pkmnGSC夢ワンライログ※SSこの星の元に生まれた意味を(ライバル)
この星の元に生まれた意味を、私は無駄なものだったなんて思ってはいない。
今、消え行く星空のように白む世界に君と見た光も淡く溶けていく。さようなら、ありがとう、ごめんね……頼もしく愛しい仲間達。連れ出せない私を許してなんて言えない。だって君達は何も言わず受け入れてしまうだろうから。
でも君は、
シルバーだけには全てを知って欲しくて、許して欲しくなくて――縋ってしまったんだ。だから君はいつも以上に怒った。勝ち逃げなんて許さないと。「
名前に勝たなければ最強のトレーナーにはなり得ない」なんて買い被られて、思わず笑っちゃって――泣いちゃって。
「……
名前は、そんなところが弱いのに」涙を拭われるなんて思わなかったから、すごく驚いた私を見て
シルバーはフッと小さく笑ったね。
――こんなに優しくなった君を、私は巻き込んでしまう。私の笑みが消えて、涙だけは止まらなくて、
シルバーの顔からも微笑みは無くなってしまった。
そのまま、憎んで欲しかった。でも、君がくれたものは違った。
「
名前のせいじゃないのに、背負い込もうとするんじゃねーよ」真剣な顔で
シルバーは言う。「勝ち逃げは許せない。でもこうなるのは
名前のせいじゃない。……そんなこと、お前もわかってるだろ」
――君の目は真っ直ぐで、初めの頃は威圧的でもあって、歳もあまり変わらないのに恐ろしかった。
……今も、恐ろしさは表情を変えてこちらを向いていたんだ。優しくも見透かすその瞳で。私は……そんなところまで驕って、弱って。
「
名前の弱さは元からだ」思わず零れた私の言葉を拾って
シルバーは不敵に笑う。
「だから、いつか
名前のその弱さがバトルの腕にまで回ってきたとき、オレがお前を倒すんだから」眉を寄せて、それでも笑った君。
「ポケモン達とせいぜい、頑張り続けるがいいさ」
この星の元に生まれた意味を、私はまだわかってなんていないのだから。何度だって
シルバーに逢いに行こう。私達の意味を問い合うために。
ポケットの中で握りしめた思い(男主人公)
「じゃ、僕もう行くから!」
うきうき顔で旅立つ彼に、私は平々凡々、「いってらっしゃい」なんてゆるく笑って手を振るだけ。
ゴールドはいつだってどんどん先に行ってしまって、私は追い掛けたり、よく置いていかれたり。彼の横で見た景色と彼の背中を見た回数、どっちのほうが多いかな?
……なんて、なんでか今考えはじめたりして。
「名前はいつも通りだなー……時たま電話するし、気が向いたらおみやげでも持って帰って来るから!」
呆れたように肩をゆるめたと思ったら、どんな《おみやげ》でも考えているのか、若干不安になる笑顔を向けてくるゴールド。
「……楽しみに、待っててよ」
でもふと寂しそうな微笑みに変わって、私の手も止まってしまう。変な沈黙。いつもの風だけがゆるく私達をなでる。
「……ねえ、」「……あのさ!」
……被った。そもそも何も言うこと考えてなかったのに声を出さずには居られなかっただけの私。
「おっ、なになに?」「う、ごめん。本当になんでもない……」
「なんだよそれー」唇を尖らしてゴールドは頬を膨らませる。いつも通り。
「ゴールドはなーに?」
ちょっと笑っちゃいながら聞き返せば、ゴールドの顔もすぐさま綻んだ。
「うーん……これ! あげる!」
ポケットに手を突っ込んで何かを探り出したと思ったら、パッとつまみ出してきた《それ》。
「も、モンスターボール!?」
「そ、新品未使用!」
驚いて諸手を挙げてしまった私の片手を取って、ゴールドの両手が包むようにボールを渡してくる。
「名前もその気になったらトレーナーになって旅に出なよ!」
これはせんべつ!とキラキラした目で私を見つめた彼は、きっと変わらぬまま、立派なポケモントレーナーになるとそのとき、思った。
「……ありがとう」
小さくお礼を言うしか出来ない私は、この先彼の横に、……ううん、目の前に、立てるだろうか?
ぎゅっと胸で握りしめ、それからポケットに仕舞い込んだそのモンスターボール。
指先で感触を確かめながら、今の私は、ゴールドの後ろ姿を見送った。