「え~っと、はい?お客さん??」
ドアを開けて出てきたのは顔を黒く汚した彼だった。
何かの作業中だったのだろうか、ダッサイ軍手をはめている。
この間の抜けた調子だと今日の約束もすっかり忘れているのだろう。何か物珍しそうにこっちを見ている。
「あれ?どうしたの?君がここに来るなんて。」
私はそのキョトンとした顔に2,3発入れたくなるのを我慢して勤めて笑顔で答えた。
「私がお前に呼ばれる以外ここに来る理由があるとでも?」
途端、思い出したのか急いで部屋の奥に戻っていった。続けざまにバタンバタンとせわしない音が聞こえてくる。次約束を忘れたらどんな嫌がらせをしてやろうか?そんなことを考えながら煙草に火を付けた。
「一服終わるまでに出てこなかったら二度と来ないからなぁ~」
更に騒々しくなる部屋を尻目に私は煙を空に吐いた。