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    【とな怪】call my name【ヤマ雫】call my name「もう、離れないでね。」

    そう言われたわけだが……

    call my name

    「ったく、どこ行きやがったあの女。」

    全く、オレから目を離しやがって。
    自分から言っておいて迷子になるとはな。
    言っておくがオレが迷子なんじゃない、水谷さんが迷子なんだ。

    (まぁ、店内うろついてればその内……)

    そう思った時だ。
    ピンポンパン、と店内放送のチャイムが鳴った。

    『お客様のお呼び出しを申し上げます。』

    呼び出しか。
    そうだ、オレもこれで水谷さんを呼び出せば良い。
    さて、どこで頼めば……と、店内を見渡す。
    だが次の瞬間、オレは自分の耳を疑った。


    『海明学院のヤマケンさん。』


    「!?」

    今……何て言った?
    "海明学院のヤマケンさん"ってオレか?オレのこと言ってんのか!?

    『お連れ様がお探しです。今いる場所から動かずにお待ちください。』

    オレはその放送を聴いて立ち尽くした。
    暫く呆然としていると、周りから話し声が聞こえてくる。

    『今の放送で言ってた海明学院ってあのお坊ちゃま校のかな?』
    『"ヤマケン"ってあだ名かねー?』
    『ってかなんで呼び出しされてんだろ?』
    『もしかして迷子とか?』
    『お坊ちゃまなのにー?』

    そう言って品なくゲラゲラ笑っている。

    (あの女……!!)

    何だこれは?オレを辱めるための罰ゲームか!?
    あー、とにかく早くあの女を探しださねぇと……!!
    "動かずに待ってろ"?んなの待ってられっか!
    そう思って今いる場所を歩き出した。
    ……が

    (いやいや、ちょっと待てよ……?)

    もしこのままオレが動き回って水谷さんと合流できなかったらどうなる?
    あの恥ずかしい店内放送がまた放送されるんじゃないのか?
    それをもし知り合いに……ましてやあのバカ3人に聴かれでもしたら……!!

    『ギャハハ!ヤマケン迷子で呼び出しくらってやんの!!』
    『マジダッセー!!』
    『(クスクスww)』

    考えただけでもおぞましい……!!
    そうなるとやはりどちらかがその場に留まるのが妥当か。
    水谷さんはオレを探しているようだから、店内放送通りオレが待つしか……。
    クソッ、なんでこのオレが女の指示なんかに従わなきゃならないんだ!?
    だが従わなければまたあの店内放送……。

    「……。」


    それから5分。


    「あ、いた。」

    オレが待ったおかげでようやっと水谷さんに合流することができた。

    「遅い。」
    「迷子のくせに。」
    「迷子じゃねぇ。ってか何だよあの店内放送は!?」

    早速あのふざけた店内放送について問いただすと、水谷さんはしれっと言った。

    「何って、あなたが迷子になったから流してもらったのだけど。」
    「だから迷子じゃねーっつってんだろ。つーか何であだ名で呼び出してんだよ!?」

    そう言うと、『この人は何を言っているのだろう?』というような目で小首を傾げている。

    「あーいう放送は普通名前で呼んでもらうもんだろうが。」
    「普通に呼んでもらったけど?」
    「"ヤマケン"って普通にあだ名だろうが!」
    「……あぁ。」
    「まさか水谷さん、オレの名前知らないんじゃ……。」

    すると、水谷さんは口元に手をあてて押し黙る。
    おいおいマジでか……?
    そういえばいつの間にかヤマケンくんと呼ばれるようになってたが、アレは周りが呼んでたからか?
    そもそもオレこの人に名乗ったことあったか?
    なんだ?段々自分の立ち位置がわからなくなってきたぞ……。
    そう思った時だ。
    水谷さんがハッとした様子で口を開いた。

    「あぁ……」


    「山口さんとこの賢二くん。」


    その呼び方を聞いた瞬間、全身の穴という穴から汗が噴き出るのを感じた。

    「水谷サン……あんた、オレに喧嘩売ってんの……?」
    「そういえば優山さんがそう呼んでいたなと。」
    「何であの人の呼び方採用してんだよ!」

    あー、もう本当に嫌だ……。
    しかし、ダメージくらいまくりのオレのことなどお構いなく水谷さんは何か考え込んでいる。
    そして考えが纏まったのか再び口を開いた。

    「とにかく、あなたの名前は山口賢二くんということよね?」
    「あ?あぁ……。」

    突然しっかりと名前を呼ばれて少しドキッとする。

    「じゃあ今度からあなたのことは"山口賢二くん"と呼ぶことにする。」
    「何でフルネームだよ。」
    「"山口くん"でも良いのだけど、それだと"ヤマケンくん"より堅苦しい気が。」
    「フルネームでも堅苦しいだろうが。っていうかそれなら下の名前で呼べば……」

    何の気なしに言って、オレはハッとした。
    "下の名前"って……

    「下の名前……」


    「"賢二くん"?」


    「……!!」

    そうすんなりと呼ばれて面食らう。
    そして顔がニヤけるのを咄嗟に隠した。
    ったく、何でこの人はこうも無防備っつーかなんつーか……。
    いやいや、待て……落ち着けオレ。
    女に下の名前呼ばれることなんか今まで嫌ってほどあっただろ?
    そうだ、今更こんな女に呼ばれたからってどーってことは……

    「賢二くん、大丈夫?」
    「あ、あぁ……。」

    だ、ダメだ……何だこの破壊力は……!?

    「……?」
    「あー……、普通の時の呼び方はヤマケンのままで良い。」
    「はぁ……。」
    「その代わり、今度店内放送するときはちゃんと名前呼べ。」
    「また店内放送するようなことに巻き込まれたくないのだけど。」

    何か皮肉を言われた気がしたが、ニヤけ顔を抑えるのに必死で反論するどころではなかった。

    「それより、電子辞書買ったならカフェにでも行こうぜ。歩き回って疲れた。」
    「半分はあなたが迷子になったからじゃ……」
    「うるせー。」

    ようやっとニヤけが治まり、今度は水谷さんの皮肉にしっかりと反論して彼女の前を歩き始めた。
    まぁ、今はまだこのままで良い。


    "今は"……な。
    ショコラ Link Message Mute
    2018/07/15 23:45:03

    【とな怪】call my name【ヤマ雫】

    ヤマケン視点。電器屋デートで再び迷子になったヤマケンを店内放送で呼び出した時の様子を妄想。
    #となりの怪物くん #とな怪 #ヤマ雫 #ヤマシズ #ヤマケン #山口賢二 #水谷雫

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