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    汝わが荷となるべし・本作は『スターフォックス64』を元に、設定を一部脚色しています。

    ・キャラクターの台詞や設定について、筆者独自の解釈に基づいて書かれた箇所が多くあります。何卒ご了承ください。

    ・負傷、流血等の表現が若干ございます。
     特定のキャラクターに強い思い入れのある方、もしくはそういった表現に心痛を感じるなど
     ご抵抗のある方におかれましては、閲覧されない事をお勧めいたします。

    ・本作は、原作本編とその設定、及びそれらについての多方面からの解釈、
     並びに他の皆様の二次創作物を否定する意図は一切ございません。


     以上をご了承の上、どうぞお楽しみ下さい。




     
     「思った通りだ。スラスターから異音がする… 右から三番目だ。見てみてくれるか、ピグマ」

    メンテナンス中のジェームズのアーウィンに搭乗し「火」を入れながら、ペッピーが通信する。

    『ほうかいな。そんな細かい音がよう分かるな。ペッピー。他はどないや?』

    ペッピーはモニター、レーダー、動力系、Gディフューザーシステムの使用感を、

    メンテモードを使って探って見る。

    ペッピーは、ピグマのように精密機械の難解なメンテやプログラム等に長けている訳ではないが、

    コックピットの異常の有無、誤作動の予兆や動力系・推進系の異常音、

    システムのズレなどはまるで霊感のごとくすぐに感知し、不思議にピタリと当ててしまう。

    また、それらをパイロット側が操縦するに最適な状態へと、微調整するのが頗る上手かった。


    「Gディフューザーが30パーセント程ズレてる。

    …こりゃ大きいな。良くまともに飛べたもんだ。

    ジェームズの奴、今回のはレーダーも殆ど見てないでいたな。

    どうやって目標捕捉していたんだあいつは?」


    『隊長はんはよう無茶やりよるからな、メンテナンスしてもし切れんわ』

    「ははは、そう愚痴るなよ。…よし。システムの方はこれで大丈夫そうだ。」


    ピグマがずっとメカニックに籠りきりなのを半ば心配して、

    嫌だ嫌だというのをやっとの事で手伝わせてもらえるようになった。

    ジェームズも、それには賛成してくれた。

    (「私は良いのか?こういう事は君に任せてばかりで申し訳ないな」)

    (「いや。おれもずっと気にはなってたんだ。お前は仕事に専念しててくれ。」)

    ジェームズの飛び方は、損傷こそ少ないが機体への負荷が人一倍高いと見え、

    当初より頻繁にメンテナンスをされているが、

    それにしてもこんな状態になるとは、思いも寄らない事だった。


    「コーネリアファイターでは…いずれあいつの飛び方と折り合わなくなっていただろうな。」

    『またか。もうやめっちゅうねん、その頃の話は。なんぼなんでも聞き飽きるわ』

    「まあまあ。でもこうして無駄話しながらメンテ手伝うのも、なかなか良いもんだ。」

    『はん。手伝いはあんさんの勝手やが、ぺちゃぺちゃよう喋りよる。

    せいぜい、口より手ぇを動かしなはれや』

    「はい、はい」はぁ、とペッピーは軽いため息をついて、引き続きオペレーションにあたった。

    この時には、ペッピーは思いもしなかった。

    人を避け金に執着し、気さくでもないが職人気質で絵が上手く、憎めない所もあるこの男が、

    後々大波乱を引き起こす要因になるなどーーー





     グレートフォックスの白銀色の巨体に描かれた、翼の生えた真紅の狐。あれは、実は

    ピグマの考案したロゴマークだ。過日、どのようにして決定したか。

    「客商売やさかい、インパクトっちゅうのは大事やで。でも、あんまり派手にしよってもな。」

    ちなみに、ペッピーの描いた絵はロゴとしてはいささか地味に過ぎ、

    ジェームズの描いた絵はまるで爆発を思わせるオーラはあるものの、

    ロゴとしては壊滅的であった。

    「…客が引いてもうたらアカンからな…って、隊長はん、それ何ですの」

    「これか?私の図案だよ。恒星ライラットを入れてみたんだ。」

    ジェームズは、ニコニコしながら、それはハッキリと言ってのけた。

    「……」ピグマは眉を八の字にして、それを矯めつ眇めつ眺めた。

    ペッピーは笑いながら言う。

    「どうもこういうのは、二人とも向いてなさそうだな。ピグマ、お前も描いて見せてくれよ。」

    「ワテがか。」

    「ほれ」

    ペッピーは用紙と鉛筆を手渡す。ピグマは絵を描くにはこれが一番手軽で良いという。

    ピグマは黙って、サラサラと描いてみせ、軽く色を着ける。

    「こんなでええか?」

    お、とペッピーが絵を覗き込む。「へえ…!お前、絵が上手いんじゃないか。これ、狐か?」

    「狐がリーダーやさかい、ええんちゃう」ピグマはぶっきらぼうに答えた。

    翼の生えた、赤色に塗られた狐のマーク。

    それを見て、ジェームズは嬉しそうに笑った。

    「うん…格好いいな、これ。翼の生えた狐か…でもなんだかちょっと、照れるな」

    「スターフォックス言うてる張本人が、アホぬかすわ。」

    いつも表情の判りづらいピグマの顔が、少しだけ緩んで笑った…ように見えた。





    アンドルフ軍の攻撃の中、二機のアーウィンが空を駆ける。磁場嵐まで来る悪天候で、視界が悪い。

    「ピグマ、何処へ行った!?応答してくれ!!」ジェームズは通信するが、返事はない。

    相手の殆どは生物兵器であり、何とか弱点を探りつつ応戦しているものの、

    この嵐で行方が分からなくなってしまったピグマを捜索しながらの戦闘は、消耗戦だった。

    そんな中、ペッピーがジェームズ機に通信を入れてきた。

    「ジェームズ、こんな時になんだが、異常はないか?お前の機体は」

    「ああ、今のところ特に問題ないとは思う」

    「何故かな…どうしても何か妙な気分なんだ。落ち着かない。」

    今日はお前のアーウィンを診ていない。ピグマに任せて。

    何もないと信じたい。けれど…。

    いつもはどんなに機体の調子が悪かろうが、ジェームズをここまで心配することはない。

    ペッピーは周囲に気を払いながら、レーダーを頼りにピグマ機の機影を探した。

    「待て…通信が入ったぞ」ジェームズは誰何した。

    『…おう、お二人さん。ワテを探しとるんか?』

    「ピグマ!無事だったか」ジェームズは安堵した。

    「何処にいるんだ?!」ペッピーが聞くと、

    『ペッピー、ワテはよう分かった。いつものお前のお節介も、今日は頑と断っといて正解やった。』

    「?…何を言ってる?」

    『上や』

    二人はそれぞれ、コックピットから上空を見上げる。

    黒雲の隙間から、一つの機影が滑るように空中をやって来る。

    「黒いアーウィン…?!」ペッピーが目を見開いて、小さく呟く。

    「いや、あれは…!」ジェームズがその機体のコックピットにいる人影を見て、叫ぶ。

    「ピグマ!!」




    『よう分かった。分かったで…無駄や。お前らとやって来た事全て、綺麗事全てが、

    無駄やったんや…。見いや、こいつを。名前もまだ付けてへんが、完璧や。アーウィンとは違う。

    ワテはホンマの事しか欲しうない。金が欲しい、ワテの技術で、優れた戦闘機を、

    いや誰もが慄く破壊兵器を作りたい…!!

    お前らとの夢も、アーウィンいじくり回すんも悪うはなかった…

    お前らと手慰みに絵を描くんもな。しかしな。ワテはもう、それでは満足できひんねや!!』


    声が終わると同時に、何かが近づく気配。

    やっぱりだ、罠だ。ペッピーがそう悟った時、異変が起こった。

    重力が、上がっている。息が詰まりそうになり、操縦もままならない。

    ペッピーはやっとの事で、Gディフューザーシステムのメーターを確認した。

    65パーセントのズレ。信じられない。これでは…!

    操縦桿をひとたび離せば、アーウィンを御せなくなってしまう。

    「ジェームズ!!」

    通信しようとしたが、違う周波数にジャックされた。

    『ペッピー、よう見ときや。お前の大事なもんの翼が折れるんを

    …お前には世話なったさかい、とっときのを見せるわな。』

    また、嫌な予感がした。

    「ピグマ!…やめろ!…どうして!どうしてだ!!」

    ペッピーは声を枯らさんばかりに叫び返した。

    『…さあな。ワテの目標が変わって、それにアンドルフ様の技術が必要になっただけや。

    お前には分からん…一生な。それもこれも、お前のジェームズと一緒に終わらせたるんやで、

    感謝しいや。』

    「待て!…」 通信は途切れた。



    一斉掃射の雨。四方、八方から矢継ぎ早に此方へ向かって来る。

    ローリングで弾き返すも、弾の多さに避け切れず、ペッピー機は被弾した。

    「うぐっ!」

    衝撃に耐える。

    間一髪のところで操縦桿を離さずにいたが、いつまでこれが保つのか…。

    ジェームズの方を見る。彼も苦戦しているようだ。通信が繋がらない。

    おまけに、何だか飛び方がおかしい。やはり、Gディフューザーがいかれているのか。

    ペッピーも、この磁場嵐でレーダーが使いものにならなくなり、

    目視と勘のみでの戦闘を強いられていた。

    漸くの事で、弾幕の向こうの敵を視認するまでに至った。

    あれは…コーネリアファイター?


    違う。禍々しい色彩に彩られている。更に、搭乗員は…

    「ばかな…コーネリア軍の制服か?」ペッピーは愕然とする。

    『せやで。あれはな。宇宙でくたばっていったコーネリア軍の奴らの、亡骸や。

    それをワテとアンドルフ様の手で、生体兵器として蘇らせたったんや

    …どうや、お前らにあれが撃てるのんか? ク、ククク…』

    「狂ってる…!」ペッピーは目を見開いて、歯をくいしばった。「ピグマ、お前!!」

    怒りを露わにし、ブーストをかける。負傷した手でブラスターを撃ち込みつつ、

    弾幕の向こう側に構えたピグマ機に、上方へカーブを描きながらぐんと近付こうとする。

    尚も攻撃を続ける昏い色をしたコーネリアファイターに、ペッピーは次々に手向けを浴びせる。

    今はこの胸の痛みに耐えて、生体兵器としてだけの醜く空虚な偽りの生を、

    軍人らしく終わらせてやる事でしか、彼らを救済するすべはない。

    いつしか、滂沱の涙が溢れていた。

    精神的な負荷は、戦況をさらに悪化させてしまう。ペッピーは頭を振った。

    ーー泣くな。泣くんじゃない。おれのやるべき事は何だ。考えろ。考えろ!

    ペッピーが、自分に言い聞かせながら戦い続けていたその時。

    視界の端に、一筋の光が見えた。

    光は、弾かれたかのように流線形の軌道で素早く上下し、

    錐揉みをするようにして敵機の間をすり抜け、その後敵機は皆、爆発し、四散して行く。

    ーージェームズ、良かった。まだ生きているな。

    ペッピーはその喜びを噛み締めた。

    ジェームズもまた、躊躇いなく鋭い剣を振るうが如く、

    コーネリアファイター達を次々と屠ってゆく。

    ーー同じ思いか。お前も、おれと。

    ペッピーは血の味がする唇で僅かに、苦笑した。



    どれだけの時間が過ぎたか。


    あれほどに雲霞の如く大挙したコーネリアファイターの群れは、既に全てが撃墜されていた。

    驚くべき事に、スターフォックスのジェームズ、ペッピー、両機のみによって。

    とは言えピグマ機はまだ残存し、アンドルフ軍の攻勢は止む事もないが、

    一応の区切りをつける事は出来そうだった。

    ジェームズ機は時折動作が不安定になりながらも旋回し、攻撃を続け、敵勢力を削ぐ。

    ペッピーはコックピットで、今までに無い消耗を感じながら、それでも操縦桿を離すことはしない。

    離せば失速を起こし、真っ逆様に地上へ激突する。

    強い嘔吐感も出て来たが、彼自身の戦士としての矜持が弱音を許さない。

    激しい戦闘でシールドのエネルギー残量はもう半分以上を割り込んでおり、

    残された時間がそう長くはない事を告げていた。

    あいつだけはーーピグマだけはおれが何としても、やらねばならない。

    例え死のうとも、あいつを撃墜する。そう肚を決めるのだった。


    やがて、ピグマ機が目前に近づいて来る。

    通信が回復しない中、見様見真似でジェームズ機と連携を取ろうとした時、声が耳に届いた。

    『ジェームズ・マクラウド…』

    ペッピーは戦慄した。この声は、聞き覚えがある。こいつは、あの。

    『クク…あのお方や。きちーんとご挨拶せな。皇帝様やど』

    ピグマ機の背後、空中から濃霧のように、巨大なビジョンが立ち現れる。

    コーネリアから追放処分を受け、辺境のこの地で皇帝を名乗る、アンドルフ博士の姿だった。

    「ち、趣味の悪い…!」ペッピーは舌打ちした。

    『コーネリア軍の傀儡に過ぎぬくせに、よくここまで保ったものだな。ジェームズよ。

    無頼を装いながらその実はペパーの犬となり果て、私の邪魔をするか。此方へ来い。

    可愛がってやる…。』音声は通信の範疇を超え、直接耳に届きすらしていた。

    ビームに似た閃光が辺りを包み込み始める。同時に、

    強い衝撃波がジェームズとペッピーを襲い、そこかしこで外壁や何かの割れる音が響いた。

    「うう!う!」衝撃にペッピーは目を閉じ、開ける。視界が半分赤い。側頭部を負傷したようだ。

    ジェームズ機を見やると、左の片翼が捥がれている。まずい。届かないと分かってはいるが

    思わず大声を上げた。

    「ジェームズ!来るぞ!逃げろ!」

    ピグマ機が、ジェームズの前に躍り出る。

    『ペッピー…さっきお前に言うたよな?お前の大切なもんの翼折れる様を見せるて』

    「させん!お前はおれが叩き落としてやる!!」

    『よう言うたわ。お前はノリの良いやっちゃ。でもな、遠慮せんでそこでようく見とき』



    三つの三角錐によって形成される、トラクタービームがペッピーの後方より忍び寄る。

    「しまった!」逃げようと必死にブーストをかけ、全速前進する。

    そこへ、垂直に放たれる無数の弾が、ペッピー機をダメージする。警告音が鳴る。

    恐らく、右片翼に被弾した。体制を立て直して宙返りし、トラクタービームを避ける。

    ピグマ機と交戦するジェームズ機は、片翼のまま猛攻と渡り合っていた。

    ブラスターももはや、一つを残し機能を停止しているように見える。

    ペッピーは急行して援護の体制を取りつつ、目を凝らした。

    …ジェームズ機コックピットの、窓が窓枠から全て破損している。まさか。

    言葉を失った。何とジェームズは、今やコックピットに剥き出しの状態になっているのだ。

    敵機の攻撃を躱し、跳弾を避け、自身は有り得ない気圧と風に耐えて、

    ジェームズは飛び続けている。これでは、下手に乱射する事は出来ない。

    「ジェームズ!退いてくれ!おれが何とかする!」

    ジェームズ機に後方から並走飛行するようにして近づく。

    「く、やはり聞こえないか…ジェームズ!!」通信手段がない事がもどかしい。

    ペッピーも、無茶を承知でコックピットを解放した。凄まじい風圧に手を取られそうになりながら

    あらん限りの声でペッピーは叫んだ。「ジェームズ!!聞こえるか!?おれだ!!」

    ジェームズがゆっくりと振り返る。強風に吹かれトレードマークのサングラスは何処かへ飛び去って、

    攻撃により右目を負傷したのか、閉じたままで涙のように流血している。

    それでも表情は驚くほどに冷静であり、

    残された蒼い左目は、戦神の如くに冴え冴えとしていた。怒りも、絶望もそこには見えなかった。

    ペッピーはそれを見て、彼が生きていた安堵よりも、より強い不安を覚え、

    口をついてこう叫んでいた。

    「まだ死ぬな!…死ぬな、死ぬなッ!!お前は、生きて帰らなきゃダメだ!!」

    口がカラカラになり、喉が裂けるようだ。

    上空から、また雨あられと弾が降り注いで来る。ジェームズは刹那、急上昇した。

    信じられない速度で全ての弾を、撃ち落として見せてから、ジェームズは自身の首から何かをもぎ取り、言った。

    「ペッピー!!…全部君にやる。済まんが、後の事は頼んだ!!」

    上方から、ペッピーの方へ投げてよこす。風に流れながら一瞬キラリと光って落ちてくるのを、

    ペッピーは見逃さずしっかりと、その右手に受け止めた。

    手を開くと、そこには古ぼけた銀色をした、コーネリア軍のドッグタグが握られていた。

    『ジェームズ・マクラウド』彼の名前と、彼の誕生日である7月13日の日付が彫られているのが見える。

    ペッピーも、これと同じ種類の自分のドッグタグを、肌身離さず身につけていた。

    同期の二人が、空軍所属のパイロットとなったその同じ日に、拝領したものだった。

    不安が、確信に変わった。ペッピーは張り詰めて、闘いに舞うジェームズ機を見つめた。

    「私はこの生き方しか無理だった…けど、君はそうじゃない。私の酔狂に巻き込んで…本当に悪かった!!」

    「馬鹿!そんな言い方するな!!おれはお前と…」ペッピーも応戦しつつ、ジェームズに近づくが、落ち着いて話すなど無理だった。

    「やめろ!フォックスはどうなる!!」

    「行け!!行ってくれ!!…そして、生きていたら必ず、また会おう。必ずだ。フォックスにもそう伝えてくれ。

    いつまでも悲しまなくて良いと」


    馬鹿。無理だ。フォックスにそんな事が言えるか。

    おれがそんな言葉鵜呑みにして、お前をこんな所で一人に出来ると思ってるのか。


    ペッピーは大声でそう伝えたかったが、コックピットを開けているのももう限界だった。

    いつの間にやらピグマ機が追い付き、掃射を始める。

    アンドルフ博士も満足そうに笑みを浮かべる。

    『そうだ…我こそが規律、我こそが法則、我こそが真理だ…これが、正しい道だ、ジェームズ…』

    一筋の弾道が、ジェームズの左肩を貫き、彼が仰け反るのが見えた。「ーーーーー!」

    もはや言葉にならない。ペッピーはピグマ機に攻撃をかける為、

    急旋回して素早くブラスターを撃ち込む。

    手応えはあったが、有ろう事か左後方へもろに体当たりを受けてしまった。

    ピグマのくぐもった笑い声が、聴こえて来そうだった。




    「お熱いこって…やっぱりスターフォックスに、三人は要らんやったな。」

    そう呟いて、ピグマはジェームズに照準を合わせる。

    ジェームズは真正面にピグマ機を見据え、相対した。

    行け!とジェームズが此方へ叫んでいるのが分かる。ジェームズ機から、煙が上がっていた。

    ペッピーは無念の思いで、コックピットを締めた。バチバチと、計器類に火花が飛び散る。

    そんな場合ではないのに、コックピットに貼られた一枚の写真がペッピーの目に留まる。

    ジェームズの趣味で焼いた、スターフォックスの、紙の集合写真だった。


    ああ、燃えてしまう。ペッピーは朦朧とする意識の中咄嗟にそう思い、

    火花の散る中で、その写真を夢中で引き剥がし、

    ジェームズのドッグタグと共に、己の胸に強く抱き締めた。

    後は、うずくまった姿勢のまま、離脱ルートを記憶を頼りに、ひたすら進み続ける。

    自分を責める気力さえ、今のペッピーには残っていなかった。



    気がつくと、いつのまにか、グレートフォックスの駐留している安全な宙域まで、逃げおおせていたらしい。

    とても静かだった。ジェームズも、ピグマもここにはいない。

    傷つき疲れ果てたペッピーの目は虚ろに、星々の海に浮かぶグレートフォックスを捉えた。

    『…アーウィンノ位置及ビペッピーノ生存ヲ確認。ペッピー、大丈夫デスカ?ペッピー?』

    グレートフォックスの航海士ロボット、ナウスから通信が入っている。

    ペッピーは通信に応えない。茫とした目から一筋、二筋と、涙が溢れ落ちている。

    『ペッピー?応答ネガイマス。ペッピー?』

    ふと、グレートフォックスの尾翼に描かれた、翼ある狐のモチーフが、目に入る。

    ペッピーはそれをぼんやりと見てから、再び胸元にあるものを抱き締めた。

    それらはずしりと重く、まだジェームズの体温を宿しているようにも思えて。


    ジェームズ…。

    なあ、黙っていないで、返事をしてくれよ…。

    フォックスも待ってるんだ。


    半ば夢心地でいるのだと自分で分かるのに、覚めてしまうのが恐ろしい。

    今もっと意識が鮮明になれば、おそらく正気で居られないだろうとペッピーは薄々ながら思った。

    少し、眠ろう。目を覚ましたら…そう、目を覚ましてから、また考えるんだ…。

    そのままペッピーの意識は、深い眠りへと落ちて行くのだった。





    toh_kichi Link Message Mute
    2022/10/17 14:26:00

    汝わが荷となるべし

    二次創作(2017年10月17日pixiv初出)
    フォックス達若い世代の前身、もう一つのスターフォックスの物語。
    新生スターフォックス誕生の切欠ともなった『ベノム調査戦』とは如何なるものだったのか。

    star_fox

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    • 11ポイピクの絵まとめ ③二次創作 ポイピクツール絵その3(11点)
      版権タイトル雑多 2020年4月〜11月

      ポイピクツールで描いた雑ゆるらくがきのまとめです。
      toh_kichi
    • 20アナログ絵まとめ①二次創作

      過去にTwitterとポイピクに掲載しました版権もののアナログ絵まとめです。進捗も含めています。2018年〜2022年のもの20枚、順不同です。


      sq_ex
      star_fox
      toh_kichi
    • 20221115二次創作 

      20221005の続き 2022年11月15日
      鉛筆とアルコールマーカー


      star_fox
      toh_kichi
    • 20221005二次創作らくがき 捏造強め
      2B鉛筆で描きました。
      のちibispaintXで加工。

      star_fox
      toh_kichi
    • 二次創作 TOP絵
      star_fox

      (アイコン用 2018年2月21日 初出)
      toh_kichi
    • 8ポイピクの絵まとめ ②二次創作 ポイピクツール絵その2(8点)
      star_fox 2020年4月〜7月

      ポイピクのツールはシンプルでしたが、とても気楽に描きやすかったです。
      toh_kichi
    • 5創作イラスト(2018年頃)創作絵

      過去、ブログに載せていたイラストです。
      今思うとあまり時間もない時期だったため手間暇をかけず描いていました。
      toh_kichi
    • 創作絵 ラフ
      (2019年11月1日 初出)
      toh_kichi
    • 6ポイピクの絵まとめ ①二次創作 ポイピクツール絵その1 (6点)
      star_fox 2020年8月〜10月

      以前ポイピクにありましたお絵かきツールで描いたらくがきです。ツールとても好きでした。また復活してくれたらいいな。
      toh_kichi
    • 幾光年の悪戯二次創作 (2017年10月29日 pixiv初出)
      任務に追われる日々、ふとした休息の時間に過去への思いを馳せる。
      語らいの中に垣間見る父の一面とは……。

      star_fox
      toh_kichi
    • 320220802二次創作
      だいぶ遅れたけれど、ジェームズ+声優さんのお誕生日絵です。声優さんネタ&作業BGMリストも入ってます。

      star_fox


      ※pixivにも同日投稿しています。
      toh_kichi
    • 8アナログ絵まとめ②二次創作

      過去にTwitterとポイピクに掲載しました版権もののアナログ絵まとめです。
      ①と同じく順不同、鉛筆画多めで雑多に入れてあります。

      star_fox 他
      toh_kichi
    • 14らくがき過去絵まとめ(2017〜2018)pixiv、Twitterにアップしていた初期の二次創作イラストです。
      現在に比べると荒い部分、拙い部分満載ですので閲覧しても良い、あるいは初期の雰囲気の方が好きという方はどうぞ。

      始めたばかりのデジタルイラストに悪戦苦闘している様子が伺えます。

      ※初出年月日
      1.2017年10月18日 (pixiv)
      2.2017年10月18日 〃
      3.2017年11月01日 〃
      4〜7.
       2017年11月11日 〃
      8〜11.
       2017年11月30日 〃
      12.
       2017年12月03日  〃
      13.
      2018年04月06日(Twitter) 
      14.
       2018年05月12日  〃 鉛筆画

      二次創作 star_fox
      toh_kichi
    • 420230106新年明けましておめでとうございます。
      穏やかで良い年になりますように。

      二次創作
      star_fox


      ※pixivにも同日投稿しています。
      toh_kichi
    • 320230221二次創作 
      Grateful thanks, Star Fox!!

      スターフォックス30周年おめでとうございます!!
      子供だったあの頃TVゲーム店の店頭デモで彼らを見つけたのが始まりでした。彼らはずっとわたしの心の中に住んでいます。
      この作品に与えてもらった全てに感謝を込めて。

      star_fox

      ※pixivにも同日投稿しています。
      toh_kichi
    • 10ポイピクの絵まとめ ④二次創作 ポイピクツール絵その4(10点)
      2020年3月〜7月 star_fox

      捏造色強めのらくがきです。
      原作と違うのはちょっと……という方はご留意下さいね。

      ポイピクツール、時期を整理してみるとわずか半年強の運用でサービス終了してしまったのが判り惜しまれます。
      toh_kichi
    • 遠い背中二次創作(2017年10月10日 pixiv初出)

      SF64設定を基にした二次創作小説です。
      若干ですがBL・CP要素がありますので、閲覧にはご留意ください。

      ペッピーを慕うフォックス、そしてジェームズを想うペッピーのお話です。
      toh_kichi
    • 520210713二次創作(2021年7月13日pixiv初出)

      2021年に描いたジェームズお誕生日絵です。


      star_fox
      toh_kichi
    • 520180221二次創作(2018年2月21日pixiv初出)
      『STARFOX STILL ALIVES』


      star_fox
      toh_kichi
    • 9望んだ未来二次創作 (2017年10月23日 pixiv初出) 
      star_fox

      ファルコとペッピーの友人のような親子のような関係。
      ゲームシリーズの中で描かれることは非常に稀なのですが、さっぱりしているようでいてその台詞や関係性一つ一つに深みを感じます。

      pixivに投稿した初のストーリー漫画で、以降の構想に強く影響を及ぼしました。
      toh_kichi
    • 赫の契約二次創作(2021年5月19日pixiv初出)
      ウルフの眼そしてジェームズの左耳に付けられた傷の話。
      相手を失い尚燻り続ける、その執着は何のために。


      star_fox
      toh_kichi
    • 四つの葉二次創作(2018年2月21日pixiv初出)
      「三人だけでは立ち上げは厳しい」
      新たな遊撃隊結成を決意するも、ペッピーのその言葉に戸惑うフォックスだが……。

      star_fox
      toh_kichi
    • 720180126二次創作(2018年1月26日pixiv初出)

      『64』と『コマンド』中心のイラストです。
      コマンドのペッピー&ジェームズ(捏造強め)のゆる漫画が入っています。


      star_fox
      toh_kichi
    • 620171211二次創作(2017年12月11日pixiv初出)

      ペパー将軍とペッピー
      最後のページにアサルトのネタらくがき載ってます。
      (字がすごいことに……。すみません。)


      star_fox
      toh_kichi
    • 流星 如くの此く二次創作(2019年2月22日pixiv初出)
      最新鋭機アーウィンを駆り、惑星コーネリアの危機に急拵えで立ち向かう雇われ四人組。
      凸凹しててもやる時ゃやる。
      そう、奴らの名は……。


      SFC版『スターフォックス』に寄せて


      star_fox
      toh_kichi
    • 320180409二次創作(2018年4月10日pixiv初出)

      以前の投稿分と一部かぶっていますがすみません。

      star_fox
      toh_kichi
    • つかんだ右腕二次創作(2017年12月5日pixiv初出)
      アパロイドマザーとの死闘から数ヶ月後、
      ペパー将軍はかつての部下であるペッピーを引見する。
      お互いに慮り談笑しながらも、将軍は誰にも話せぬ悔恨と秘めた想いに、
      ペッピーは目に見えて衰弱しゆく将軍の姿に心を苦しめるのだった。


      若干のCP要素があります。苦手な方は充分ご留意下さい。
      toh_kichi
    • どうしてそうなの?二次創作(2017年10月14日pixiv初出)
      ペッピーの一人称、どうしてああなのか?というふとした疑問から書いたお話です。

      どうして?ねえ、どうしてそうなの?


      star_fox
      toh_kichi
    • 19記憶の呼声二次創作(2017年12月19日pixiv初出)
       ペッピーへと寄せられた旧型アーウィン発見の報せ。それは将軍機として現存する1機以外、残されているはずのないものだった。

      『スターフォックスコマンド』IF二次創作です。ペッピーが将軍となっている、ジェームズを操作可能であるなど他シリーズにはない要素に刺激を受け、アッシュを含めた彼らの関係性について個人的な願望を込めた内容となっております。

      二次創作でのIF要素、もしくは原作への個人的な解釈についてご抵抗のある方は閲覧の際ご注意ください。


      star_fox
      toh_kichi
    • 920180506二次創作(2018年5月6日pixiv初出)

      差分がすごくたくさんあります。同じ絵が連続しても平気な方はどうぞ。
      当時のサムネイルとキャプションは現在読むとちょっと気恥ずかしいので最後尾に入れました。(pixivには当時のまま残っています)

      好きな1曲を聴きながら描いたものです。
      toh_kichi
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