争乱 5注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「刀剣乱舞」の二次創作作品です。
・原作登場刀剣男士の女体化があります。
・カップリングとして「くりんば」が含まれます。
・モブ(オリジナル主人公及び登場人物)がかなり話します
・創作設定が多くでてきます
・文章は拙いです
・ご都合主義です
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
終章 長かった戦いの終わり
目の前で飛び出した二つの集団は、中間地点で刃を交えた。
審神者たちの先陣を切っているのはやはり丈留だ。己で刀を振り回して戦う姿は、刀剣男士に負けず劣らず壮絶なオーラを発していて猛々しい。
「でも、刀剣男士増えてないかしら?」
同じオーラを纏う刀剣男士が彼の周りに増えている気がしたが、気にしないことにした。
「……どうしたの?」
「なんでもないわ。それと、なき。あなたも行っていいわよ」
先程から、ずっと私に付いてくれているなきにそう言ってみるが、あまり乗り気ではないようだ。
「……じゃま?」
「違うわ。でもね、戦力になるなら手伝いに行かないと。それに、私なら大丈夫ってわかってるでしょ?」
「………気をつけて」
躊躇いはしたものの走り出した鳴狐を見送って、私は再び戦場に目を向けた。
「やっぱりみんな疲れてる……」
一時は龍王の加護により回復したものの、流石にずっと加護があるとはいかなかったようだ。先ほどより審神者の数は減り、刀剣たちも真剣必殺を繰り出したのか衣装が破れているものも多い。それでも未だに多くの審神者が戦い続けている。丈留は未だに先頭に立ち最前線を維持しているし、中程ではひろが襤褸布をひらめかせながら敵を討っている。
私はもはや何か口にすることはできず、ただただ黙って扇を握りしめた。
「白蓮殿!ここにいましたか……」
そんな時、じっと戦場を見つめる私に1人の審神者が声をかけてきた。ここまで走ってきたのか、息は乱れ膝に手をついているようだ。目を向けずとも、ハアハアと荒い息が聞こえてくる。
「私に何か?」
私は戦場から目をそらさず彼に答えた。
「いえ、戦場も佳境に入りましたから。まだ高台にいるのかと確認しに来たのです。さあ、安全なところへ移りましょう」
「いいえ、私はまだここにいます。全てを見届ける義務が私にはありますから」
「……」
彼は私が答えても何の反応も示さなかった。不思議に思って振り返ろうとすると、
「……そうですか。残念ですっ!」
彼、いや奴は短刀を私に向け、こちらに突っ込んできた。私はバランスを崩し後ろに倒れそうになった。後ろは崖だ。落ちればただの怪我では済まないだろう。でも、私は何も心配していなかった。なぜなら……
ボフッ
キンッ
「さ、させません!」
「なっ!なぜここに刀剣が!」
奴の刃は横から飛び出してきた五虎退によって弾かれた。五虎退はすぐさま奴を拘束し地面に押し付けた。
戦場を見るため高台のかなり際まで寄っていたが、私は五虎退の虎に受け止められていた。
「こ、この方は主のご友人です。だ、だから僕がお守りいたします!」
そう宣言するのは彩綾さんのところの五虎退だ。本丸創設初期に来たという彼は、彩綾さんが特に信を置く一振りだ。その強さも折り紙つき。
「くそっ!こうなったら……おい、お前ら!出てこい!」
私を一人で傷つけるのを諦めたのか、奴は仲間を呼ぼうとする。だが、私の予想が正しければそれは無駄に終わるだろう。
「そのお前ら、と言うのはこの方々ですか?」
ドサッ
奴の背後から出てきたのは、一人の男と二振の刀剣男士。
「龍樹くん」
「白蓮さん、大丈夫でしたか?」
そう長い髪を揺らし、奴の仲間だったであろう人たちを地面に一纏めに転がしたのは、私の愛する人、龍樹その人であった。
「ええ、無事よ。彩綾さんの五虎退が守ってくれたから。前田もずっと見ててくれたでしょ?ありがとうね」
「!お気づきでしたか」
「あくまで予想だったんだけど……でも、そう言うってことは当たってたのね」
予想が当たっていたことに喜んでいると、先ほどから黙ってた奴が大声で喚き始めた。
「俺の仲間に何しやがった!いや、そもそもなんで鳴狐がここにいやがる!さっき戦場に行っただろうが!」
「あなたの仲間は何やらコソコソと動いてましたので、ちょっと“おはなし”しただけですよ。それと鳴狐は一度も戦場に行こうとなんてしていませんよ?」
「どういうことだ!」
「……これは白蓮さんに説明してもらいましょうか」
真顔でこちらに話を振ってこられたので、私はため息を一つ吐いて話し始める。
「私は手伝いに行ってとしか言ってないわ。彼は龍樹くんの刀剣男士。だから、彼が龍樹くんのそばに行くのは当然でしょう?」
「じゃあなんでそいつはここに来たんだ。俺がお前を狙うことはバレてなかったはずだ!」
「ええ、バレていませんよ。私も知りませんでした。疑いはかけていましたが」
「なに⁈」
「あなた、検非違使だと叫んだ方でしょう?あなたは戦場にいるにもかかわらず、持つのは短刀のみ。そして刀剣男士も連れていなかった。体つきも戦闘系審神者のそれじゃない。……だったらおかしいんですよ。顕現もしていないのに、あの時空の歪みだけで検非違使と判断するなんて」
「っ!」
「だからこそ、あなたには疑いをかけていました。ですが、襲撃をかけてくると思ったのは別の理由です」
私は虎にもたれかかっていたのをやめて、奴の前に歩み寄った。
「戦場で司令塔を狙うのは常識。先ほど、あれだけ目立って皆さんに命令をした私はどう見ても司令塔です。私が敵ならあれを見て動く。そう思いました」
「……お前は囮だったというわけか」
「囮、というには不適切かもしれません。なにせ、私は彼と示し合わせたわけでもないし、五虎退という私にとっての伏兵がいることも知りませんでしたし」
「は?お前は丸腰状態のつもりでここにいたのか?」
「ええ。私は信じていたんです」
意味がわからないという顔を隠しもしない奴に、私はこれ以上なく自信を持って微笑んだ。
「私の後ろ盾として動くと約束してくれた彩綾さんを、私の愛する人に付き従う刀剣男士たちを、そして私が愛し、心から信頼している龍樹くんのことをね。だからこそ、私は一見一人でもこの場に立ってあなたという襲撃者を待つことができたの」
そう言い切ると、奴は肩をガクッと落として俯いてしまった。
「はぁ。っ!イタタ……」
「白蓮さん⁈どうしたんですか!」
言いたいことを言って気が抜けたのか、体に無意識に入っていた力を抜くと、右脚に痛みがはしり思わずうずくまった。すぐさま心配そうな声をした龍樹くんが近寄り、抱き起こしてくれる。
「ありがとう。ちょっと足挫いちゃったみたい」
「は、白蓮さん大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。私が足を滑らしたのが原因だと思うから。むしろ、あそこで五虎退の虎くんがいなかったら落っこちてたもの。助けてくれてありがとう」
きっと彩綾さんに言われて私を護衛してくれていたのであろう五虎退は怪我をしたと知り、心配してくれているがこれは私のミスだ。むしろ助けてもらってこれなのだから、謝意を伝えるためにも頭を少し撫でてみた。
するとすぐに眉を下ろし嬉しそうにしてくれるのだから、よその子だとしてもやはりかわいい。
「そういえば、戦場はどうなったのでしょうか」
「あ、そうよね。どうなったのかし、ら……
ねえ、龍樹くん」
「…何ですか、白蓮さん」
「今のなに?」
「わかりません」
「なんか知らない男士いなかった?」
「自分も知らないです」
「それもなんか丈留さんに混ざったというか、憑依しなかった?」
「しましたね」
「「……………」」
目の前で起こった現象に何も言えず、私たちは揃って視線を合わせ黙り込んでしまった。
しかし、その謎現象の後盛り返した審神者たち(いや、丈留さんたちと言ったほうがいいか?)によって一気に戦局は私たちの方に傾いた。
その戦いはその後、最速で最多の検非違使を倒した戦いとして後世に記録されることになる。
そんな未来のことなど知らず、終結を迎えた戦場に戻るため、私も動こうとしていた。
「すみません。俺も一緒に行けたらよかったんですけど……」
「まあ、これを置いてはいけないでしょうしね」
目線の先には、刀たちに昏倒させられた今回の首謀者たち。
二人揃って苦笑するしかなかった。
「でも、その足では動けないでしょう?」
「大丈夫よ。迎えがくるから」
「迎え、ですか?」
未だに腰を抱かれ、立つのを補助してもらっていた私に龍樹くんがどうするのか聞いてくるが、もう手は打ってあるのだ。
「主、無事か!」
そこに駆け込んできたのは常より傷だらけの戦装束を纏う私の一の刀、山姥切国広ことひろが走ってきた。
「少し怪我はしたけど、命に別状はないわ。あなたこそ大丈夫?」
「ああ、中傷よりではあるが軽傷だ。そのほかの刀剣男士も重傷にはすでに手入れ札が使われたし、そのほかも手入れをしてもらっている。審神者も同様に霞本丸に任せてきた」
聞いてもいないのにきちんと報告をしてくれるのはさすが己の初期刀だと内心褒めちぎりながら、私はその体に思いっきり抱きついた。
「わ!主?」
「無事でよかった。途中から色々任せっきりだったけど、よく務めてくれたわ。ありがとう」
「これしきのこと、近侍として当然だ。……それに主だって慣れないことをしていたんだ。俺もしないといけないだろ」
その時私は、そう言って顔を赤くしながらも私を抱きしめ返してくれるひろが本当に可愛かったので、あとで伽羅に甘やかしてもらうことを勝手に決めた。
「白蓮さん。ひろに運んでもらうってことですか?」
そこに苦笑しながら龍樹くんが声をかけてくる。ひろも自分が呼ばれた理由を聞いていないことを思い出したのか、一度体を離しこちらの話を聞く体勢になった。
「そうだった。私が足をくじいてしまったから、ひろには下まで私を抱えていって欲しいんだけどできる?」
「問題ない。龍樹兄さんたちはどうするんだ?」
「俺たちはこの片付けがあるから、ね。下に行くなら、みんなに伝えて欲しいことがあるんだ。さっき連絡が来て、今回の上位者会議に参加した審神者は全本丸明日から二日間の日課は免除。今回の襲撃による被害によってはもう少し伸びるかもしれないけど、三日後くらいにはお詫びの品が各本丸に届くことになると思う。事件の詳しい説明は次の会議に知らせることになるって」
「承知した。一応、今回使った資材や手伝い札の大まかな数は把握してあるが……」
「本当かい?できるならそれもあとで渡してもらいたいな」
「わかった。あとで書面にしておこう」
「頼んだよ。でも、今日は二人とも帰ったらすぐ休むこと。俺からも倶利伽羅に連絡しておくからね」
倶利伽羅の名前を出されたことで、ひろは肩を大きく震わせた。全く、この子は……きっと隠れて仕事をしようとしていた初期刀を見ながら、ふと疑問がわいた。
「あ、そうだわ。ゲートって直ってるの?こんのすけの機能が回復したのは知ってるけど。」
「はい、直ってるはずです。でも、皆さんきっと一斉に帰ろうとすると思うので、そこは……」
「わかったわ。ちゃんと指示する」
「ありがとうございます」
戦いが終わった後も全体への指示をさせるのが心苦しいのか苦々しい表情だが、ここまで来たら私がやった方が混乱が小さく済むだろうことも事実なので受け入れた。
「じゃあ、行くぞ。主、首につかまってくれ」
そう言って私を横抱きにしたひろによって私は高台で龍樹と別れた。
ちなみに五虎退は先に彩綾さんの方に帰らせた。戦いが終わった今、護衛の意味はないと言うと納得したのか、素直に戻っていった。
戦場に戻った私たちを迎えたのは、厳しい戦いを戦い抜いた後特有の高揚した空気だった。
「お、我らが指揮官が帰ってきたぞー!」
誰かが私たちを見て叫んだ。それに続くようにどんどん歓声が上がっていく。
「え、えーと。これ、どうしたらいいのかしら」
「そ、そうだな。どうするか……」
抱きかかえられていたのを下ろしてもらい、ひろとともに途方にくれていると、集まり始めた審神者たちを割るかのように奥から誰かやってきた。
「た、丈留さん⁈大丈夫ですか⁈」
そう、奥から出てきたのは全身血みどろでボロボロとしか表現できない格好になった丈留さんだった。隣には、同様にボロボロになっている陸奥守吉行を先頭に、彼の息子と思われる刀剣男士たちが付き従う。……一名見慣れぬ顔がいるが。
「なーに、これぐらいかすり傷よ!そっちこそ指揮お疲れだったな」
「どこがかすり傷ですか!あとでちゃんと治療してくださいよ!」
「わかった、わかった。智蕾のと同じこと言うんじゃねーよ。」
「あ!彩綾さん!結界はもう消したみたいですけど、大丈夫でしたか?」
ひろとともに高台を降りている途中に、周りを囲っていた結界は解かれていた。だからもう彩綾さんも術から解放されているはずだが……
「あー、まあ。一応霞本丸だったか?そこの審神者に任せてきたから今頃休んでんだろ。切国も向かったみたいだしな」
そこで一度話を止めた丈留さんは、こちらをじっと見つめると、自身の腰に携えていた刀を右腕で地面に突き立てると、その場に膝をついた。
「え?」
突然のことに驚いていると、隣にいた陸奥守まで同じ姿勢をとり始め、周りの審神者も習うように武器を突き立て地に膝をついていく。例の見知らぬ彼も同じようにしているのだから驚きは止まらない。
「た、丈留さん⁈一体何を……」
「我らが指揮官殿、我らはそれぞれの力を示した。結果は見ての通りの勝利だ。それも元を辿れば貴殿の指揮のおかげ。ここに我ら戦闘系審神者からの最大の敬意を」
「うむ。わしらからも同じく、じゃな。貴殿の声がわしらの背中を押した!ここにいる多くの刀剣男士がそれを証明するじゃろう。だからこそ、わしらからも審神者白蓮に最大の敬意を」
そう言い切ると、皆一斉に己の武器を天に掲げた。
『「さあ、我らが指揮官殿よ。勝鬨を!」』
「…主」
「……」
全く、ここまでお膳立てされて答えないなんて女が廃るってもんでしょう。静かに促すひろに体を支えてもらっていた腕をどけてもらい、私は丈瑠さんたちの前に立った。手にはあの、龍王から借りた緋扇を持って。
「……最初に、今回私の拙い指示に従ってくれたことへの感謝を。有名審神者の後ろ盾があったとはいえ、信じてくれたこと本当に感謝しています。だからこそ、敬意を示すべきは私の方です。あの緊急時に私を信じるという判断をしてくれた貴方達こそ、敬意を表されるべきだと」
「あるっ」
思わず声をかけようとしたひろを私は視線で止める。わかっている。ちゃんとここでは終わらせない。
「ですが、きっと貴方達はそれを違うと言ってくれる。今日初めて出会った人も多いですが、私はそう言い切れます。…ならばこれは、我らの戦果。私たちみんなに与えられるべき敬意です。ここにいない、結界に従事していただいた方々、手入れ、治療に動いていただいた方々、全てに聞こえる勝鬨を今ここに届けましょう」
私は扇を広げた。伸ばす先はとっくに晴れ渡ったあの青い空。
「我らの勝利に勝鬨をあげよ‼︎」
「「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
その声はどこまでも響き、この戦いの本当の終わりをその場に知らしめたのだった。
~***~
「もう、丈留さん。本当にびっくりしたんですからね!」
『悪い悪い。だけど、どっかで締めとかないとな。あとあと色々あるだろ?』
「それはわかりますけどね」
あの勝鬨の後、興奮冷めやらぬ審神者たちに龍樹からの伝言を伝えた後、帰る人々の列を横目に見ながら私と丈留さんは壁際に腰をつけて話していた。
私は最後までここにいる審神者たちの姿を見届けるため、丈留は疲労が濃く、陸奥守吉行を含め顕現していた刀を本丸に返し迎えの刀を待っている。
ちなみに、彩綾さんは霞本丸の審神者である露璃さんに本丸での安静を言い渡され、切国に抱えられて一足先に本丸に戻った。
『しっかし、あいつのことどうするかなぁ』
「あいつって、あの初めて見る刀剣男士ですか?」
『刀剣男士って言っていいのかもわかんねぇがな。あれの本体は俺の刀だったのは間違いないが、どうして顕現されたのかは分からん』
「でも、龍樹くんと見てましたから後日なんらかの接触はあると思いますよ?」
『げ、まじか。まぁ、愛し子なら悪いようにはしないだろうからいいか……』
そう言ってげんなりする姿は、龍樹への信頼が垣間見えて私は少し嬉しくなった。
「おい、迎えに来たぞ」
『あー、やっぱお前か』
目の前に近づいてきたのは丈留さんの所の同田貫正行だった。彼は体格もいいし、性格的にも丈留さんのことをよくわかっているから抜擢されたのだろう。
「…ボロボロだな、おい」
『まあな。すまんが、頼む』
「わかってる。ほら、乗れ」
ぶっきらぼうに言いながらも、体に負担がかからないようにできるだけかがんでいるのは、見えにくいが彼の優しさだろう。
『じゃあ、嬢ちゃん。俺は先に行かしてもらうわ』
「ええ、ご自愛ください」
同田貫の背におぶわれたまま話す丈留さんを見送り、私は再び審神者の列を眺め始めた。
「おい、起きろ」
「姉さん、起きてくれ」
いつのまにか微睡んでいたのか、二人分の声で私は瞼をあげた。
「あれ、伽羅?どうして……」
「あんたの旦那から連絡があったからな。足を怪我してるんだったな。薬研が本丸で薬を用意してるから、早く帰るぞ」
「他の審神者たちも順調に帰ったから俺らが最後だ」
ああ、なんてうちの子は優秀なのだろうか。一つしか質問していないのに、必要な情報はきちんと知らせてくれる。
「そう、わかったわ。じゃあ申し訳ないけど、伽羅おぶってくれる?」
「ん?抱えた方が早いんだが」
「それはそうなんだけど、横抱きは、ね。やるなら大事な人にしてもらうべきだと思うのよ。ね?ひろ?」
「え、なんで俺……って主!」
途中で言いたいことがわかったのか、顔を真っ赤に染めたひろは布で顔を隠してしまった。
コソッ「ねぇ、伽羅。龍樹くんから言われてると思うけど、今日のひろには仕事させないようにしてね。それから思う存分甘やかしてあげて。私、本当に今日助けられたから」
「ああ、そうする」
「ほら行くぞ!」
コソコソと伽羅と話していた私たちは、顔を隠すために先に歩き出してしまったひろを追ってゲートへ向かった。
この上位者会議は、混乱の中にもかかわらず審神者、刀剣、役人、全てにおいて死亡者および折れたもの無しという奇跡的な結果で解決した。主謀者も迅速に捕らえられ、再発の可能性も低く抑えられたとして、後世に語られる一大事件として時の政府に記録された。そして、その解決に尽力した審神者として何人かの古参審神者と肩を並べたのは当時はじめて会議に参加した一人の若い審神者。彼女は、その本丸の特殊性からその後ある二つ名で呼ばれるようになった。
その名は「龍の軍師」