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    迷子1〜9月某日 バンカラ街 カワリラク〜

    今日も街はいつも通り。
    平和と言いたいところだけど、相変わらず小さな小競り合いや軽犯罪は無くならない。
    このバンカラ地方に住む人達の元々の気質・・・・・・というかもはやアイデンティティやシンボルと呼ぶしか無いのかもしれない。
    犯罪を取り締まり無くすよう努めることが僕の役目ではあるけど、この地方特有の気質や文化を変えることは不可能だと思う。

    (というか、ぶっちゃけ無くなっても困るし)

    平和を願っているとはいえ、閑古鳥が鳴くほど長閑すぎるのもどうかと思うし。
    その血の気の多さ故にこの街が栄えて来た事実もある。
    なんだかんだ居心地の良さを感じているフシもある。

    (全部取り締まるのもそれはそれで窮屈でダルいし)

    注意喚起程度で済むことやある程度はお目溢しということにしている。
    締め付け過ぎても反感を買うわけだし。
    僕は僕に出来るだけのことをしていればいい。
    大き過ぎる事件の予兆さえ見逃さなければいいのだ。
    大きく息を吐いて視線を前に向ける。
    相変わらず広場には多くのクラゲ達がぽよぽよと揺れながら犇めいている。

    「ん・・・・・・?」

    視界の端に映ったそれを注意深く捉え直す。
    黄色く長い前髪を揺らし、不安そうに身を縮こまらせる少女(或いは少年)が石のベンチのすぐ側に立っている。
    誰かを探しているのか、或いは家出か。
    何はともあれほっとく訳には行かない。
    なるべく明るく好意的に笑顔を向けつつ声を掛ける。

    「もしかして迷子?それとも観光?案内しようか?」

    「あの・・・・・・その・・・・・・えっと」

    「イシュクしなくていいよ?困ってる人を助けるのが警察の仕事だから。ね?」

    務めて優しく丁寧に言葉を選ぶ。
    (便宜上)少女は目どころか顔すら合わせようとしない。
    かなりの人見知りか、或いは他人不審か。
    どちらであっても職務は真っ当しなければいけない。

    「イジュー出来るって聞いたんですけど・・・・・・」

    「移住?君一人で?バンカラに?出来ないことはないとは思うけど」

    確かに早くから独立して暮らす子どもはいるものの、そのほとんどは友人とのシェアハウスなどの形態をとる。
    一人暮らしをする子もいるにはいるが、このバンカラ街に子ども一人で住むことは勧められない。

    「歳は?」

    「16です・・・・・・たぶん」

    「たぶん?」

    「はっきりわかんないんですけど・・・・・・」

    「もしかして記憶障害?」

    「・・・・・・わかんないです」

    「名前は覚えてる?」

    「アカガミコウ・・・・・・だと思います」

    聞き覚えのある名前に気付き、専用のTpadを取り出し記録を呼び出す。
    過去に扱った事件にその名前が上がっていたハズなのだが。
    画面に指を滑らせること数回、目当ての事件の記録が見つかった。
    ゴンズイ地区に暮らす三人家族。その中の娘の名前や年齢が一致している。
    数ヶ月前から行方不明になっていた家族の娘だけが見つかったことになる。

    「両親は?ハグれたの?」

    「わかんないです・・・・・・」

    その記憶すらないとなると、相当辛い事件に巻き込まれた可能性がある。
    或いは事故や災害で娘だけが生き残ったか。

    「ボクは・・・・・・どうすればいいですか?」

    不安そうな目でこちらを見上げてくる。
    性分である以上放っておくつもりはない。
    安心させるために笑顔を向けて言葉を返す。

    「心配しなくていいよ。君のような子でもバンカラは受け入れてくれるから」

    現状、この街の性質上保証は出来ない。
    だとしても、最低限のことが出来るまでは彼女の面倒を見る義務がある。

    「とりあえずまずは病院に行こっか。記憶障害なら健康上問題がないか確認した方がいいと思うし」

    同意を得て、近くに停めて置いたパトカーに少女を乗せる。
    運転手のクラゲに病院へ行くよう伝えて助手席に乗り込む。
    居心地悪そうに俯く少女をよそに、病院へと車は走り出す。

    〜同日 バンカラ街商店街エリア 灰色と緑のぽよぽよ〜

    その生き物は、マンホールから出て立ち竦む相棒を置いて元気よく街へ駆け出した。
    未知のものを目の前にして好奇心を抑えられる訳がない。
    この道の先には何があるのだろうか。
    左の方からは何か美味しそうな匂いがしている。
    開けた場所には相棒と似ているような、似てないような生き物や変な生き物が沢山集まっている。
    よくわからないが大きな声で威嚇しあっていることだけはわかる。
    その通りすら抜けた先にもまだまだ相棒に似た生き物や知らない生き物が沢山集まっていた。
    ちょっと不安になるような、でもワクワクするような。
    そんな気持ちすら上回るように食欲をそそる匂いが鼻をくすぐる。
    でっかい建物から出てくる生き物の手に何か美味しそうなモノがある。
    もしかしたらあの建物の上かもしれないと野生の感が報せてくる。

    「ワンウォー!ワンウォー!ワァオーン!!」

    ピカピカと身体を光らせ、全力で飛び跳ねながら相棒の名前を叫ぶ。
    何か見つけた時は、こうすれば相棒が駆けつけて来てくれるのだ。
    が、いつもすぐに聞こえる相棒の声が聞こえない。
    飛び跳ねるのをやめて後ろを振り返る。

    「ワンウォー?」

    名前を呼んでも相棒はそこにいない。
    ふと不安だった気持ちがぶり返し、泣きそうになるのを堪えて相棒の姿を探す。

    「ワンウォー!ワエゥォー!ワンゥオー!」

    言葉の意味はわからないが、「ワエゥォー」と言う言葉を相棒はよく言っていた。
    その合図があるときは冒険をやめてナワバリに帰る。
    だから、そう言えば相棒が飛んできてくれると思っていたのだが。
    声はおろか、大好きな匂いすらしない。
    もしかしたらもう会えないのかもしれない。
    やっぱり自分よりボッカンやババババの方が大事なのかもしれない。
    そう思うと自然と涙が溢れる。

    「ワンウォー・・・・・・」

    いっぱい一緒に戦って来たのに。
    見捨てられてしまったんだろうか。
    またひとりぼっちになってしまうのかもしれない。
    highlyse_of_dtm Link Message Mute
    2023/07/17 0:09:40

    迷子1

    漫画を描くのが遅延してるため、文章にしておく
    ##スプラ ##オリキャラ ##世界は腐食している

    more...
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