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    練習中 何事も、習うより慣れろという実践主義。
     師匠仕込みのそれは、今の俺にも通用しているわけで。何事も、やってみなくちゃできることもできないものだ。
     しかし、それがなかなか難しい。
     

     風呂上りの、つややかでいい匂いのするウィンリィが部屋に戻ろうとする。
     それを俺は呼び止めて、今夜のお誘いとしゃれこんだ。
    「ウィンリィ。今夜、俺の部屋で、どうだ」
    「だめ」
     今夜のお誘いは、たった二文字で断られ、自分でも分かるくらいがっくりと肩を落とす。
     勇気を出して誘ってみたんだが、こうもあっさり断られると凹むらしい。
    「そうか……」
    「ごめんね。アレの日、来ちゃったから……しばらく無理かも」
    「アレかー……そりゃ仕方ないよな……」
     一週間はお預けってことか。女性の身体の問題とはいえ、お預けを食らうとなるとなんというかその、俺の身体もつらい。もっとも、一番つらいのはこいつの身体だと分かってはいるんだけど。
     あからさまにがっくりしている俺を見て、ウィンリィは申し訳なさそうな顔をする。そんな顔をする必要なんてないのに。そんな顔をさせてしまうのが情けなくて、俺は慌ててがっくりを振り払った。
    「いや、おまえの身体のことだから仕方ないし、おまえが我慢するんだから俺も我慢する! だからそんな顔すんな! 一週間したらまた誘うから!」
    「んっ」
     ってあれ? なんで目を閉じて唇をこちらに向けるんですかウィンリィさん。
     もしかして、そのもしかしてですか。
    「えっちはできないけど、キスならできるから。代わりにキス、してもいいわよ」
     そのもしかしてだったー!
     そうだ。性行為ができないならそれ以外のことをすればいいまでのことだよな。行為のことばかり頭にあった俺がバカだった。
     つまりは、我慢している間たくさんキスしてもいいってことだよな……
    「もう、はっきりしなさいよ。するの? しないの?」
     しばし考えていた俺にやきもきしてか、目を閉じたままウィンリィが逆に俺を誘ってくる。
     さっきまで風呂に入っていたせいか、体温が上がって血色がよくなり、つやつやしたピンク色の唇が、俺を待ってじっと向けられている。
     その誘いを、断ることなんてできなかった。
    「んっ、む…………」
     場所が廊下なのを無視して、向けられた美味そうな唇に蓋をした。
     ふにふにとした柔らかさと、じんわりとした温かさ。
     鼻で呼吸しながら、その感触をしばらく堪能する。触れるだけのキス。ここまでは簡単。だが、今の俺はこいつの唇の柔らかさを楽しむだけじゃ足りなかった。
     もっと、もっとウィンリィを味わいたい。身体がダメなら、口だけでも。
     一旦、唇を離す。
    「……長い、キスね」
    「そりゃな。誘われたんだから、じっくり楽しむのが男ってもんだ」
    「もっと、する?」
    「したい。でも、このままだと湯冷めするし、ずっと立ってるの疲れるだろ。続き、おまえの部屋でしてもいいか?」
     返事の代わりに、俺の右手が握られた。



     場所をこいつの部屋に移して、ベッドに座り、二人きりのキスの時間を再開することにした。
     髪をタオルで拭いてやりながら、まずは濡れて輝くハニーブロンドの髪にキス。
     次は額にキス。ピアスの外された耳にもキス。
    「いい匂い。おまえ、菓子みたいで美味そうだよな」
    「もう、エドったら。くすぐったいよ」
     軽く閉じられた瞼にキス。唇と同じく、血色のよくなった頬にもキス。
     唇以外の部分に口付けてやると、ウィンリィはくすぐったそうに笑って俺の頬に擦りついてきた。
     猫みたいな可愛らしい愛情表現に、俺も頬に擦りついて返してみる。トーンの違う金色の髪が混ざり合って、行為の時を思い出して少しやらしい。
     やられっぱなしだったウィンリィが、仕返しと言わんばかりに俺のキスした箇所と同じ個所に口付ける。
     髪、額、耳、瞼、頬……確かに、ついばむようなキスは、されてみるとくすぐったい。
    「ね? くすぐったいでしょ」
    「確かに、デンに舐められてるみたいだな」
    「デンと同列って、ちょっと複雑なんだけど……」
    「なんてな」
     焦らすように唇以外の箇所に口付けた後は、ついに唇にキスをする。
     廊下でしたときみたいに、こいつの唇をふさいで、柔らかさと熱を堪能した。
     触れるだけのキスなら、まだ簡単。問題は、それ以上のキスをすることだ。
    「んっ、んんっ……」
     実は、唇を合わせる以上のキスを、まだ経験したことがなかったわけで。
     ウィンリィをもっと味わいたい俺は、今から初めて「それ以上」に挑戦しようとしている。
     唇から、舌をゆっくり押し出し、こいつの唇の合わせ目から不器用に差し込む。
    「ん、んむっ…!」
     突然の挿入に驚いたのか、ウィンリィは唇を合わせたままくぐもった声を出した。
     そりゃ驚くよな。初めて、唇を割って舌が入ってきたんだから。
     でも止めてやらない。口の中のどこを舐めたらいいのかわからないから、舌が当たり次第、至るところを舐め回す。
     上顎、上下の歯列、頬の裏側……逃げ回るこいつの舌を捕まえて、俺の舌を絡ませた。口の中は唇以上に熱い。唾液でぬめっていて、どちらの唾液かわからない。
     舐め回して、絡めて、思い切り口の中を堪能して、唇を離す。二つの唇の間に、透明な唾液が伝って、やけにやらしい。
    「ば、ばかっ……」
     ディープキスが終わると、ウィンリィの顔は真っ赤に染まっていた。初めての濃厚な口付けに、戸惑いを隠せていないらしい。俺も、たぶん真っ赤になっているだろう。顔の温度が上がっているのがわかる。
    「エド、そんなキスどこで覚えてきたのよぉ……!」
    「ばーか。誰からも教わってねぇよ。だからめちゃくちゃなんだろ」
    「いまのキス、すごくいやらしかった。えっち。すけべ」
    「仕返し、してみるか?」
     淡く期待をして、口を半開きにしてみた。負けず嫌いの彼女は、俺の胸元を掴んで勢いよく口付けてくる。半開きにしていなかったら、歯がぶつかってしまっただろう勢いで。
     俺の口の中に、こいつの舌が侵入する。俺と同じ、不器用な差し込み方。ぬるりとした熱い舌が、俺の中で暴れた。俺が舐めたように、こいつは同じ場所を這い回って舐め回す。
     やばい。唇を重ねるだけのキスもいいが、こっちはもっと気持ちいい。口内が、こんなにも感じる部分だったということに驚く。確かに、やらしいのは伝う唾液だけじゃない。このキス自体、既にやらしいのか。
     可愛らしい舌が、ちょんちょんと俺の舌をつつくので、舌と舌とでくっつけ合った。唇だけではなく、舌を合わせるキス。そして、要望に応えて絡ませる。舌のざらついた感触と、ぬるぬるした唾液の感触。この気持ち良さを知ってしまったら、病みつきになってしまう。これだけで、既に俺の雄が立ち上がりかけているのは、あまりにも気持ちいいからだ。
     唇が離れた。夢中になって鼻で呼吸するのを忘れたのか、ウィンリィは少し苦しそうに肩で息をした。キスが終わって早々に、視線は俺の下半身に向く。
    「はあ、はあ……ってなんで立ってるのよ! すけべ!」
    「しょーがねーだろ気持ち良かったんだから!」
    「ばかエド! すけべ! ヘンタイ!」
    「ああそうだよヘンタイだよ! おまえ限定のな!」
    「えっちできないのに! ばか! ばかばか! んっ……」
     恥ずかしがりながら罵詈雑言を吐き出す口を、俺は強引にふさいでやった。
     試しに熱を帯びた唇をぺろりと一舐めしてやって、離れさせると、こいつの身体から力がふにゃりと抜ける。
     一つ、いい事を思いついた。
    「なあ、ウィンリィ」
    「な、何よ」
    「察してると思うが、俺もおまえもくっつけるより先のキスは慣れてないだろ? 練習として、今夜は互いにキスしまくるのはどうだ」
    「……キス、だけだからね」
    「分かってら。キス以上はしねぇよ」
     俺の提案に乗ったウィンリィが、期待するように瞼を閉じて唇を向ける。
     その唇に、最初にした時みたいに俺は優しく蓋をした。
     キスを誘ったのは、おまえだからな。キス、だけだからな。
     つまり――キスだけなら、いくらでもしていいってことだよな?



     ――それから。
     練習という口実で、俺とウィンリィはめちゃくちゃながら色んなキスを試した。
     結果、こいつはキスだけでイくことができるということを発見した。俺も、恥ずかしながら一回イった。
    「もう! しつこすぎるのよあんたは!!」
     俺のあまりにしつこいキスと、イってしまった恥ずかしさとで限界に達したウィンリィに、スパナでどつかれたのは言うまでもない。
     結論――キスは程々にすること。

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    2022/08/10 22:08:44

    練習中

    (2018/12 執筆)(2022/8 修正)エドウィンが慣れるためにひたすらキスする話。兄さんの日(8/10)掲載はひとまずここまで。
    #二次創作  #男女カプ

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