ずっと前から、知っている。「すき」
思わず零れた声だった。
ああ、言ってしまった。言うんじゃなかった。
そう、後悔したってもうあとのまつり。吐き出した言葉を吸い込んで飲み込むことは叶わない。
らしくもないほど、高鳴る胸が痛かった。火照ったように熱い頬が、きゅうと喉を締め付けて。言の葉を吐き出したばかりのくちびるを、引き結ぶ。早鐘を打つ鼓動から、押し出された血液が頭に昇る。まるで、のぼせてるみたいだ。だのに、握り込んだ指先は、外に吹き荒れる風ように、冷たくて。そのことに、自分とは違うぬくもりが触れてはじめて気づいた。
「っ」
知らず知らずのうちに俯いていた顔を跳ね起こす。
見慣れたはずの深い、深い海の底を漂う色が、どうにもいつもと違って見えて。交わる視線を、きゅうっとかたく目を瞑ることで逃れた。ふっと、短く解かれた息が、頬に触れる。微かに肩を竦めたのが、触れた指先から伝わって、そっと震える目蓋を持ち上げた。
海の色と、深く交わる。緩やかな弧を描いた眸は、なんとも雄弁で。答えを待たずとも、応えを知った。
「うん、知っとるよ」
柔らかく。優しく。言の葉が視線を追いかける。不格好に飲み込んだ空気は、そのまま、みっともなくしゃくりをあげて。やから、ずっと俺言うとったやん。なんて、笑みを含んだ声が耳元で和やかに解けるのに、湛えた涙の膜が姿を崩した。