ジョンへの手紙親愛なるジョンへ
君への感謝を、直接言葉で伝えるのは幾分気恥ずかしいから手紙にしてみようと思う。
深刻な内容ではないから安心して読んでほしい。
私の使い魔になってくれてありがとう。
幾度となく命を救ってくれてありがとう。
いつも私に寄り添ってくれてありがとう。
私と共に生きる人生を選んだ君のその勇気はどこから来るのだろうか。
血の契約を結ぶにあたり、使い魔になるということはどういう結果をもたらすのか、できる限り誠意を持って説明したつもりだったが、足りない部分があったのではないかと今でも不安になることがある。
君に私が与えることのできるものにはそれほど価値はない。
どこかに穴が開いているような私の在り様を見て君は心を痛めてくれた。
君が私に与えることを望んだから、私たちは長い道のりをたどりここにいる。
今までどうもありがとう。
そしてこれからもよろしく。
最後に何日か前、君が私にした質問について答えようと思う。
ずっと事務所で暮らしても構わないか、なぜ彼に尋ねないのかと君は聞いたね。
もう彼は私たちに近しいのだから、快く了承してくれるだろう、とも言ってくれた。
だがそれは、きっと彼を追い詰めてしまうと私は思う。
彼の本心が違うところにあったとしても、立場上認めることはできないだろうし、一応コンビを組んでいる設定になっているけれど、内情は違うのは君も知っての通りだ。
逆にそんなことを聞けば、勝手に来たんだからいつでも勝手に出ていけなどと言われかねない。
藪をつついて蛇を出すよりは、小さな既成事実を積み重ねていく方が、今の生活を持続できるというのが私の考えだ。
彼お得意の、ジョンは残ってお前だけ出て行け、が聞きたくないのも理由の一つかもしれない。
私は彼を割と気に入っているのだが、彼は私を見ると拳を出さずにはいられないのだろう。全く嘆かわしいことだ。
君が心配せずとも、この問題は時が解決してくれると私は思っている。
何しろ私たちには有り余る時間があるのだからね。
変わらぬ愛を込めて
ドラルクより
<終わり>