お題:夏の終わり(電波、ワンライ未遂)「お前達は信頼しているのかもしれないが、その者は道具に頼らないとお前達を視認できん程度の小者だ」
「その様な希薄な繋がりでしかないのだ、いつの日かお前達の事も容易く忘れてしまうだろう」
優雅で毒々しい竜の様な雰囲気を持つ魔女。
彼女の野望を砕いた時に吐かれた言葉が、温くなった空気と甘い香りに呼び起こされた。
当時の自分は、大切な友達のことを貶された事が悲しくて、そんなことは無いと食い下がった。
そんな自分を魔女は鼻で笑い、マントを翻してそのまま闇へと消え去った。
拠点である元無人島には、いまや沢山の電波人間が暮らしている。
世界が平和になった後でも「この島が好き」と残ってくれた電波人間達で栄えている。
ちょうど今くらいの季節に、あの魔女を倒したんだ。
確か「夏休みが終わってしまった」と嘆いていたっけ。
あの頃は毎日の様に見ていた君の顔も君の声も、ここ暫く見ていない。
海風が運ぶ空気もいつの間にかひんやりとして、木々が色付いて、君が来ないまままた季節がくるりと一回転した。
外の世界でもあの甘い匂いの花が咲いた頃だろうか。