ソルティシュガー(現パロ)大学の長い冬休みが始まって、バドラが帰省。俺は、大学の友達と約束多いから合流しやすいこっちに留まりたい、元日は顔を出すからと双方に頼み込んで不承不承了解を得ていた。
それから、この親子頭おかしくね?と毎日何回か首を傾げている。2人一緒に風呂に入るし、タオル巻いただけで出てきてうろうろしてるし、眼福っちゃ眼福だけど、見過ぎで目の保養から毒になりそうだ。
ただ、ちょっとラッキーなこともあった。バドラがおはようのキスを伯父さんにしてもらってる隣に気を抜いて立っていたら、
「おはよう、…間違えた。今のは余分だな」
伯父さんが!俺に!おはようのキス!もちろんほっぺだけど!うわなにこれまるで新婚さん!
「ちちうえ、口をゆすいだほうが」
「そうしよう」
心底嫌そうに眉をしかめて洗面台に行ってしまう。2人ともひどくね!?
「…お前いつも伯父さんとこれしてんの」
「してる。お前こそ実家でしたことないの?」
空は青いんだな、と言った奴を見るようにバドラがしれっと答える。
いつもだぞ!?
伯父さんとだぞ!?
おはようのキスだぞ!?
そんな、俺にとってはレアアースレベルに貴重な出来事を、呼吸と同じでして当然て返すお前なんなの!何様なんだよ!?伯父さんの息子様ですね!ハイ!
口数少ないひとと一緒にいると、ひとりノリツッコミが上手になるんだなといささか遠い目をしかけた俺のほっぺに、柔らかいものが触れた。
「…して欲しそうだったから」
「バ…」
「私のバドラに、何をした?」
ギャー!ちちちち違うんだこれはバドラが、待って!大魔神になるの待ってってば、アー!やめて電話はやめてお袋の説教はイヤ、らめぇえええええー
「二度としませぇえええんんんんん」
俺からした訳じゃないけど謝るしかない!
「…そんなにして欲しいのか」
えっ、と俺とバドラの声が重なる。
「お前に割くポイントは少ない。例えばこの朝の挨拶で使うとなれば」
お前が常日頃ねだっている、その先とやらは明日の分でなくなる計算だな。
伯父さんまじやめてレートおかしいしバドラの視線が冷たすぎてさすがの俺も立つ瀬がない。
バドラが図書館で勉強してくると出かけた後、伯父さんがふいに言った。
「お前は、バドラの同じように息子扱いされたいのか、それとも、一人の男として私と姦通したいのか、どちらだ」
すげー言葉使ってきたけど、そうだ、おかげではっきりした。
「いつか伯父さんの隣に立てる男になるんだ」
「そうか」
ふいに伯父さんの手が俺の視界を塞ぎ、唇と頬の境い目にヒゲらしきくすぐったさと、温かい感触。
「伯父さん、などと呼んでいるようでは先は長そうだな」