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    香りがトリガーになる話Switch同士の2人は基本的に日和がDom、ジュンがSubとなってプレイに興じる。スイッチの入れ方はさまざまだ。特にジュンはDomにスイッチする仕方はあれど、Subになるときは特に決めていなかった。Subに近い性質のジュンは相手のGlare浴びさえすれば勝手に切り替わるからだ。
    そんな2人は仕事終わりに待ち合わせて、ターミナル駅近くのホテルへ向かった。どうせなら良い場所でプレイしたほうが気分も乗る、日和の一言で決まったルール。そこまでこだわりのないジュンは日和の好きなようにさせていた。
    「ジュンくんがその日、何を着てたかはきっと忘れるけど」
    ジュンの首筋に日和は顔を近づけた。彼が使っている柔軟剤の清潔感のある香り。この香りを自分好みに染めてみたい、そう考えていた。
    「香りはいつまでも記憶に残るからね。今日はいつもと違うことしてみたいんだけど」
    「はぁ、別にいいですけど」
    日和は着ていたスーツの上着を脱ぐと、次にネクタイを外した。Yシャツのボタンを2つ外し首元を緩める。最後に手首が出るように袖を捲った。
    「オレも脱いだ方がいいですかぁ?」
    「何言ってるの、脱がす楽しみがなくなってしまうじゃない」
    「…そうですね」
    ベッドに腰掛けたジュンは気まずそうに目線を泳がせた。日和は自分の鞄から手のひらサイズの箱を取り出した。高級ブランドのロゴが刻まれたそれを持ってジュンの隣へ座ってから箱を開けた。
    「なんですか、それ」
    「これ?香水」
    少し丸みを帯びた香水瓶を取り出した日和はそのままジュンの掌に乗せた。小さな香水瓶がジュンの手の上でころりと転がった。
    「今日はこれで遊ぼうと思って。ジュンくんにプレゼント」
    「えっ?オレ、っすか?どうみても女性向けの香水ですけど」
    「うん、そうだけど?」
    要らない、そう言おうとしたジュンの言葉を遮るように日和はジュンの唇に人差し指を押し当てた。そしてジュンの手のひらの小瓶を持って立ち上がる。ベッドから少し離れた場所に移動すると、香水を手首、首へと吹きかけた。蜜のように甘ったるく、それでいてスパイシーさと花の濃厚な香りが漂ってくる。本当に媚薬があるとしたらこんな香りではないだろうか、ジュンはぼんやりとその様子を眺めていた。
    「クラクラしそうですよ、その香りで」
    「してもらわなきゃね」
    日和が髪をかき上げる仕草をする。
    彼はSwitchだから、切り替える行動が決まっている。髪をかき上げる仕草はDomへのスイッチだ。部屋で感じられる日和の気配が重くなった。
    「んー、この香りにしてよかったね。街中じゃまず香らないし」
    くんくんと手首の香りを嗅いで満足そうな日和の視線がジュンに注がれる。Domになった日和に見つめられてジュンのSwitchがじわりと溶け始めていた。
    「街中で香っちゃいけないんですか」
    「愚問なんだけど、それ」
    日和はゆっくりと近づきジュンの目の前に立った。
    「香りでジュンくんをSubへスイッチさせるんだから、普段人が使わないような香水にしなくちゃ」
    何を言い出すんだ、そう言葉を発する前に肩を押されてジュンは仰向けにベッドへ倒れ込んだ。日和はその上に乗り上げて大きな瞳を猫のように細めてにんまりと笑っている。
    「セーフワードはどうする?ぼく今日は勢いで嫌なことしちゃうかも」
    ジュンの体を挟むように膝立ちになった日和が香水瓶をベッドの脇へと投げた。早くプレイしたいと日和の顔がそう告げている。こういう時の日和は何をするか分からないので、2重にセーフワードをかける必要がある。ジュンは咄嗟に思いついた言葉を日和に告げた。
    「それ以上はやばいって感じたらイエローって言います。本気でダメならレッド」
    「安直だね」
    「どうとでも。わかりやすくで良いじゃないっすかね」
    「あは、たしかに」
    日和がジュンの体を動かしてうつ伏せにすると、そこへ覆い被さってくる。ジュンの両手が日和に押しつぶされないように上半身をなんとか支えている。苦しさから逃れようと顔を上げると、日和の左手首がジュンの目の前に現れた。白く美しい手首が甘く華やかな香りを放っている。
    「まずは深呼吸して」
    言われた通りに肺いっぱいに香りを吸い込む。息を吐き出す瞬間、背後の日和がGlareを放出した。
    「ジュンくん……Switchして」
    瞬間、ゆっくりとスイッチが切り替わりジュンは自分の支配権を日和へと明け渡した。




    ……

    ………

    「ジュンくーん、おーきーてー」
    うっすらと目を開けると、暗かった寝室ではなく明るく白い世界が広がっている。
    「ん……」
    気づけばジュンは日和に抱えられて浴槽に浸かっていた。乳白色のお湯はほのかにバニラの香りがしている。強烈に香っていたあの香りは今はかすかに背後から漂うだけだ。
    「ようやく戻ってきたね」
    Goodboy. 後ろから抱き抱えられて頭を撫でられる。ふわふわとした感覚が未だジュンを包み込んでいた。
    「オレどうなっちまってたんですか…」
    「結果から言えばSubspaceに入ったの」
    「オレが?」
    「そう。覚えていない?」
    「覚えてない……」
    「あんなになっちゃうんだから流石のぼくもちょっと心配になっちゃったね」
    「うぅ、不覚……」
    ジュンは頭を抱えた。自分が変なこと口走っていないことを願うばかりだ。日和曰くそんなことはなかったらしいが。
    「イエローは何回か言われたけど……それも覚えてない?」
    「覚えてない……」
    「大部分の意識をぼくに預けちゃってたからね」
    「最悪…」
    「可愛かったのに?」
    ジュンは日和の顔目掛けてお湯をかけた。的は外れてパシャリと壁にお湯が跳ねた。
    「香りのせいかもね」
    「たかが香水で?」
    「されど、だねジュンくん」
    「それはそうですけど…」
    香水のせいでクラクラしていたことまでは覚えている。Commandを受け入れ実行するたびに抱きしめられた。そうやって甘い香りと心地よい体温がジュンを包み込むのだ。褒められる悦びと香りが相乗効果となっていつもよりプレイに没頭してしまったのは自分でも認めざるを得なかった。
    「今後、ジュンくんがぼく相手にプレイするときはこの香水使ってSubになったらいいんじゃない?」
    「なんで」
    「あれだけジュンくんが乱れるならぼくだって楽し、わ、ちょ、ジュンくん!お湯かけるのやめて!」
    「良くない!もう2度と香水使うか!」
    ジュンの叫びが浴室にこだました。

    その後嫌がるジュンをよそに、日和はプレイのたびに使い続けた。やがて瓶が空になる頃、ジュンは日和の思惑通りになったのである。
    KK07529754 Link Message Mute
    2022/07/04 16:24:11

    香りがトリガーになる話

    ぷらいべったーで挙げていた作品の再掲です。

    香水の香りでスイッチさせる話。


    以下ご注意ください。
    #Dom/Subユニバース
    #ひよジュン
    #2人はSwitch同士

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