砂の海で眠りに沈む視界いっぱいに広がる満天の空を眺めていると、ここがダンジョンの中であることをつい忘れてしまいそうになる。
砂漠地帯の凍えるような寒さをしのぐため俺たちは身を寄せあって眠ることにした。スイとドラちゃんは俺の両隣でぴたりとくっついてすぐに眠りについたようだ。日中は厳しい暑さの中歩き続けていたから相当疲れていたのだろう。明日もまた長い距離を歩くから夜はしっかり休んでおかないとな。
さて、俺もそろそろ眠ろうかな。
首まで覆うように毛布をかけてまぶたを閉じる。
静かな風に舞う砂の音とみんなの穏やかな寝息が聞こえてくる。普段野営する時は森の中が多いため森の葉が揺れる音や魔物たちの声が無い分とても静かだなあと思っていると背後から聞こえてくる音があることに気づいた。
ゆったりとしたリズムで響くそれは、フェルの心臓の音のようだった。
自分の心臓よりもゆっくりと動く音を聞いて、身体の大きな動物ほど心臓の動きがゆっくりとしているのだと以前どこかで聞いたことを思い出した。呼吸をする度に緩やかに揺れる身体とあたたかな体温、穏やかな心臓の音はなんだか心地良くて、ダンジョンの真ん中だというのに安心感に包まれてく。
次第に聞こえてくる音たちが遠くなり、砂の海の中で意識は深く沈み夢の中へと落ちていく。今夜はなんだか良い夢をみれるような、そんな気がした。