流星 如くの此く・『スターフォックス』(スーパーファミコン版)を元に設定を一部脚色しています。
・キャラクターの台詞や設定について、原作ゲームから筆者独自の解釈に基づいて書かれた箇所が多くあります。何卒ご了承ください。
・本作は、原作設定についての多方面からの解釈、
及び他の皆様の二次創作物を否定するものでは一切ありません。
以上をご了承の上、どうぞお楽しみ下さい。
中心に恒星を戴く、広大なるライラット系。
その第三惑星として位置する、緑豊かな青い星、コーネリア。
たった今その軍事基地から、非常事態の報せを受けて飛び立った4機編隊。
蒼く輝く機体は、コーネリア軍総司令官ペパー将軍と、
コーネリアに暮らす人々の希望をその身に背負い、飛び立ったのであった。
…が。
「ゲロゲロ〜!もう帰りたいよお〜!!」
無線通信を通し、各機へ盛大に響く泣き声。
最年少のメカニック、スリッピーがおいおいと声を上げて泣きつく。
「おい、泣くなよいきなり。おっ始まったばっかりだぞ?もっと楽しもうや。」
この状況にしてはやけにお気楽になだめるのは、最年長のペッピーだ。
「ペッピーは良いよな〜軍人崩れで戦闘機なんか何回も何回も乗ったことあるんだろ?」
「崩れって言うな。」
「オレは戦闘機初めてなの!戦闘機乗るように生まれついてないの!
30過ぎのオッサンと違って経験豊富じゃないんだよ!
どうしてもメカニックが要るって言うからついて来たのに戦闘に参加しろだなんて!
聞いてないよこんなの…。」
スリッピーはブツブツと、まだ何事かを呟く。
「契約上の機体は4つだったからな。慣れだ、慣れ。スリッピー。慣れりゃ何事も、どってこたない。」
「慣れる前に死んじゃうって!!」
「それよりリーダー。」
スリッピーに適当に言葉を投げかけた後、隊長機に向かってペッピーは告げる。
「ファルコがイチビって前線に出ないよう見張っておけよ。あいつまたやるぞ、多分な。
バギーだろうと飛行機だろうと、あいつのやる事はそうそう変わらん。」
「あぁ?何だおしゃべりウサギ。意味わかんねえ言葉使ったって俺にゃちゃんとわかんだぞ。
舐めた口きいてやがるな。」
ファルコと呼ばれた、いかにも血気盛んな声が、低くドスを効かせてペッピーに凄んで見せる。
「よっしゃ。ちゃんとあんたの耳に届いたんなら、そりゃあ、そりゃあ良かった。」
ペッピーはその凄みに、どうという事もない風に普段通り切り返す。
「わかんないか?ファルコ。イチビリってのは調子に乗るって意味だ。覚えといて損はないさ。
なあフォックス。」
「てめ…」ファルコは額に青筋を浮かべる。
「いちゃつくのはそこまでにしておけよ、お前達。今は戦闘空域だ。」
若々しい、厳しい声が二人を制止する。
「…来た。」声の主が一人、誰にも聞こえぬ小声で呟いた。
グリーンの鋭い瞳が前方を見据える。
レーダーは無慈悲に、その距離の逃げられぬ近さを知らせて赤く瞬いている。
戦闘機…アーウィンの甲高いジェット音が耳をすり抜け、
キーンと頭部の感覚が突っ張って行くのがわかる。
リーダーと呼ばれた青年、フォックスは皆に見せた冷静さとは裏腹に手に汗を握った。
その名をアンドルフ軍、と聞いた敵方の戦闘機が飛来する。
「前方に敵機接近。これより戦闘態勢に入る。…全機報告せよ!」
フォックスが良く通る声で号令した。
「腕が鳴るぜ!!」激しい戦闘の予感に、猛々しく意気込むファルコ。
「頑張るぞ〜!ケロケロ!!」先程の涙声を拭いきれてはいないが、
元気を取り戻した様子のスリッピー。
「無茶は、するなよ!!」いつもの飄々とした態度に隠した、仲間への慮りを覗かせるペッピー。
シールドエネルギーその他は、
外部気流から自然発生するエネルギーをシステム変換できたもので現地調達。
できない場合でも戦闘は続行。
ワープ航行可能で航続距離は無限。帰投までの燃料の心配はないが、
ワープ実行にはかなりの移動距離を確保する必要があるため周辺領域の敵機掃討は不可欠。
敵、アンドルフ軍はコーネリア軍の制空権および領空宙域を侵害するまでに至っている。
航行途中の補給基地が皆無なのはこの為。
パイロットは全領域対応型戦闘機・アーウィンを宇宙船がわりに、
長期航行を余儀なくされる。
作戦が失敗した場合、惑星コーネリアの存続も、フォックス達の命も、保証はない。
紙切れ一枚、ひどい契約だ。フォックスは内心でその皮肉さを笑った。
ペパー将軍、あんたは覚えてるんだろうか。
俺と同じ名前だった俺の父親が、今の俺と同じくあんたの命令で戦闘機に乗り、
そして宇宙の塵になってしまった事を。
知ってて、覚えていて頼みに来たんならえらく悪趣味だ。
だが、一度引き受けてしまった以上はやるしかない。
宇宙義賊スターフォックスの、その薄汚れてでさえ誇り高い、愚連隊の名誉にかけて。
フォックス・マクラウドは口の端をにやりと歪ませながら、
掃射のためブラスタービームのスイッチにその指を絡めた。
了