願いは叶うよ、君が願うなら「あ、マッツー」
ぴょこん、と部屋から出てきたのはこの家のもう一人の住人だ。あれから月くんは言葉通りにワンルームを借りて、そこでミサミサと暮らしている。同棲かあ。思わず漏れたそれを相沢さんに黙殺されたことが遥か昔のようだ。
「ライト、疲れてるみたいだからお仕事は少しだけおやすみなの」
しぃ、とジェスチャーをするミサミサは以前よりもずっと大人びて見えた。身体すべてで感情を表す子。砂糖菓子みたいな女の子は今やすっかり立派な女性になっていた。
ミサミサはそのままパタパタとどこかへ行ってしまった。あの調子なら一、二時間といったところか。それまですることのない僕は早くも馴染んできたソファに身を落とした。
「月くん、頑張ってるもんなあ」
竜崎が死んでから二か月弱。見事にLに成っている月くんの多忙さは言うまでもなかった。東応大学を復学した月くんは、Lやキラのことなんて感じさせずに優秀な一学生として勉学に励んでいる。一方でLとしての対応もそつなくこなして、僕なんかは惚れ惚れしてしまうほどだ。
キラ事件によって月くんは竜崎を失った。もちろんそれは僕たちにも言えることだけど、もともとが危険な仕事なのだ。だけど月くんはどれほど──あの竜崎が認めるほどに──優秀でも、まだ未成年の学生だ。僕にとって竜崎は上司でこそなかったけれど似たようなものだったし、仲間だった。少なくとも僕はそう思ってる。他のみんなも似たようなものだろう。だけど月くんにとっては違う。竜崎が月くんを友達だと言っていたように、月くんにとっても竜崎は友達だった。
「キラを捕まえなくちゃな」
あの優しい子がこれ以上傷つかなくてすむように。健気なあの女の子が、二度と危険に巻き込まれないように。そのために月くんの力がどうしても必要だった。己の不甲斐なさがやるせない。落ち込んでくる気分を払拭するように頭を振った。
大丈夫。月くんがいて、局長がいて、みんながいる。月くんは必ずキラを捕まえると言ったんだから。