは面倒な奴らに絡まれる煩わしさを避けるためだった。
     救世主たちにとって俺は自分たちの仲間を殺した男であり反乱に失敗した敗者だ。向けられる感情に好意的なものがあるわけがなく、危害を加えられないだけマシなのだと理解している。それでも悪意のある言葉を吐きかけられるのは鬱陶しい。だから距離を置くのだ。
     煩わしさを避けるためではあるが、小さなランプの明かりだけの薄暗い部屋で食べる食事が美味いわけがなかった。それでも大切な人たちを守るために自分の命を繋がなければならない。そんな理由で体を維持するためだけに食べる虚しさに心がじわじわと侵食されていく。
     この暗い小部屋に一人きりでいると「俺はいつか狂ってしまうのではないか?」という思いが過ぎることがあった。親しい人間が皆無の場所で憎い相手に尽くして過ごす日々が心に与える影響は大きい。毎日、いや毎秒磨り減っていく自身を癒やす方法も救う手立てもなかった。いつか狂って壊れても不思議ではない。あの男はそれを待っているのだろうか?
     虚しさを抱きながらサンドイッチをホットミルクで胃に流し込み、食器を食堂に返却した後は一日の最初の仕事に取り掛かる。それはニーガンの朝食の準備だ。
     ニーガンの起床時間は七時頃。それに合わせて朝食の準備を進めていくのだが、朝食の準備と言っても調理そのものは調理担当者が行うので、俺がやるのは食器の用意と最終的な盛りつけだ。調理担当者にメニューを確認してから必要な食器を取り出して磨き、それに料理を盛り付けていく。飲み物はその時の気温に合わせて決めるのだが、今朝は少し肌寒いのでホットコーヒーを用意した。
     準備が整う頃には良い時間になっていたので、ニーガン専用の朝食を乗せたトレーを持って調理場を後にする。この時間帯だと何人もの救世主や労働者とすれ違う。大勢が暮らすサンクチュアリは朝早くから動き出すのだ。今になって思えば、ニーガンの支配を受ける前のアレクサンドリアの一日の始動はもう少し遅かった。僅かな期間しか享受できなかった穏やかな日々が恋しい。
     郷愁に駆られ、喉の奥に塊が詰まったように感じながら足を進めるうちにニーガンの部屋に到着した。部屋の前に立つ護衛が朝食を持ってきた俺に気づき、ドアをノックして「ニーガン、朝食です」と声をかける。それに対して中から「入れ」と返ってきた。
     護衛がドアを開けてくれたので部屋の中に足を踏み入れると、着替え終わったニーガンがこちらに顔を向ける。着替えたと言ってもトレードマークの黒の革ジャケットは着ていなかった。代わりにパーカーをまとっているのが「仕事前」ということなのだろう。
     ニーガンは俺を見るなり楽しげに口角を上げた。
    「よう、リック。今日もつまらなそうな顔してやがるな。朝からそんなにも陰気な顔をするのはお前くらいだ。」
     ニヤリと笑いながら言われた言葉に対して眉間にしわが寄る。この場所で楽しい顔などできるわけがない。
    「これが俺の普通の顔だ。」
    「なんてこった。そんなんじゃ女が寄ってこないぞ。俺みたいにいつも笑顔じゃないと。」
     大げさに目を丸くする男を無視してソファー前のテーブルにトレーを置いた。それを見てニーガンは軽く肩を竦めてからソファーに座り、朝食を食べ始める。
     ニーガンが食事をする一方、俺は備え付けのシャワー室から洗濯物が入ったランドリーバスケットを持ち出し、次はベッドのシーツを剥がしに掛かった。シーツを剥がす手を動かしながら「今日の予定は?」と尋ねれば、ニーガンは食事の手を止めることなく答える。
    「今日は午前中に打ち合わせが二件入ってるだけだ。午後は何もない。」
    「それなら昼食はここに運んで問題ないな?」
    「ああ、それでいい。……そうだ、昼にワインを出せ。種類はお前に任せる。」
    「わかった。」
     俺はそのように返事をしてから剥がしたシーツをランドリーバスケットに放り込み、それを持って部屋を出た。
     洗濯するものを回収した後に待つ仕事は当然ながら洗濯だ。あの男の衣類やシーツなどを洗うのも俺の仕事の一つ。ニーガンのものは他の者たちとは別に洗うという決まりがあり、奴のものを洗濯するのが専属の使用人である俺になるのは当然の流れだ。
     屋外の洗濯場に到着した俺は必要な道具を取ってきて洗濯を始めた。太陽光発電システムが備わり洗濯機を使えるアレクサンドリアと異なり、この場所では手洗いしか洗濯の手段がない。宿敵であるニーガンの服やシーツを手洗いする俺の姿は傍から見れば滑稽なものだろう。仲間には絶対に見られたくない。
     そんなことを考えながら洗濯していると手に感情が移って力任せに布を擦りたくなるが、それを堪えて適度な力で洗うよう自分に言い聞かせた。力が強すぎると布が痛みやすく、下手をすると服やシーツをだめにしてしまう。それが原因でアレクサンドリアが不利になるのは避けたい。
     全ての衣類とシーツを丁寧に洗い、指定の場所に干し終えると飛ぶようにニーガンの部屋に戻った。朝食の食器を調理場へ戻さなければならないからだ。
     俺がニーガンの部屋に到着した時、奴はソファーに座って本を読んでいた。着ているものがパーカーから革ジャケットに変わっていたので身支度は完了したのだろう。
     読書を続けるニーガンを見て「食後の一杯が必要かもしれない」というのが頭を過ぎったので声をかけてみる。
    「ニーガン、何か飲み物はいるか?」
     空の食器が乗るトレーを下げながら問うとニーガンは首を横に振った。
    「そろそろ会議室に移動するからいい。部屋の掃除は午前中に終わらせておけよ。」
     ニーガンはそう言って本をコーヒーテーブルの上に放り出し、立ち上がってドアの前まで移動した。そのまま出ていくかと思ったが、奴はドアノブに手をかけたまま振り返る。
    「リック、ご主人様が出かける時に言う言葉は?」
     ニヤニヤと笑いながら俺を見るニーガンに苛立つ。求められている内容は理解できたが、それを瞬時に実行できるほど人間ができていない。
     俺は軽く息を吐いてから睨むように男の顔を見遣る。
    「……いってらっしゃい。」
     俺が嫌々言ったことは奴も理解しているだろう。それでも楽しげな笑みを浮かべて「ああ、行ってくるぞ」と満足そうに出ていくのだから、あの男の性根は腐っているとしか思えない。
     溜め息を吐きながら視線を動かすとニーガンが放置していった本が目に留まった。「取り出したものは元の場所に戻せ」と言ってやりたいが、言ったところで「それがお前の仕事だ」と返されるのは容易に想像できた。
    「……先に食器を戻して、掃除の時に本を片づけよう。」
     そのように溜め息混じりに呟いてからドアの方へ向かう。
     これぐらいのことで苛立っている場合じゃない。やるべき仕事はたくさんある。その全てを疎かにはできない。とにかく今は目の前の仕事に集中しよう。
     そう言い聞かせてみたものの、陰鬱とした気分が晴れることはなかった。


    *****


     「午前中にニーガンの部屋の掃除を終わらせる」といっても単純な話ではない。俺はニーガン専属の使用人ではあるが、他の救世主や労働者が行う仕事も担っているからだ。
     例えば、掃除一つを取っても廊下や共用のトイレ・シャワー室など様々な場所を掃除しなければならない。他の者たちと一緒に行っても相応の作業時間が必要だ。その他にも調達や徴収から戻ってきた車があれば荷運びを行い、食堂の配膳の手が足りなければ手伝いに行く。時にはフェンスに括り付けられたウォーカーの処理を行うこともある。それらとは別に一人でニーガンの身の回りの世話をしなければならないのだから時間が足りなかった。
     今日は建物全体の廊下を掃除することになっているのでニーガンの部屋の掃除にばかり時間を割いてはいられない。だからといっていい加減な仕事ではだめだ。速さと丁寧さを両立しなければならない。
     俺は食器を調理場へ戻した後、頭の中で部屋掃除の段取りを考えながら掃除道具を取りに行き、急ぎ足でニーガンの部屋に戻って仕事に取り掛かる。
     まずは棚や窓枠などの埃を隅々まで払ってから床を掃き、その次は窓枠や家具を水拭きした。それが終わると今度は部屋に備え付けのシャワー室の掃除だ。ここに来たばかりの頃、ニーガンから「水回りは特にピカピカにしておけよ」と言われたので徹底的に掃除するようにしている。そのためトイレを含めた水回りの掃除には特に時間がかかった。壁と床、そして便器や洗面台をしつこいくらいに擦っていると全身に汗を掻くし疲れるが、奴にごちゃごちゃ言われるよりマシだ。些細な隙も作りたくなかった。
     汗のせいでシャツが背中に貼り付く不快さを我慢しながら手を動かし、ようやくシャワー室がきれいになったものの一息つく余裕もない。シャンプーなどの容器に中身を補充してから狭い部屋を出た俺を待つのはベッドメイクだ。
     ニーガンのベッドはキングサイズなのでベッドメイクを一人で行うのは楽ではない。二人で行うのが一番良いのだが、奴の部屋については俺一人で何もかも行うことになっているので無理だ。ニーガンは細かい部分まで見るのでシーツにしわが寄らないよう神経を使う。
     速さと丁寧さを心掛けながらのベッドメイクが終わると部屋全体を見回ってやり残しがないか確認した。一通り見たが、特に問題ないはずだ。
    「……とりあえずこの部屋は終わり、と。」
     そんな独り言を呟きながら息を吐いた。たったのそれだけで疲れが全身にのしかかる。
     本音を言えば休みたい。サンクチュアリに来てから気の休まることは一度もなく、精神的な疲れによって肉体の疲れが大きくなるので毎日しんどさを引きずっていた。ニーガンを憎みながらも植え付けられた恐怖のせいで奴の反応を気にせずにいられず、あの男と一緒にいると疲れが増す。それでもこの場所を離れることはできなかった。全ては仲間を守るためだ。
     俺は深々と溜め息を吐いた後、掃除道具を持って部屋を出る。
     俺には休む時間も考え込む時間もない。待ち受ける仕事を終わらせなければならない。遠く離れた仲間たちに今の自分がしてやれるのはニーガンに尽くすことだけなのだから。


     ニーガンの部屋の掃除を終えた後は他の労働者と共に廊下を掃除していたのだが、昼が近づいてきたので作業を中断して昼食の準備のために調理場へ向かう。
     昼食のメインディッシュは魚料理だった。それならば白ワインを用意した方が良いだろう。
     俺は食品庫に行き、ワインを選ぶために棚に並んだワインボトルを眺める。これらは調達で得たものだけでなく様々なコミュニティーから徴収してきたものも多い。ニーガンに差し出すために多くの人が苦労しているのだと思うと暗い気持ちになる。
     気を取り直すように軽く頭を振り、目についたワインボトルを取り出すと調理場に戻ってグラスにワインを注いだ。そして後片付けを他の人間に頼んで昼食を届けに向かう。
     ニーガンの部屋の前には護衛が立っていた。それは奴が部屋に戻っている証拠だ。俺が近づくと、朝と同じように護衛が部屋の中に声を掛けてからドアを開けたのでそのまま部屋に入る。ニーガンはソファーにもたれて座っていたが、俺と目が合った途端に前のめりになった。
    「お待ちかねの食事だ。ちゃんとワインを用意してあるみたいだな。偉いぞ、リック。」
     褒め言葉であってもニーガンから言われるとバカにされているようにしか聞こえないので、言われた言葉は無視して奴の前に昼食が乗るトレーを置いた。
    「部屋の掃除は午前中に終わらせてある。他にやることがあれば教えてほしい。」
     そう尋ねるとニーガンはフォークを手に取って考える素振りを見せる。
    「そうだな……三時ぐらいに果物を持ってこい。言っておくが丸ごとじゃないぞ。食べやすいように一口サイズに切ったものだ。」
     こちらをフォークで指して偉そうに告げるニーガンに「それくらいわかってる」と言ってやりたかったが、それを堪えて「わかった」と頷く。
    「飲み物は必要か?」
    「いや、いい。果物だけ持ってこい。」
     その指示に対してもう一度頷き、俺は部屋を出ていこうとした。その時、ニーガンから「リック」と名前を呼ばれる。
     振り返れば感情の読めない笑みを浮かべたニーガンが俺を見つめていた。
    「三時頃だぞ。いいな?」
     その短い言葉が意味深に思えてならず、困惑しながらも頷く他なかった。
     今度こそ部屋を出て、自分も昼食を食べるために食堂へ向けて足を速める。まだ仕事が残っているのでのんびりと食事をする余裕はなかった。急いで食べて廊下の掃除を再開し、タイミングを見てニーガンの使った食器を下げに行かなければならない。
     急いで歩きながらも先ほどのニーガンの命令を振り返る。妙に時間にこだわっているように感じられたが、何か企んでいるのだろうか?
     奴が絡むと悪い予感しかしない、と憂鬱さが胸に広がっていった。


    *****


     腕時計が指すのは午後三時。ニーガンに指定された時間だ。俺はカットフルーツが美しく盛られたガラスの器を持ってニーガンの部屋を目指す。
     自分の手の中にある器を見て溜め息を漏らさずにいられないのは、数種類もの果物が使われたカットフルーツの豪華さのせいだ。
     今の世界で生鮮食品は貴重品。ヒルトップや他のコミュニティーでは野菜や果物、そして畜産物が生産されているが、それは簡単にできるものではない。必死に努力した結果生み出されたものだと理解しているからこそ、それを贅沢に消費するニーガンや救世主たちを腹立たしく思う。
     そして同時にサンクチュアリで生活している自分も同じなのだと考えると胸が苦しくなった。ニーガンほどの贅沢はしていなくても新鮮な食材が使われた料理を毎日食べている俺だって奴らと変わらない。そのことが心苦しくて仕方なかった。
     心苦しさを感じながら歩くうちにニーガンの部屋があるフロアに到着し、部屋の方へ足を踏み出しかけて首を傾げる。いつもはドアのすぐ横に立つニーガンの護衛が部屋から距離を置いた場所に立っていたからだ。
     訝しく思いながら護衛の前を通り過ぎてニーガンの部屋の前に立ち、ドアをノックしようとした時に中から女の喘ぎ声が聞こえてきた。それは苦痛ではなく明らかに快楽を含んでいる。それにより、俺は護衛が部屋から離れた場所に立っている理由を理解した。
    (……ニーガン、あのクソ野郎。セックス中に俺が部屋に入るように仕向けたな。本当に下品で最低な男だ)
     心の中で毒づく自分の顔が険しくなっていることは鏡を見ずともわかる。
     ニーガンは妻とのセックスを俺に見せて反応を楽しもうと考えたに違いない。だから「三時頃に持ってこい」と繰り返したんだ。日頃から俺の反応を面白がっているのは知っていたが、こんなバカみたいなことを考えるとは思わなかった。本当に最低だ。
     気持ちを落ち着かせるために深呼吸し、表情を消した上でドアをノックすると返事がすぐに来た。
    「入れ。」
     何が「入れ」だ、この変態。俺は苛立ちを飲み込んでからドアを開ける。
     部屋に入ればベッドの上ではニーガンとその妻が裸で抱き合っていた。セックス中に第三者が部屋に入ってきたことに驚いたニーガンの妻は「やだ!どうして⁉
    」と悲鳴を上げて顔を背けるが、ニーガンはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべてこちらへ視線を寄越す。
     俺はニーガンへ向ける視線に冷ややかなものが混じるのを自覚しながら口を開く。
    「ニーガン、ご希望のカットフルーツだ。テーブルの上に置いて構わないか?」
     無感情に問いかけるとニーガンは表情を変えないまま「そうしろ」と答えた。
     俺はニーガンから視線を外してソファー前のテーブルに器を置く。その間にもニーガンからの視線が全身に絡みつくのを感じた。この視線が嫌いだ。俺の全てを見透かそうとするような視線が不快で、奴に縛られるような気がして大嫌いだった。
     視線を感じながらも敢えて無視して部屋を出ていこうとすると、「なあ、リック」と粘着性のある声が背中に投げられる。仕方なしに振り返れば愉快げな目が俺を捉えた。
    「お前、しばらく女を抱いてないだろ。混ざるか?」
     余りにもバカバカしい提案に思わず溜め息が出た。言葉を交わすのも嫌になるが無視するわけにもいかない。
    「俺は忙しいんだ。失礼する。」
     それだけを返して部屋を出ると来た道を戻る。もうすぐ調達班が戻ってくる予定で、荷下ろしを手伝うように言われているので一階まで下りなければならない。
     階段を降りる途中、荷下ろしが済んだ後に再びニーガンの部屋に行かなければならないことに気づいてうんざりした。シーツ交換をして使用後のシーツを洗濯しなければならないからだ。
     本当にあの男は俺にとって害でしかない。心の底からそう思った。


     荷下ろしの手伝いが終わり、再び足を運んだニーガンの部屋には部屋の主の姿しか見当たらなかった。それでも微かに残る性の匂いに顔をしかめる。
     ニーガンはジーンズだけを履いた状態でソファーに座っていた。俺が戻ってくることを承知で上に何も着ていないのだから恥じらいも何もあったものじゃない。
     ニーガンはフォークでカットフルーツを食べながら俺の方に視線を定めていた。その意味深な視線を無視して必要なことだけを質問する。 
    「シーツ交換に来たんだが、取り換えても問題ないか?まだだめだと言うならいつ頃なら大丈夫なのか教えてほしい。」
    「構わない。今やれ。」
    「じゃあ、交換させてもらう。」
     ニーガンの許可を得たので早速シーツ交換に取り掛かる。使用済みのシーツをたたんで床に起き、新しいシーツを取り出してベッドの上に広げて整えていった。
     シーツ交換を行う間、ニーガンは無言だった。普段は煩わしいほどにおしゃべり好きな男が無言でいることほど不気味なことはない。気になってチラッと視線を向けると奴の視線が自分に貼り付いていることを思い知らされる結果となり、思わず舌打ちをしたくなった。
     「ニーガンに見られている」ということを意識してしまえば奴の視線が気になって仕方なくなる。じっとりした熱の籠もる瞳で見つめられると全身をあの男に撫で回されているような気がして気分が悪い。
     奴からの視線に耐えながら手を動かし続けるうちにシーツ交換が終わった。早く部屋を出ようと使用済みのシーツを拾い上げた時、ニーガンがこちらに近づいてきた。その手には一口サイズのオレンジを刺したフォークがある。
     ニーガンは進路を阻むように俺の正面に立って見下ろしてきた。俺は注がれる視線に居たたまれなくなり、顔を少し俯ける。
    「……シーツ交換なら終わった。まだ何かあるのか?」
     警戒心を顕に告げた俺に対してニーガンは余裕の態度だ。お馴染みの笑みを見せるニーガンは俺の顔を覗き込みながら口を開く。
    「よく働いてくれるお前にちょっとした褒美をやろうと思ってな。忠実な使用人を労ってやるのも主人の務めだ。だろ?」
     ニーガンはそう言ってフォークに刺さったオレンジを俺の口元に寄せた。顔に近づけられたのでオレンジの香りが鼻先をくすぐるが、目の前の男からの施しだと思うと食欲は湧かない。それでも払いのけるわけにいかず、口の中に受け入れるしかなかった。
     俺はオレンジを見つめてから視線を上げてニーガンを見る。その目に浮かぶ愉悦に苛立ちを感じながらも目を逸らさずオレンジを口に含んだ。
     口の中にオレンジが入った途端に柑橘系の香りが広がり、その実を噛めば果汁が溢れる。それなのに爽やかさを感じないのは俺の心理的なものが影響しているのだろう。
    「リック、美味いか?」
     短く問われ、俺はオレンジを飲み込んでから答える。
    「良い味だった。ありがとう、ニーガン。」
     満点の回答にニーガンが満足気に笑う。奴は「そりゃ良かった」と言ってソファーの方に戻っていった。
     これで今度こそ終わりかと思ったが、ニーガンはソファーに腰を下ろしながら「ああ、そうだ」と思いついたように告げる。
    「今夜、ここに来い。疲れが溜まってるからマッサージしてもらいたい気分なんだ。お前の夕食が済んでからでいいぞ。」
     その命令に思わず目を瞠る。マッサージであればニーガンの妻の中に得意な者がいるはずだ。わざわざ俺に命じる必要はない。
    「ニーガン、俺はマッサージの経験がない。あんたの妻に頼んだ方が──」
    「リック、俺はお前に命令してるんだ。それなのに拒むのか?主人が使用人に命令してるのに?お前って奴は自分の立場を忘れちまったのか?もしそうなら思い出させる必要がありそうだ。」
     口を挟む暇もなく言いのけたニーガンの眼差しは鋭い。次に下手なことを口にすればどんな恐ろしい結果が待ち受けているかわからない。
     俺は緊張のせいで渇く喉を潤すために唾を飲み込み、「すまなかった」と謝罪の言葉を口にした。
    「自分の立場は忘れていない。俺はニーガン専属の使用人だ。あんたの望み通り、夕食後にここへ来てマッサージをする。」
     その返事を受けたニーガンは瞬時に笑みを浮かべた。
    「それならいい!忘れて寝ちまわないように気をつけろよ。」
     俺は頷いて返すと少し足早に部屋を出た。ニーガンの部屋から遠ざかると自然に安堵の息が漏れた。だが、それはすぐに憂鬱の溜め息へ変わる。
     過去にローリの肩を揉んだことはあるが、本格的なマッサージは全くしたことがなかった。どうやれば良いのか検討もつかない。下手なマッサージではニーガンを怒らせてしまいそうだから、とにかく慎重にやろう。
     考えるうちにどんどん気分が沈んでいき、溜め息を吐くのをやめられそうにない。……いや、溜め息を吐いたっていいじゃないか。「一日の終わりに嫌な仕事が舞い込んだ」と落胆することぐらいは許されるだろう、きっと。


    *****


     仕事を片づけて遅めの夕食を終えた後は本来ならば束の間の自由時間のはずだったが、今夜は違う。ニーガンの部屋に行かなければならない。一日の終わりに奴の顔を見なければならないのだと思うと気が滅入った。
     日中とは異なり、夜のサンクチュアリの廊下は人通りが少なく静かだ。自分の足音が妙に響くように感じながらニーガンの部屋に向かい、部屋の前に立つ護衛に「ニーガンの命令で来た」と告げると護衛がドアをノックして俺の来訪を伝えた。そうすると中から「入れ」との許可が与えられる。
     俺はドアを開けて中に一歩入り、ベッドに寝転がって雑誌を捲るニーガンに顔を向けた。奴が読んでいるのは旅行雑誌のようだ。訪れることの叶わない旅先の風景を見て気が紛れるのだろうか?それとも過去の世界が閉じ込められた雑誌を読んで己を慰めているのだろうか?
     そんなことをぼんやりと考える俺に向かってニーガンが呆れ混じりの笑みを見せた。
    「いつまでそんなところに突っ立ってるつもりだ?早くドアを閉めろ。」
     ドアを開けたままであることを指摘され、後ろ手にドアを閉めてからニーガンに近づいてその顔を見下ろす。
    「どこをマッサージすれば良い?」
     目的以外の会話が煩わしいのでストレートに本題を切り出すとニーガンが小さく笑った。俺の考えを見透かしたような笑みが気に触るが、大人しく奴の回答を待つ方が賢明だ。
     ニーガンは自身の肩を叩きながら「肩と背中だ」と答えた。
    「軽く揉む程度でいい。力を入れ過ぎるなよ。痛めたら困る。」
     ニーガンはそのように言うと雑誌を脇に置き、体勢を変えてうつ伏せになる。そのことに驚いて目を瞠った。
     うつ伏せになれば死角が増える。それは俺に対して隙を見せることに他ならない。つまりニーガンは恨まれている相手に自分を殺すチャンスを与えたということだ。
     しかし、見方を変えればニーガンが俺を脅威と見做していないことの表れとも考えられる。「お前程度では俺を殺せない」と言われているのと同じだ。それに気づいてしまえば無防備に背中を晒す男への怒りと、それ以上に屈辱を感じた。
     そうだ。俺はニーガンを殺せない。目の前にチャンスが転がっていても、頭の中で奴の命を奪う自分の姿を思い描いても、それを実行に移すことはできない。ニーガンを殺した代償はアレクサンドリアに住む仲間たちの命だ。俺がニーガンへの殺意を形にすれば、あの小さな町の住人は根絶やしにされるだろう。奴はそれを理解しているから俺に対して無防備でいられる。それが悔しくて堪らなかった。
     屈辱と悔しさに無言で耐えていると「早くしろ」という憎い男の声が聞こえたので、必死に感情を飲み込みながらベッドの近くに身を屈める。
    「……触れるぞ。」
     声を絞り出してそれだけを告げ、ニーガンの背中の上部に両手を置いて揉み始める。
     初めて触れるニーガンの背中には程良く筋肉が付いていた。肉体労働は部下任せにしている割に体は引き締まっている。もしかしたら俺の知らないところで鍛えているのかもしれない。ルシールと呼ばれる凶器を思い通りに振り回すには体を鍛える必要があるのだろう。
     ニーガンの得物のことを思い出して暗い気分になった時、奴から「もう少し力を入れろ」との注文が飛んできた。
    「『力を入れ過ぎるな』とは言ったが弱すぎる。微妙な力加減ってものがあるだろうが。」
    「俺にそんな繊細さを求められても困る。」
    「そう言われりゃそうだな。お前は極端な奴だった。全員生かすか、全員殺すか──だろ?」
     ニーガンから皮肉げに言われて押し黙る。過去の行いを思えば何も言い返せなかった。
     「仲間を守るために敵を皆殺しにする俺」と「統制のために必要な殺しだけするニーガン」を比較して、理性的なのはどちらかと言えばニーガンになるのだろう。極端な結論に走りがちな俺は冷静に判断しているようで冷静ではなかったのかもしれない。
     敗北感に打ちのめされながらマッサージを続ける俺にはお構いなしにニーガンが勝手にしゃべり出す。
    「おいおい、黙っちまうのか?そこがお前のいけないところだぜ、リック。お前には主人を楽しませようっていうサービス精神が足りない。例えばBGM代わりに歌ってみるとか。」
    「歌は苦手だ。」
    「それじゃあ、トークで……ああ、それをお前に求めるのは間違いだな。俺と比べて落ち込まれても困る。」
    「期待に添えなくて申し訳ないが、あんたを楽しませるのは俺には無理だ。」
     投げやりな気分で返すとニーガンが顔をこちらに向けた。真っ直ぐに見つめられて、つい目を合わせてしまう。
     ニーガンはこちらをじっと見つめたまま口の端を持ち上げた。
    「お前はサービス精神ってやつを持ち合わせちゃいないが、俺を十分楽しませてくれてるぞ。そこは自信を持っていい。」
     そう言って笑みを深めるニーガンに対して俺は眉間にしわを寄せる。
     ニーガンという男はサディストだ。他人を屈服させ、苦悩する姿を見て楽しむ。そんな男が最も苦悩させて楽しいと思う相手こそが俺なのだと理解している。
     一時はコミュニティーのトップに立って人々を導いた俺は「強者」と呼べるだろう。そんな俺を地に引きずり下ろして捻じ伏せ、高みから見下ろす快感はニーガンにとって格別に違いない。俺が怯えを見せたり苦悩するたびに奴の顔に愉悦が浮かぶ瞬間を何度も目撃してきたのだから。そうなると俺の存在そのものがニーガンを楽しませていると言えるのかもしれない。
     少しも嬉しくない結論を導き出してしまった自分に嫌気が差す。それにより敗北感が増した。
     それからはニーガンの話を適当に聞き流しながらマッサージを続けた。そのうちにニーガンが「もう十分だ」と言ったので奴の背中から手を離す。俺が手を離すとニーガンは体を起こしてベッドの縁に座り、ゆっくりと上半身を伸ばした。
    「──うん、それなりに楽になった。次はもう少し上達しておけよ。」
     そう言ってニヤリと笑う男に溜め息を吐きたくなったが、それを堪えて「努力する」と答えた。
    「じゃあ、俺は自分の部屋に──」
     「戻らせてもらう」と続けようとした言葉が途切れたのはニーガンに手首を掴まれたせいだ。立ち去ろうとする俺を引き止める行為に目を瞠り、奴の顔を凝視する。その顔に浮かぶ笑みは普段と変わらなかった。
     俺の立場では手を振り払うわけにいかないので「手を離してほしい」と頼むしかない。
    「ニーガン、用は済んだはずだ。手を離してくれ。部屋に戻りたい。お願いだ。」
     苛立ちが滲まないように注意しながら懇願してみたが、奴は無言のまま手を離そうとしない。それどころか俺の体を自分の方に引き寄せた。
     距離が縮まると手首を掴んでいた手が腕に移動して力強く引っ張られる。そのせいで体のバランスを崩し、ニーガンの胸に飛び込む結果になった。
     すぐにニーガンから離れようとしたが、それを阻むように奴の両腕に体を拘束されて焦りが生まれる。
    「ニーガン!」
     抗議の意味を込めて名前を呼んでもニーガンから返ってきたのは楽しげな笑い声だ。
    「そんなに警戒するなよ、リック。抱きしめるだけさ。他には何もしない。」
    「とにかく離せっ!」
     少し強い口調で言い放つとニーガンの指が俺の背を背骨に沿って撫で上げた。指が背を這うのに合わせて背筋にゾクゾクとしたものが走り、一瞬だけ呼吸が止まる。
     俺が瞬間的に息を止めたのを察したのか、ニーガンから声を殺して笑う気配がした。続けて「なあ、リック」と呼びかけられる。
    「お前は俺のもので、俺専属の使用人。そうだな?」
     そのように問うニーガンの声はひどく落ち着いている。落ち着き払った声と問われた内容の意図が読めず不気味ではあるが、とりあえず「その通りだ」と答えた。
    「それじゃあ、今日は俺のことをどのくらい考えた?」
    「……どういう意味だ?」
    「変に勘ぐるな。言葉通りの意味だ。お前が俺のことをどれぐらい考えてたのか──知りたい。」
     そんなことをニーガンが知りたがる理由は全く理解できないが、ニーガンについて考えた瞬間を思い返してみる。
     振り返ってみれば朝から夜まで一日中ニーガンのことを考えて過ごしていたように思えた。それは当然だ。俺はニーガン専属の使用人なのだから仕える相手のことを考えて動かなくてはならない。奴の事を考えてばかりなのは仕事上当たり前と言える。
     だが、それが答えとは思えなかった。ニーガンを初めて目にした瞬間から、奴が俺の大切な仲間を殴り殺した瞬間から、圧倒的な敗北によって屈服させられた瞬間から、俺の心にはニーガンへの憎しみと恐怖が根を張っている。そのせいでどこにいても何をしていても奴が頭から離れない。きっと、俺は死ぬまでニーガンのことを考えずにいられないんだろう。
     ああ、本当に全てが支配されている。この支配から逃れたいのに逃れる術が見つからない。その悔しさに眉を寄せ、自身の情けなさに唇を噛んだ。
     そして、俺を抱きしめたまま回答を待つ男のために重い口を開く。
    「……あんたのことばかり考えていた。」
     自分の正直な答えに虚しくなった。だが、嘘を吐いても意味はない。この男には全てがお見通しなのだから。
    「あんたに出会った時からあんたのことを考えずにいられない。憎くて、殺したくて……怖くて。俺があんたの使用人だからとかは関係ない。ここに来る前からそうだった。あの夜からずっと──俺の頭も心もあんたに支配されたままなんだ、ニーガン。」
     俺が正直に吐き出す思いをニーガンは黙って聞いていた。俺を囚える腕の力強さは変わらないまま。
     俺が話し終えるとニーガンは深く息を吐きだした。呆れではない。込み上げる感情を落ち着かせようとするような、そんな息の吐き方だった。
     身動きせずに相手の出方を窺っていると急に視界が反転した。いつの間にか俺はベッドの上で仰向けになっていて、こちらを見下ろすニーガンと目が合い、そこで初めて目の前の男に押し倒されたのだと気づく。
    「ニーガン……?」
     奴の名前を呼ぶ自分の声が微かに震えたのがわかる。首を絞められてもおかしくない状況に死への恐怖が忍び寄ってきた。
     普段は意識しないようにしているが、ニーガンはいつでも俺を殺せる。処刑の理由なんて支配者であるニーガンならばいくらでも作り出せるだろうし、わざわざ新しい理由を作らなくても「ニーガンの部下を殺した罪」だけで十分だ。俺の命は常にニーガンの掌の上にあるのだと意識してしまえば、自分のちっぽけな命が今にも捻り潰されてしまいそうな気分になった。仲間のために命を捨てる覚悟をしていたはずなのに、いざ目の前に死が迫ると恐怖心を抱かずにいられない。
     全身を硬直させてニーガンを見つめる俺の頬を奴の指が滑った。慈しむような優しい触れ方に戸惑っていると、ニーガンが微笑みながら「怖がるなよ」と言う。
    「何もしないって言ったろ?ただお前に触れていたいだけだ。」
     そう話す声には機嫌の良さが滲んでいた。顔に浮かぶ笑みも皮肉めいたものではなく純粋に楽しげなものだとわかる。
     どうしてニーガンが上機嫌になったのかが俺にはわからなかった。今の会話のどこに喜ぶ要素があったのだろうか?
     「全く理解できない」と困惑している俺にニーガンが顔を近づけ、額と鼻先が触れ合った。そうすると間近で見るニーガンの目に自分の姿が映り込んでいることに気づいて居たたまれなくなるが、顔を逸らすことは許されないだろう。そんな気がした。
     ニーガンは額と鼻先を触れ合わせたまま悠然と微笑む。
    「これから先、お前は常に俺のことを考えて生きていけ。よそ見は許さない。いつまでも、ずっと、死ぬまで──俺がお前の全てだ。」
     告げられた言葉は俺にとっては余りにも残酷なもの。それなのにニーガンの声は愛を囁くように甘い。
     奴の声が耳に届いた瞬間、自分の体が震えたのがわかった。その理由は掴めない。
     圧倒的な支配者の覇気に恐れを抱いたのか?
     官能を孕む声に体の奥の熱を呼び覚まされたのか?
     強大で凶悪な執着心に絡め取られたせいなのか?
     そのどれであったとしても、俺がニーガンのものであり逃げることはできないという事実は変わらない。目を背けることは許されず、奴を見つめ続けなければならないんだ。
    「お返事は?リック。」
     楽しげに問うニーガンは俺の唇を親指でなぞり始めた。その手を払うことさえ俺には許されない。
    「……ニーガンが俺の全てで、俺の全てがニーガンのものだ。」
     悔しさで涙が滲みそうになるのを堪えながら返した言葉にニーガンが目を瞠った。珍しく驚いた様子を見せたのも一瞬のことで、その顔には捕食者の笑みが浮かぶ。
    「満点以上だ。」
     満足げな声が響くと同時に瞼にキスが落とされた。まるで、俺の視界を塞ぐようなキスだった。

    END
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2021/12/03 22:51:55

    ある使用人の一日

    ##TWD ##ニガリク #TWD #ニガリク


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    S7後のニガリク。
    アレクサンドリアが戦いに負けて、リックがニーガンの専属使用人になった後。
    ニーガンの専属使用人として過ごすリックの一日のお話。


    ニーガンの専属使用人になったリックのお話が読みたくて書いてみましたが、ただただリックが不憫でニーガンが嫌な奴です。でも個人的にはとても楽しいお話になりました。
    よかったら、どうぞ。

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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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