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    エクスカリバーの木造剣戦場のエクスカリバー魂のない剣“B.L.”鞘のない剣氷の剣と凍る女王英雄の帰還エクスカリバーの木造剣――轟音が消えた。
     とうとう耳がおかしくなってしまったのかと思った。

     空っぽだった。

     不意に小さな手が延べられる。冷たい灰色の空の下で、その少年は金色の髪を黒煙に靡かせながら、吾が前に佇んでいた。視界が悪く、顔はよく見えない。時々煌めく蒼い両の眼だけが只、眩しかった。

     吾は手を取った。

     その儘、壊滅した街を背に彼に連れられる儘に歩いた。見慣れない道を行き、小さな町に出た。

     少年――エクスカリバーも、吾と同じ。故郷を失い、今はこの小さな町の鍛冶屋に引き取られたのだと言った。

     彼は気さくで明るく、人の心を掴むのに長けていた。

     彼が吾のことを話すと、無口な鍛冶屋の主人は静に頷いた。
     吾は彼と共に、鍛冶屋に住まわせて貰いながら入隊を目指すこととなった。

     ある時、彼は薪を2本持って来て練習用に剣を作ろうと言った。彼は地面に、龍の翼を拵えた剣を描き、早々と薪を削りだした。吾もまごつきながら薪を削り始める。が、巧くいかない。彼方を削ると此方がいかぬ。ふと、手を止めてみると、エクスカリバーが困った顔をして吾を見ていた。

     失敗したのだと、木彫りの剣を見せてくれた。一見して、それは、良く出来ていて何処にも欠落などなかった。しかし、よく見ると龍の翼が、鋭い牙の様に1つに纏まっていた。削り過ぎた為、両の羽を落とし、完成させたらしい。吾にはそれが、龍が翼を休めているように見えた。

    「龍とて羽を休めるのだな」

     吾の言葉が意外だったのか、彼は一瞬戸惑いを見せたが、剣を優しく撫でて柄に大きく名を彫った。

     そして、エクスカリバーは木造剣を誇らしげに振り回した。ふと、吾の視線に気付き、振ってみるかと訊く。吾は頷き、軽く持って大きく縦に振った。――その時だった。

     一陣の風が森林を駆け抜ける。木々の間をすり抜け、数十メートル先の木を割って進む。幾度目かの衝突音の後、それは止まった。

     吾もエクスカリバーも、何が起こったのか解らないでいた。

     それが、“ex”の始まりだった。
    戦場のエクスカリバー 兵士となった2人。エクスカリバーは「剣士」としては一國一の腕を持っていた。
     しかし、戦場では揮わなかった。

    「ゲェッオエッ……」
     大地に剣を突き、吐き続けるエクスカリバーの背を、ロートスが撫でる。

    「ロートス、全ての剣を収めることは可能だろうか?
    俺は……もう、誰にも剣を振らせたくないんだ」
    「エクスカリバー、主は戦に向いていない」
    「あぁ……ゲホッ」
    「吾の専属の鍛冶屋になればいい。
    主の願いは吾が叶えよう」
     エクスカリバーは退役し、鍛冶屋を始めた。
     エクスカリバーは只、何の変哲のない鉄や銅で剣を造っていた。
     しかし、どういう訳か、出来上がったモノは変質し、得体の知れない物質になっていた。
     その剣は人を選び、選ばれた者は異常な強さを誇った。
     剣には“Excalibur”を示す“ex.”が彫られる。
     “ex.”はロートス<死神>の名と共に後の世に知れ渡った。
     “ex.”は、選ばれぬ者には切れ味が良いが、重すぎる剣だった。
     また、剣が選ばない限り、エクスカリバーはロートス以外の者に渡したりはしなかった。(盗まれることはあったかもしれない)
    魂のない剣“B.L.”「年々重くなっておるな。
     アレは細身だから儂の刀の方 がよく似合うというに。
     実際、使い易そうにしておった」
    「アイツは何て?」
    「“ex.”の方が好きだと。
     アレに何をさせたいのだ?
     止めたいのか?
     護りたいなら軽くしてやれ。
     その内過労死するぞ」
    「……」

    「何だこれは?
     魂がこもっていないな。軽いぞ」

    (これは……)

    「どうしたエクスカリバー?
     黄泉の剣でも造ろうと思ったか」

    ((――魂を一つに出来ないだろうか?))

    「ガキがさ、イヤなガキが来やがった」
    「あぁ。アレなら躊躇いなく斬ったろうがね」
    「あんたは違うのか?」


    「……何がしたい?」
    「このままでは使い物にならんぞ。
     フン エンブレムも付けておらんとはな」
    「……打つ気か?」
    「言ったろ?このままでは使い物にならんと」
    「らしくねぇ」
    「儂はお前の剣が好きじゃ」

     剣を打ちだすバツ。

    ――カンッカンッ……

    「こんなものは認めん」

    ――カンッ

    「ふぅ……
     “×”のエンブレムもこんなものに使いたくないね」
    「――」
    「あぁ。“B.L.<バロック>”でいこう」


    ****


     エクスカリバーは横になり、バツの膝に頭をもたげている。
    「お前はすぐ泣くな」
    「……斬らねぇのか?」
    「フン お前なぞ斬る価値もない」
    「そうだな」

    ((――魂を一つに……))

    「……年々重くなっておるのはな、
     お前が魂を込めておるからじゃ」
    「あぁ」
    「アレも知って使っておる」
    「もう、長くねぇ」
    「帰れ。アレが帰った時、お前がいないと寂しがるぞ」
    「そうだな……!」

    ――かくんっ

     エクスカリバーが身を起こそうとした途端、バツの首が倒れ、頭ががくりと落ちてくる。

    「おぉっ!?」

    ――す~す~

     スイッチが切れたように眠るバツ。顔からは何時もの気迫もすっかりなくなり、完全に脱力されている。

    「なんつー無防備な……」

     起こすに起こせないまま、結局、泊まるエクスカリバー。


    ****


     朝方戻ると、真っ暗で冷え切った部屋にロートスが居る。

    「バツの所に行ってたんだろ?
     恋人だものな。ふふっ」
    「このバカ!火もつけねぇで!!」

    ――ガチャガチャ

     急いで火を起こすエクスカリバーを横目に、ふっと笑みを零して倒れるロートス。

    ――す~す~

    「寝やがった。
     お前らにとってオレは寝場所なのかよ!」

     どしんっと音をたてて勢いよく腰を下ろすエクスカリバー。
    「ん?
     ……恋人?って……何だ?
     アイツは男だろ。あれ?いや……」

    (…………)

    「ちょっと待てロートス!起きろ!!」


    ****


    「――」
    「バロック?それがお前さんの名かい?
    儂に何の用じゃ?」

    「――」
    「帰れ」
     バツを訪れて着た少年は、戦火の煤を浴びたのか、全身を真っ黒に染めていた。痩せこけた両腕で躯を抱え上げて見せる。
    「悪いが、それが戦さ。
    お前さんのような奴は五万といる」
     少年はバツの目を見据えたまま半歩前へ出る。
    「斬るぞ」
    「――」

    「……なんじやと?」


    ****


    「初めに言っておくが、
    この剣は空<から>の剣だ。
    コイツは“ex.”でも“×”でもない。
    当然、魂を一つにするだの、
    蘇らせるだのという効果もない」

     バツは少年の肩にうなだれた妹の屍を見ながら、自分に言い聞かせるように言った。
    (儂にそんな力はない……じゃが、)


    ――カランッ
     バツは少年の前に剣を打ち捨てるように投げやる。
    「くれてやる。
    二度と儂らの前に現れてくれるな」
    (厭な予感がする)

     少年は剣を両手に抱えると、バツを見上げて微笑んだ。


    「気味が悪いな。
    そんなに喜ぶような代物ではな……」

     バツがそう言いかけたとき、少年は迷いなく自分の首を刺した。

     バツは溜め息混じりに踵を返そうとした。しかし

    ――じゅるりっ
     それは一瞬の出来事だった。
     斬りつけた首から、剣先に向かって吸い上げられるように少年の身体が萎んでいく。やがて全てを吸い尽くし、崩れ落ちた少年の背の上でゆっくりと立ち上がったのは……――
    「「ありがとう」」

     “妹”はそう言うと、剣を片手で軽々と持ち上げた。剣先に語りかけるように呟く。
    「「これでずっと一緒だね」」

     笑みを浮かべた少女は、立ち尽くすバツに背を向け、歩き出す。バツはその背が見えなくなってから数分後、急な嘔吐に見舞われる。

    ゲェッゲホッゴホ……

    (儂は……とんでもないものを作ってしまった)


     酷い吐き気の中、聞き慣れた声を聴いた。
    「!バツ!どうした?!」
    「ロートスか……」

    「エクスカリバーの様子がおかしいんだ。
    お前も……お前ら、何をしたんだ?」
    「……わかっているようだな。
    敢えて言わんよ」

    「……」

    (バロック……)

    「バツにも斬れぬものがあったのだな」

    「お前さんとは違う」
    「違わぬ。
    吾もエクスカリバーは斬れん。
    ……主もだ。
    吾は辰之進も斬れん」
    「そうか」

     バツはロートスから目を逸らし
    「そりゃ光栄だ」

     上を見上げて
    「ハハ……斬ってくれりゃあ好いのによ、
    お前は冷たい」



    「……儂もお前さんは斬れんよ」


    ****


     黄泉の剣・バロックは、静かな狂気を巻き起こすこととなるが……――
     その狂気の噂は全て、推測の域を出ることはなかった。

     彼女(彼)に遭った人間が、生存し得なかったからである。

     彼女を再び眠りにつかせたのは、ロートスだったが、決して語り継がれることはなかった。


    「妹には逢えたか?バロック」
    「「いいや。僕自身が妹<シエラ>だ」」
    「そうか。2人でなければ逢うことは出来んな」
     ボロボロと涙を零す少年。
    「「もう、一生逢えない」」
    「吾が斬る」

    ――ザンッ!
    斬りつけた少年の傷口から、何かが顔を出した。笑っている。
    「私も連れて行ってくれる?」

    「……生まれ変わりを信じるか?」
    「えぇ、そして、もう一度逢うの」

    ――チキッ
     ロートスはまた剣を構える。
    「あなたは優しい……でも空っぽね」
    ――ザンッ
     少女を斬ると、半透明な何かがけたたましい勢いで昇っていく。
    (死に魂か……)


    『B.L.』
    鞘のない剣「もう刀作らねぇって?
    勿体ねぇ」

    「なぁ辰、俺の嫁になれ」
    「よるな。
    斬るぞ」
    「連れねぇ。
    あんな腰抜けのどこがいい?」
    「……剣が好きなだけだ」
    「そうかい。
    お、客だ。またくる」

    (無口な奴だ)


    ****


    「奴め……鞘を作る前に逝ってしまうとはな」
     バツは苦々しく呟いた。
    「アヤツは鞘を大切にしていた。
    お前さんが剣を収める場所だからな。
    寧ろエクスカリバー自身がお主の鞘だったのかもしれん」
     振り返ると、何時もの無表情な瞳でロートスが見つめてくる。

    「しかし、よく焔<ここ>まで来たな」
     バツがそう言うと、ロートスはふっと顔を緩めた。
    「ここは居心地がいいな」
    「来な」
     そう言うと、バツはロートスの頭を膝に乗せる。ロートスは驚いた。
    「こういうのは初めてだ」
    「そうかい」

    「好きなんだろ?」
    「……どちらを?」
    「人間の方をだ」
    「そう――」

    (……捉えるのか)

     にっと笑ってバツ
    「剣の方さ」

    (鈍い男だ)

    「いつでも来な。
    儂がお前さんの鞘になってやる」
    氷の剣と凍る女王「辰、
    ……?
    居ねぇのか?」

    「おい」
    ――カラカラッ
     戸を開けると、バツがうずくまっている。
    「!! 辰!」
     鉄之介が駆け寄ると、
    ――チキッ
     バツは刀を鞘から僅かに抜き、物凄い形相で睨み付ける。静かな部屋にゼエゼエと苦しそうな息の音が微かに響く。

    「そんなに俺が厭か?
    随分キツそうじゃねぇか」

    「ゼエ……ゼエ……」
    ――ずるっ
     
    「……
    辰…」

    「!」
    ――ドカッ

    「ここを血塗れにする気か」
    「悪い」

    「はー
    無駄に体力使っちまった。
    後は頼む」

    ――ごろん

    「?なんだ?
    力ないな」
    「病なんてそんなもんさ」
    「お前1人で大丈夫なのか?」
    「大丈夫じゃなかったら何かしてくれるのかい?」
     クックと笑うバツ。ロートスは嘆息する。

    「鉄に悪気はない。
    突発的なものだろう。
    主も」
    「あぁ、ついな」
    「ついで人を殺すな」

    「無視かよ。や、すまねぇ
    こんなつもりじゃ……」
    「……まぁ、わからなくもない」
     ロートスの言葉に場が凍り付く。

    「?何だ?」
    「……」

    「邪魔したな」
     鉄之介が踵を返すと、背後で倒れる音がする。

    「寝に来たのか?」
    「!」
    「儂もコレもよく眠れんタチでな。
    交代で寝ておる」
    「羨ましい話だな。
    俺は混ぜてもらえねぇか?」

     溜め息混じりに
    「鉄之介は焔の中でも腕の立つ戦士じゃ。
    腕だけは信用できるぞ」
    「主が良いなら良い。
    吾は眠い」
    「さっきから気になっていたが、
    その手、凍傷じゃねぇのか?」
    「北帰りだからな。
    話は明日だ」

    「寝やがった」

    「北帰り……ね……」
    「!鉄?!」
     こんこんと眠るロートスの身包みを剥ぐ鉄之介に批判的だったバツの顔が驚きに変わる。

    「やっぱり」
     ロートスの身体は、赤紫に染まり、所々水疱が出来ていた。

    「辰、包帯あるか?」
    「あぁ……ゲホゲホ」
    「辰、お前も寝ろ」
    「そうだな。頼む」


    ****


    「聞いたぞ。北の女王の話」
    「何だ?コレが倒しでもしたか?」
    「あぁ、多分な。
    まだ寝てやかる」
    「酷い凍傷だ。無理もない」
    「この格好で行く馬鹿があるか!
    しかも、女王は凍ってたって話だ」
    「“ex.<スノー>”だな。おそらく」
    「“ex.<スノー>“?」
    「エクスカリバーじゃよ。
    前に、ここに訪れた娘にくれてやった」
    「……やはり、主か」

    「起きたか。
    “イイ”おなごだったであろう?」
     可笑しくてたまらない様子でクックと笑いながらバツ
    「あぁ」
    「どんな女<ひと>だ?」
    「白髪に近い感じの金髪で
    ……色が雪のように白い。
    そうだ、あと、眼が紅い」
    「赤ぇのはお前の頬だ」
    「“あんなこと”をされたのは初めてだったからな」
     もごもごと言いにくそうにロートス。
    「吾は倒すどころか押し倒されて逃げ帰ったのだ」
    「「……」」

    「ぶはっ」
    「くくく……」
    「笑うな」
    「いや、愉快でたまらん
    詳しく話せ」


    ****


    「この國はどうじゃ?」
    「……」

    「……好かんか」
    「……あまり。
    “力だけが全て”という感じだ」

    「来い」


    「北ではな、生き抜くために強くならねばならん」


    「……この馬はもう、ダメじゃ。
    食え」
    「……」
    「凍え死ぬぞ」


    「さて、
    では、参る!」
    「?!」

    「どうした?」
    「……」

    ――キィンキィン(数回剣で打ち合う)

    「……」

    ――シュ(女王の剣を見えぬ速さで奪う)

    「この剣は“スノー”だ懐かしい。
    ex.<この剣>を使える者に手は出せんな。
    返す」

    「なんじゃ……それは……」
    「“ex.<エクスカリバー>”だ。
    どうしてコレを?」
    「……南東の……焔でもらった」
    「そうか」

     険しい顔をしていた女王が、無表情で凄い勢いで近づいてくる
    「?」
     鼻が付きそうな程間近に来ると、ロートスの両肩を掴むとそのまま前のめりに押し倒した。
    「!!」
     勢いで背を強かに打ち、眉間に皺を寄せるロートス
    「な、何を……」
    「妾は妾に打ち勝った男を夫とするつもりじゃった。
    主は強い」
    「!!」

    「!!?」
    「逃げるな」

    (……足が……)
    「吾は……厭か?」
    「ただ強いと言うだけで夫か?」
     これ以上ないくらいに睨むロートス
     女王は落胆したように肩を落とした
    「……妾は、主を知っておるよ」

     女王の声は、風の音に掻き消されそうな程心許ないものだった
    「“ex.<エクスカリバー>”と言うのか
    不思議な剣じゃ」
    「……」

    「待っておった……」
    「……」

    「主は剣しか見ておらぬようじゃが」
     溜め息
    「……この國のことは好きにしろ。
    行け」
    「……」
     ロートスは踵を返すように、ゆっくりと来た道を戻り始める。

    「……」
     女王の目に映るロートスの後ろ姿は、小さくなっていく。

    「……妾は待っておる」
    ――キィン
     そう言った女王の、両手で突き立てられた剣から、彼女はゆっくりと凍り付いた。
     振り返るロートス
    「……!」


    「ニケ!」
     悲鳴に近い声で叫びながら駆け寄るが、彼女は凍り付いたまま微笑み返すだけだった。


    ****


    「ゲラゲラ……ういやつよ。くっくっ」
     可笑しくてたまらない様子のバツとは対照的に、沈痛な面持ちで鉄之介。
    「で、その凍傷はどうした?」
    「何とか……溶けないものかと――」
    「身体で暖めようとしたのか?」
    「無駄だったが……」
    「……」
    「あの娘は儂にも同じことをしようとしたぞ。
    避けたがな。
    儂は女だと言ったら大人しくなったが。
    面白いから焚き付けておいた」
     不服そうなロートス
    「何、本当のことを言っただけだ。
    “儂より強い男が2人居る”とな」
    「主は吾より強いではないか!」
    「いいや、お前さんの方が上じゃ」
    「……2人目はエクスカリバーか?
    何であいつが……」
    「アレはロートス<コレ>より強いからな。
    戦に向かなかっただけで」
    「あぁ、凄い剣士だった」
     にこっと嬉しそうに微笑んで相槌するロートスを見て、渋々同意する鉄之介。
     ※エクスカリバー死後の為、大人しい
    「そうか」

    「しかし、一番強いのは“氷の女王”かもな。ははは」
    「あぁ、お前さん、娶ってやれ」
    「お?」
    「ぇ」

    「今日から彼女はニケ・“フェニックス”だ。ケラケラ」
    「……あぁ」
     プスプス加熱するロートス。
     気が抜けてパタリと転がる鉄之介。
    「ハァ~何だろうな、一度に二度失恋した気分だ」

    しんっ

    (一度に二度?)

    「……何だ、衆道か?」

    「っちっっが~ぁあう!」
     ガバッと起き上がり、鉄之介。

    「儂は偏見はないぞ?クスクス
    好かったなロートス」
     ロートスの両肩に手を置いてバツ。
    「いいのか?」
    「違う!俺はお前一筋だって!
    くっつくな!」
     べりっと剥がす
    「お」
    「五月蝿い(キンキン)」

    「寝ておけ。番は儂がしておく」


    ****


    「……なんだ」
    「何故、氷の女王を?
    エクスカリバーが好きなのかと思っていたが、
    辰、本当は……」
    「ロートスを、か?ははは
    ちと、違う。
    儂は2人セットで好きだったようだ」

    「エクスカリバーを好きなロートスと、
    ロートスを思うエクスカリバーがな」

    「だが、アレはもう、空っぽじゃ」
    「アイツは死ぬまでエクスカリバー一筋なんだろうな」
    「そうでもない。
    アレはアレなりにニケが好きだっただろう」
    「辰のこともな。
    贅沢な奴ー」
     一瞬眼を丸め、逸らすバツ

    ((わからんでもない))

    「フンッ
    奴も隅には置けんな」
    「……耳が赤ぇぞ辰(苛っ)」
    「気のせいだろう」


    (ロートス、お前と辰は似ているな)
    英雄の帰還 ロートスは何度もニケの下へ顔を出した。


    「なぁ、ニケ」
     ロートスは凍り付いた女性に語りかける。女性は美しく、そして若い。
     差し出した自分の、しわだらけの手を見た。
     もう、戦う場もない。ただ一つの約束も。

     空の手を握りしめる。
    「もう少し待っておれ」

     最後に剣に願いをこめるように一瞥をやり、
    「また、またな」
     呟く。


     それが、北の女王と南の英雄の最後の遣り取りとなった。
     女王が目覚めるのは、この幾千年も先の話である。
    黒克(創作) Link Message Mute
    2024/01/12 17:13:32

    Excaliburの伝説期の草案出てきたので
    ネタバレバッチ恋の方のみGo
    本当はバツが亡くなるところとかバツとロートスたちの出会いもどっかにあるはず。

    more...
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    • 華】銀髪の花嫁桃井トキ。少年が描いた軌跡。
      Pixivの【夢実現コンテスト】(2009年7月31日)投稿したもの。

      漫画が描きたいけど、短編無理そうだから連作にしようかな―とか。うーん。
      第一ネームだけは公開してますが。ネームだよホントに。。。 #オリジナル #創作 ##華:銀髪の花嫁-創作
      黒克(創作)
    • 11【グロ注意】Over Drive若干【グロイ】です。雰囲気マンガ。多分ついていけない;;
      オフ友と12pで合同本を作ろうと言っていたのに見事原稿オチした作品。ゴメンヨホント。
      (2013年9月?) #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##その他-創作
      黒克(創作)
    • 26電】Phantom Pain~「社会」が上げる静かな悲鳴~Pixivの【描いてみてもいいのよ新人賞_変態力】で投稿した鉛筆マンガ(汚い)。(2015年2月)
      文字が汚くて読めないね;読む順にも悩む;;

      【企画以外での拡散禁止】していた作品でしたが、自分が一番拡散しているw
      本当は沢山の方に見て頂きたい話なのですが、自分が失ったらどう生きればいいのかわからないという不安からできたお話なので本当にそういう方々から見たらこの作品は……と考えるのが怖くて【翻訳・拡散禁止】にしていました。もういいけどね←

      マイカテゴリー【電】は、夜光・欄・懸の3人で生体電位信号を使った生身に近いゲームを作るって言うお話。
      というより、作られたゲームの話を小説として描こうと思っていたんだけど、勉強不足と文章力不足で挫折中。。。 #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##電:WORMS-創作
      黒克(創作)
    • 20電】懸×カケル(Reveal Ver.)~見えざる幸福~『懸×カケル~見えない生涯~』の音付バージョン。音がある方が解ることと、ない方が気付くことがある。会話内容は用語の解説が殆どされていないので言葉(音)があっても知らない人には通じないし、知っている人には言葉(音)がなくてもある程度ついてこれると思います。初めは言葉をなくすつもりだった訳ではなかったので意図的ではなく普通に漫画を描いて消しているだけですが。

      【訂正】「&」と「;」の間⇒「& #x」と「;」の間に4桁です(16進だと)。スミマセン;
      あと、礼のソースも閉じタグなかった!もっとあるかもしれない;
      技術的検証はしていないのでソースの動作などは怪しいです。

      訂正、、、気が向いたらします。多分しない←

      ていうか、文字読みにくくてスミマセン;; #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##電:WORMS-創作
      黒克(創作)
    • 38剣】Excalibur~引き継ぐ者~ ※流血注意「持ち込み」をしようと、投稿用原稿用紙に描いたもの。
      納得いかず、結局持っていかなかったのですが。。。

      実際、評判は良くないものの、私にしては色んな人に見せて回って意見を頂いた作品です。
      ネーム段階でも色々意見を頂きました。

      カットしたシーンがないと物足りないというか、カットしちゃいけないところをカットしてしまったような。。。
      消化不良なので、今、描きたかったシーンをゴッチャリ入れて同じ漫画を描き直しています。

      しかし、最近、手ブロでラクガキしかしていないのでアナログ絵が思うように描けなくなっていることに気づきました。
      何時になるやら。。。50p超える見込みなので呼んでくれる方が居るのかどうかも不明。。。う~ん。自己満足で!

      他にも描きたい話がありすぎて焦る;
      でも、漫画描けなくなってるから、じわじわリハビリしないと!Gペン!甦れ!
      マンガ描ける人ホント尊敬する~ #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 5剣】Excalibur ※流血注意企画倒れした合同同人誌の読み切り。こっちは間に合ったのになぁ。。。
      原稿渡したままなので手元にはコピーしかないよ。

      私の描いた中ではまとまっているので「漫画描いてます」って見本に見せるのはこの漫画だったり。

      キャラリストは2代目のロートスの話。少年が少女になってたり、色々違いますがw #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 6電】夜のメガネ礼と夜のお話。短くし過ぎてよくわからないものに;多分続かないのでネタバレ。

      礼は夜と一緒にいることで自分が感じていないと思っていた「痛み」に気づく。
      礼は自分が他人の痛みに気づけないのは自分に痛みがないからだと思っていたけれど、そのことでずっと傷ついていたし、感情的になると涙や手の震えが現れる。
      夜には眼が見えないのにそれが見えている、と。そんな感じ。笑
      礼の初恋?でも自分の片思いにも気づかないまま利子と結婚する。

      私、漫画ヘタだわ~ #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##電:WORMS-創作
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    • 4剣】黒い実(構想)北國に生息する黒い実(カルマ)と、それにまつわるロストと辰之進の苦い思い出。
      言葉遣い間違ってそう(自分のキャラなのにブランク在り過ぎてわかんない)。

      仲は良いよ(ロストと辰)。笑 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 30華】銀髪の花嫁(没ネーム)持ち込み用に練っていた漫画。没ネーム。

      没になった理由はもう少し健斗とトキの心情を描きたかったからです。

      出来上がった漫画はpixivで掲載していくつもりでしたが、GALLERIAで……連載もいいなと考え中。
      元々、『銀髪の花嫁』を中心とした作品群(同じ学校の子の違う話)を予定していたので。
      構想だけはあるけどお話にまとまるのか?!というところ;うーん。

      ネームを読んでくださってありがとうございます! #ネーム #オリジナル #創作 ##華:銀髪の花嫁-創作
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    • 4T】タッカー星人Javaでwikiを作っていた時のボツ企画。

      「タッカー11nという星からやって来た。
       異星人の為、地球のことは一から教えてやらなばならない。
       アカウント式のwikiで記事を書いて地球のことを教えてあげてね!」

      っていう、設定だったかな。(何年前だか‥)
      Javaが使えるサーバがフリーでなかった為、没になりました。 #オリジナル #創作 ##T:タッカー星人-創作
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    • 2剣】花冠(構想)ロストの涙。 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作黒克(創作)
    • 4剣】氷の女王(構想)【エクスカリバー英雄期】英雄ロートスの妻とも伝わる北國の女王のお話。

      スゴイ残念な人だけどね。。。その内メモをUPしますよ。多分。 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 7剣】ロストとシーラー(構想)シーラー(♀)の服が変わるのは「花嫁衣裳」が決まっていないからです。
      イメージだけなのでシーラーの顔も定まってないよ。。。 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 2華】天狗の眼の少女-こまち【Qpixiv11オリジナル】に出したもの。2012年って5年前か……。
      最近ソフト絵描いてない。
      手ブロでラクガキばかりしているので絶対下手になっている。ううう。

      カテゴリ【T】でもいいけど、空(アキ)の話が出てるから【華】で。
      確か、女の子の名前は「烏丸 雪(カラスマ セツ)」だったかな。
      「こまち(美しい人)よ」って、天狗の呼称だったハズ。 #天狗 #オリジナル #創作 ##華:銀髪の花嫁-創作
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    • 3剣】双子の王子(構想)弟はちょっと狂ってる。ブラコン?←←
      イメージなのでストーリー的にどうなるのかは別なのかな。。。
      そもそも先の話は描かないけど← #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 5背景ころころ。どうでもいいが、服が変。
      フォトショのテクスチャ初めて使ってみた時のヤツ。
      あと、ちゃんと線画描いてマッピングして塗りました。真面目に。
      マッピング下手なのか、塗るとジャギーが出るんだよ?? #オリジナル #創作 ##その他-創作
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    • 20電】懸×カケル~見えない生涯~彼には聞こえていない。
      Reveal Ver.(言葉つき)はまた後日UPします。
      プログラムのとこ間違ってるの直してないけど;うーん。
      ページ抜けたりしてないかなー #マンガ #漫画 #オリジナル #創作 ##電:WORMS-創作
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    • 7華】銀髪の花嫁―キャラリスト『銀髪の花嫁』はおばあちゃんと少年のお話。漫画を考えています。
      ちょっと今、時間があるようでないので随分前に考えていたお話ですが。
      描いていただけると喜びます。←←
      って顔しかないじゃん!

      漫画は追々。。。 #オリジナル #創作 ##華:銀髪の花嫁-創作
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    • 2剣】ロートス(構想)2枚目は「生きていたら」の話。
      ロストが割と人気で「生きててほしい」との要望があったので。

      ギルト(ロートス)についての構想を置く場所。。。かな。分けるのが難しい。 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 7桜花(構想) ※マンガではない。東国、叉藏(サクラ)。治安の悪い奥地には一本の桜の木がある。

      辰についての構想を置いていく場所。下のは「メモ」です。スミマセン;; #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 16剣】Excalibur―キャラリスト『Excalibur』は剣の話。王道を描こうとしてできなかったという。。。
      漫画を描き直し中。。。
      顔しかないけど、描いていただけると喜びます← #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
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    • 5剣】辰とギルト(妄想)辰とギルトについての妄想を置いていく場所。
      文字読めないな(安定の……)。

      辰之進の話まで行きつかない(描かないし描けない)ので妄想ばかり進むよ。 #オリジナル #創作 ##剣:Excalibur-創作
      黒克(創作)
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