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  • 鶴町伏木蔵 〜スリルとサスペンス〜スリルとサスペンス大好き少年探偵団。
    2019/12/04
    ##落乱 #鶴町伏木蔵 #現パロ
    やぐ/10818
  • シスター審神者は覚えてないpixivからの保管用です。
    部活動を頑張るヒロインと兼さんの転生現パロ話。
    ※少し悲しい話かもしれないので、ご注意ください。
    ※ちょっと特殊な設定なので、気になる方はスルーしてください。
    ※もし詳しくて、間違ったところが気になっても、スルーしてください。

    初出/2019年8月2日 21:24
    #刀剣乱夢 #兼さに #女審神者 #現パロ
    1000_cm
  • 三池書店③ 中編(下)※支部再掲

    【対バン】
    対バン(たいばん)とは、ライブイベントにおいて複数の出演者が入れ替わる形でステージに立ち、共演すること。
    いわゆる「バンドもの」においては、ほぼ「タイマン」と同義。語感も似てるし。

    古書店店主の大典太さんと、そこでボランティアしてる審神者ちゃんの現パロ。エア嫉妬回です。
    現時点での二人の関係性は両片想い。

    今回も、セトリの元ネタにした曲はTwitter固ツイのツリーに。
    デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
    なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は引き続き禁止させていただきます。
    (そういった行為が見受けられ次第、前作共々元ネタ公開は中止いたします。)
    
注意点

    このお話には以下の内容が含まれます。

    ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)
    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・夏場パンイチで寝る大典太光世
    ・自己肯定感低すぎてストーカーや不審者に気付かない審神者
    ・全力で嫌な奴ムーブかましてくる燭台切
    ・名実共にドMな亀甲
    ・(あくまでパフォーマンスとして)BLっぽい演出を取り入れる鋼音メンバー

    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    あと、作中で大典太さんが中々にヤバい飲み方をしてますが絶対に真似しちゃいけません。死にます。マジで。


    合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
    _c_a_r_r_0_l_l_
  • 5 #カミュ主 #イレブン  #現パロ #カミュ リモート飲み会現パロカミュ主の漫画でござます。驚きの白さ。現代パロでカミュ主が同棲してます。イレブン君もカミュ君も社会人、それぞれ別の会社で働いていて、イレブン君の会社でリモート飲み会があるとのことで邪魔にならない程度におつまみとか持って行ってやろうとしたカミュ君だったけれども…?というお話。Xtabashi
  • 同級生かせんくん #刀剣乱夢 #現パロ #歌さに

    過去発行した同人誌の再録です。Pixivからの移行お試し。
    EstKakouToe
  • 2たがいネクタイずっとアイコンに使っている絵の元。
    2017年
    ##落乱 #山田伝蔵 #土井半助 #現パロ
    やぐ/10818
  • Weight現パロでソラとヴァニタスが双子の設定です。かなりでろでろな内容となっています。気持ちリバで書いてます。


    #腐向け  #王国心  #空兎空  #現パロ
  • いつか笑って話せるようにイベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
    一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

    いつか笑って話せるように
    発行:2020年8月30日

    長谷部×女審神者
    ・転生現パロ夫婦本。記憶なし長谷部×記憶あり主
    ・モブとの会話
    ・基本的に、長谷部が主に敬語じゃない
    ・ほんのりとした、匂わせる程度の死ネタ

    「お前が見ているのは俺なのか、それとも俺の内側にいる別の誰かなのか」
    「教えてくれ、お前は何を知っているんだ、俺とお前はいったい何だったんだ」

     本丸の記憶が戻らないまま、主と出会い、恋をし、結婚した長谷部。
     妻と自分、そして周囲の友人たちとの間に横たわる、どうしても埋まらない“何か”を追い求めながらも、日常は穏やかに過ぎていく――
     手探りで歩む二人の日々を、日々の食卓とともに描く十三章。

    「信じたいんだ。記憶がなくても、また好きになってくれた彼のこと……思い出してくれなくても、ちゃんと好きになれた私のことも」

    文庫・224ページ
    表紙:藤村百さん
    イベント頒布価格:900円
    サンプル掲載範囲:冒頭三話分
    #へしさに #サンプル #現パロ
    六花@支部から移行中
  • 【単発現パロ三池兄弟】夏の幻【霊力フェス‼】2021年8月15日実施の霊力フェス‼参加作品です。
    本当に素晴らしいイベントありがとうございました!!とっても楽しかったです。

    当日boothにて無配にしていた読み切りの三池兄弟の現パロです。※現在は配布していません。
    両親の再婚で歳の離れた兄弟となった二人が、夏休みに一緒にライブに行くだけの話。
    お互いへの感情は比較的最初から高いです。

    pixivからの移行です。

    #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #現パロ #霊力フェス #霊力フェス‼︎
    みどり(aomidori003)
  • 主を探して三千里~受験生 長谷部国重の憂鬱~イベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
    一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

    主を探して三千里~受験生 長谷部国重の憂鬱~
    発行:2018年11月24日

    長谷部×女審神者
    ・転生現パロ
    ・モブの登場
    ・何でも許せる人向け
    ・この世の全てと無関係

    長谷部国重高校三年生。定期テスト前夜に思い出したのは前世の記憶と、そして……昔通っていた小学校に主がいた!?
    成績ガタ落ちで呼び出しを食らった春の終わりから、刻々と減っていくセンターまでの残り日数と、始まった昔の仲間探し。果たして彼は無事主を探し出せるのか、そして第一志望に合格できるのか?

    文庫・132ページ
    表紙・挿絵:須羽永渡さん
    イベント頒布価格:700円
    サンプル掲載範囲:最終章手前まで
    #へしさに #サンプル #現パロ
    六花@支部から移行中
  • 芥河を越えろpixivからの保管用です。
    神事の大役に抜擢された、地元で評判の美少年・和泉守くんの家庭教師をする現代パロディ話です。

    初出/2019年9月20日 21:27
    #刀剣乱夢 #兼さに #現パロ
    1000_cm
  • 3月いご1P漫画まとめ #金カム #月いご #現パロ

    ついったでupした1P漫画まとめ

    1P→海の果てに夢見る 原作軸
    2P→海に誓う 原作軸
    3P→лето 現パロ・ショタ
    花森
  • #カミュ主 #イレブン  #現パロ 現パロ。イレブン君にタートルネックぴっちりズボンにエプロン着せたいという欲望だけで現パロにしました。Xtabashi
  • ゴルフたまにはゴルフなぞでも。
    2015/03/26
    ##落乱 #現パロ #安藤夏之丞 #厚着太逸
    やぐ/10818
  • 国広さんちの常備菜pixivからの保管用です。
    近所のおじまんばちゃんに押しかけ女房する現パロ転生話。

    初出/2018年4月27日 22:28
    #刀剣乱夢 #現パロ  #姥さに
    1000_cm
  • 在ること現パロ来派。年の離れた三兄弟。転生ではない。ほぼ明石と愛染くん。二人の存在にめちゃくちゃ救われてる明石の話。
    適度に暗い。
    来派、急激に来て、本原稿の合間に書いてしまった……。書いていたのは堀川君たち堀川派の話なので、とにかく疑似兄弟というか、疑似家族に本当に弱い。大好き。
    しかし、いきなり現パロですみません。なんでも許せる方向け。
    続きはこちら「知られたくない」(https://galleria.emotionflow.com/115535/626040.html

    pixivからの移行です。
    #刀剣乱舞 #来派 #明石国行 #愛染国俊 #蛍丸 #現パロ
    みどり(aomidori003)
  • 不器用な、俺のアルファ支部にちょくちょく投稿してる魈空のオメガバース(健全)の土台となる話です
    黒縁メガネでカーディガンでヨレヨレ白シャツで引きこもり気質な魈とギリギリ学生なのでブレザーとジャージを愛用してるコミュ強な空と言うビジュアルを想像しながら書いてます
    近いうちにエッチな部分ば書けたらいいなぁ #原神 #原神BL #二次創作 #魈 #空 #魈空 #現パロ #オメガバース
    ツナ缶@細々原稿中
  • 知られたくない現パロ来派。年の離れた三兄弟。転生ではない。なんでも許せる方向け。
    お休みの日に、蛍丸の同級生の左文字一家に三人がお泊りに行く話。宗三と明石が飲み友達設定です。
    全体的にわちゃわちゃしてますが、明るくもないです。

    以前書いた話と同じ設定です(「在ること」(https://galleria.emotionflow.com/115535/626038.html))。
    読んでなくてもわかるとは思います。

    ついでにいうと、ラムコークのカクテル言葉は「もっと貪欲にいこう」。

    pixivからの移行です。
    #刀剣乱舞 #来派 #明石国行 #愛染国俊 #蛍丸 #宗三左文字 #左文字兄弟 #現パロ
    みどり(aomidori003)
  • 生きるをする現代転生パロのジムシルになるまでの話。完結してます。
    #宝島
    #ジムシル
    #腐向け
    #現パロ

    感想等おありでしたら褒めて箱(https://www.mottohomete.net/MsBakerandAbel)にいれてくれるととてもうれしい
    夜船ヒトヨ
  • 三池書店①※支部再掲

    転生世界線現パロの典さにです。
    転生と言いつつ、全員過去の記憶はありません。
    古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの出会いの話。
    個性強めの女審神者が出てきます。
    続き物なので、まだ恋愛描写はありません。

    上記の通り、完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #女審神者 #大典太光世 #典さに #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
    _c_a_r_r_0_l_l_
  • 君と生きる食卓Twitterでちまちま書いてる本編軸だったり現パロだったりする飛エリの160字前後のSSまとめ。アニメ版リジェネシス視聴済み、漫画本編再履修中なので本編軸のSSはアニメ版の設定をもとに書いてます。でも基本的にご飯食べてるだけなので時代考証とかその他諸々は横に置いといてほしい。二人でテーブルかこんで飯を食え、二人でなくとも楽しく飯を食え。
    #蒼天の拳
    #流飛燕
    #エリカ・アレント
    #飛エリ
    #現パロ

    感想等おありでしたら褒めて箱(https://www.mottohomete.net/MsBakerandAbel)にいれてくれるととてもうれしい
    夜船ヒトヨ
  • 三池書店②※支部再掲

    前作への「いいね」「ブクマ」ありがとうございます!!
    お陰様で続きました。

    古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの話。
    前作読んでなくてもキャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
    大典太さんに無自覚片想いをしてる審神者ちゃんが、三池書店でボランティアを始めるお話。

    注意点
    このお話には以下の内容が含まれます。
    ・転生世界線現パロ
    ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・ツール変換ほぼそのままの博多弁
    ・解像度の高いクソ客

    博多くんの台詞はこちらのツールで変換したものをそのまま使っています↓
    https://www.8toch.net/translate/
    違和感があった場合、コメントかTwitterで「こういう言い方の方が自然だよ」と教えて頂けると非常に助かります。。。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
    _c_a_r_r_0_l_l_
  • 三池書店③ 中編(上)※支部再掲

    審神者ちゃんが「懲役一週間」と自称する帰省から帰ってきて、最推しバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のライブに行くお話。
    詳しくは、1ページ目の登場人物紹介にて。

    セトリの元ネタにした曲は、Twitterの固ツイのツリーにぶら下げております。デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
    なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は禁止させていただきます。
    (そういった行為が見受けられ次第、元ネタ公開は中止いたします。)

    
注意点

    このお話には以下の内容が含まれます。

    ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)

    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・若干の毒親匂わせ描写あり



    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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  • 三池書店③ 前編※支部再掲

    前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
    大典太さんが満を持して審神者ちゃんをお出かけに連れて行きます。
    関係性は「両片思い未満」です。

    注意点
    このお話には以下の内容が含まれます。特に下二つは、苦手な方ご注意ください。
    ・転生世界線現パロ
    ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
    ・年齢操作
    ・若干の下ネタ
    ・DVやモラハラ被害を受けた人の描写
    ・いじめの描写

    下二つの描写のクリーン版が読みたいという方がいらっしゃいましたら、コメント/マシュマロ/TwitterのDM等でお気軽にご相談ください。
    時間はかかってしまうかもしれないのですが、ストーリーに影響を与えない範囲で、可能な限り配慮したバージョンを上げさせて頂きます。

    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。

    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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  • 三池書店③ 前編 Epilogue※支部再掲

    前作まででリアクション下さった皆様、ありがとうございます!

    大典太さんと審神者ちゃんが、海辺のドライブを満喫して、いつもの街に帰って来たところから始まるお話です。

    関係性は「無自覚両片思い」というか、「お互いにあえて自覚するのを避けている両片思い」。
    基本的にどの回も、登場人物紹介を見れば分かるように書いているのですが、この回に限っては前作のおまけ(蛇足?)的な内容となっております。
    そんな訳で、できれば前作読んで下さっていること推奨……なのですが、下記「注意点」にも書いた通り、前作の雰囲気を壊しかねない若干の下ネタを含みます。
    当該場面は6ページ目です。苦手な方は飛ばしちゃって下さい…。



    注意点

    このお話には以下の内容が含まれます。

    ・転生世界線現パロ

    ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ

    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる

    ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
    ・若干の下ネタ(おっぱいとかAVとかに言及する場面)あり



    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
    _c_a_r_r_0_l_l_
  • 三池書店③ 前編 Prologue※支部再掲

    古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、大典太さんのやってる古書店でボランティアをしてる大学生審神者ちゃんの話。
    前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
    この訳の分からないタイトルは、想定していた以上に全体のボリュームが出てしまい、泣く泣く分割した結果です。(一回タイトルを連番にしてしまったので後には引けない感)

    注意点
    このお話には以下の内容が含まれます。
    ・転生世界線現パロ
    ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
    ・転生後の一部刀剣がキャバクラ行ったりする(※下心はナシ)

    作中で、ソハヤが生物学部をdisるような発言をしますが、生物学部出身の筆者による自虐であり、差別的な意図は一切存在しません。
    生物学部には、Gとか内臓とか、そういった一般人から理解されづらいものを、心の底から「可愛い」と称する人間がマジで一定数存在します。少なくとも私の出身大学ではそうでした。

    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
    _c_a_r_r_0_l_l_
  • かぼちゃ妖怪のせいかもboostいただいた方に向けて同封していた折本のWEB再録です。
    書き下ろしその後の平田屋敷にて。
    パスワード 発行日(初版)


    #現パロ #主従
    榛摺
  • 春交わし、歩む君 #再録 #くりんば #現パロ #援交





    いつかこの感覚は、薄れてなくなるのだと思っていた。
    浅はかにも、そう信じたかったのだ。自分がまだ何も知らなかった頃と同じ、そんな無垢な身体に戻れるのだと。

    「…きみ、いくら?」
    見た事もない、如何にもサラリーマンという草臥れたスーツを着た男に声を掛けられた。そっと目深かに被っているフードと己の髪の毛の隙間から、相手の顔を確認する。
    小太りの中年男性、といった印象のその男に指を三本立てて数字だけを言うと「じゃあ行こう」と了承された。何処に行くかは決まっている。何をするのかも決まっていた。
    こういった行為はすっかり慣れたもので、同じように見知らぬ何人の男たちとも似たようなやり取りをしてきた。今日もそれの、延長線上に過ぎない。
    (不毛だな…)
    誰に言うでもなく、考える。
    それでも、この生産性のない関係を、常に誰かと持っていたい。そう感じているのは、他の誰でもない己自身だ。
    相手は誰でもいい。ただ性別は男でなければならない。そして、自分を抱いてくれる男でないと意味はないのだ。
    例えばどんなに、手酷くされようと。

    事が終わってホテルを出ると、外は雨が降っていた。天気予報の降水確率は低くて、通り雨だろうかと思いつつ駅までの道を走る。道路に所々でき始めている水溜まりを避けながら走るが、靴やスラックスに泥水が跳ねてかかる感覚がした。思ったより道路には水分があるようだ。
    何とか近くの駅にたどり着いて、駆け足をやめると突然腰に痛みがくる。先程までの行為を嫌でも思い出した。
    今日の男はいい相手とは言えないくらい乱暴で、体の彼方此方に噛み痕は残っているし後ろも切れてしまって、じくじくと傷んでいる。
    ただ、優しくしてくる相手よりはマシだった。今までの自分の、経験としては。
    しかし痛いものは痛い。先に相手が帰ったので、ホテルを出る前に薬を塗ってはみたのだが、どうにもあまり効いていないようだ。小雨に打たれて体温も下がったせいか、余計に具合の悪さを感じる。
    「…最悪だな…」
    ぽつりと、口から言葉が溢れていた。騒がしい駅内では、己の声などすぐに掻き消える。そういう所が好きで、少しさみしかった。
    ふらふらと駅のホームまで歩いて、誰も座っていないベンチの端へと腰を下ろす。ひどく、目眩がしていた。視界がぐらぐらと揺れて気持ちが悪い。
    あまりに気分が悪いので、目を閉じて俯いた。
    こんな日に限って、兄弟たちは部活動で帰りが遅い。他の誰かを頼れるあてもなく、自力で自宅へ帰りつけるか考える。少し休めば、何とか出来そうな気はした。
    ぼんやりとそんな事を考えている内に、意識は朧になってゆく。

    「…おい、あんた…意識はあるか…?」
    穏やかな声と、肩を軽く叩いてくる振動に、はっと目を覚ました。瞬間、ずきっと首が痛む。座ったまま気絶するように寝ていたようで、首だけでなく体の節々も痛かった。
    「すまない…平気だ…」
    声を出して意識があると相手に伝えると、立とうとして足に力が入らない事に気付く。両手をベンチについて、再度挑戦するがどうにも上手くいかない。
    しかし座ったままではいられないし、無理矢理に体を起こした。何とか立ち上がれたものの、前方へバランスを崩しかける。
    そのまま地面へ倒れるのではないかと思った時、強い力で腕を引かれていた。
    「平気じゃないだろう…駅員の所まで送る」
    歩けるか? 半分抱きしめるように受け止められて、あまりの距離の近さに戸惑ったが振り払う元気はない。頷いて、ゆっくり一歩を進めれば、それに合わせて相手も歩く。
    こんな風に誰かに補助されるのは、兄弟以外では初めてだなと思った。しかし見ず知らずの人間に、親切にする物好きもいるものだなとも思う。
    ふと、相手の顔を見る。浅黒い肌に、琥珀の瞳を持ったエキゾチックな作りの顔をした、美青年がそこにはいた。
    (見た目が綺麗なやつは、心も綺麗なのか…?)
    ぼんやりしている頭でそんな事を考えてしまう。他人にここまで面倒を見られた事がなくて、混乱していた。
    思わずさっと、俯く。自分を支えている浅黒い左腕には、刺青が入っていた。こんな綺麗な顔をして親切なのに不良なのか? とまた余計な事を考えてしまって、思わず左右に頭を振る。
    歩いている途中でそんな事をして足を止めたものだから、相手もすぐに歩くのをやめた。
    「大丈夫か? 電車は諦めてタクシーにでも乗った方がいいんじゃないか…」
    また優しく声を掛けられて、ただ戸惑う。
    「すまない…何でもないんだ、本当に。少し休めば平気だ」
    本心からそう告げるが、体の方はまだ自分の意思についてこられないようだった。
    「………」
     こちらを無言で見つめてくる相手は、何か言いたげに口を開いたが閉じる。それからこちらを支えていた態勢を整えると、彼は無言で歩き出した。ほぼ相手に引き摺られるようにして、自分の身が意思に沿わず運ばれていく。
    「…っ、わざわざ運んでくれなくていい…!」
     咄嗟にそんな言葉しか出せない。だが、動揺しているこちらの言葉を聞いているのかいないのか、相手には流されているようだった。歩く速度が変わらない、と思いきや少し早くなったようだ。
    「おい…!聞こえないのか!?」
     焦ると初対面の人間なのに、敬語が余計に使えなくなる。普段からあまり丁寧な言葉遣いというものは苦手なのだが、そういう自分の性質が著しくなってしまう。
    「…いいから、黙って運ばれていろ」
    「ぅわっ…!」
     身体を斜めに倒すように後ろへ押され、今度こそ地面と接触するかと思えば、上半身を抱きかかえるようにして相手へ持ち直されていた。
     人間を運ぶというよりは、己と同じくらいに長い丸太でも運ぶような具合だった。地面についた自分の踵は、相手に引き摺られるままに移動していく。なすすべもなく。
    「…あんた…強引だな…」
     呆気にとられて、間の抜けた顔をしながら彼を見上げた。落とされる不安が抜けなくて、咄嗟に相手の背中の布を掴んでいるのだが、苦しそうな顔ひとつしていない。
    「病人の戯言に付き合っている余裕はないものでね」
     余裕がないとはとても思えない、しれっとした表情で言われても納得は出来なかった。
     しかし、それに反論する気はおきない。もう充分迷惑をかけているというのに、これ以上何か言葉を重ねたところで、彼に手間をかけるだけだと分かってきたのだ。きっと自分が何を言っても、彼は面倒を見るのだろう。一先ず駅員の所に送り届ける程度には。
     結局、大人しく駅員の所へ運ばれてから、救護室で休むより少しでも動ける内に帰宅した方がいいだろう、という話になってタクシーに乗った。
    その間ずっと、見ず知らずの青年は付き添ってくれていた。顔見知りでも、同じ学校でも、ましてやクラスメイトでも、友人ですらないというのに、だ。
    「世話になっておいて、こんな事を言うのはどうかと思うんだが…あんたお人好しすぎやしないか…」
     タクシーを捕まえて貰ったところで、そう感想を言っていた。本当は先に、礼を述べるつもりだったのに。
    「…こういう時は素直に〝ありがとう〟だけでいいだろう」
     ふっと息を吐いて、彼は一瞬笑ったように見えた。片腕を掴み支えるようにして真隣に立たれていたので、その顔をはっきりとは確認出来なかったのだが。
    「すまない…本当に助かった。ありがとう…ございました」
     すっかり敬語が外れていたのに気付いて、最後にとって付けていた。今更すぎて、少し気恥ずかしい。
    「別に、構わない。…今度は気をつけるんだな」
     車へ乗るように促され、それに従って乗ったが大事な事を思い出す。咄嗟に相手の上着へ手を伸ばし、それを掴んでいた。
    「待ってくれ、今日の礼がしたい…!あんたの連絡先を教えてくれっ」
    「…礼にはおよばない…」
     あまりに相手の表情が変わらないので、その言葉の中にある感情が読み取れない。困らせているような気もするが、ただ単純に迷惑だと思われている可能性も捨てきれない。
     何より、己がこんな事を言い出すのが初めてで、自分自身にも戸惑っていた。相手の心境が読み取れない以上に。
    「このままじゃ、…俺は帰れない…!」
     どう続ければいいのか迷って、卑怯な言い方をしていた。動揺から混乱しすぎて、こんな言葉を選んだのがずるい振る舞いだと気付かぬまま。
     お互い無言のまま見詰め合って、数秒。相手が小さく溜め息をついた。
    おもむろに懐から黒い手帳を取り出して、それを開くと彼はボールペンでさらさらと何かを書いてゆく。そのページを今度は適当にちぎって、こちらへ差し出してきた。
    そこには、ひろみつという文字と電話番号が書かれている。
    「…! あんた、ひろみつっていうのか…ありがとう」
     紙切れ、と言えるそれを両手で受け取って、少し安心した。借りは返したい主義なのだ。これで恩人の名前も分かった事だし、今度の時はちゃんとした礼が出来るだろう、多分。何をして礼になるかは、今ひとつ自信がないのだが。
    「早くしてくれ…待ってるぞ」
     言って、ひろみつと名乗った青年は運転手を見やる。自分たち以外に人がいるのを忘れていて、国広は慌てた。すまない、と年配の運転手へ声を掛けてから、またひろみつへと視線を移す。
    「落ち着いたら連絡する…本当に助かった…!」
    「あぁ、…もう行け」
     言葉のわりに、声が優しい。そういう喋り方をする男なのか、と今更気付いた。声の優しさがあって、どちらかというときついはずの彼の口調には刺がなく、まるい印象さえある。
     相手に見送られながら、タクシーは走り出した。いつの間にか体調不良を忘れていたのだが、揺れる車体にそういえばと思い出していた。
     こんなに他人を忘れがたく思うのは、初めてのことだった。


    #続かない
    #再録 #くりんば #現パロ #援交





    いつかこの感覚は、薄れてなくなるのだと思っていた。
    浅はかにも、そう信じたかったのだ。自分がまだ何も知らなかった頃と同じ、そんな無垢な身体に戻れるのだと。

    「…きみ、いくら?」
    見た事もない、如何にもサラリーマンという草臥れたスーツを着た男に声を掛けられた。そっと目深かに被っているフードと己の髪の毛の隙間から、相手の顔を確認する。
    小太りの中年男性、といった印象のその男に指を三本立てて数字だけを言うと「じゃあ行こう」と了承された。何処に行くかは決まっている。何をするのかも決まっていた。
    こういった行為はすっかり慣れたもので、同じように見知らぬ何人の男たちとも似たようなやり取りをしてきた。今日もそれの、延長線上に過ぎない。
    (不毛だな…)
    誰に言うでもなく、考える。
    それでも、この生産性のない関係を、常に誰かと持っていたい。そう感じているのは、他の誰でもない己自身だ。
    相手は誰でもいい。ただ性別は男でなければならない。そして、自分を抱いてくれる男でないと意味はないのだ。
    例えばどんなに、手酷くされようと。

    事が終わってホテルを出ると、外は雨が降っていた。天気予報の降水確率は低くて、通り雨だろうかと思いつつ駅までの道を走る。道路に所々でき始めている水溜まりを避けながら走るが、靴やスラックスに泥水が跳ねてかかる感覚がした。思ったより道路には水分があるようだ。
    何とか近くの駅にたどり着いて、駆け足をやめると突然腰に痛みがくる。先程までの行為を嫌でも思い出した。
    今日の男はいい相手とは言えないくらい乱暴で、体の彼方此方に噛み痕は残っているし後ろも切れてしまって、じくじくと傷んでいる。
    ただ、優しくしてくる相手よりはマシだった。今までの自分の、経験としては。
    しかし痛いものは痛い。先に相手が帰ったので、ホテルを出る前に薬を塗ってはみたのだが、どうにもあまり効いていないようだ。小雨に打たれて体温も下がったせいか、余計に具合の悪さを感じる。
    「…最悪だな…」
    ぽつりと、口から言葉が溢れていた。騒がしい駅内では、己の声などすぐに掻き消える。そういう所が好きで、少しさみしかった。
    ふらふらと駅のホームまで歩いて、誰も座っていないベンチの端へと腰を下ろす。ひどく、目眩がしていた。視界がぐらぐらと揺れて気持ちが悪い。
    あまりに気分が悪いので、目を閉じて俯いた。
    こんな日に限って、兄弟たちは部活動で帰りが遅い。他の誰かを頼れるあてもなく、自力で自宅へ帰りつけるか考える。少し休めば、何とか出来そうな気はした。
    ぼんやりとそんな事を考えている内に、意識は朧になってゆく。

    「…おい、あんた…意識はあるか…?」
    穏やかな声と、肩を軽く叩いてくる振動に、はっと目を覚ました。瞬間、ずきっと首が痛む。座ったまま気絶するように寝ていたようで、首だけでなく体の節々も痛かった。
    「すまない…平気だ…」
    声を出して意識があると相手に伝えると、立とうとして足に力が入らない事に気付く。両手をベンチについて、再度挑戦するがどうにも上手くいかない。
    しかし座ったままではいられないし、無理矢理に体を起こした。何とか立ち上がれたものの、前方へバランスを崩しかける。
    そのまま地面へ倒れるのではないかと思った時、強い力で腕を引かれていた。
    「平気じゃないだろう…駅員の所まで送る」
    歩けるか? 半分抱きしめるように受け止められて、あまりの距離の近さに戸惑ったが振り払う元気はない。頷いて、ゆっくり一歩を進めれば、それに合わせて相手も歩く。
    こんな風に誰かに補助されるのは、兄弟以外では初めてだなと思った。しかし見ず知らずの人間に、親切にする物好きもいるものだなとも思う。
    ふと、相手の顔を見る。浅黒い肌に、琥珀の瞳を持ったエキゾチックな作りの顔をした、美青年がそこにはいた。
    (見た目が綺麗なやつは、心も綺麗なのか…?)
    ぼんやりしている頭でそんな事を考えてしまう。他人にここまで面倒を見られた事がなくて、混乱していた。
    思わずさっと、俯く。自分を支えている浅黒い左腕には、刺青が入っていた。こんな綺麗な顔をして親切なのに不良なのか? とまた余計な事を考えてしまって、思わず左右に頭を振る。
    歩いている途中でそんな事をして足を止めたものだから、相手もすぐに歩くのをやめた。
    「大丈夫か? 電車は諦めてタクシーにでも乗った方がいいんじゃないか…」
    また優しく声を掛けられて、ただ戸惑う。
    「すまない…何でもないんだ、本当に。少し休めば平気だ」
    本心からそう告げるが、体の方はまだ自分の意思についてこられないようだった。
    「………」
     こちらを無言で見つめてくる相手は、何か言いたげに口を開いたが閉じる。それからこちらを支えていた態勢を整えると、彼は無言で歩き出した。ほぼ相手に引き摺られるようにして、自分の身が意思に沿わず運ばれていく。
    「…っ、わざわざ運んでくれなくていい…!」
     咄嗟にそんな言葉しか出せない。だが、動揺しているこちらの言葉を聞いているのかいないのか、相手には流されているようだった。歩く速度が変わらない、と思いきや少し早くなったようだ。
    「おい…!聞こえないのか!?」
     焦ると初対面の人間なのに、敬語が余計に使えなくなる。普段からあまり丁寧な言葉遣いというものは苦手なのだが、そういう自分の性質が著しくなってしまう。
    「…いいから、黙って運ばれていろ」
    「ぅわっ…!」
     身体を斜めに倒すように後ろへ押され、今度こそ地面と接触するかと思えば、上半身を抱きかかえるようにして相手へ持ち直されていた。
     人間を運ぶというよりは、己と同じくらいに長い丸太でも運ぶような具合だった。地面についた自分の踵は、相手に引き摺られるままに移動していく。なすすべもなく。
    「…あんた…強引だな…」
     呆気にとられて、間の抜けた顔をしながら彼を見上げた。落とされる不安が抜けなくて、咄嗟に相手の背中の布を掴んでいるのだが、苦しそうな顔ひとつしていない。
    「病人の戯言に付き合っている余裕はないものでね」
     余裕がないとはとても思えない、しれっとした表情で言われても納得は出来なかった。
     しかし、それに反論する気はおきない。もう充分迷惑をかけているというのに、これ以上何か言葉を重ねたところで、彼に手間をかけるだけだと分かってきたのだ。きっと自分が何を言っても、彼は面倒を見るのだろう。一先ず駅員の所に送り届ける程度には。
     結局、大人しく駅員の所へ運ばれてから、救護室で休むより少しでも動ける内に帰宅した方がいいだろう、という話になってタクシーに乗った。
    その間ずっと、見ず知らずの青年は付き添ってくれていた。顔見知りでも、同じ学校でも、ましてやクラスメイトでも、友人ですらないというのに、だ。
    「世話になっておいて、こんな事を言うのはどうかと思うんだが…あんたお人好しすぎやしないか…」
     タクシーを捕まえて貰ったところで、そう感想を言っていた。本当は先に、礼を述べるつもりだったのに。
    「…こういう時は素直に〝ありがとう〟だけでいいだろう」
     ふっと息を吐いて、彼は一瞬笑ったように見えた。片腕を掴み支えるようにして真隣に立たれていたので、その顔をはっきりとは確認出来なかったのだが。
    「すまない…本当に助かった。ありがとう…ございました」
     すっかり敬語が外れていたのに気付いて、最後にとって付けていた。今更すぎて、少し気恥ずかしい。
    「別に、構わない。…今度は気をつけるんだな」
     車へ乗るように促され、それに従って乗ったが大事な事を思い出す。咄嗟に相手の上着へ手を伸ばし、それを掴んでいた。
    「待ってくれ、今日の礼がしたい…!あんたの連絡先を教えてくれっ」
    「…礼にはおよばない…」
     あまりに相手の表情が変わらないので、その言葉の中にある感情が読み取れない。困らせているような気もするが、ただ単純に迷惑だと思われている可能性も捨てきれない。
     何より、己がこんな事を言い出すのが初めてで、自分自身にも戸惑っていた。相手の心境が読み取れない以上に。
    「このままじゃ、…俺は帰れない…!」
     どう続ければいいのか迷って、卑怯な言い方をしていた。動揺から混乱しすぎて、こんな言葉を選んだのがずるい振る舞いだと気付かぬまま。
     お互い無言のまま見詰め合って、数秒。相手が小さく溜め息をついた。
    おもむろに懐から黒い手帳を取り出して、それを開くと彼はボールペンでさらさらと何かを書いてゆく。そのページを今度は適当にちぎって、こちらへ差し出してきた。
    そこには、ひろみつという文字と電話番号が書かれている。
    「…! あんた、ひろみつっていうのか…ありがとう」
     紙切れ、と言えるそれを両手で受け取って、少し安心した。借りは返したい主義なのだ。これで恩人の名前も分かった事だし、今度の時はちゃんとした礼が出来るだろう、多分。何をして礼になるかは、今ひとつ自信がないのだが。
    「早くしてくれ…待ってるぞ」
     言って、ひろみつと名乗った青年は運転手を見やる。自分たち以外に人がいるのを忘れていて、国広は慌てた。すまない、と年配の運転手へ声を掛けてから、またひろみつへと視線を移す。
    「落ち着いたら連絡する…本当に助かった…!」
    「あぁ、…もう行け」
     言葉のわりに、声が優しい。そういう喋り方をする男なのか、と今更気付いた。声の優しさがあって、どちらかというときついはずの彼の口調には刺がなく、まるい印象さえある。
     相手に見送られながら、タクシーは走り出した。いつの間にか体調不良を忘れていたのだが、揺れる車体にそういえばと思い出していた。
     こんなに他人を忘れがたく思うのは、初めてのことだった。


    #続かない
    喉仏
  • 2現パロらくがきうちはリアル換算の年の差。
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    #マルホリ  #現パロ
    絵倉庫
  • 告げられない想いに、行き場はあるのか #再録 #薬燭 #現パロ #援交





    横顔が、ひどく傷ついたように憂いていたのには、気付いていた。

    ―今日は今までで一番…ひどくして欲しい―

    ホテルの部屋に入って鍵を閉めたかと思うとその大人は呟いた。話しかける、というにはあまりに小さい声でしかし至近距離にいた自分の耳にはしっかりと届く。
    「…何か、あったのか?」
    いつもなら誰にも言えないバイトとして割り切っているので、こんな無粋な質問などしない。しかし今日はいつもとは違った。相手の大人がひどく傷ついた瞳をしていて、とてもこのままバイトの性行為に及びたいような雰囲気ではない。
    だが相手は首を振って、こちらの質問への回答を拒んだ。
    「おねがい、今日はいつもより出すから」
    そう言って大人は財布の中からすべての万札を取り出して、こちらの手に握らせてくる。思わずその枚数を目視で確認してしまった程だ。軽く二桁はある札束に、余計この男の本気を垣間見て苛々した。
    自分の把握していない所で勝手に傷つけられて、更に今自分にその傷口へ塩を塗る行為を手伝わせようとしているのが分かって。
    「分かった」
     しかし札を握らせている指先が震えているのに、了承せずにはいられなかった。
     今ここで断って他の男の所へ行かれるのも腹立たしいのだ。この大人と自分はただの援助交際相手という、公には出来ない金銭の絡む関係でしかないというのに。
     ぎゅっと札束を握って、制服のスラックスのポケットへと大雑把にそれを入れる。それから持っていた自分の通学用鞄を、まだ入っていない室内の廊下へと放ると、その上に学ランも一緒に投げた。
     大人の鞄も奪って、同じように似た場所へと投げる。少し力加減を間違えて、叩き付けたと思うような音がしたが流して、相手の腕を掴み短い廊下を進んだ。
     すぐにダブルベッドへと行き着いて、その場所に軽くはない男を投げるように押し倒す。されるがまま、シーツの上へと倒れた相手の上に乗り上げて、乱暴にシャツの釦を外した。何もかける言葉も、かけられる言葉もなくただ無言で。
     何かがベッドの下へ飛んで行った音がしたが、きっと無理に引っ張ったせいで華奢な釦は取れてしまったのだろう。構わず晒すようにした素肌に触れてゆく。
     前回と皮膚の表面には殆んど違いはないように見えた。違っているのは目に見えない部分なのだと、嫌でも思い知らされた気になる。今にも泣いてしまいそうな空気を纏ったままの大人に、何も与えてやれない子供の自分が腹立たしい。
    「んっ!!ぅ゙、っぁ゙!」
     苛立ったまま左側の乳首を思い切り抓ると、呻きながら彼が悶えた。まだ痛みの方が遥かに勝っていそうな声で、背中も耐えるように若干丸まっている。
    しかし痛がった後で少しだけ、ほっとしたような顔をされるのがまた堪らなく嫌だった。これがこの男にとって、自傷行為と変わらないのだと直接、告げられているようで。
     反対の乳首には、いつもより強めに噛み付いて歯型を残した。
    「ッぅ゙…っく、……っ!!」
     まるで痛みしかないと思われる呻き声は、彼が無理矢理に奥歯を噛んだ事によって聞こえなくなる。ただ鼻から抜ける息遣いが小刻みで、とても隠せているとは思えなかった。
     それから徐々に下へ、普段なら相手を喜ばせるためだけに皮膚の表面を丹念に撫でたり舐めたりする所だが、今日に限ってそんな行為は求められていない。
    自分の頼りない腕の中で、少しずつ確実に変化していく大人を観察しているのが好ましいのだが、そんな本音も今日は特に聞きたくないだろう。そんな空気を光忠とだけ名乗った男は纏っている。
     相手のスラックスへ手を伸ばして、留金を外すとすぐにジッパーも下ろした。明らかに反応していない相手の性器を下着越しに確認するが、ここでやめる訳にもいかない。
    仕方なしにスラックスも下着も一緒に、強引に脱がせて下半身を晒させた。それから後頭部の髪を片手で掴むと、強制的に俯せにさせる。
    「…枕でも噛んでな」
     こんな言葉をかけたい訳ではない。だが、他に言える言葉など、自分は持ち合わせていなかった。
    「ぅんん…んっ」
     何かを言いたそうなくぐもった声が聞こえた気がしたが、聞こえないふりをする。移動の際に制服のポケットへ入れ替えておいたワセリンを取り出して、指先へ乗せた。いくらひどくしろと言われても、怪我をさせる約束をした覚えはない。
     それを後ろへ塗ろうと指先が触れれば、相手が振り返ってこちらの動きを阻止した。
    「今日は…慣らさないで、大丈夫だから…!」
     全く大丈夫には見えない大人の掴んでくる手の力が強くて、思わず顔を顰める。彼が掴んでいる自分の手首は、止血でもされているようだ。
    「いくらあんたでも慣らさなきゃ入らねぇだろう。この手を退けな」
     だが何を言われても、こちらとて譲る気はない。自分の目の前でただ傷付く姿を見ているのは嫌だった。例えば今、彼を傷つけているのが自分でも。その根底にある傷を作ったのが自分以外の誰かなのが、特に許せなかった。
    「入るよっ…本当に、大丈夫だから、…優しくしないで」
     一秒も、と続いた言葉に自分の頭の血管が切れた音が聞こえた気がした。頭に血が上ったまま少し力が緩んだ手を振り払って、軟膏の乗った指先を大人の尻の穴に捩じ込む。
    「ァ゙あ゙ぁっ…!!」
     不意をついたのもあってか、無防備な悲鳴が上がった。それはそうだろう。毎回念入りに、慎重に解しているこの場所は、今日はまだ全く濡れていない。
    そんな固く閉ざした場所に、軟膏が塗ってあるとは言えいきなり指を突き入れればこういう反応をせざるを得ないのは明白だった。こうなる事を分かっていて我慢が利かなかったのは、自分の我儘を通したかったからかも知れない。
    「っ全然、大丈夫じゃねぇだろ…!」
     男の瞳から、一粒だけ流れた生理的な涙を見てついぼやく。
    痛みに震えている背中から相手を片腕で抱きしめて、シャツ越しにその背中へ唇を落とした。今日は体温が低いのか、シャツ越しでも身体が冷えているように感じる。震えながら、相手はベッドへ静かに沈んだ。
     内側に押し入れた指を引き抜いて、またそこに軟膏を取ると大人の後ろへとゆっくり塗りつけてゆく。なるべくいつもと同じように、いつもより優しく出来るように。
    「…っや、だ、…薬研、く、…それ、嫌だ……ぉ、ねが…っ…」
     力なく頭を左右に振って、光忠は哀願しているようだった。震える手が、枕を握っているのが見える。
     こんな日に、今にも消えいってしまいそうな程弱っている大人を前に、欲情している自分すら許せなかった。それなのに、相手の後ろを解す手も止められない。最悪だ。
    今この場で自分が何をしてもそれが正しいとは思えないのに、この男に対して何をしてやりたいのかも分からない。分かるのは、相手の身体の反応する場所だけ。まだ覚えて間もない男同士の、身体の重ね方だけ。本当は泣きたいであろう相手の心情だけ。
    それに、頼っても貰えない未熟な己自身。
    吐き気がした。
    「もっ…やだ…!!ぼくの、言うこと、聞けない、っなら、…お金、…返して!」
    耐えられなかったのは、こちらだけではないようだ。涙目で、頭だけこちらに振り返った大人に睨まれる。内側に埋めていた指を引き抜いて、相手から体も離した。
    この言葉に、正直ほっとした自分が居た。
    「あぁ、全部返す」
    制服のポケットに突っ込んでいた札束を、全てその場にばら撒く。明白に目を見張った相手を、立ち膝になって微妙に上から見下ろした。それから、動きを止めたその顔を両手で挟む。
    健康的な色艶をした頬は少しだけ熱くて、冷え始めている自分の指先に優しかった。
    「やげ、…!?」
    名を呼ばれる前に唇を塞いだ、つもりだったのだがそれは相手の掌によって防がれていた。
    「…っな、んで…、だって、キスはしないって、…そういう約束なのに」
    「悪いが、…今日に限ってそんなもん、聞いてられねぇ」
    自分の口を塞いできた掌を軽く噛んで、相手の手首を掴む。当然自分より華奢ではない大人の手首は、自分のような子供が押さえつけられるようには見えない。
    それなのに、相手の腕にはそれほど力が入っているようには思えなかった。
    「っひどい、やだ…やめて、なんでっ…今日は、いつもより、言うこと、…聞いてくれないんだ」
    俯いて文句を言う姿は、まるで泣いているようだ。相手の手首を掴んでいる手にまた力を入れて、その顔に自分の顔を寄せる。
    「あんたが、……そんな傷ついた顔、してるからだろう」
    びくっ、と彼の肩が揺れた。少しだけ顔を上げた相手に構わず、言葉を紡いだ。
    「誰にやられた? 言ってくれ、あんたの代わりに俺が殴ってきてやる」
    戸惑いがのった、金色の瞳は動揺で揺れている。うっすらと張った涙の膜のせいで、それは今にも零れ落ちてしまいそうだ。
    「やげんくん…」
    くしゃっと彼の目元が歪んで、その声はひどく頼りなく震えていた。普段の彼からは、とても想像の出来ない有様だ。
    「何でもいい…あんたが話したいことを話してくれ。本当に必要なら、その相手の名を言ってくれて構わない、何でもする」
    額同士が触れそうで触れない距離、それを保って相手の顔を覗き込む。だが、光忠は何も言わなかった。ただ軽く唇を引き結んで、頭を左右に振るだけ。
    「…っだめ、駄目、だよ…君に、関わって欲しくない…!それに、もう、僕に…っ」
     やさしくしないで
    掠れた声に、心臓を思いきり掴まれたようだ。目に見えて苦しんでいるのは、自分の正面にいる大人なのに、自分も苦しくて呼吸が止まったようだった。
    水の中に突然放り込まれたように苦しくて、酸素を求めて口を開く。そのまま相手の口に噛み付いた。
    「ッ!!」
    キスの仕方など知らない。この大人は肝心な時にいつもずるいから、教えてくれなかった。ただ自分からも教えて欲しいと言った事は一度もない。
    最初に、恋人ではないからキスだけはしないよ、と釘を刺されていたのもあって。
    「っひ、どい…!やだ、ひどいよっ、やめて…!…本当に、嫌だ…どうし、てっ…」
    唇を離した瞬間に文句を言い出す口を、何度も塞いだ。今度は噛み付かないでちゃんと、唇同士が重なるように。何度も何度も、角度を変えて。
    「いやだって…いってる、のに…」
    遂にぽろぽろと泣き出した大人の頬を親指で拭って、その涙を払う。止まる気配のないそれも、何度も指で払って頬を撫でた。出来るだけ優しく。
    「…いつも、好き勝手、ばっかり、なのに…なんで、今日に、…限って」
    嗚咽混じりの相手の言葉を、ただ黙って聞いた。唇を塞ぐのはやめて、抱きしめると大きな背中を撫でてやる。ただゆっくりと、泣いている弟にするみたいに。
    「やさしく、するの…もう、ほんと、信じられ、っない、…ひどい」
    今日一日で何度「ひどい」と言われたのか分からないが、ひどいのはお互い様だろうと思う。
    最初にひどくしてと言ってきたのは、あんただろうにと内心だけで返した。
    「…あぁ、全部俺っちのせいにしろ」
    その方がマシだ。見知らぬ誰かに、この男の心を占領され続けるよりかは何倍も。
    「今日は何時まででも付き合うぜ」
     あんたが泣き止んでくれるなら。その傷が、少しは癒えるなら。
    家出を疑われて身内に騒がれる数時間後の未来も、今日は受け入れられる覚悟だ。どんなに自分の成長の遅さを忌々しく思っても、急に大人にはなれない。
     ただ今すぐ大人になれなくとも、出来ることはある。
    「…きみは、ほんとうに、…ひどいよ」
     泣き言を流して、相手を抱きしめたままベッドへ倒れた。今日はこのまま、何もせずにただ抱き合っているだけでいいと思えた。



    #前後などない
    #再録 #薬燭 #現パロ #援交





    横顔が、ひどく傷ついたように憂いていたのには、気付いていた。

    ―今日は今までで一番…ひどくして欲しい―

    ホテルの部屋に入って鍵を閉めたかと思うとその大人は呟いた。話しかける、というにはあまりに小さい声でしかし至近距離にいた自分の耳にはしっかりと届く。
    「…何か、あったのか?」
    いつもなら誰にも言えないバイトとして割り切っているので、こんな無粋な質問などしない。しかし今日はいつもとは違った。相手の大人がひどく傷ついた瞳をしていて、とてもこのままバイトの性行為に及びたいような雰囲気ではない。
    だが相手は首を振って、こちらの質問への回答を拒んだ。
    「おねがい、今日はいつもより出すから」
    そう言って大人は財布の中からすべての万札を取り出して、こちらの手に握らせてくる。思わずその枚数を目視で確認してしまった程だ。軽く二桁はある札束に、余計この男の本気を垣間見て苛々した。
    自分の把握していない所で勝手に傷つけられて、更に今自分にその傷口へ塩を塗る行為を手伝わせようとしているのが分かって。
    「分かった」
     しかし札を握らせている指先が震えているのに、了承せずにはいられなかった。
     今ここで断って他の男の所へ行かれるのも腹立たしいのだ。この大人と自分はただの援助交際相手という、公には出来ない金銭の絡む関係でしかないというのに。
     ぎゅっと札束を握って、制服のスラックスのポケットへと大雑把にそれを入れる。それから持っていた自分の通学用鞄を、まだ入っていない室内の廊下へと放ると、その上に学ランも一緒に投げた。
     大人の鞄も奪って、同じように似た場所へと投げる。少し力加減を間違えて、叩き付けたと思うような音がしたが流して、相手の腕を掴み短い廊下を進んだ。
     すぐにダブルベッドへと行き着いて、その場所に軽くはない男を投げるように押し倒す。されるがまま、シーツの上へと倒れた相手の上に乗り上げて、乱暴にシャツの釦を外した。何もかける言葉も、かけられる言葉もなくただ無言で。
     何かがベッドの下へ飛んで行った音がしたが、きっと無理に引っ張ったせいで華奢な釦は取れてしまったのだろう。構わず晒すようにした素肌に触れてゆく。
     前回と皮膚の表面には殆んど違いはないように見えた。違っているのは目に見えない部分なのだと、嫌でも思い知らされた気になる。今にも泣いてしまいそうな空気を纏ったままの大人に、何も与えてやれない子供の自分が腹立たしい。
    「んっ!!ぅ゙、っぁ゙!」
     苛立ったまま左側の乳首を思い切り抓ると、呻きながら彼が悶えた。まだ痛みの方が遥かに勝っていそうな声で、背中も耐えるように若干丸まっている。
    しかし痛がった後で少しだけ、ほっとしたような顔をされるのがまた堪らなく嫌だった。これがこの男にとって、自傷行為と変わらないのだと直接、告げられているようで。
     反対の乳首には、いつもより強めに噛み付いて歯型を残した。
    「ッぅ゙…っく、……っ!!」
     まるで痛みしかないと思われる呻き声は、彼が無理矢理に奥歯を噛んだ事によって聞こえなくなる。ただ鼻から抜ける息遣いが小刻みで、とても隠せているとは思えなかった。
     それから徐々に下へ、普段なら相手を喜ばせるためだけに皮膚の表面を丹念に撫でたり舐めたりする所だが、今日に限ってそんな行為は求められていない。
    自分の頼りない腕の中で、少しずつ確実に変化していく大人を観察しているのが好ましいのだが、そんな本音も今日は特に聞きたくないだろう。そんな空気を光忠とだけ名乗った男は纏っている。
     相手のスラックスへ手を伸ばして、留金を外すとすぐにジッパーも下ろした。明らかに反応していない相手の性器を下着越しに確認するが、ここでやめる訳にもいかない。
    仕方なしにスラックスも下着も一緒に、強引に脱がせて下半身を晒させた。それから後頭部の髪を片手で掴むと、強制的に俯せにさせる。
    「…枕でも噛んでな」
     こんな言葉をかけたい訳ではない。だが、他に言える言葉など、自分は持ち合わせていなかった。
    「ぅんん…んっ」
     何かを言いたそうなくぐもった声が聞こえた気がしたが、聞こえないふりをする。移動の際に制服のポケットへ入れ替えておいたワセリンを取り出して、指先へ乗せた。いくらひどくしろと言われても、怪我をさせる約束をした覚えはない。
     それを後ろへ塗ろうと指先が触れれば、相手が振り返ってこちらの動きを阻止した。
    「今日は…慣らさないで、大丈夫だから…!」
     全く大丈夫には見えない大人の掴んでくる手の力が強くて、思わず顔を顰める。彼が掴んでいる自分の手首は、止血でもされているようだ。
    「いくらあんたでも慣らさなきゃ入らねぇだろう。この手を退けな」
     だが何を言われても、こちらとて譲る気はない。自分の目の前でただ傷付く姿を見ているのは嫌だった。例えば今、彼を傷つけているのが自分でも。その根底にある傷を作ったのが自分以外の誰かなのが、特に許せなかった。
    「入るよっ…本当に、大丈夫だから、…優しくしないで」
     一秒も、と続いた言葉に自分の頭の血管が切れた音が聞こえた気がした。頭に血が上ったまま少し力が緩んだ手を振り払って、軟膏の乗った指先を大人の尻の穴に捩じ込む。
    「ァ゙あ゙ぁっ…!!」
     不意をついたのもあってか、無防備な悲鳴が上がった。それはそうだろう。毎回念入りに、慎重に解しているこの場所は、今日はまだ全く濡れていない。
    そんな固く閉ざした場所に、軟膏が塗ってあるとは言えいきなり指を突き入れればこういう反応をせざるを得ないのは明白だった。こうなる事を分かっていて我慢が利かなかったのは、自分の我儘を通したかったからかも知れない。
    「っ全然、大丈夫じゃねぇだろ…!」
     男の瞳から、一粒だけ流れた生理的な涙を見てついぼやく。
    痛みに震えている背中から相手を片腕で抱きしめて、シャツ越しにその背中へ唇を落とした。今日は体温が低いのか、シャツ越しでも身体が冷えているように感じる。震えながら、相手はベッドへ静かに沈んだ。
     内側に押し入れた指を引き抜いて、またそこに軟膏を取ると大人の後ろへとゆっくり塗りつけてゆく。なるべくいつもと同じように、いつもより優しく出来るように。
    「…っや、だ、…薬研、く、…それ、嫌だ……ぉ、ねが…っ…」
     力なく頭を左右に振って、光忠は哀願しているようだった。震える手が、枕を握っているのが見える。
     こんな日に、今にも消えいってしまいそうな程弱っている大人を前に、欲情している自分すら許せなかった。それなのに、相手の後ろを解す手も止められない。最悪だ。
    今この場で自分が何をしてもそれが正しいとは思えないのに、この男に対して何をしてやりたいのかも分からない。分かるのは、相手の身体の反応する場所だけ。まだ覚えて間もない男同士の、身体の重ね方だけ。本当は泣きたいであろう相手の心情だけ。
    それに、頼っても貰えない未熟な己自身。
    吐き気がした。
    「もっ…やだ…!!ぼくの、言うこと、聞けない、っなら、…お金、…返して!」
    耐えられなかったのは、こちらだけではないようだ。涙目で、頭だけこちらに振り返った大人に睨まれる。内側に埋めていた指を引き抜いて、相手から体も離した。
    この言葉に、正直ほっとした自分が居た。
    「あぁ、全部返す」
    制服のポケットに突っ込んでいた札束を、全てその場にばら撒く。明白に目を見張った相手を、立ち膝になって微妙に上から見下ろした。それから、動きを止めたその顔を両手で挟む。
    健康的な色艶をした頬は少しだけ熱くて、冷え始めている自分の指先に優しかった。
    「やげ、…!?」
    名を呼ばれる前に唇を塞いだ、つもりだったのだがそれは相手の掌によって防がれていた。
    「…っな、んで…、だって、キスはしないって、…そういう約束なのに」
    「悪いが、…今日に限ってそんなもん、聞いてられねぇ」
    自分の口を塞いできた掌を軽く噛んで、相手の手首を掴む。当然自分より華奢ではない大人の手首は、自分のような子供が押さえつけられるようには見えない。
    それなのに、相手の腕にはそれほど力が入っているようには思えなかった。
    「っひどい、やだ…やめて、なんでっ…今日は、いつもより、言うこと、…聞いてくれないんだ」
    俯いて文句を言う姿は、まるで泣いているようだ。相手の手首を掴んでいる手にまた力を入れて、その顔に自分の顔を寄せる。
    「あんたが、……そんな傷ついた顔、してるからだろう」
    びくっ、と彼の肩が揺れた。少しだけ顔を上げた相手に構わず、言葉を紡いだ。
    「誰にやられた? 言ってくれ、あんたの代わりに俺が殴ってきてやる」
    戸惑いがのった、金色の瞳は動揺で揺れている。うっすらと張った涙の膜のせいで、それは今にも零れ落ちてしまいそうだ。
    「やげんくん…」
    くしゃっと彼の目元が歪んで、その声はひどく頼りなく震えていた。普段の彼からは、とても想像の出来ない有様だ。
    「何でもいい…あんたが話したいことを話してくれ。本当に必要なら、その相手の名を言ってくれて構わない、何でもする」
    額同士が触れそうで触れない距離、それを保って相手の顔を覗き込む。だが、光忠は何も言わなかった。ただ軽く唇を引き結んで、頭を左右に振るだけ。
    「…っだめ、駄目、だよ…君に、関わって欲しくない…!それに、もう、僕に…っ」
     やさしくしないで
    掠れた声に、心臓を思いきり掴まれたようだ。目に見えて苦しんでいるのは、自分の正面にいる大人なのに、自分も苦しくて呼吸が止まったようだった。
    水の中に突然放り込まれたように苦しくて、酸素を求めて口を開く。そのまま相手の口に噛み付いた。
    「ッ!!」
    キスの仕方など知らない。この大人は肝心な時にいつもずるいから、教えてくれなかった。ただ自分からも教えて欲しいと言った事は一度もない。
    最初に、恋人ではないからキスだけはしないよ、と釘を刺されていたのもあって。
    「っひ、どい…!やだ、ひどいよっ、やめて…!…本当に、嫌だ…どうし、てっ…」
    唇を離した瞬間に文句を言い出す口を、何度も塞いだ。今度は噛み付かないでちゃんと、唇同士が重なるように。何度も何度も、角度を変えて。
    「いやだって…いってる、のに…」
    遂にぽろぽろと泣き出した大人の頬を親指で拭って、その涙を払う。止まる気配のないそれも、何度も指で払って頬を撫でた。出来るだけ優しく。
    「…いつも、好き勝手、ばっかり、なのに…なんで、今日に、…限って」
    嗚咽混じりの相手の言葉を、ただ黙って聞いた。唇を塞ぐのはやめて、抱きしめると大きな背中を撫でてやる。ただゆっくりと、泣いている弟にするみたいに。
    「やさしく、するの…もう、ほんと、信じられ、っない、…ひどい」
    今日一日で何度「ひどい」と言われたのか分からないが、ひどいのはお互い様だろうと思う。
    最初にひどくしてと言ってきたのは、あんただろうにと内心だけで返した。
    「…あぁ、全部俺っちのせいにしろ」
    その方がマシだ。見知らぬ誰かに、この男の心を占領され続けるよりかは何倍も。
    「今日は何時まででも付き合うぜ」
     あんたが泣き止んでくれるなら。その傷が、少しは癒えるなら。
    家出を疑われて身内に騒がれる数時間後の未来も、今日は受け入れられる覚悟だ。どんなに自分の成長の遅さを忌々しく思っても、急に大人にはなれない。
     ただ今すぐ大人になれなくとも、出来ることはある。
    「…きみは、ほんとうに、…ひどいよ」
     泣き言を流して、相手を抱きしめたままベッドへ倒れた。今日はこのまま、何もせずにただ抱き合っているだけでいいと思えた。



    #前後などない
    喉仏
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